てんのみち、すべてをつかさどる   作:ヌオー来訪者

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ドン3話 まつりのはじまり

 ガタックのライダーフォームは当然ソノシのスピードに対応出来るように出来ていた。

 鈍重な装甲を脱ぎ捨て軽量化されたそれは、両手に握られた双剣ガタックカリバーを振るい、ソノシの放つレッドシャドーのワイヤーを駆使した斬撃を掻い潜りながら迫る。

 

「動きが変わった!?」

 

「はぁっ!」

 

 眼前まで距離を詰めると、×の字にガタックカリバーをソノシに叩き込む。

 反撃でソノシがワイヤーを引きクナイの形に戻したレッドシャドーで反撃に出るが、ガタックの方が出が早く先んじて手数で圧し潰していく。

 

「速い!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 エンジンがかかって行くように斬撃のスピードを上げていき、それに合わせてガタックカリバーも光を帯びていく。

 

「こいつ……闘い慣れているッ!?」

 

 圧され驚愕しつつもそれでも尚もソノシはクロックアップを頑なに使おうとしない。いや、おそらく使えないのだろう。

 そう推測したガタックはこちらから先に打って出るべく、一度蹴り剥がしてから、ベルトのサイドスイッチに手を伸ばす。

 

 が、それを叩こうとした矢先横から強烈な衝撃が走った。

 

「ッ!?」

 

 ガタックが大きくよろめいてから、ふらつく足を押しとどめようとしたら壁のようなものに突き当たる。

 

 違う、これは壁じゃない。

 灰色の化け物だ! 

 気付いた時にはガタックの頭のツノを掴まれていた。抵抗しようにも圧倒的なパワーがそれを許しはしない。

 

「ふん、ツノ付きか。ヒトツ鬼を倒したっていう昆虫ロボ*1そっくりだが大した事ないな」

 

 ヒトツ鬼*2、昆虫ロボ。

 また知らない単語が飛んできたことで、困惑するガタックをよそに、その灰色の化け物はニタリと笑ったかのように加賀美には見えた。

 

「ヒトツ鬼? 昆虫ロボ? なんの……話をしている」

 

「フン!」

 

「ぐあっ!?」

 

 灰色の化け物は携えたメイス、六棘棒・サンゼンコンで動きを封じたガタックに一撃を入れる。

 その強烈な一撃はガタックの身体が宙を舞う。

 

 そのパワーはかつて戦ったワームと比較しても上位レベルのものだった。

 マスクドフォームのアーマーすら壊れかねない一発を貰い、地面に叩きつけられたガタックはもがくように立ちあがろうとする。

 

 そんなガタックを前にソノシと、先程の灰色の化け物。

 そして最初にクロックアップの邪魔をしてきた紫色の異形の者が並び立つ。

 

 

 仲間がいたのか。

 驚愕するガタックを他所にソノシが嘲笑する。

 

「オホホホホホホホ……流石に3人には勝てないようね」

 

 1対1ならまだしも、3体となれば話は別になってくる。

 加えて先程の一撃がモロに入ったのもあり言うことを聞かない体でガタックは立ち上がることすらままならない。

 

 勝利を確信したソノシたちが見栄を切りそれぞれ名乗りを再び始める。

 その行為はただただ加賀美の神経を逆撫でするのだ。

 

「では、改めて。ソノシ!」

 

 こちらは知っての通り、加賀美に消毒液をぶち撒けた赤い脳人だ。

 

「ソノゴ!」

 

 次は紫色の脳人。

 携えた剣、五速剣・キッドレイピアの先端を倒れたガタックに向ける。

 

「ソノロク!」

 

 次は灰色の脳人。

 ガタックに先程痛恨の一撃を叩き込んだ者だ。

 

「我ら、脳人監視隊ッ!」

 

 まるでミュージカルか特撮ヒーローの如く。

 予め打ち合わせでもしたかのような、決めポーズと共に見せつける名乗りはガタックを、加賀美を呆気にとらせるには充分すぎるものだった。

 

「こ、こいつら。わざわざ名乗るのか?」

 

 かつて出会ってきた奇人変人(マスクドライダー資格者)たちと同類のような存在が3人現れたことに対する驚愕も当然のこと、あまりの情報量の多さに加賀美のキャパシティは既にパンク寸前だった。

 

「まさかあの一撃でへばっちまったかぁ?」

 

 ソノロクが倒れたガタックにここぞとばかりにしゃがみ込んで、頭を掴み地面に再び頭を叩きつける。

 なんなんだ、この馬鹿力。

 その疑問を考える余裕すら、その強烈な一撃の前では消し飛んでしまう。

 

 とはいえこのままやられるわけにはいかない。

 即座に携えたガタックカリバーでソノロクの胸部に一閃を叩き込む。

 

