【水星の魔女×ACfA】迷い猫は揺り籠を護り、魔女と出会う   作:Artificial Line

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主人公機のアセン
外装パーツはAALIYAHで統一。
内装は
FCS:FS-JUDITH
MB:S04-VIRTUE
BB:LB-LAHIRE
SB:SB128-SCHEDAR
OB:I-RIGEL/AO
GN:GN-LAHIRE
RAW:04-MARVE
LAW:07-MOONLIGHT
SU:051ANAM
RBW:KAMAL
LBW:SALINE05

作中のオリジナル機体はクレスト強襲型まんま。


Prologue.迷い猫

閃光が眼前に迫る。月を思わせるその妖しい紫の光、脳が特大の警鐘を鳴らしていた。

バックブースターQB、身体を押しつぶされる様な強烈なG。だが、そんなものもう慣れた。肺の空気が一気に押し出され、だがそれでも止まるわけにはいかない。

連続QB、後ろ、右、そして前。紫の刃を振り切った白い機体と瞬時にすれ違い、直後にQT。僅かコンマ5秒の間に敵機の背後へと回り込む。そして機体の左腕を振りかぶった。

全身03-AALIYAHフレームの愛機、ストレイドの左手に装備される兵装は、07-MOONLIGHT。今しがた交差した敵機、スプリットムーンが装備しているものと同じ、最強のレーザーブレード。2機のアリーヤフレームの機体。白と黒という対照的な塗装のそれらが音速を超え、再び交差する。

AMSを介してブレードがスプリットムーンのPAを切り裂く感覚が伝わる。高出力のブレードはPAの保護を貫通し、スプリットムーンの装甲までを溶解させた。

 

<<……無念>>

 

無線を通じて低い男の声が聞こえる。同時、眼前のスプリットムーンのコアとレッグの接合部が溶解し、2つに分かたれた。

だが終わりではない。レーダーをすぐさまに確認し、まだ2つの反応があることに安心を覚える。即座にQTを行い、反応の方向へ機体を向かせる。そして連続QB。速度0から一気に音速を超え凄まじい機動戦を行っている2機の元へと到達する。

 

<<……やるな、そうでなくては>>

 

無線から先程よりも低い男の声が聞こえる。マクシミリアン・テルミドール。人類の救世主であり、いま眼前にいる敵。

 

<<機動を牽制する。肉薄しろ!>>

 

女の怒声にも似た声が無線から響いた。ウィン・D・ファンション。10を救うための、1の犠牲を拒む哀れで愚鈍な女。だが、嫌いではない。なんせ自分も同類だから。

ウィン・Dの愛機、レイテルパラッシュの背部ハイレーザーがアクティブになり、空気をプラズマ化させながら蒼い閃光が放たれた。

テルミドールの駆るアンサングはそれを垂直に飛翔し回避する。だがお陰で下がガラ空きだ。右手武装の04-MARVEアサルトライフルを構え突撃を敢行する。04-MARVEのトリガーを引き絞り、暴力的な初速で弾丸が発射される。命中弾8、だがPAに阻まれ致命傷にはならず。

 

<<敵機、ミサイル来るぞ>>

 

耳に馴染じんだ声が無線から聞こえる。師であり母、そして姉であり相棒でもあるオペレーター、セレン・ヘイズの声。

その警告通りアンサングは肉薄するこちらを見据え、QBを吹かしながら背部武装のPMミサイルで迎撃を行う素振りを見せる。だが遅い。ミサイルが発射されるよりも前に肩部装備である051ANAMフレアを射出、04-MARVEのトリガーを引いたまま連続前QBで距離を詰める。アンサングは後ろにQBを行い距離を取ろうとするが、こちらのMBはS04-VIRTUEである。QB特化型であるこのMBの推力は生半可では無く、故に一瞬にして距離という盾を潰す。連続で2段QB、先程までのGよりもよりいっそうの重みが全身を軋ませ、呼吸が乱れる。だが、懐に入った。左腕武装の07-MOONLIGHTを振りかぶる。04-MARVEにより減衰したPAを紫の閃光が食い破る。だが致命傷には至らなかった。アンサングの左腕が吹き飛ぶが、それだけだ。このテルミドールという男はそんなことで挫ける存在ではない。

 

レーダー、自機左後方に反応。レイテルパラッシュからの援護射撃。蒼い無数のエネルギー弾がアンサングへと向かう。アンサングはそれをQBを用い回避するが数発の命中、PAが完全に減衰した状態ではかなりのダメージのはずだ。証拠にアンサングの脚部装甲がいくらか抉れている。

