転生者がほどほどに原作改変しながらOSR重視な世界で足搔く話   作:タマヤ与太郎

23 / 23
この作品始まって初めての小説のみのお話です。
次か次の次っくらいにはまた多少なりスレに戻れるかな……


スレの外の話・尸魂界編1

 

(――――――恐ろしくはない)

 

双極の磔架に捕らえられ、目の前に発動した炎熱の大鳥、燬煌王(双極の矛)が顕現していてもなお、ルキアの心は穏やかだった。

得難い出会いがあった。親友である恋次、義兄である白哉、その息子、桃真、恩師である海燕。

そして生き別れになっていた義兄の妻にして実の姉、緋真。

浮竹を始めとする十三番隊の皆に、よく自宅に訪れる女性死神協会の面々。

 

(私は果報者だ。こんなに多くの人と出会うことができた。暖かな人の心に触れることができた)

 

そして、現世では、黒崎一護を始めとする様々な面々と出会い、交流し、助けられてきた。

そんな彼らを置いてゆく事に、いくらかの悲しみはある。寂しさもある。

だが、定められた処刑、それを阻止するために皆があらゆる手段で走り回ってくれていた。

その事が、ルキアにはただ嬉しかった。

 

(私が死んだら、皆は悲しむのだろう。だが、きっとそれを乗り越えて明日へと歩んでゆけるはずだ。

 この処刑に思うところはある。それをさせんがために皆が奔走していたのも知っている。

 それ程までに私は思われていたのだと、少しばかり自惚れるぐらいは、許されるだろうか)

 

燬煌王の穏やかにも見える瞳が、ルキアを見据える。

それを真っすぐに見返しながら、ルキアは一筋、涙を流し呟いた。

 

「――――――さよなら」

 

しかし、目の前に広がる爆炎がルキアの体を焼くことはなかった。燬煌王とルキアの間に、一人の少年が立っていたからだ。

驚くべきことに斬魄刀百万本に匹敵する威力を持つ燬煌王(双極の矛)は、少年が背負う巨大な刃で受け止められていた。

オレンジ色の髪に死覇装、そしてその手にはかつてとはずいぶん様変わりした、巨大な斬魄刀。

 

「……一護……!」

 

「よう」

 

燬煌王を片手で受け止めながら、何でもないかのように笑う少年、黒崎一護。

途端、様々な感情が押し寄せ、胸が詰まり、最初に口を衝こうとした言葉を無理やり抑え込み、「莫迦者」と一護を罵った。

 

「何故また来たのだ! 許さぬと言ったはずだ!」

 

「え!? いやここはありがとうって言う所だろうが!」

 

「双極を受け止める程に強くなったのは分かった! だが、ここからどうやって抜け出すつもりだ!

 お前が受け止めている矛と同様に、この磔架もまたそれを受け止めるほどの硬さを持つのだぞ!?」

 

だからせめてお前だけでも逃げろ、そう言おうとしたルキアを制し、一護はにやりと笑った。

 

「まあ、やってやれないことはねえだろ。それに……お前に死んでほしくねえって奴は、たくさんいるみたいだぜ?」

 

そう言って一護は燬煌王を指で示すと、その首に縄のようなものが巻き付き、先端の杖が伸びて地面に刺さる。

伸びてきた方の縄を追えば、そこには縄の根本であろう盾のようなものを構えた自分の上司、浮竹。

そしてその後ろに付き従うように志波夫妻が控えていた。

 

「浮竹隊長……海燕殿、都殿……」

 

「あの人ら、お前の上司なんだってな。だいぶ心配してたみたいだぜ?