「何っ!?」

 

 まさか反撃されるとは想定していなかったのか、驚きのあまりソノロクの手に力が抜ける。その瞬間、ガタックは這い上がるようにソノロクの側から離れてガタックカリバーを構えた。

 そんなガッツに思うことがあったのか、ソノシが感嘆の声を上げる。

 

「中々頑張るね」

 

「何も分からないままやられてたまるか……!」

 

 加賀美は何も知らない。

 あの眩暈の原因も、目の前にいる3人組も、アノーニと鳴く化け物が何なのかも。

 ここでやられてしまえば知る機会すらも永久に失われる。

 勝負所だ。覚悟したガタックが腹を据えて3人に対峙したその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハーッハッハッハッハッハッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「笑い、声?」

 

 あまりにも。

 そう、あまりにも。

 この殺風景な渋谷の夜の屋上に似つかわしくない、豪快な笑い声が木霊する。

 

「てん、天女ォ!?」

 

 笑い声がした方を見ると、そこには白い羽衣を纏う天女がヴェールを振るい、時には紙吹雪をばら撒きながら踊っていた。

 最早この時点でもおかしい。今この現代社会で天女が屋上で踊っている。その事実そのものがあまりにも現実離れしているのに追い打ちでもかけるかの如く、赤いお神輿を担ぐ筋骨隆々の半裸の男たちの姿がそこにあった。

 

「お神輿ィ!?」

 

 赤いお神輿の上には何故か真紅のバイク。

 常軌を逸した光景が加賀美の頭がこの現実を受け入れることを必死に拒否をしていた。

 

「バイクだと……なんだ、これは」

 

 なんだこれは。

 当然そのバイクの主は上で跨り、扇子をパタパタと仰いでいる。

 それこそがあの笑い声の主だ。

 

 

「ドンモモタロウ!?」

 

「……必要な時に来ないくせに、こう言うイヤーなタイミングに現れて!」

 

 呆れたような、うんざりしたかのような。

 ソノロクがその名を呼び、ソノシが因縁を吐き出す。その笑い声の主こと、ドンモモタロウ。

 それはマスクドライダーに言えた話ではないが珍妙奇怪な出立ちだった。

 

 マスクドライダー同様全身を覆うアーマー、その名の通り童話の桃太郎を思わせるフォルム。

 陣羽織のような模様のボディ、グラサンと丁髷のようなものがついた赤い仮面は、額に桃を形をしたクレストがついていた。

 

 

「やあやあやあ、祭りだ祭りだァ! 袖振り合うも他生の縁、躓く石も縁の端くれ、共に踊れば繋がる縁ッ! この世は楽園!! 悩みなんざ吹っ飛ばせェ! 笑え笑え! ハーッハッハッハッハッ!!」

 

「なんだこいつ!?」

 

 ビルの屋上にまたまた様子のおかしい奴が、一人。最早限界を超えた加賀美の声は完全に裏返り切っていた。

 一体どうやってあのお神輿とバイクをこんな屋上まで持ってきたのか。あの狭っ苦しい階段からの塔屋のドアを通っていけるような大きさでは決してない。

 

 ドンモモタロウは真紅のバイク──エンヤライドンのアクセルを踏み、そのままソノシ、ソノゴ、ソノロクを追い回し、ぶつけられないと悟ったドンモモタロウはブレーキを踏むより先に飛び降り、その勢いのまま黒いサングラスのような形をした刀ことザングラソードを引き抜きソノシに切り掛かる。

 

 これでも1対3、多勢に無勢にも関わらずソノシを一方的に切り伏せ横殴りに切り掛かるソノゴすらもいなし、ソノロクの攻撃をひょいひょいとかわしてみせる。

 

 乱暴で荒々しい動きながらも一糸乱れぬ動き。加賀美がこれまで見たことのないタイプの動きだ。

 

「今日はお一人様か、人望が無いんじゃあないのか! 桃井タロウ!」

 

 顔見知りなのか、ソノシが単独で介入してきたドンモモタロウを嘲笑するが、言われた当人はどこ吹く風。

 

「フン、お前たちなどお供たちを呼ぶまでもないっ!」

 

 その言葉の通り、3人すらも平気でいなしてみせる。大言壮語に収まらないそれは輪郭を持ってあの男を思い出す。

 

 ──その自信、まるで天道みたいだな

 

 天道総司。かつて共に戦い時に、敵対した。そんな友の名を思い出す。

 ソノロクの一撃から立ち直ったガタックはカリバーを持ち手近にいたソノゴに一撃を叩き込む。

 

「うぉりやぁ!」

 

「復活しただと?」

 

 想定以上の速さの復帰に何か思うことがあったのか、ソノゴが驚愕する。

 このままやられて終われるほど加賀美新という男はヤワではない。

 

