この話は『スターゲイザー 「はじめて」の青空』と同じ世界線のお話です。
そのため、いくつか前提知識は必要となりますが以下のリンクから確認しておいてください。
https://syosetu.org/novel/310188/7.html
それは、とある晴れた日の出来事だった。
サブトレーナーとしてエアグルーヴのトレーナーさんの元でサブトレーナーとしての勉強を終えた後、生徒会室を訪れてそのまま手伝いをしていた時。
俺が机に向かって書類を片付けていたら、ルドルフと一緒に生徒会室をエアグルーヴに追い出されてしまった。
何事かと彼女に尋ねたら「会長もスターも働き過ぎです。休んでください」と一喝。
しかもエアグルーヴのトレーナーさん──通称たわけさん──のトレーナー室に向かったら、彼にも根回し済みで休みを言い渡されてしまった。
そして仕事道具を取られてしまった俺は、ふらふらとトレセン学園のターフの近くをさ迷うことしか出来なくなったというわけだ。
因みにルドルフはションボリルドルフとか言って、エアグルーヴとブライアンのやる気を下げていた。
何故あそこまで完璧な人が、ダジャレとかいう謎な弱点があるのだろうか。
さて、閑話休題。
「……なにするかな」
実際に休めと急に言われても、自分でもやることが無くて困ってしまう。
趣味がなさすぎた俺だったのだが、最近は環境にも恵まれて色んなウマ娘と関わることで趣味探しをすることが多い。
例えばショッピングに行ったり……自分がギャル組に着せ替え人形にされた。
例えば麻雀に誘われて指してみたり……捨て牌からまだ出ていない牌を「全部覚えて」逆算して役を作ってたら、強すぎて出禁になりかけた。
例えば料理をしてみたり……レシピ通りに作ったけど、どうしてもヒシアマゾンさんやヒシアケボノさんを超えることが出来なかった。
とまぁこんな形で、まだ休みの日に出来る趣味は見つかっていなかったりする。
敢えてあげるとすればレースを見ることなのだが、今それをしたら頭が仕事モードになってしまいそうだ。
「出来ることが散歩くらいしかないとか……おばあちゃんになった気分になるな……」
とは言ってもこんな昼間から、部屋に引きこもって昼寝するのも少し勿体ない気がする。
起きているのならば他のことをしたいと考えていると、ごぅ! という音と共に強めの風が肌をなぞった。
その瞬間、自分の胸ポケットに閉まっていたハンカチがふわりと飛んで行ってしまう。
ふわりふわりと風を捕まえて、その白い綺麗な布はそのままターフの方へ。
慌てて追いかけたのだが、ハンカチは俺がキャッチするよりも早く芝の上へと落下してしまう。
そしてそんなたった一枚の布は、風と共にとあるウマ娘を俺に運んできた。
「あの……落としました、よね……?」
特徴的なマリン帽からセミロングの栗毛を覗かせている彼女の名前は──シュヴァルグラン。
この時はまだ「あんなこと」になるとは思っても無かった、とあるウマ娘「たち」との出会いの始まりである。
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「ハンカチ拾ってくれてありがとう。助かったよ」
「いえ……僕も、たまたまいただけなので……」
たまたま出会った軽く自己紹介を終えた後、俺は近くの階段に座って彼女にスポーツドリンクを渡していた。
どうやら次の選抜レースのために自主練習をしていた彼女は、慌てて水分補給することすら忘れていたらしい。
こくこくと渡したペットボトルの中身を勢いよく全て飲み干すと、シュヴァルグランはぷはぁと息を吐いて整えた。
「すみません……わざわざお水まで貰ってしまって……」
「大丈夫。だけど水分持たずに練習するのは、トレーナーとして見過ごせないな」
「うっ……。つい焦っていて……。ごめんなさい……」
「次から気をつけような。焦って体を壊しでもしたら、練習が無駄になっちゃうし」
まだ見習いだがトレーナー目線で少しアドバイスをしてあげると、彼女はしゅんと分かりや落ち込んでしまう。
