てんのみち、すべてをつかさどる   作:ヌオー来訪者

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 カブトクワガタなんてゲームが出たので初投稿です。


ドン5話 なにさま、おれさま

 

 斧のようにも、銃のようにも見えるその武器を携えた銀の戦士が向けた銃口がヒトツ鬼に向いたとき、虚空から次々とドアが出現し「こんにちは」と言わんばかりに戦闘員ことアノーニが次々と出現しカブトに向かって殺到する。

 

「アノーニ!」

 

「あーもう!」

 

 それを前にオニシスターも前へと躍り出る。

 なにぶん、アノーニも脳人の側の存在だ、なにもせず人間生活を送るのならばまだしも、ヒトツ鬼を人間に戻すことの邪魔をしヒトツ鬼を消去しようとするのならば敵だ。

 

 まだ仲間たちは来ない。

 ドンブラザーズの変身システムであるドンブラスターが検知しない限りはこの近くにいる銀の戦士と一緒にこの数を何とかしつつヒトツ鬼の暴走を食い止めないといけない。

 

 先手を打ったのはアノーニたちだった。

 ハンマーを勢いよく銀の戦士に振るうと、上体を少し逸らした。避けきれない――オニシスターが焦る中銀色の戦士は至って冷静だった。

 

「――避けた」

 

 最低限の動きでアノーニたちの攻撃を悉くかわす。

 そして返す刀でその鉄塊のような拳で殴り飛ばし、新たに近づくアノーニを銃で足元を撃ち近づくことを許さない。

 アノーニが攻撃すればするほど逆に傷ついていく、カウンターを叩き込まれることに気づいたアノーニは本能的にじりじりとその足を惑わせる。

 その力の差はタロウとアノーニほどの開きのある光景に瓜二つだった。

 

「お前たち、ワームではないな」

 

 それが、銀色の戦士が変身以外で最初に発したことばだった。映画の中の暑っ苦しいヒーローとはかけ離れた低く淡々とした声にオニシスターは少し面食らう。

 

 オニシスター、改めはるかの認識としてはワームというものは映画の中の存在でしかない。

 人間に擬態して裏で人間を殺すなんて危険な存在がいてたまるかという話だが、眼前の銀色の戦士の語り口は冗談を言っているトーンには聞こえなかった。

 

「ワームゥ!? そんなモン知るか! 俺をもてなせええええええええっ」

「アノーニ!」

「アノーニ!」

「アノーニイイイイイ!」

 

 ダメだこいつら、会話する気が一つもない。――はるかは匙を投げた。

 ヒトツ鬼は欲望が暴走して会話なんてものが成立することは稀だ。アノーニは……一応これまで言葉を交わしたことはあるけれども戦闘中は何故か駄目だ。理由ははるかも知らない。

 

「えっとこのヒト? たちはですね……ワームじゃないんですけどヒトツ鬼っていう人間でアノーニとか鳴いてるヤツはあれです、なんというか……戦闘員みたいなものです!」

 

 いーっと、右腕を掲げ、映画のザコ戦闘員の真似をすると銀色の戦士は聞いているのか聞いていないのか無言でオニシスター目掛けて銃のトリガーを引いた。

 そんな馬鹿な、もしかしてこの銀色の戦士はまさか自分以外の存在は全て敵とかそんなやばい奴だったのか。戦えるならだれでもよかったとかそういうタイプのやべーやつだったのか。

 変に優しさ出すんじゃなかった! と心底後悔する。このまま銃弾が当たると強烈な衝撃が走るだろう。幸いオニシスターの姿においてはアノーニに殴られようが痛くはない。ちょっとふらつくだけだ。けれども極力当たりたいものじゃない。

 

 仮面の下でぎゅっと目を瞑る。――けれども。

 

 来るであろう衝撃は一切来なかった。

 

「ばか……なっ」

 

「……あれ?」

 

 背後からの獣の鳴き声のようなその声に気づいたオニシスターが背後を向くとヒトツ鬼が煙を出しながらよろけていた。

 

「知ってるよ」

 

 驚くどころかあっけらかんと言い放つ。

 

「はい!?」

 

「隕石が落ち、人が消え、同じ顔の人間が現れ、魑魅魍魎が跋扈する。そんな噂話には周囲には事欠かなくてね」

 

 近づくアノーニを裏拳で沈め、オニシスターも片手間にフルコンボウをフルスイングしてアノーニを壁に叩きつけるように吹き飛ばす。

 

「同業者?」

 

 あれを業と言っていいのかはさておいて。

 仮面の下ではるかの喉奥から不意に出た言葉がそれだった。何の前触れもなく知らないヤツが現れるなど散々経験してきたことだ。

 ドンブラザーズじゃないとしたらなんだ、ドンブリーズか、ドンフレグランスか。

 

――いやいやドンから離れろよ!

