そんな、おはなし。
あたま空っぽにして読んでくださいな。
人間万事塞翁が馬という言葉がある。中国の塞に住んでいた翁が、自分の飼っていた馬が原因で周囲の状況が二転三転する故事から、どのような事柄からどういった結末につながるかわからないのが人生である、という教訓をといた言葉だったはずだ、たぶん。
それは今の自分の状況を言い表すのに、これ以上なく適した言葉であると思う。なにせ、今その渦中に身を置かれている俺自身が、一番状況を理解できていない。
まあ、益体もないことを長々と語ってもしようが無いのではあるが。
そも、俺は生まれからして特殊だった。いや、本当に特殊だったのかは実際にわかるわけではないのだが……あるいは俺自身の妄想ではないのかという疑問が未だに捨てきれないのだが……とにかく、特殊だったということとしておく。
別に、俺自身に何か超常的な能力があったり、親が日常的に暴力を振るってきたりといったことはなかった。むしろ、生い立ちに限って言えば平凡を絵に描いたような環境だったと言っても過言ではない。会社勤めの父親と、家事の合間に近所のスーパーでレジ打ちのパートをする母親。溺愛されていたということを実感できる程度には不満なく生活できていたが、その程度だ。周囲の子と比べればはるかに手がかからず、家事の手伝いも進んでしていた俺は、彼らからすれば自慢の息子であったのだろうし、俺自身もそうあろうと努力していたから、環境についてはそこまでおかしな点はない。
では、何がおかしいのかといえば、俺自身の頭の中身と言っておこうか。
先にことわっておくと、別に周囲の人間とは隔絶した知能指数を持っていたわけでも、逆に周囲と比べてはるかに知能が劣っていたわけでもない。思考は今も若干は思春期男子の発想から抜け切れていないところはあるものの、際立って異質なものではない……と思っている。
おかしいのは、記憶だ。
俺の知らないはずの記憶が、五歳の当時、俺の頭の中に浮かび上がるように出現した。気付いたときには、その記憶がいつからあったのかなんてわからなくなっていたが、今では唯一となってしまった幼馴染から話を聞くと、どうやら俺の様子が変化したのが五歳のころだったとのことだ。男子よりな早熟な一次性徴期の女子たちよりなお大人びていたというのだから、傍から見ると異分子の扱いだったのだろう。そういえば、中学校に上がるまでは親しく話すような友人は、幼馴染以外にはいなかったような……">そっとしておこう"、目から水分が流れてきた。
とにかくその記憶……便宜上、俺は前世と呼んでいるそれ……では、俺は就職に失敗してアルバイト生活をしている半ニート生活を送るフリーターだった。休日にはたまに思いついたかのようにふらりと、愛車の原付で一時間程度のところにある歴史資料館に出かけてぼんやりしていたが、それ以外は基本的にネットサーフィンとビデオゲームに余暇を費やすダメ人間の見本のような男であった。
収入はアルバイトとはいえある程度……社会人だと言い張れる最低限度の更に底辺くらい……はあったようだが、基本的に女性とプライベートで接することが無く、両親に心配ばかりかけていた。
その男の人生が最後どうなったかは、『前世』の中には無い。まあ、ろくな死に方じゃなかったのだろうというのはうっすらと感じるが。とにかく、それを反面教師として、今生では両親に苦労をかけないようにと心掛けて生きてきたわけだ。
だからといって、周囲の子供たちから逸脱した行動をとっては、俺が、ひいては両親が後ろ指を指されるというのがこの日本という国の常。ゆえに、際立っておかしな行動はしないようにしていた……まあ、裏目に出てたという事実が明らかになったりもしたのだが。
ともかく、そうやって平凡に生きて、平凡に就職して、かわいい嫁さんをもらって平凡に死んでいくように努力していたのだが。
いつからだっただろうか。世の情勢に、何かがおかしいという思いを抱き始めたのは。
前世で生きていたよりも僅かに年代が進んでいるのだから、多少の差異はあってしかるべき、と、最初はそう思っていた。海面上昇で日本が領土を物理的に狭めたのも、まあありえない話ではなかったんだろうと前世の記憶に思いを馳せた。
だが、いつだったか、前世には一切存在しなかった単語を耳にした。
『霧の艦隊』。二○一○年代の初頭には、既にその存在は……オカルトの存在としてだが……認識されていたらしい。目撃情報のあった海域には必ず霧が出ていたがゆえのその名前であったが、当時はその存在の認識そのものが実体の無い霧のようなものであったため、言い得て妙であった。
オカルト扱いはされていたが、目撃情報のあった海域では軍用艦が原因不明の沈没事故を起こしており、軽視できるような問題でもなかった。それでも、その存在が白日の下に晒されたのは……正確には『彼女たち』が表舞台に現れたのは……温暖化による海面上昇が深刻化したころになってからだった。
そうして現れた『彼女たち』は、人類の現存戦力をものともしないほどに、圧倒的な兵力を有していた。
そも、海面上昇によって版図を失い、軍縮に動いていた人類にとっては、『彼女たち』の襲撃はまさに泣きっ面に蜂であった。それでもあらゆる戦力を以って……それこそ大国は『ボタン一つで世界が滅ぶ』とまで揶揄された核兵器まで使って……『彼女たち』を撃退しようとした。それでもなお、『彼女たち』に一矢報いることすらできずに惨敗した。