それを見てちょっと偉そうに言い過ぎたかなとぴくりと尻尾を揺らしていると、シュヴァルグランはおどおどしながら俺にゆっくりと話しかけてきた。
「あの……スターさんって、トレーナーさん……なんですか?」
「まだ、サブトレーナーって立場かな。……あぁ、俺はウマ娘だけどね」
まだ高校生くらいの年齢のウマ娘であるのにも関わらず、トレーナーであることに疑問を感じたのだろうか。
俺がトレーナーである証拠をシュヴァルグランに見せると、彼女は納得したように頷く。
そしてどこかもごもごと唇を動かすと、下から覗き込む様に目線を向けて言葉を選ぶように口を開いた。
「えっと……きょ、今日は何をしてたんです……か?」
「エアグルーヴに仕事のし過ぎだって、生徒会室を追い出されてな。仕事も無くぷらぷらとさまよっていたところ──」
そこで、とあることがぴんと閃いた。
さっき、シュヴァルグランは選抜レースに向けての練習をしていたと言っていた。
つまりまだ彼女にトレーナーは付いておらず、放任状態。
しかも先ほどの様子を見るに、一人になってしまうと周りが見えなくなって無茶をするタイプのような気がする。
だったら、俺は彼女を少しでも手伝ってあげたい。
「シュヴァルグラン……これから何か予定あったりするか?」
「うぇっ……。僕は……もう少し練習しようかな……と。そうじゃないと──」
「……そうじゃないと?」
「いつまでも──偉大なウマ娘になれないから」
そう言ったシュヴァルグランの目はどこか寂し気で──無理して言っているように見えた。
余裕もなく、自分をいつまでも追い詰めてしまうような。そんな目。
俺がいつか、していた自己否定の目。
そんな彼女を見たら、手伝いたいという気持ちは吹っ飛んだ。
絶対に──手を差し伸べる。
「なぁ、俺で良かったら少しキミに力を貸したいんだけど……いいか?」
「えっ!? 僕なんかのために……スターさんの手を煩わせるわけには……」
「一人じゃ気づけないことだってあるだろ? これでもトレーナー志望だからさ。多少なりでも、シュヴァルグランの力にはなれる」
がむしゃらに走っていても。力任せに走っていても。ずっと走っていても。
決して、速くなるわけでは──レースで勝てるようになるわけではない。
それは、まだ経験の浅い俺でも分かっていることだ。
「だから、キミを手伝わせて欲しい。今日、この時間だけでいい」
少しでもここで学んだことを、ウマ娘に恩返ししたいという気持ちもある。
こんな半端ものの俺だが、役に立つことはあるはずだ。
「こんな……僕のために、そんなこといいんですか……?」
「いいに決まっているだろ。それに──」
あと、これだけは言っておきたかった。
目標は確かに大事だ。だけど……誰かになりたいというのはきっと、通過点に過ぎなくて。
「偉大なウマ娘っていうのは──『シュヴァルグラン』が超えていく背中だと、俺は思うぞ」
彼女は、偉大なウマ娘で収まるような器じゃない。そんな気がしたから。
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それから、数週間後。
あの日シュヴァルにアドバイスして終わり……ということにはならず、お互いの時間を見て一緒に練習するくらいの関係性になっていた。
素直に真っすぐ努力する姿を見せられてしまったら、俺もトレーナーとして指導しがいがあるというものだ。まぁ、俺はまだ見習いなのだが。
そしてあっという間に迎えた、シュヴァルの選抜レース当日。
俺は仕事が忙しく、彼女の選抜レースを見に行くことが出来なかった。
だがシュヴァルなら問題なく、選抜レースに望んでいるだろう。きっと今頃トレーナーからのスカウトの列が出来ているに違いない。
そんなことを心の中で思いながら寮に入るための下駄箱を開けると、ひらりと一枚の紙が俺の足元へと滑り落ちた。
「……なんだこれ」
拾って確認してみると、真っ白でシンプルなデザインの閉じ口が三角形の封筒。
中には何か薄いものが入っているようで、軽く振るとかちかちと紙が擦れて当たるような音が聞こえる。
下駄箱に入っているというまるでラブレターみたいなシチュエーションだが、俺に送って来る人に全く心当たりがない。