 

 思考があらぬ方向に逸れだした自分を戒めるようにオニシスターは自分の顔を軽くぱちぱちと叩く。

 

――マスターに後で聞こうかな。あの人、変に人脈あるし。

 

 マスターもドンブラザーズに似ているけれどもちょっと違う存在でヒーロー仲間だ。

 アノーニを全て戦闘不能にしたところでカブトとオニシスターが並び立ち、対してヒトツ鬼が毒液滴る紫色の刀を構えぶんぶんと斬るというよりは殴るような勢いで振り回す。

 

「うぁ、気持ち悪っ」

 

 フルコンボウで一撃を防いだものの、見た目としてはあまりに受けたくはない代物だ。ぐるん、と回すように振るって刀を跳ね飛ばすと横殴りに銀色の戦士がヒトツ鬼を蹴り飛ばした。

 カランカランと音を立てて落ちる刀と丸腰になってよろけるヒトツ鬼。どう見ても勝負あり、だ。

 

「くそっ俺を……誰だと思っている。俺はあの明和銀行の部長だぞ! 俺をもてなせええええええええええっ!」

 

「ならば相応の態度を取るべきだったな」

 

「貴様、何様だッ!」

 

「何度も言わせるな、俺様だ」

 

 吠えたてるヒトツ鬼に追い打ちを容赦なく入れていく。その不遜な態度は蕎麦屋で人間の頃だったヒトツ鬼をあしらう男を思わせた。というかまんまだ。

 だが顔がはっきりと見ていなかったせいではっきりとしない。

 獣のうなり声のような、食いしばるような声を上げながら、ギロリと銀色の戦士とオニシスターを睨む。

 

「うううううううううううううううううっ」

 

――え、まさかわたしも恨まれてる!?

 

 恨まれることは慣れている。けれどもとばっちり感があるのは気のせいか。

 

「ううううううううっ!」

 

 次にヒトツ鬼を視界から外したその時、戻した時にはその姿が消え失せていた。

 

「えっ――」

 

 次に紫色が視界にチラついた時、強烈な衝撃がオニシスターを襲った。踏ん張ることすらかなわず、身体が宙を舞う。

 また紫色がチラついた時には、近くの呉服屋に体が突っ込んでいた。

 

「ぐぇぇっ」

 

 どんがらがっしゃんと音を立てて棚からものが雪崩落ちる。オニシスターの超人的なパワーをもってしても脱出に手こずりそうな重みが伸し掛かる。

 

――何……これ

 

 完全にダウンしたと思ったのか攻撃の矛先は銀色の戦士に向く。だがそちらの方はまるで焦っている様子はない。

 

「逃げて!」

 

 はるかの戦士としての勘が叫んでいる。

 こいつはヒトツ鬼でも普通じゃない。何者かは知らないが、ドンブラザーズ皆でなんとかしないといけない相手だ、と。辛うじてドンブラザーズの力故か姿だけなら見える*1。けれども追いつけるかどうかはまた別の問題だ。

 だが銀色の戦士はどこ吹く風、全身を各方面から殴られ全身から火花を散らしよろめきながら言の葉を紡いだ。

 

「おばあちゃんが言っていた、奥の手は先に晒した方が負けるってな」

 

「何なのこの人!?」

 

 こんな異常事態に何を呑気にしているんだ。

 次々と攻撃の余波で壊れていく街並みの中銀色の戦士は赤いカブトムシ型の装置がついたベルトに手を伸ばす。そしてツノにあたる部分を軽く持ち上げると銀色の戦士の上半身から頭を覆う装甲が浮き上がる。

 

「キャストオフ」

 

 次に宣言と共に、銀色の戦士の体を覆うアーマーが弾け飛んだ。その時、オニシスター改め鬼頭はるかは理解した。

 紅い金属のボディ、青く光る複眼。そして天を指すかのように伸びる頭のツノ。

 

 先ほどまでちょっと話をしていた相手が――

 

【CHANGE BEETLE】

 

「かっかかっ……カブトオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?」

 

 先ほど映画で見ていた存在ことカブトその人だったということを。

 

――なんでなんでなんでなんでなんでえ!?

