個性「メ化」   作:カフェイン中毒

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136話

『なんでてめえがここに居るんだああん!?切島ァ!手綱くらいにぎっとけやぁ!!!』

 

「うるさいなあ爆豪くんは。朝から元気だね、それで今列車に乗ってるんだっけ轟くん」

 

『ああ、正直たすかった。楪と切島がいれば何とかなると思う』

 

「うん、じゃあ国境沿いの駅で合流しよう。目立たないように車で!」

 

「まてよ、アンタが作る車ってコレだろ?怪しすぎるって……こっち使おうぜ、借りてきた。ヒーロー協会宛てで切符切ってくれよな」

 

 百ちゃんには劣るけど大体なんでも作れるでお馴染私が作った寝袋で一夜を明かした後そういえばエンデヴァーにはオールマイト先生が連絡というか符牒を送るって言ってたけど爆豪くんたちはどうなってるかなって思って回線を一部ジャックして連絡してみました。

 

 私と一緒にいるデクくんを見た爆豪くんは予想通り爆発し、対照的に轟くんは安心したように目元を綻ばせてくれた。うーん対照的ながら両方とも落ち着く反応だなあ。

 

 ててーんと私が作ったオフロード車を見たロディくんが持ってきたのはオンボロのトラック……なるほどたしかに。ここら辺は農場が多いし、ここでこんなピカピカの車が走ってたらおかしいか。燃料はまあ……私が出せばいいや。ガソリン……じゃなくて軽油かぁ、古いねえ。はいドバー。

 

「何でもありだな……」

 

「何でもできるようにしてるんだよ?」

 

「楪さんならそうだよね」

 

「まあ、希械ならな」

 

 オフロード車をメリクリウスで溶かして再吸収していると燃料がマックスになったトラックを見てそんなこと言う。ロディくんの個性がなんだかはしらないけど……私が大体何でもできると自認しているのは何でもできるように個性を広げるように努力したからなんだよ?

 

 確かに個性は生まれ持ったもので格差があるかもしれないんだけど、もともと人間はいろんな可能性をもってるもの。私の個性だって極論全部人間の手でできるんだから。私はそれを極端に加速してるだけに過ぎない。

 

 ブルロォォォン、とエンジンに不調ありまくりな音をたててかかった車に技術者の性として顔をしかめつつ、デクくんとロディくんは運転席へ、私は入らないので荷台へ、えーくんも同様。それで国境の駅あたりまで行くことにした。それにしてもこのスーツケース、何も見えない。あぶり出しかな?あ、えーくんだめ?そっかぁ……。

 

「あ、適当に近くの売店に寄ってくれない?デクくんお金持ってる?何か買ってくるからさ。あとで追いつくから降ろしてもらって先に行ってね?」

 

「あぁ、しまったな。こっちの金持ってきてねえんだったわ。急ぎすぎて頭の中からすっ飛んでたわ」

 

「クレジットカードが使えるお店ならいいんだけどね~。お?あるじゃん!おっきなスーパー!いってき……ふへっ!?」

 

「俺もつれてけって!何があるかわかんねえだろ」

 

「ごめんね二人とも!ロディ、行こう!」

 

「ああ……たのんだ」

 

 長旅の前に物資を用意しよう、と思い立ったが現金を持ってきてないことに気づいちゃった。ドル札ならお財布の中にあるんだけど流石に両替をしてくる余裕がなかったのでこっちのお金は持ってきてないや。

 

 クレジットカードならいけるだろうから田舎によくある大型モールを探そうとネットを漁ればあるじゃん!とテンションをあげて飛び立つもえーくんが足首を掴んでインターセプト。ずべしゃ、どかんと墜落しておんぼろトラックをジャンプさせた私が鼻を抑えて涙目になりながらえーくんを振り返る。

 

 単独行動するな、というえーくんのお説教をしょんぼりと聞き終えてごめんなさいした後、改めて私とえーくんは飛び降りて先を行くトラックを見送った。なんかエンストしそうで怖いなあ。早く合流しなきゃ。

 

「どこにでもある~♪XYZマート~♪」

 

「日本にもあるよな。とりあえず缶詰とかか」

 

「外国の保存食ってあんま美味しくな……まって戦闘糧食フェア?」

 

「まじか!?」

 

 私たちの国、日本にも進出している大きなマーケットにたどり着いた。ヒーロースーツでは目立つので便利なナノマシンにより普段着を作り出した私たちは旅行客を装ってスーツケースを片手に買い物を進めていくことにする。

 

 ありがたいことに保存食のフェアが行われていて……と思ったけどこれ年がら年中やってるやつじゃない?飾り物に年季が入ってて取り外した後がない……そっか、「売れ筋」なんだ。オセオンと隣国のクレイドは軍事国家に近いから。