そうして陸へと押し込められた人類は、緩やかに衰退の一途をたどっていた。衰退しました、なんて言うとゆるいデザインの小人モドキが沸いて出そうだが。
東京はほとんどが水没して首都機能を失ったために遷都が行われ、俺はそうして新たな首都となった長野県長野市に住んでいた。完全に内陸の地方都市であったはずのそこは、海岸線の大幅な侵食と、大規模な再開発によって、港湾部と直通の道路網が敷設された一大都市へと変貌を遂げた。
その中にある『国立海洋技術総合学院』に通っていたのだが、同期のやつらがエリート一直線の士官候補生になっていく中、俺は落ちこぼれであった。
まあ、『前世』があるからといっても、その中にない知識やらはどうしようもない。平和な日本でぬくぬくと生きていた『前世』では、日常の中で軍事について学ぶ機会がそこまで多くなかったのも一因であった。
そんなこんなで意気消沈しつつも、せめて全うな職には就きたいとがんばっていたある日、それは唐突に起こった。
エリートコースに進んだ幼馴染と共に、久しぶりに海岸線のドライブへと赴いたある日のこと。ほとんどうち棄てられたも同然の休憩所にて停車し、おりて海を眺めていたら突如として現れた、小島かと見まごうような巨大な船体。その至るところを彩る特徴的な紋様を見るまでも無く、それが何かなどわかりきったことであった。
『霧の艦隊』、それも大戦艦級と称される個体がそこにあった。
だがその艦は、俺が知る『霧の艦隊』とは異なっているように見えた。そも『霧の艦隊』は、そのほとんどが第二次大戦期の艦艇を元に外観を形作っている。だが、学院にてそれこそ穴が開かんばかりに読みふけった太平洋戦争期の兵器名鑑には、こんな巨艦は載っていなかった。
巨大な船体は後部が段状に重なって極端に広くなっており、その広い甲板を支えるためか後部が副胴二基を合わせて三胴艦体となっている。主砲と思しき、大和型の46cm砲もかくやといった巨砲が三門三基、後部甲板の右舷側にはそれをも越える大きさの、もはや列車砲並の長大な砲が一門横たわり、左舷側には斜めに飛行甲板がついている。後部甲板の側面下部からは連装副砲が、右舷に六基、左舷に一基張り出しているが、その口径はどうも重巡洋艦級の主砲と大差ないように見える。
そして、『霧の艦隊』の特徴である潜行能力。その補助のためか、艦首甲板付近の両舷側面に、まるで戦闘機のカナード翼のような羽がついていた。
一見しただけでもわかる、その異常性。それについていけずに呆然としていた俺たちの前で、その艦は動きをみせた。
飛行甲板のカタパルトに、今まで見たことも無いような戦闘機がセットされていた。カナードつきのデルタ翼機に見えるが、端部が四角張った後退型の特徴的なカナードや、現存するデルタ翼機と比べてもあまりに滑らかで扁平なその機体形状は、俺が見学したどの基地にも……それこそ稀に行くことがあった海外の基地でも……配備されていない。
その機体にも『霧の艦隊』に見られる紋様が見えるというのは、まあ、おそらくはそういうことだろう。
エンジンの唸り声と共に射出されたそれはこちらに向けて飛来した。そして、その機体上面の、ウェポンベイであろう蓋を開け放ち、
そこでいったん記憶が途切れる。だが、強い衝撃で空中に身を投げ出される感覚と、遅れて聞こえてきた風切り音から、何らかの砲撃を受けたのだということだけは推察できる。
そして、今に至るわけだが。
「いやいや、すまんね。人間は脆い生き物だってのを忘れて、ついつい威嚇射撃で吹っ飛ばしちゃったよ」
サーセン、と、なんかヘラヘラ笑いながらこちらに気のない謝罪をする少女は何者だろうか。
肌は病的なまでに白く、髪は白髪といってもいいほどに色の薄い銀髪で、それをやや癖っ毛のあるボブカットに切りそろえている。服装は、セーラーの女児用学生服と思しき衣装の上に、黒一色のパーカーつきジャケットを着ており、首元には既に春先にもかかわらず、長い薄手のマフラーを巻いている。
そして、尻尾なのか何なのか、スカート内からなにやら肌と同じ白い色の太い物が生えており、先端には何かの動物のような、金属製のあごのようなものがついている。
そして、暗く揺らめく金色の双眸。
「あ、連れの子は大丈夫だからね。あのあとちゃんと一緒に収容して、こことは別の部屋に寝てもらってるから」
謎の少女は、これまたあっけらかんとそう言う。まあ、あいつの無事が確認できたのは良しとして、だ。
「それはどうも……で、なにもんだ、おまえ」
目の前の少女は、本当に正体が見えない。そもそもここがどこかもわからない。未知の艦が出てきて戦闘機に襲撃されて、目が覚めたら知らない天井とか、下手な小説でもそうそう無いと思う。
それで、最も事情を知ってそうな目の前の少女に聞いてるわけだが、なにやらニヤニヤしてるんだが。
「……ふむ、私が何者か、か」
そう言って少女は、なにやら若干の不快感を覚える笑みをたたえたまま、俺のほうを向く。
「あるときは、太平洋の西へ東へ、90ノットで全力疾走の大戦艦」
おい、おい。90ノットって何だそりゃ。ってか、大戦艦?