仕留める。右背部武装アクティブ、SALINE05から分裂ミサイルを発射し回避機動によって行動を制限。右方向へのQBを試みたアンサングに対して追撃。左背部武装アクティブ、KAMALスラッグガンから散弾を回避予測位置へ発射。テルミドールもわかっていただろうがその回避は致命的なミスだった。散弾が直撃し、PAの再展開が間に合っていないアンサングの装甲をぐちゃぐちゃに破壊する。そしてその衝撃により一瞬ではあるが、機体が停止した。07-MOONLIGHTを振り抜く。極大の紫の刀身が形成され、アンサングのコアへと吸い込まれていった。

 

<<覚えていろ、お前たちの惰弱な発想が、人類を壊死させるのだと>>

 

AMSを介しコアを切り裂く感覚が伝わる。PAを展開していないネクストACが耐えられるものではなく、そのコアは赤熱し、消滅した。

 

<<人類など、何処にもいないさ。オッツダルヴァ>>

 

崩れ去るアンサングへ向け、ウィンDがそう呟いた。

 

<<貴方には感謝している。ありがとう>>

 

<<そして人は揺り籠で飛び続けるか。……お前の選択だ、私はそれでいいさ>>

 

シートに頭を預ける。そしてAMS接続を切ろうとし、ゆっくりと目を閉じた。だがその瞬間、脳裏に描写されるAMS越しの映像に文字が浮かびだした。

 

"I saw your choice."

 

何だこれは?そう思考すると共に続けて文章が追加される。

 

"Hence, I expect you to."

 

"Break the blessing and the curse."

 

"Good Luck, and welcome LINKS."

 

意識に絡みつくように微睡みが誘ってくる。さして抗う気も沸かず、それに身を任した。

 

 

#

<<アベリア1よりHQ。レーダーに不明物体が出現。方位280>>

 

ノーマルスーツのヘルメットに内蔵されたインカムが鼓膜を揺らす。隊長機であるアベリア1、ウイリアム・スノーからの通信だ。ウィルは私の世話役でもあり、指導係でもある私の家、アルムクヴィスト家に仕えるベテランパイロットである。レーダーに視線を移せば確かに方位280、距離5000に不明物体が観測できる。つい5秒ほど前には無かった反応だ。ジャミング?いやそれにしては唐突がすぎる。それまでレーダーも通信も不調は無かった。そもそもここはアルムクヴィスト社が保有する地球、旧ヨーロッパの戦術試験場。アーシアンから徴収した土地であるが故に不満を抱く者は多いとはいえ、MSを保有しているこの試験基地に襲撃を仕掛けるほどの勢力を持つ組織など周辺には存在しない。テロか、はたまた他企業からの刺客か。可能性はあるにせよ、ひとまずは状況確認が必要だろう。そう思考していれば再び通信が入る。

 

<<こちらHQ。確認した。目視にて対象の確認を要求する>>

 

<<アベリア1、了解。ただ詳細不明につきアベリア3は下げさせるべきと判断する>>

 

ウィルのその打診に眉を潜める。彼が私を大事に思ってくれていることは理解するが、私も春からアスティカシア高等専門学校のMSパイロット科に入学する身である。既に500時間の搭乗経験もあり、いつまでも箱入り扱いされて気持ちのいい訳がなかった。故にウィルの言葉に対して反論をしようとした時、無線に軽薄そうな男の声が流れる。

 

<<いやウィル、それは不要だ。オイフェミアだっていずれテストパイロットになってもらうんだ。この程度経験してもらわなくちゃ困る>>

 

<<ヴェスパー様……しかしオイフェミア様に何かあれば……>>

 

<<そうしないようにするのが君の仕事、そしてそんな君達をいずれ統括するのがオイフェミアの仕事だ。後詰は準備しておく>>

 

ウィルは渋々といった様子で承諾の意を返す。声の主はヴェスパー・アルムクヴィスト。私の実兄であり、ベネリットグループ第4位、アルムクヴィスト社のCEOである。

言い方には多少の不満を覚えるが、まあ信用できる兄の事だ。皮肉屋なのが面倒くさいが、優秀な人物ではある。

 

<<アベリア小隊、不明物体の確認を行う。アベリア2はアベリア3の直掩に付け。移動開始>>

 

「了解」

 

過保護気味のウィルに不満げな表情を浮かべつつ、指示通り機体を動かす。ウィルの駆る機体の後方に位置付けつつ、ブースターを点火。砂煙を上げ機体が前進する。

私達は特殊実験評価部隊というアルムクヴィスト社のMSテスト部隊である。コールサインはアベリア。そんな私達が搭乗している機体はCHD-14クレストⅡ、アルムクヴィスト社が新規開発中の新型MSである。直線的なデザインであり、バイザーを装着したようなモノアイ搭載の頭部は印象的だろう。またこの機体最大の特徴として背部ブースター横に2つのハンガーラックが存在している点である。これにより作戦や状況によって兵装を自由に選択可能な汎用性がこの機体最大の特徴である。大型ミサイルからレーダーまで様々な兵装が搭載可能であり、ベネリットグループ規格の兵装なら大体が扱える。現在は重力下での試験運用の為地球で実験を行っている所であった。

