「っつーわけで、現在、学園都市では七人の古今東西全偉人ぶっちぎりバトルロワイヤルが開催中。優勝者には豪華特典として何でも願いが叶う権利をプレゼント。んで、オレの目的はその豪華特典をブッ壊すか、そもそもこのバトロワ自体をわやにすること、ってな趣旨だにゃー。ここまではいいか、カミやん?」
「まあ、だいたいは」
地下駐車場を出た上条たちを待ち構えていたのは、学生寮の隣人である土御門元春だった。
上条の高校のクラスメイトだが、しかしてその正体は科学サイドと魔術サイドの二重スパイ。
能力者にして魔術師である彼の説明を聞き終わり、上条はうーんとその話を頭の中で噛み砕きつつ、土御門に対し問いかける。
「ええと、つまりキャスターや、お前の隣の……ランサーだっけ? その武士っぽい人も、どっかの偉人ってことでいいのか?」
「そうだぜい。カミやん相手に隠す意味も無いから言うが、ランサーの真名――正体は
そもそも服部半蔵って襲名式だったの? そんで二代目は忍者じゃないの? という前提情報にまず驚きながら、上条はランサーをまじまじと見る。
着崩した羽織の上に、軽装の日本式甲冑を纏った細身の青年。
格好に目を瞑れば、普通の気の良いお兄さんといった人相の彼だが、手にした二メートル半を優に超える槍を軽く振り回す様は、確かに神裂火織を思い出す超人ぶりだ。
「まあ俺も一応、初代から一通りの心得は得ちゃいるが、分身だの何だの、魔術めいた真似はできねえからな。そんでもってこの戦、暗器やら毒やらじゃ到底やり合えねえバケモンばっかなんだろ? 参るぜ本当に」
言って、彼が手に持つのは十五センチほどの小さな刺突用の矢だ。
世界最小の短槍とも呼ばれるそれは、彼の末裔もまた同じく扱う、「打ち根」の名を持つ暗器である。
「――ま、そっちのキャスターは俺でもあっさりやれちまいそうだが……。本当にサーヴァントなのかい、その嬢ちゃんは?」
「さ、サーヴァントですけど! 呪文とかバリバリ唱えちゃうんですけど! けど!」
わずかに金色が混じった銀髪を振り乱し、半袖ブラウスと青のスカート、そして白い杖を持ったキャスターが言う。
偉人らしい威厳はまるで無いそんなキャスターを見ながら、土御門は上条に問いかける。
「サーヴァントの真名は、その正体と弱点を詳らかにする重要な情報なワケだが……。オレとカミやんの仲だ、隠す理由もねえってもんだにゃー? あのキャスター、どこの国のどちらさんなんだぜい?」
「いや、それなんだけど……」
記憶喪失。
それを聞いた土御門は、いくらか真剣な顔になって考え込む。
「……クラスこそキャスターだが、魔術に関してはシロウト同然。そんでもって機械に詳しいってことは、近代の文化人系か? 流石にこれだけじゃ絞り込むにもにゃー。光学操作が関係してるんだったら、あるいはエジソンとかって線もないじゃないが」
「いや、エジソンは男だろ? サーヴァントになると性別変わったりすんの?」
「魔術サイドの歴史なんて嘘っぱちばっかぜよ。あのオティヌスがヒゲモジャのおっさん神ってことになってる世界でナニを今更」
エジソン周りの時代なら、神智学協会の全盛期だしにゃー。と呟きつつ、土御門は困ったように頭を掻く。
「攻撃系の宝具を持たないスピード型のランサーに、そもそも宝具を持ってるかも怪しいどこの誰かもしれない微妙性能のキャスター。いや全く毎度のことながらハードぜよ。カミやんの右手があるだけマシかもしれないが、それで宿った令呪も吹っ飛ばしてるんだから収支としてプラスなんだかマイナスなんだか」
上条当麻の右手――
あらゆる異能を打ち消すそれは、かつてブライスロードの秘宝と呼ばれた、究極の追儺霊装でもある。
追儺。すなわち、
「既にエンカしたサンジェルマンとの戦いよろしく、触れれば一撃でノックアウト。まあ騎士や武士やらの武人系サーヴァントとなると、聖人のねーちんよろしくまず触ることも敵わないってレベルになってくるんだがにゃー。
毎度のことながら戦況は圧倒的に上条側不利である。
「ええと整理すると、まずキャスターと、ランサー・服部半蔵。この二人が味方」
「で、カミやんが撃破したかもしれないアサシン・サンジェルマン。そして、オレとステイルを裏切った魔術師の召喚したセイバー・
そして残りの三騎、アーチャー、バーサーカー、そしてライダー。
「この三騎については、現状不明?」
「んにゃ、ライダーについては調べがついてる。なにせ、ステイルが召喚したサーヴァントだからにゃー。ちょうどオレも一緒に召喚するとこ見てたんぜよ」
「そうなのか? じゃ、ライダーは味方……」
「
低く重い。
ガチの声で、土御門は言う。
「
「は? そりゃまた一体なんで、」
ズン、と。
その瞬間、大地が揺れた。
「っ……!?」
「――そもそもこの任務、本来は『聖杯戦争にオレたちの誰かが優勝し、聖杯を回収する』ってのが目的だった」
音の響いてきた方向を見る上条たち。
周囲に戦慄が走る中、なおも土御門は続ける。否、だからこそ続ける。
「なんて言ったってモノが
恐るべき存在感。
これまでに上条が戦ってきたものたちとは全く別質。
「つってもそれは上の意向。この学園都市、科学サイドの中心部で聖杯が『抽出できる』なんてのが確かになったら、そんなもん戦争も戦争、第四次世界大戦待ったなしだ。だからまあ、オレとステイル、あと裏切ったがセイバーの魔術師も、この聖杯戦争は有耶無耶にするってんで、合意が取れていたんだが……」
怪獣だった。
鉄の甲羅を背負った六足。
毒ある角と棘を持つ、悪しき竜。
恐るべき、恐れるべき、おぞましきその悪竜に、しかし騎乗するは一人の聖女。
「……やってくれるにゃー、信仰心だけは本物ってかあの不良神父。こともあろうに、
神聖なるその威容に、銀髪のシスターは息を飲む。
「まさか、あの人は……!」
「どうにかお目溢しいただけないもんかにゃー……! サーヴァント・ライダー――
あ、ステイルが好みのタイプって言ってた人だ。
圧倒的な気配に上条が現実逃避気味にそんなことを考える中、悪竜の咆哮が世界観を一変させる圧をもって、科学の街に響き渡っていた。
ライダー
・真名:マルタ://■■■■■■
・属性:秩序・善
・保有スキル:
・クラススキル:対魔力 A 騎乗 A++
宝具「
宝具「■■■■■■■」