 

 ヒーローよりも軍の統制が強い地域は往々にして、払い下げ品を買い求める人が多いんだ、軍のお墨付きかつ、保存期間の長い軍用食なんか売れ筋商品なんだろう。アメリカもこんなところ多いし、核戦争が起きるって言って自宅にシェルター作って備蓄を始めている人もいるくらいだから、現実問題としてヒーローが不安を払拭できていないってことだ。

 

「こんなもんか?おい生鮮食品はだめだぞ?」

 

「……一食分くらいなら」

 

「だめだっつーの。煮炊きの煙は敵に位置を教えるようなもんだって相澤先生いってただろ?」

 

「私がやれば煙なんて出ないもん」

 

「終わったら盛大にパーってやればいいじゃねえか。今はあいつらの安全が第一、だろ?」

 

「……デクくんがさ、思ってたよりキツそうだったから。せめて美味しいものくらい……って」

 

 ツン、と鼻の奥がきつくなる感覚を覚えながら私がそういうと、えーくんも難しい顔をして黙り込んでしまった。こういう時にやっちゃいけない行為ナンバーワンなんだけど……見つけた時のデクくんほんとにひどい顔してた。ロディ君を守りながら世界中に信者がいるテロ組織の追手を躱して戦って……つらかったじゃ言い表せない。

 

 人の心を手っ取り早く明るくさせるのは、休息と食事だ。残念ながら休息するわけにはいかないけどせめて食事くらいは……とタブーを破ってしまいそうになった。この場合えーくんの言うことの方が正論だふるふると頭を振って生鮮食品売り場から背を向けようとするとカートの上にバケットがおかれた。

 

「えーくん?」

 

「じゃあ、火ぃ使わなきゃいんだろ。ショージキ俺も、緑谷の顔はひでえのはわかってんだ。それに、お前がそんな顔してんのはなんかイヤだ」

 

「私の顔?」

 

 むにー、と自分の顔を両手で揉んでみる私をえーくんは苦笑いしてみていた。まあ、えーくんがそういうなら私はきっと今ブサイクな顔をしているのだろう。ヤダすごい恥ずかしい、半ば女の子を捨ててるような私でもそれは来るものがある。

 

「マスク被るのは目立つから禁止な」

 

「シュコーッ!?」

 

 えーくんのいけず。

 

 

 

 旅程は進む。合流ポイントまではあと少し、カントリーロードというべき農道を景気よく走るトラックの荷台に揺られる私とスペース不足で私の膝の上に座っているデクくん。えーくんは交代ということで快適なシートの上だ。私は都合上入れないのでどっちかの座椅子になっております。

 

「もうすぐ合流先の駅だね~。なんだかんだ何もなかったし……位置情報を見る限り二人とも追っ手を撒いて電車で移動できてるみたい」

 

「そ、そそそそ……そうだね!?」

 

「ちょっとデクくん、そんな寄せ木細工みたいにトラックの荷台の後ろにもたれかかっちゃ落ちちゃうよ。ほらちゃんとしっかり掴まる!」

 

「ミ”ッ!?」

 

 デクくんは傷つくことに私から最大限距離をとろうとして全力でトラックの荷台の後部に体をねじってもたれかかっている。そのあまりにも無茶がある姿勢に疲れがたまると判断した私は無理やり彼を膝の上に戻して人形を抱きしめるようにしてホールドした。これで良し!なんか変な声聞こえたけど、えーくんは普通にもたれかかってくれたのになー。

 

 そんな様子を見たロディ君はケタケタと笑っていて、初日の様子とは打って変わってデクくんやえーくんと仲良くなれたみたいで私は嬉しい。えーくんはなぜかデクくんに向かって十字を切っていた。何でそんなの知ってるんだろう?

 

 よっこいせ、と力持ち三人が集まっているので余裕のよっちゃんで崖をトラックを担いで登攀したり、道なき道を進んだりして最短距離で突っ切っていくと、あったあった。オセオンとクレイドの狭間の駅、国境線のすぐ近くが。

 

「お?あれ二人が乗ってる列車かな?」

 

「だといいなー。日本と違って電車遅れたりすんだろ?」

 

「お前ら、呑気だな……」

 

「あはは……僕らもその……いろいろ経験してる……ロディ!!」

 

「うおおおおっ!?」

 

 私、えーくん、デクくん、ロディくんの順番に顔だけトーテムポールで駅を見ていた私たちにヒュオッとほぼ無音の緑の軌跡を描いた矢が襲い掛かってきた。えーくんがすぐさま前に出て弾き、デクくんがスーツケースごとロディくんを担いで離脱した。