「間違って入れたのかな……」
はて……ラブレターを拾ってしまった場合、落とし物として届けていいものか。
そんな普通は見かけない物の扱いに困ってしまっていると、端っこに小さく文字が書いてあることに気付いた。
そこにはなんと「スターゲイザー様へ」と綺麗な文字が。
どうやらこれは差出人不明だが、間違いなく俺への手紙らしい。
「……」
一瞬の、硬直。
自分とは程遠いと思っていた、青春ドラマのようなイベントに置かれたことをなんとか自覚。
思考を再起動して、まだあり得る未来の方にベッド。
「そもそも中身が、ラブレターだと決めつけるのは早すぎる。どっちかというと寮の連絡事項の方が──」
──可能性が高い。
そう思いながら破けないように優しくシールをはがして封筒を開けると、中身から綺麗に折りたたまれた一枚の紙が。
ぴらりと谷折りになっていた紙を開くと、横書きで一文だけメッセージが添えられていた。
──明日の、放課後。あなたに気持ちを伝えたいので。体育館の裏で待ってます。
あれ、これ。本当にラブレターでは。
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そして次の日の朝。
手紙が気になってしまって眠れなかった寝ぼけまなこを擦りながら、なんとかいつものスーツに着替えて寮を出る。
軽く朝ご飯を済ませて、トレーナー室へ。
朝から仕事が少しあったため机に向かって黙々と作業をしていると、同じ部屋にいたエアグルーヴから朝の挨拶と一緒に声をかけられた。
「おはよう、スター。今日は珍しくその格好なのだな。何かあったのか?」
「格好……? あっ」
そう言われてようやく気づいた。
スーツだと思って着ていたのは、トレセン学園のスカートの制服。
いくら寝起きだといっても、普段の自分なら絶対にしないミス。というか、普通にスーツとスカートは間違えないだろ……。
「ミスだったのか……。いや、スターがそんなミスするのか……?」
「いや、ちょっと寝不足で考え事してて……」
「悩み事……良かったら私が聞いてあげようか? スターがそんなスズカみたいなことするなんて、普通なら信じられん」
どこかでスズカがウソでしょ……と言ったような声が聞こえたが、一旦それは無視する。
というか、スズカそこまで天然だと思われてるのか?
「まぁ悩み事というか……ちょっと、あってな……」
「なんだ、ほら言ってみろ。そんな恥ずかしがる事だったのか?」
「いや、昨日ラブレター貰って」
「んぐっ」
そう言った瞬間、エアグルーヴは思いっきり噴き出した。
げほっげほっと咳き込んで息を整えると、ぐるぐる目で俺に話しかけてくる。
「はぁ!? いつの間にトレセン学園はそんな爛れて……いや、告白までならセーフなのか……」
「大丈夫か、エアグルーヴ」
エアグルーヴがいつものクールな様子から一変して、焦った姿になってしまう。
彼女に言ったことで思い出さざるを得なかったが、根本的な問題は解決していない。
このラブレター、どうしたものか。
「行くべきだ」
「エアグルーヴ……」
「私には、どんな人が出したのか分からん……。だが、それを出した人は勇気を持ってその手紙を書いたのだと思う。愛を伝えるっていうのは、とても難しいものだからな」
エアグルーヴはまるで自分が経験したことであるかのように、詳しく語ってくれる。
その言葉には、彼女の想いが籠っているのか。すんなりと俺の心に落ちてくれた。
「ほら……そんな寝不足で行くつもりか? たわけには言っておくから、今はそこの仮眠スペースで寝るといい」
「ありがとう、エアグルーヴ……。流石、好きなヒトがいるだけある」
「なっ!? たわけとはそういう関係ではなくてだな。いや私はそういう関係でもいいとは思っているが『まだ』在学中は早いからなんも言わないでおいてあげてるだけでなそもそもたわけは私がいないと──」
毎週エアグルーヴは自分のトレーナーの部屋に上がり込んで、掃除しているという。
ストレス発散なのだろうが、ヒトのこと言えないくらいまぁまぁ爛れているのでは……?