私のクレストⅡの装備は右腕部にビームライフル、左腕部にシールド一体型のビームサーベル発振器、背部にスナイパービームキャノンとレーダーを装備している中距離支援型。条約により実弾兵器の使用が禁止されているため、ビーム兵器しか搭載していないが火力、交戦距離共に申し分ない仕様である。

 

不明物体との距離が縮まる。望遠カメラによる映像がコックピットディスプレイに表示された。

 

「……なに、この機体……」

 

言葉が漏れた。画面に写っていたのは黒い機体。鋭角的なデザインで、どことなく戦闘機を連想させる。わかる範囲内での武装はライフルとミサイル、スラッグガンだろうか。私達の乗るクレストⅡと同じ様に背部に武装を積んでいる。また左腕部には何かのパーツを装備しているが、あれはビームサーベルの発振器だろうか。どことなく見たものに畏怖を感じさせるような機体であった。だがそれよりも違和感を感じるのは、私達アルムクヴィストのMSと似た思想を感じる事であった。パーツの組み換えによる圧倒的な汎用性の獲得、だがあの機体は私達のMSよりもより洗練されたような……。

 

距離1000まで迫った時、通信が鼓膜を揺らす。

 

<<現在位置で停止。様子を伺う。オイフェミア様、スナイパービームキャノンの照準を合わせておいてください>>

 

「アベリア3了解」

 

了承の意を返しビームスナイパーキャノンをアクティブにする。ロックオンを完了し、いつでも撃てるようにセーフティを解除する。だが先程から悪寒が止まらない。背中に嫌な汗がびっしりと張り付いている。あの機体を前にしてから、脳が警鐘を最大で鳴らし続けている。

 

直後、心拍数が跳ね上がった。

その黒い機体各所のライト一気に点灯し、頭部に無数の複眼が現れたのだ。赤い無数の複眼がひとまとまりになり、周囲を見渡すように動く。そしてその複眼と目があった。複眼の赤い光は目を細める様に私達へと向けられている。逃げろ、逃げろ、逃げろ。体中の細胞がそう叫んでいた。

 

その黒い機体のブースターに火が灯る。そして時速600km以上という地上戦では異常な速度でこちらに近づいてきた。

 

<<600km超え!?空間戦闘じゃないんだぞ!?>>

 

ウィルが困惑したように声をあげる。私だけがそう認識していたのであれば計器の故障という可能性もあったが、それは潰えた。

 

<<こちらHQ、目標を停止させ基地に連行せよ。指示に従わない場合は発砲を許可する>>

 

やめろ、やめておけ。恐らく、あの機体には手を出しては行けない。思考が超スピードで回る。だが恐慌状態に陥っているのか、口が回らない。言葉を発せない。思考は嫌なほどクリアなのに、口が震えて言葉にならない。

 

<<了解。所属不明機、こちらベネリットグループアルムクヴィスト社。貴機はアルムクヴィスト社の私有地を侵犯している。所属と行動目的を明らかにした後、こちらの誘導に従え。了解ならハンズアップせよ。繰り返す、所属不明機、こちらベネリットグループアルムクヴィスト社。貴機はアルムクヴィスト社の私有地を侵犯している。所属と行動目的を明らかにした後、こちらの誘導に従え。了解ならハンズアップせよ。>>

 

ウィルがオープンチャンネルでそう呼びかける。だが黒い機体は動きを止めることはない。もはやその距離は200まで迫っている。

 

<<威嚇射撃を行う、アベリア2撃て>>

 

<<了解>>

 

ウィルの指示によりアベリア2が右腕部兵装のビームライフルを黒い機体目掛け発砲する。意図的に反らした射撃でありそもそもが当たらない弾だ。

 

「は……?」

 

視界から黒い機体が消えた。文字通り。何が起きたか数瞬理解が出来なかった。わかったのは黒い機体が消える寸前、大出力のブースター炎が見えたこと。レーダーを確認する。先程までいた位置より黒い機体が大きく右にズレていた。カメラを向け、視界に入れる。だが再び黒い機体が視界から消える。

同じ様にレーダーで大きくズレた位置にいる黒い機体。嫌でも理解する。この黒い機体は瞬時に音速を超える超機動が可能なのだ。

 

<<なんだコイツは!?アベリア後退しつつ射撃開始!HQ増援を要請する!>>

 