「あるときは、国立海洋技術総合学院附属の初等部に通う女学生A子」
まて、こんな正体不明少女が初等部にいたのかよ。
「しかして、その実態は!」
そんな勢いよく言った少女の言葉と共に、ガコン、という音がして、四方の壁がせり上がる。
そこにあったのは、学院の実習で見たような軍艦の艦橋。それも戦艦クラスの大型のものを更に大きくしたような部屋だった。楕円を半分にしたように広がるこの部屋の後部、周りを見渡せる位置には一つの席。アレはおそらく艦長席だろう。
その周囲には、俺がいる最上段から同心円を描くように、4段の制御盤つきの座席が広がっている。
そして、全天を覆う、黒いガラス質に見える壁。それがいっせいに光を発し……次の瞬間には、抜けるように蒼い空と、水平線まで絶え間なく続く海が写されていた。
「私は、改リヴァイアサン級重雷装航空巡洋戦艦一番艦……またの名を、要塞戦艦レヴィアタン」
唄うように、祝詞のように。自らの名を俺に告げた彼女は、相変わらずの人を馬鹿にしたような笑みを浮かべながら、俺に向かって陸軍式の敬礼をした。
俺はこのとき、何かが動き出すような音を聞いた気がした。
たとえるならば、巨大な機械仕掛けの時計塔で、歯車のかみ合わせが一つズレたような。
ともかくそれが、俺とこいつの長い腐れ縁の始まりだったのだと、今ならはっきりと断言できる。
いちおう補足。
このレヴィアたんは、いわずと知れた超弩級重雷装航空巡洋戦艦こと、戦艦レ級が元ネタです。
外観は鋼鉄の咆哮より超巨大航空戦艦リヴァイアサンより。
未プレイなのとグーグル画像検索で探したので何作目の外観なのかはわかりませんが、自分の中のレ級ちゃんのイメージと完全に一致したので採用しました。
そのときに見つけた画像では、右舷側後部甲板になにやら筒状の何かが載っていたので、勝手に主砲以外の『奥の手』と解釈しました。きっとエスコンインフィニティのストーンヘンジのごとく、超威力の砲弾をぶっぱなしてくれるのでしょう。
文章中で描写されている戦闘機は、お気づきの方も多いと思いますが、エスコン6・AH・インフィニティよりCFA-44です。
非常にシンプルながら特異な形状のカナード付きデルタ翼形状、上面二基+下面一基の特徴的なウェポンベイ、EMLによるドッグファイトおよび狙撃適性、アニ機限定の超性能ECM+UAV管制機能、三次元推力変更ノズルによる機動性、申し訳程度の安定性とどんがラプターなみのハイG失速と、色々面白い機体ですね。
しかも艦載機。これは載せざるを得ない。
ちなみに、ウチのレ級ちゃんの装備は以下のとおり。
18inch三連装砲×3
6.1inch三連装副砲×9
甲標的×たくさん
CFA-44×たくさん
その他、『霧の艦隊』標準装備のVLSサイロと魚雷発射孔が多数。
艦これ的には標準装備のVLSと魚雷は、装備なしのLv.10まるゆが魚雷撃てるのと同じように、実際には装備してるけど連撃やカットインの処理には関係してこない装備あつかい。
なのでこのレ級は原作のエリレちゃんと同様に、先制航空戦を行い、先制雷撃を行い、砲撃戦が二巡し、雷撃戦に参加し、夜戦で連撃を行う超ドS仕様。
CFA-44は対潜能力や弾着観測能力が無い代わりに、烈風並みの対空と彗星並みの爆装に加え、天山と同等の雷装と零式水偵と同程度の索敵能力を持ったクソ仕様艦載機という想定です。
これがおよそ90機。制空権を取るのに一抗戦が全力で当たるレベルですね。
一機でも取り逃せば最大12点同時捕捉のマルチロック炸裂マイクロミサイルが降り注ぐ上に、戦艦相手ならミサイルかレールガンで狙撃される可能性まであります。
でも潜水艦は浮上してないと攻撃できないし、安定性が劣悪だから弾着観測とかもってのほかだよ!やったねたえちゃん!
なお、機動性はレシプロなみのもよう。