そう思いながら俺は仮眠用のベッドに横になると、ゆっくりと眠気のままに瞳を閉じた。
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それから。俺は手紙に書かれていた放課後の時間までぐっすりと睡眠を取ると、スーツに着替えなおして指定された場所へと向かっていた。
もう頭はスッキリしているし、いつもの俺に戻っている。
「さて……と」
体育館の裏なんて初めて来てみたが、薄っすらと影がかかっていて全体的に仄暗い。
それに加えてちょっとジメっとしており、こんな機会が無ければ来ることはないだろう。
そんな場所で俺は、ラブレターを送ってきたヒトを待っていた。
放課後とかしか書かれていなかったため具体的な時間は分からなかったが、トレセン学園が授業が終わるタイミングで来れば間違いではないだろう。
そうして少し人気が全くない場所で待っていると、トントンと靴で地面を蹴るような音が聞こえてくる。
「あのっ……!」
声がした方向に振り向くと、そこには見慣れたトレードマークになっている白いマリンキャップ。
最近まで指導する仲にまでなっていた彼女の名前は──
「シュヴァル……?」
シュヴァルグラン。偉大なウマ娘になるために、今必死で頑張っているウマ娘。
それが今このタイミングでここに来たということは。
「……この手紙、もしかしてシュヴァルから?」
「は、はいっ……。出すか悩んだんですけど……僕の気持ちを伝えたくて……。それでっ」
もじもじとスカートの袖を握りながら、顔を真っ赤にして彼女は勢いよく口を開く。
その言葉は、思っていた以上にストレートなものだった。
「僕と付き合ってくださいっ……!!!」
「……ふぇ?」
本当に、告白だった。
確かに全く、関わりが無かった子ではない。
最近まで見ていた彼女は、一生懸命で頑張り屋で。本当に、凄いいい子だ。
だからそんなシュヴァルが俺に付き合ってくださいなんて言うなんて。嘘ついてると思えなくて、正直な言葉みたいで。
「いやっ……俺は……」
熱い。暑い。厚い。篤い。自分の顔が、どんどん真っ赤になっているのが分かる。
こんな真正面から告白されたことなんて初めてで、どういう対応をしていいのか分からない。
ただ自分の中の弱い理性が、こんないい子と付き合うなんてダメでしょと訴えかけてくる。
だけどそれを断る理由が出てこない。必死に理由を探しているが、こんないい子を断るなんて逆に失礼なのではないか。
そうしてぐるぐる思考が回って、どうしようもなくなってしまった時。
二人しかいなかった空間に、割り込む様に俺たち以外のウマ娘が割り込んできた。
「その告白、ちょーっと待った!」
「姉としてその告白、見過ごせないわ!」
シュヴァルよりも一回り小さく、マリンキャップからはみ出したツインテールをぴょこぴょこさせたウマ娘。
シュヴァルを少し成長させたような雰囲気に、白い特徴的なひし形マークに長い青毛をたなびかせたウマ娘。
「ヴィブロス!? 姉さんまで!?」
どうやら──まだ一悶着あるらしい。
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「こっちは、僕の姉さんのヴィルシーナ姉さん。で、こっちは……」
「ヴィブロスだよ~。よろしくね、白い妖精さん♡」
そう言って紹介された彼女たちは、どうやらシュヴァルの姉妹らしい。
長女──ヴィルシーナ。次女──シュヴァルグラン。三女──ヴィブロス。
見た目や性格はかなり違う彼女たちだが、言われてみてみると姉妹だと納得出来る雰囲気を醸し出している。
見た目だけではなく、仕草や口調、それに距離感で仲がいいことが伺える光景だった。
さて、彼女たちが何者かどうかは分かったが……。なんでここにいるのだろうか。
「なんで急に僕に構うのさ……。しかも変なタイミングで出てきて……」
「シュヴァちが体育館裏に一人で行ったって友達から聞いて! そしたらいてもたってもいられなくって!」
