もし、ビーマを知るために藤丸が映画RRRを観たら…?
らぶらぶはぁと特異点で何故か映画を撮ることになった舞台裏のお話
(RRR本編の微ネタバレ注意)

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RRR-カルデア撮影裏話-

「わわわ、火が!た、助けてくださーい!」

 

とある町、その中を流れる大きな河の中に一人の少女が小舟に乗って取り残されていた。

彼女の周りには火の手が。橋の線路にあるタンク車から落ちてきた石油が、紅蓮の壁を作り出している。

そしてタンク車自体も燃えており、数分も経たない内に彼女へと落ちるだろう。

 

「おいお前ら!どうにか出来ないのか!」

 

河岸で大きな紫髪の褐色の大男が周りに問いかける。

しかし火の手は強く、誰も首を縦に振らない。

 

「子供が危ないんだぞ…」

 

周りへの怒りが湧いてくるが、何も出来ないのは男も同じであった。

彼には使命がある。だからこそ、ここで命を投げ打つわけにはいかなかった。

 

男は天を仰いだ。すると、橋から少女を見下ろす人影があることに気づく。

その人影はこちらを見て手を振っていた。

 

手を振りかえす。

 

人影はジェスチャーで、橋まで上がってこいと示して来た。

それで悟る。

 

人影、いや彼は共に少女を救おうというのだ。

 

男は人混みを掻き分け、愛車のバイクに飛び乗った。

 

 

 

橋の上では、赤い髪をたなびかせる中性的な男が馬に跨り、手には橋の全長の半分はあろうかという長い縄の端を自身に括り付け持っていた。

紫髪の男がそこにバイクでやってくる。

 

言葉を交わす時間は無い。

赤髪がジェスチャーを見せる。紫髪はそれをすぐに理解した。

 

紫髪が足元にあった縄のもう一方の端を赤髪と同じように括り付け、バイクを走らせる。

赤髪も馬を走らせ、手近にあった旗を掴んだ。

二人はすれ違う直前に方向を90°変える。

 

縄で繋がった二人の男は、その勢いのまま橋の両側から飛び出した。

紫は少女のいる方へ、赤はその逆側へ。

 

橋の下の線路から、燃え盛るタンク車が橋桁へ落ちてくる。

一度直立したタンク車は、あろうことかそのまま少女の方へと倒れ出す。

声にならない悲鳴が木霊しようとしたその時、褐色の影が落ちてきた。

紫髪は橋を支点にして振り子のように落ちる最中、少女を抱き抱えたのだ。

 

しかし振り子は戻るもの。支点の真下は燃え盛る炎である。

だからこそ、一人では不可能だったのだ。

 

もう一方の赤い振り子は、旗を河につけながら振られ、近づいていく。

そして紫と赤が最も近くなる瞬間、互いの手のものを放った。

紫髪は少女を。赤髪は旗を。

そのままお互いにそれを受け取り、振り子は戻っていく。

 

紫髪の行く先は炎の中。本来であれば焼け死ぬ定めだが、濡れた旗であれば身体を守れる。

 

赤髪は受け取った少女を、戻る勢いのままに中洲に投げた。勿論、大きな怪我をしないように気を使って。

 

そして二つの振り子は再び近づく。

紫髪と赤髪は、互いの手が届く距離になると、そのまま硬く掴み合った。

 

「ビーマだ!」

 

紫髪が煤で汚れた顔で笑いながら言う。

 

「余はラーマ!」

 

ビーマとラーマは再び火の中に入ることがないようにそのまま縄を解き、河の中に落ちた。

 

 

 

「はいカットぉ!!!!」

 

藤丸の声と共に、場の緊張は解かれた。

 

『らぶらぶはぁとヨハンナ様像』が消え、修正されかかっている特異点で急遽行われている映画の撮影である。

 

「いやービーマとラーマ、良かったよ!ジャンヌちゃんも迫真の演技だった!」

 

演者たちに労いの言葉をかける藤丸。その手にはメガホン状に丸めた台本が握られており、何故か黒ちょび髭をつけている。

 

「映画撮るぞ!って言われた時にゃ色々思ったが、意外といいもんだな」

「うむ。余も初めてだが、役者というのも悪くないな」

 

マシュに手渡されたタオルで顔を拭きながら笑うビーマとラーマ。

 

「はい!お二人とも素晴らしい演技でした!これは映画史に残る名作になるかと!

もちろん、ジャンヌ・リリィさんも素晴らしかったです!」

「ありがとうございます!大人の私はやってない経験も出来て嬉しいです!」

 

自慢げに鼻を鳴らすジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィと、面白そうに笑うナーサリー・ライム。

無論、この特異点で活躍したカルデアのサーヴァントたちである。

 

その一向にいた女教皇ヨハンナは、遠い目をしていた。

 

「なんだ、これ…」

『ほんとにね…』

 

同じく遠い目をしているゴルドルフ所長も通信越しにつぶやいた。

 

 

 

事の発端は、らぶらぶはぁと特異点の修復中に藤丸がカルデアのアーカイブで観た一つの映画であった。

『RRR』。インド映画である。作中時代はインド解放運動時期(ラクシュミー・バーイーなどの活動時期)だが、登場人物にビーマが登場している(勿論神話に語られるビーマではなく、そのビーマをモチーフにした人物である)。

少しでもビーマのことを知ろうとその作品を観た藤丸は、多大な影響を受けた。受けてしまった。

報告を受けたゴルドルフがいつも通り青ざめ、ダヴィンチとシオンが笑うほどに。

 