 

 はるかは酷く混乱していた。

 確かに実話をもとにして作られたという正直言って眉唾な話は耳にしていた。けれども映画の中のカブトはもっと暑苦しくて昭和っぽいやつだったはずだ。

 けれども今目の前にいるヤツはなんだかどこかの誰かさんのようにちょっと偉そうで、少女漫画的なヤツだ。というか実在していたのか、カブト。

 トンデモだと思っていたのに。

 

「ワームでもなければ、ライダーでもない、その癖クロックアップはする。妙なやつらだ」

 

 それを妙なヤツの権化みたいなヤツが言うのか。というかクロックアップってなに。

 悪びれもせず、吐き捨てながら上半身を逸らすなどして消えたヒトツ鬼の攻撃を避けている事実もあってはるかは眼前の存在のトンデモっぷりに絶句していた。

 

「ここで一句……ん? ここは……」

 

 呆気に取られている所、知った声がはるかの耳朶を打った。

 

「猿原さん!?」

 

 オニシスターに少しベースが似た戦士が一人。

 青いアーマーに肩から伸びる腕がモフモフした戦士サルブラザー。その正体は猿原真一、変人教授風流人あらゆる別名を持ったドンブラザーズの一人だ。

 その周囲にも別の色をした戦士たちが次々と現れる。

 

 腰から下程度の身長しかない黒い犬のような戦士、イヌブラザー。

 一転して2メートルをゆうに越えるピンク色の雉のような戦士、キジブラザー。

 金色の中国大昔の鎧を彷彿とさせる龍の戦士、ドンドラゴクウ。

 そして最後に――赤い陣羽織のようなアーマーを纏った桃太郎のような戦士、ドンモモタロウ。

 

 やっとドンブラスターが反応したらしい。ヒトツ鬼が現れると自動で現場に転送してくれるように出来ているがその速さはピンキリだ。今回は滅茶苦茶遅い方だ。

 遅い、と文句の一つや二つ口にしたかったが、それをなんとかしてくれる存在は少なくともこの世には存在しないので吞み込んでおく。

 

 カブトの存在に気付いたメンバーたちが味方か敵か混乱し始めている中、一人だけいつも通り、ふんぞり返っている者が一人。

 そう、ご存じドンモモタロウ。――桃井タロウである。

 

「また虫か。どうも虫と縁があるらしい!」

 

――カブト虫のギイちゃん*2とかね!

 

 呉服屋から這い出て6人揃った所で、ドンブラザーズが揃う。厳密にはもう3人いるけれども今は一旦これで集合だ。

 

「またアノーニ! もー何匹出てくるの!」

 

 けれども、そんなドンブラザーズを行かせまいとアノーニが『扉』を使って追加で何体も現れてくる。

 

「まるで雨後のタケノコ、ならぬ雨後の戦闘員だ」

 

 などとサルブラザーこと猿原は言っているが、これを捌くには少し骨が折れそうだ。追加でドンブラザーズが揃い踏みしたことで足を止めたヒトツ鬼が「また増えるのか!」と怨嗟の念を吐き出し、一方カブトは「ほう……」と何かを察したかのような素振りを見せる。

 そんな彼らの反応などおかまいなく、ドンモモタロウはいつも通り。

 

「数がいくらいようが烏合の衆! 関係ない! 行くぞ、お供たち!」

 

 何を思ったのかは知らないが、ザングラソードで邪魔をするアノーニをすれ違いざまに切り捨てながらヒトツ鬼に一直線に駆け寄った。

 

「妙な奴がいるが、勝負勝負ゥ!」

 

「……今度は偉そうな桃太郎か、また妙なやつが現れたな」

 

 たった、一言二言。それだけでもはるかの胃がキリキリと音を立てて悲鳴を上げた。桃井タロウにこの俺様系のカブト。

 この二人、まともに話したらきっと碌なことが起こらない、そんな気がしてならなかった。

*1
センパイジャーで言うならばレッドバスターも視認出来ているようなので特に条件は不明。タキオン粒子の流れる目じゃないと視認不可という記述はない

*2
出典:暴太郎戦隊ドンブラザーズ

 ドン18話で言及された桃井タロウの幼少期の唯一の友達。カブトムシのギイちゃんが帰ってきたと、彼に言うと酷く取り乱し隙だらけになる。




 次回:06『暴れる野郎』



 設定関係でクロックアップ関係の視認はカブト系のライダーフォームにしか出来ないって記述は公式にはないとかなんとか。
 『視認が出来る』だけで。あれなんで広まったんでしょうね。

 アギトの姿は視聴者フィルターによるものといい、アークオルフェノクの灰化シーンが存在する(どこにあるんだそれ)的な話と言い。


 正直作中描写と設定を照らし合わせたりすると精神が崩壊するのであまり考えない方がいいかもしれません(6敗)
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