「そしたらたまたま見ちゃったというわけよ。流石に見過ごせなかったわ……」
三姉妹でわちゃわちゃと話し合っている中、俺は置いてけぼりで端でぽーっとしている。
さっきは頬が真っ赤だった俺も、時間が経ったら少し落ち着いてきた。
オーバーヒートが終わったような感覚に顔をぱたぱたと仰いでいると、二人の姉妹がぐっと顔を近づけてくる。
「むむむ……顔がいい……。シュヴァちには似合ってる白い妖精……」
「普通にとてもいい子なのよね……シュヴァルが付き合っても許せるわ……」
まるで吟味するかのように、じろじろと目線を向けて俺を見てくる姉妹二人。
俺がその圧力で動けないでいると、彼女たちはほろりと涙を流しながら祝福の言葉を漏らした。
「お姉ちゃんが許してあげるわ。シュヴァル……幸せになるのよ……」
「シュヴァちが幸せになるなら私も……うぅ~……」
突然登場して、一人で納得して、シュヴァルの幸せを祈るヒトになってる……
もはやこの混沌と化した空間に、割り込みを入れるようにシュヴァルが叫んだ。
「僕、別に付き合ってって言ったけど……そういうことじゃないから!」
「えっ」
「えっ」
「へっ?」
そのセリフに俺たちの体が固まる。
付き合うって、恋人としてのとかではなく。違う意味で言っていた……?
「じゃあ、あのラブレターは……」
「ラ、ラブレターじゃないです! スターさんにどうやって会えばいいのか分からなくて……メールアドレスとかも知りませんし……」
「じゃあ、この告白はなんだったのかしら?」
「付き合っては……その、これからもトレーニングに付き合って欲しくて……」
「じゃあ、シュヴァちは妖精さんにトレっちになって欲しかったってこと?」
「う、うん。まぁ……。僕も選抜レース、勝てたしね……」
付き合ってはトレーナーとして付き合ってということで、勘違いしてたのは俺たちの方で。
勝手に盛り上がっていただけってことだったのか……。
「なぁんだ……」
「うん、まぁこれなら許せる……いいのかしらこれで……」
なんとかほっと息を吐くと、なんだか張り詰めた心臓がするりと緩くなる気分を感じる。
さてこのラブレターの真相が明らかになっていたのはいいのだが……そうなると別の問題が出てくる。
「シュヴァル……その、本当に悪いんだけど俺にはテイオーが──」
「まぁまぁ、その話も……私たちと一緒に話さない? お姉ちゃんもシュヴァちもいいよね♡」
「いいわよ。いつものファミレスでいいかしら。私もあなたのこと、気になるしね」
そう言うとヴィルシーナさんはシュヴァルの手を。ヴィブロスは俺の手をぎゅっと握る。
そして俺とシュヴァルを挟み込む様に並ぶとルンルンと手を振りながら楽しそうに、俺たちを連行し始めた。
「じゃあ、しゅっぱーつ♡」
「あの……僕の身内がすみません……」
「大丈夫。まぁ、俺も妹いるからさ。姉妹が仲のいいことはいいことだよ」
「そうなんですか……。それなら、良かったです」
思い出すのは、置いてきてしまった妹のこと。
いつか、また会えて。こうやって、仲良く出来れば──
「なら……いつか、僕たちに紹介してください」
「へっ?」
「いやっ、あのっ、急に図々しかった……ですよね」
「……そんなことないぞ。紹介するよ、必ず。いい子なんだ」
これは「いつか」じゃなくて「必ず」にするから。
また会った時に、誇れる姉に。逃げずに。
「何々~? 内緒話〜? 私も混ぜて~♡」
「お姉ちゃんも混ぜて♡ 仲良くしましょ?」
次の瞬間俺とシュヴァルは、左右からヴィブロスさんとヴィルシーナさんにむぎゅっと挟まれる。
ぎゅうぎゅうと歩きにくそうな体勢ながらも、俺たちは楽しそうに一歩を進むのであった。
今回のお話は「スターちゃんがもしテイオーより一年間早くトレセン学園に入っていて、サブトレーナーとして可愛がられる話」の続き「ヴ三姉妹を添えて」という依頼で書き下ろした短編となっております。
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