 (燬煌王)の方はどうにかしてくれるみてーだし、俺はこっち(磔架)をぶっ壊すとするか!」

 

言いながら一護は磔架に飛び移り、斬魄刀の握りから伸びるサラシを掴み、振り回し始める。

そして、一撃。ただの一撃で、斬魄刀百万本分の攻撃力の矛を受けても傷一つない磔架は破壊され、ルキアは解放された。

そして同時に、浮竹、そしてその場に居合わせた京楽により燬煌王もまた破壊され、折れた矛だけが残される。

空中に放り出されたルキアを小脇に抱え、一護は口を開く。

 

「ゴチャゴチャうるせーんだよお前は。二度目だな、今度こそだ。

 ―――助けに来たぜ、ルキア」

 

その言葉にルキアはぎゅっと目をつぶり、目尻に涙を浮かべた。

 

「……礼など……言わぬぞ……莫迦者……」

 

「……ああ」

 

 

 

 

―――同時刻。中央四十六室には、日番谷と乱菊、そして雛森の三人が到着していた。

本来であれはここに桃真もいるはずだったが、刻限と定めた双極の発動まで隊舎に現れず、

足止めを喰らっていると判断して到着を待たずに先行したのだ。

そして、そこで日番谷たちは驚くべきものを見る。

 

「全滅している、だと……?」

 

中央四十六室。尸魂界全土から集められた40人の賢者と6人の裁判官で構成される最高司法機関であり、

本来その決定はたとえ隊長格と言えど異を唱えることは許されない。

その四十六室が皆殺しにされていた。それも、飛び散った血が黒く乾ききるほどの時間が経過した上で。

それはつまり殺されたのは昨日今日の事ではないことを示し、ここ数日の四十六室の命令は全て偽装された命令であることも示す。

 

「阿散井がやられて戦時特例が発令されてからずっと、ここは隔離状態になっていたはずだ。

 誰一人近づくことなどできなかったはず……それに、扉にこじ開けた形跡は一切なかった。

 ならこれは――――――お前の仕業か、藍染!」

 

その声にこたえるように、四十六室の奥、清浄塔居林の方から拍手が聞こえ、一人の男が顔を出す。

優しげな面差しに眼鏡をかけた男、藍染惣右介だ。

 

「ご名答。まあ、大方の所は合っているよ、日番谷隊長。松本君も、雛森君も、よく来てくれた。

 桃真君の差し金かな? あの子もここ数日随分派手に立ち回っていたようだからね」

 

「藍染、隊長――――――」

 

雛森の息が詰まる。目の前の男は敵だ。ルキアの処刑を強行し、自分と日番谷を殺し合わせようとした男だ。

しかし、その眼差しは、その声は。雛森桃が憧れた、五番隊隊長、藍染惣右介そのままであった。

 

「桃真に聞いた。お前が俺と雛森を殺し合わせようとした、恐らくは深い理由もなく、とな。

 ――――――雛森は、お前に憧れてた。その隣に並び立とうと必死にあがいて副隊長になったんだぞ!?」

 

日番谷が吠える。それを一身に受けながらも。藍染はその表情を変えることは無かった。

 

「知っているとも。自分に憧れを抱くものこそ最も御しやすいものだ。

 そのために僕は雛森君を僕の部下にと推したんだ。いい機会だ、君達に一つ、覚えておいて欲しいことがある。

 ――――――憧れは、理解から最も遠い感情だよ。憧れは熱意にもなりうるが、同時に目を曇らせる毒でもある。

 憧れ、理想を投影してしまっては、相手の真の姿など見えはしないんだよ。

 尤も、僕の本当の姿など、誰一人理解できていなかったようだがね。

 ――――――出てきたまえ」

 

藍染の最後の言葉は自分の後ろに向けられ、そこからは雛森よりもなお小さな影が歩み出る。

戦闘を経たのかボロボロになった死覇装に、鍔のない青い鞘の斬魄刀。

俯いて顔は見えないが、その姿を日番谷たちは見間違えることは無い。

朽木ルキア奪還を先導した首謀者でもあり、本来日番谷たちとここに来るはずだった少年、朽木桃真だ。

 

「桃真、くん……?」

 

その声に応えるように、桃真が顔を撫でるように(・・・・・・・・)しながら顔を上げる。

その顔は、真っ白な、恐竜の頭骨のような仮面―――虚の仮面(・・・・)で覆われていた。

 

「ちょっと桃真、それ――――――」

 

「積もりて形成せ―――塵塚」

 

乱菊が声を上げようとした刹那、桃真は解号を唱え斬魄刀を解放する。

それを飛び退ってかわしながら、日番谷の脳裏に疑念がよぎる。

 

(―――なんだこの霊圧は。今の声は、誰の声だ?)