 

「スーツケースを渡せっ!!」

 

「わたすかぁああああ!!」

 

「あれだね」

 

「人類の救済を!」

 

「ロディ!掴まって!」

 

 鉄球を巨大化させて飛ばしてくる角が生えたヘルメットが生えたヴィランとこっちについた夜にも襲ってきた手を弓に変えるヴィラン。それと軍用ヘリが二機!ミサイルと機銃の嵐を防ぎながら私も空を飛んだ。

 

 えーくんは鉄球を殴り壊しながら接近し、ヴィランに強烈な腹パンを決める。硬化した拳は深く深く鳩尾に捩じりこまれ、吐血したヴィランは白目を吹いて気絶する。その瞬間、弓のヴィランが矢をつがえて鉄球のヴィランの頭と心臓に矢を放った。躊躇してよ少しは!

 

「おっらぁ!」

 

「緑谷ぁ!」

 

「クソがぁぁぁ!!!」

 

「わっかりやっすーー……」

 

 戦場に響く爆発的ボイスとえーくんが防ごうとした矢が着弾するより前に発生した大規模な氷結で矢が凍り付く。思わずといった感じで出てきた言葉の後に口の端が思いっきり吊り上がっちゃった。それと同時に私は完全に防御行動に特化する。攻めは今飛んできた彼に任せる。

 

 ンダラァァァ!というよく響く声と同時にヘリのテールが爆破されて制御を失い回転しながら落ちていく。私が放ったエネルギーワイヤーが峡谷に食い込んで蜘蛛の巣状に広がりヘリを二機とも受け止めた。それで、と一機の中にいる弓のヴィランに目を向ける。

 

「まだまだぁぁぁぁ!!!」

 

「穿天氷壁!」

 

「まだ!ホーミングしてくる!ロディ!」

 

「うわああぁっ!」

 

「しっかり持ってろやクソデクッ!」

 

 破れかぶれとも言うべき弓矢の連射を轟くんの大氷壁が受け止めるがそれをも迂回してミサイルがごとく迫りくる矢をデクくんの蹴りが薙ぎ払うもバランスを崩してロディくんとスーツケースが投げ出される。悪態をつきながらも爆豪くんがロディくんを確保したもののスーツケースは地面に打ち付けられる。証拠品~~!

 

「くっ……人類の、救済を……!」

 

「その人類の中にあなたは入っていないのかな?」

 

「な、放せ!ガッ……!」

 

 矢を打ち尽くしたヴィランの女はヘリからの投身を試みるも私の対処の方が速かった。ワイヤービットで雁字搦めにして高圧電流を流して対処する。気絶しちゃったけど、軍が集まってきた。持っていく余裕はないか、ごめんなさい。

 

「ケッ、思ったより苦労してねーみてーだな。拍子抜けだ」

 

「うん、切島君と楪さんがすぐに来てくれたから。本当に助かったんだ」

 

「それよりもケース!思いっきり打ち付けちまった」

 

「ああ、これだろ?……壊れてんな」

 

「えっ!?壊れて……ないよ!隠し収納だ!ロディくんナイス!それでこれは……十徳ナイフ?」

 

「ちげーだろメカ女」

 

 岩陰に隠れて警察隊と軍をやり過ごそうとした私たちは轟くんが拾ってきてくれたスーツケースの下部が緩んで取れて隠し収納が露になっていた。道理で私がいくら見ても見えないように対策されてたわけだよ。

 

 それで、出てきたのは十徳ナイフみたいな形をした……パズル?っぽいなんか。ほほーう、そういうのは私にお任せなさい。このハロにかかればどんな複雑なパズルだろうとパパっと何とかしてしんぜよう。だから爆豪くんや、壊すのはお待ちなさい。と私がそれを受取ろうとしたらロディくんがぱっとそれを手に取ってよどみない動作で解き始めた。あれれ?

 

「んだてめぇそれ知ってんのかよ」

 

「父さんが子供の頃にくれたパズルとおんなじだ、ここを、こうすれば……解けた!」

 

「あー、セキュリティキーとチップか。おーいいじけてねーで出番だぞきかーい」

 

「はいはいはーい!お任せくださいな」

 

 そのパズルの中から出てきたのは明らかに天才が作ったと理解できるほどの高度かつ美しい基盤配置をしたセキュリティキーとマイクロチップ。ハロを抱えて膝を抱えていた私はそれを受け取って、指にスロットを作り中身を読み込むのだった。

 

 




久しぶり、そして終わらない。流れはできているのだ、流れは……

映画や小説、チームアップミッションの話あった方がいい?

  • 必用
  • 本編だけにしろ
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