「まだだ……まだいける!」

 

 カリバーでソノゴを弾き飛ばし、ドンモモタロウの横に並び立つ。

 それを目にしたドンモモタロウは愉しげに肩を動かす。

 

「ほう? 中々骨のある奴だな。面白い!」

 

 この上から目線もベクトルが多少違えど何処かで見覚え聞き覚えのあるものだ。

 ドンモモタロウにいなされたソノシとソノロク、ガタックに弾き飛ばされたソノゴ。

 

 3人が揃った所でガタックは2刀のカリバーをクロスさせ、蒼い光を放つ。

 本来ならばガタックカリバーは荷電粒子エネルギーを帯びた代物でそれを斬撃に加える事でありとあらゆる物体を両断する恐るべき武器だ。

 だがそれのちょっとした応用で、荷電粒子砲代わりにもなる。

 

 連射は当然出来ないが、威力は充分だ。

 

 

 

 その傍らドンモモタロウはザングラソードを投げ捨て、入れ替わりに銃型の武器・ドンブラスターを取り出し銃身上部のスイッチを叩いた。

 

【パーリィタイム! ドン・モモタロウ!】

 

 間髪入れずにドンブラスターの銃身下部についたスクラッチギアをDJのディスクのように回す、回す、回す! 

 

【ヘイ! かもぉん!】

 

 するとドンブラスターの銃口に虹色の光が吸い込まれるように集まっていき、ドンモモタロウはその銃口を3人の脳人たちに向ける。

 

「……狂瀾怒桃・ブラストパーティ!」

 

「まずい、一時退却! 退けェェェェェェ!」

 

 流石に敗戦濃厚と悟ったソノシが、手を上げ味方に撤退の指示を送る。それを目にしたドンモモタロウはドンブラスターの引き金を引き、ガタックはその蒼い光を帯びたガタックカリバーを勢いよく振り下ろした。

 

「──喰らえ」

「逃すかぁ!」

 

【いよぉぉ! どんぶらこぉ!】

 

 放たれた暴風のような虹色の光と、二つの蒼い三日月がクロスした必殺の一撃が逃げ去ろうとするソノシたちに一直線に迫る。

 そして──

 

 

 二つの大技が爆ぜたその時、真っ黒な夜空を光に染めた。

 

「やったか!?」

 

 直撃を貰えばただではすまないだろうその一撃は、爆炎が治まっていくのを固唾を呑んでガタックは見守る。

 だがそれをドンモモタロウは首を横に振って否定した。

 

「いや? 逃げたな」

 

「えっ?」

 

 10秒ほど。

 間を置いた時、ソノシ、ソノゴ、ソノロクと思しき影は一つもなく、ただ必殺技の余波で出来上がったクレーターだけが残っていた。

 必殺技とは言っても流石に、ガタックカリバーの斬撃を受けて無事でいられる相手を消し飛ばすほどの威力があるわけではない。

 

 何も残っていないということはつまり、逃したと言うことに他ならないのだ。

 

「くそっ、逃げられた!」

 

 できれば完全に無力化して話を聞きたかったがこれでは意味がない。

 訳知りのドンモモタロウとやらに色々聞いておいた方がいいだろうと思ったその矢先。

 

 

「あれ?」

 

 目を離した隙にその赤い姿は影も形もなく消え失せていた。

 当然、お神輿も天女も、バイクも、何もかも。

 

「……何だったんだ」

 

 

 置いて行かれたようにひとりぼっちになった加賀美はまるで嵐のような出来事の連続にただ、祭りのあとの夜の屋上でただただ途方に暮れずにはいられなかった。

*1
出典:暴太郎戦隊ドンブラザーズ/王様戦隊キングオージャー

 ドン45話に登場したドンオニタイジンと同じ顔を持ったロボット、キングオージャーのこと。雉野が変身した百獣鬼ングを瞬殺した

*2
出典:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

 作中における怪人カテゴリ。強い欲望が暴走した人間に憑依、その身体を乗っ取り変異した姿でもある。なおその行動理念は概ねその変異者の欲望に殉じるが大抵歪んだ形となっている。どうやら脳人の世界にとっては悪しき波動を放っているらしく、脳人はこれらを消去する役割を与えられている。モチーフ無しのものから歴代スーパー戦隊モチーフのものまで多種多様。もしかしたらライダーモチーフの存在もいるかもしれない




 今回ガタックがぶっ放した技名は不明
 元ネタはジオウEP37でパンチホッパー相手に使用したもの。なお矢車の介入で不発に終わった模様

 同時にドンモモタロウのぶっ放したブラストパーティーの活躍は……うん




 次回
 04『鬼と天』
 天の道を往き、総てを司る!
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