 

直前に会った時の穏やかな霊圧とはまるで違う、強大で荒々しい虚のそれ(・・・・)が混じった霊圧。

そして桃真の口から出たであろうその声は桃真の声によく似ていたが、僅かに甲高い声だった。

まるで、別の何者かが桃真の口を借りて話しているように。

 

「ああ、一つ言って置くと彼は朽木桃真君本人で間違いないよ。

 今身体を動かしているのはまあ、言うなれば虚をベースとした別人格のようなものかな。

 止めるならば早くしたほうが良い。彼の人格が消えたら、恐らくは完全に虚になるだろう。

 ……まあ、最低限殺せば止まるはずさ。それができればの話だが」

 

「藍染ッ!」

 

「僕に注意を向けていていいのかい? そら―――」

 

大きな破砕音と肉を斬り、骨を断つ音。振り向けば、吹き飛ばされ壁にめり込む乱菊。

そして―――袈裟懸けにばっさりと切り裂かれた雛森の姿があった。

 

「―――大事なものすら取りこぼす。今の彼……もしかしたら彼女かも知れないが。

 情けの類は期待しない方が無難だよ、日番谷隊長。

 今、体の主導権は完全に別人格側にある。彼の潜在能力を引き出したうえで、情けという限界を取り払った状態だ。

 彼の才能は、彼に剣を教えていた君も良く知っているだろう?」

 

「雛森――――――ッ!」

 

その声に反応したかのように、雛森をぞんざいに放り捨てながら『桃真』が日番谷の方に向き直った。

仮面の奥、唯一伺い知れる瞳が上弦の月のように歪み、くつくつとした笑いが漏れ聞こえる。

嗤っている。何もできなかった日番谷に対してか、殺戮の悦楽にかは分からない。

だが、常の桃真であればけしてしない嘲りに満ちた笑いを受け、日番谷の中で何かが切れた。

 

「――――――卍解」

 

怒りに満ちたその声と共に日番谷の霊圧が高まり、氷輪丸(斬魄刀)を握る右手を中心に氷が覆い、龍の如きあぎとを形作る。

背から伸びる翼と尾、そして背後に浮かぶ四枚一組の氷の華。これこそが日番谷冬獅郎の卍解―――

 

「大紅蓮氷輪丸。藍染、俺はてめえを……殺す」

 

殺気の籠った日番谷の威圧を受けてもなお藍染は眉一つ動かさず、嗤う。

 

「……あまり強い言葉を使うなよ。―――弱く見えるぞ。桃真君……いや、桃真君ではないのだから何と呼べばよいのかな?

 ともあれ、引き続きお願いするよ。日番谷隊長も君を無視しては僕を斬れないだろうしね」

 

その声に応えるように、『桃真』が2人の間に割って入る。

そして『桃真』は僅かに高い、桃真によく似た声で、一言。

 

「卍解―――塵塚無縁仏」

 

周囲の塵が集まり巨大な墓石を形作って――――弾ける。

騒乱は確実に終わりに向かっている。が、その終わりはまだ、杳として分からない。




そんなわけでシロちゃんが雛森ィしました。おかしい、こんな予定はなかったはずなんだけど……気が付いたら雛森ィしてた。とてもたのしかったです。

■解説

・桃真&塵塚
現在名無し(仮)に体を乗っ取られている。
原作で言うと白哉戦でホワイトお兄ちゃんがチャンイチの体を乗っ取って戦ってる感じ。

・名無し(仮)
現在桃真の肉体の主導権を握っている何者か。
桃真に出来ることは大体できるし、色々な意味でリミッターが外れているので東仙と戦ってた時の卍解桃真よりずっと強い。

・藍染
ちょっと憧れから脱却した雛森ちゃんとお気に入りのシロちゃんで遊んでご満悦。
さっさと双極行けばいいのに余裕ぶっこいて観戦してる。

・シロちゃん
雛森ィした。そして卍解もした。藍染を殺す気だけど確実に名無し(仮)が割り込んでくるので実はかなり分が悪い。

・雛森ちゃん
雛森ィした。早く治療しないとやばい。

・乱菊
壁にめり込んだ。雛森ちゃんよりは軽傷。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。