<<了解した。駐屯中の2個小隊が既に出撃している>>

 

恐怖とウィルの言葉に突き動かされ、機体を後退させつつビームを乱射する。他の2機も同様だ。だが、黒い機体はその全てを悉くあの超機動で回避していく。

捉えるのすら不可能な機動。なんなのだ、コイツは。

 

黒い機体の右手に持つライフルがこちらに向く。死、死、死。その言葉が脳裏を埋め尽くす。搭乗時間は確かに多い。訓練もそれなり以上には行ってきた。だが、命の保証がない実戦とはここまで恐ろしいものなのだろうか。

 

黒い機体のライフルが火を吹く。連続して射出されたそれは実弾であった。アベリア2が瞬く間に被弾していく。両足がもがれ、両腕部がちぎれる。一瞬にして行動不能となったアベリア2はその場に崩れ落ちた。

 

アベリア1、ウィルが私の退路をカバーするように前へと出る。だが、黒い機体の背部兵装が稼働し、ミサイルが放たれた。それは飛翔後分裂し無数の小型ミサイルとなって地面へと降り注ぐ。アベリア1の周囲に着弾したミサイルは爆裂し、移動を阻害した。その直後黒い機体のライフルが連続射されウィルの機体の脚部を破壊する。

 

そして無数の複眼がこちらを捉える。涙を流しながら絶叫とともに操縦桿を必死に操作する。なるべく被弾しないようなランダム機動。だがその回避行動も虚しく、黒い機体のライフルが放たれた。機体に衝撃が走り、体中に鈍い痛みを感じる。右腕に被弾した。死ぬわけにはいかない。死にたくない。死にたくない。

コンソールを操作しスナイパービームキャノンをアクティブし直後に発射。通常のMS戦闘であればほぼ不可避の一撃。だが黒い機体はまたしてもあの超機動で回避を行う。その時僅かではあるが、黒い機体の周囲に球状の膜のようなものが見えた。ビームの残滓がそれによって防がれたのだ。もはやズルでは無いか。超高機動に加えバリアもあるなんて。

折れかけた心を一瞬で鼓舞する。嫌だ、死にたくない。左腕部のシールド一体型ビームサーベルをアクティブにし、刀身を形成。直後メインブースターを点火し、黒い機体目掛けて飛び込む。当てた。そう思った。

だが、黒い機体はその一撃を後方への超機動で当たり前の様に回避した。そして直後黒い機体の左腕が紫色の閃光を纏う。それはこちらのビームサーベルを遥かに超える光量、リーチ、そして厚さを伴っていた。それが私目掛けて振りかぶられる。ああ、これは死んだ。嫌にリアルにそう感じた。

 

機体を衝撃が襲う。コックピットシートが激しく揺れ、コンソールにヘルメットのバイザーをぶつけた。バイザーが砕け、額が破片で切れた。直後更に大きな揺れが機体を襲う。これから来るさらなる痛みに備え、きつく目をつむった。

 

……だがいつまでたっても追加の痛みは来ない。ただ切れた額とムチウチになった身体が鈍く痛むだけであった。

目を開き、死にかけているモニターを見る。そこには背を向け当たり前のように立っている黒い機体の姿があった。そしてブースターに火を付け高速で移動していく。モニターと同じく死にかけのレーダーに視線を移せば増援として準備されていたであろう友軍の光点が6つ。だが、10秒ほどでその全てが消えていった。

私達アベリア隊を含め、MS9機の殲滅にかかった時間はおよそ30秒。異次元の速さである。

 

私はコックピットのハッチを開け、痛む頭を抑えながら外へと出る。そして見上げる先には黒い機体が悠々と浮遊していた。赤い複眼がこちらを向く。その瞬間、全身に鳥肌がたった。本能的な恐怖。そして黒い機体はゆっくりと私の前に着地する。砂埃が機体脚部につくのを見る限りあのバリアの展開は切っているようだった。

逃げ出したかった。だが、恐怖で足が竦み一歩も動けない。

 

<<あー、あー、この回線ならどうだ?そこのノーマルの搭乗者、言葉がわかるか?状況の確認を行いたい。理解できれば顔の横に手を上げろ>>

 

インカムから聞こえてきたのは凛とした女性の声。それが目の前の黒い機体から発せられているのだと気づくまでに少し時間がかかった。ゆっくりと右手を顔の横に掲げる。

 

<<聞こえているか。あー、何から聞こうか。とりあえず……ここは何処だ?>>

 

なんだそれ。既に疲労困憊の脳が悲鳴を上げている。

 

「えーっと、地球です……」

 

<<そんな事はわかっている>>

 

細く答えた私を赤い複眼が見つめる。とりあえず甘いチョコレートが食べたかった。

 




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