そして『らぶらぶはぁとヨハンナ様像』の破壊成功後、消えかかる石像守護のサーヴァントたちを押し止めて藤丸がこう言った。

 

「映画を撮ろう!!!」

 

 

 

『…うん、結構良い絵が撮れたんじゃないかな。調査用ドローンだけどカメラとしても使えるね』

『ダヴィンチちゃん特製だからね。画質に妥協はしてないぜ?』

『ああ、マスター。撮影で使用したバイクですがちゃーんとレンタル代と整備費は頂きますからね?勿論領収書はNFFサービスでお願いします♡』

『クサントスのやつだけレイシフトしたが、迷惑かけてないか?』

「カルデアのマスターよ、新しいセットを組むのであれば早く言ってくれ。我とてぽんぽん建てられるものではないぞ」

「この映画、炎はタラスクでどうにかなるけど水はどうしようかしら…祈ってどうにかなればいいけど」

「爆発シーンはまだですかぁ?映画といえばやはり、爆発ですよねぇ!」

 

映画ということで協力しているスーパーバニヤンたちや特異点のサーヴァントと話す藤丸たちを尻目に、ヨハンナは一人黄昏れていた。

単純に蚊帳の外故。この特異点で色々吹っ切れたとはいえ、こう別ベクトルでトンチキが始まっては冷静になってしまう。

 

「ヨハンナさん、少々宜しいでしょうか?」

 

声をかけられ振り返ると、マシュが何やら紙の束を手に立っていた。

 

「うん、何?」

「この後映画全部のシーンを撮るのは当然無理なのでシーンを抜粋して撮るのですが、そこで英国の女性役で出ていただきたいのです。いわゆるヒロイン役です!」

 

ニコニコで提案してくるマシュ。そういえば助監督をやるって張り切ってたような…

 

「私が!?いやヒロインって嬉しいけど…私が!?」

「はい!先輩も適任だって仰ってました!」

 

ふ、ふーん。悪い気はしない。

 

「…その前に、一つ聞いてもいい?」

「何でしょうか?」

「その…なんでマスターは、いきなり映画撮るなんて言い出したの?」

 

カルデアに召喚されてから長くはないが、ヨハンナにはマスターが突拍子もないことをする変人ではないと知っていた。

だからこそ解せない。この行動の意味が。

 

「そうですね…これはあくまで、私の推測ですが…」

 

そう言って一呼吸すると、マシュは話し出した。

 

曰く、形に残したいのではないかと。

勿論ここでの出来事は藤丸やマシュ、同行したサーヴァントたちの記憶には残る。カルデアでも記録している。

しかし今回の特異点の話は…その…私個人の希望としては、あまり広まってほしくないものではある。そしてそれはゴルドルフ所長も配慮をしてくれた。

でもそれだと、この特異点での話をカルデア内で気軽に話すことができなくなる。そこを無理に突っついてくるような人物たちもちらほらいる。

だからこそ、みんなに話せる、みんなが観れる記録を残したいのではないかと。

 

なるほど、当たり前ではあるが、マスターはマスターなりに色々考えているということらしい。

 

「でもだからって、映画を撮ることになる?」

「それはその…たまたま先輩が興味を持たれたのが映画だったのでは、と」

 

そこに自分の興味をプラスした結果の産物が現状、と…。

 

「…わかりました、そういうお話でしたら手を抜く訳には行きませんね。ヒロイン役、やり切って見せましょう!」

 

これもカバンに詰める中身の一つになるのだろう、なんて思いながら快諾する。

 

なおこの後、ナートゥというダンスをやらされ立つのもままならない程に足にダメージが入り、ヨハンナは大後悔することになる。

 

 

 

「疲れたー」

 

藤丸は自室のベッドに飛び込んだ。

らぶらぶはぁと特異点が完全に消滅し数日、フィルムが完成した。

 

『RRR カルデアバージョン』

 

3時間の大作を撮影出来るわけもなく、印象的なシーンを抜粋し、それをサーヴァントたちで配役し直した映画。

脚本などはRRRのままなのでオリジナリティのカケラもない二次創作作品とも言える。

今回の特異点のレポートと共にこれを提出し、あとは観たい人が自由に観るだけのアーカイブになる予定である。

 

「先輩、よろしいでしょうか?」

 

ノック音とマシュの声。

 

「どうぞー」

「失礼します。あの、映画の件なのですが…」

 

嫌な予感がする。

マシュの目が、眼鏡越しの目が、理由は分からないが明らかに熱を帯びている。

 

「感動しました!私が観たどの映画よりも素晴らしい作品でした!なので、これからもどんどん映画を作りましょう!」

「いや、あの、マシュ、映画ってその、結構お金かかるし…」

 

以前のアメリカの映画特異点しかり、映画には莫大な資金がいる。

言い出したのもあり藤丸が全額工面しており、宝物庫周回で貯めた貯金も今回で完全に0になっていた。

ついでに言うと、今は映画への熱もそこまで高くない。

 

「でしたら、まずは収入源の確保ですね…今回の映画を次回のサバフェスで売ってみるのはいかがでしょうか?サバフェスだと映像関係は書籍よりも少ない様ですし、開拓の余地はあるかと!」

 

まずい。後輩の熱量が凄まじい。

あとサバフェスは収益を上げるものではなく溢れるパトスをぶつけるものなので、そういった視点で見るとジャンヌ・オルタあたりが燃やしてきそうである。

 

「私、マシュ・キリエライトが全力で補助しましゅ!頑張りましょう!!」

 

 

後輩からは 逃げられない!




先日RRRを観まして、その後に頭の中で色々浮かんだものを形にしてみました。

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