ウマ娘プリティーダービー She'll be DAYBREAK 作:ポンドアップル
階段を駆け上り、見慣れた扉の前に立った私はため息を漏らす。
「ふぅ......」
私は人気のないトレーナー室の玄関に、コンビニ袋を持って立っていた。
今日も一日疲れたなぁ......そう思いながら、それを散らかった机の上に置く。
「明日はもっと早く帰れる。きっと」
独り言を言い、今日もコンビニ飯をレンチンする。
静かな部屋に、温かな牛丼のかほり。それだけでも、今日を生きた甲斐があったというものだ。
私は四ツ谷 留目(よつたに るめ)。ここ中央トレセンでトレーナーをしている。
とは言っても、そうなるのは明日からだが。
ここに越してきたのも数週間前の話で、今や我が家のようになっているこの部屋も、少し前までは見知らぬ場所だったのだ。
「初めての担当ウマ娘、ちゃんと育てられるかな......?」
ほろほろの弁当を食べながら私は思う。
ふとテレビを点けると、ニュースがやっていた。
『今日はあの日本一のウマ娘であるスペシャルウィークが初めてGIを勝ち、歴史に名を残した記念すべき日です! あれから早十年が経ちましたが、彼女は今も元気に走り続けています。それでは、同期のウマ娘にインタビューを......』
はっとして私はテレビを消し、思った。
「そうかぁ......あれからもう10年......」
カレンダーを見ると、今日は2031年4月18日。
私は今もあのウマ娘を覚えている。画面越しでも、私は見たのだ。歴史を。
その時、突然スマホが鳴った。びっくりして地面に落としてしまったが、それを急いで拾って通話ボタンを押し音声通話にする。
「も、もしもし~?」
「あ、留目ちゃん! 今帰ってきたばっかり?」
そう言って私に電話をかけてきた彼女は永見 届(ながみ とどけ)さん。私の先輩だ。
彼女も明日から初めて担当を持つ。そのせいか、彼女の声は少し張り切っているように聞こえた。
「また憂さ晴らしの電話ですか?」
私が言ってビデオ通話にし、そうして画面に映った彼女の顔は少しふくれていた。
「いいじゃないの、友達でしょう?」
「もちろんいいですけど......それで、何があったんですか?」
すると彼女はテーブルにうつ伏せになって、嘆くように私に言う。
「今日さー! 廊下でレース直後のウマ娘さんにバッタリ出くわして、それで声をかけたら少しどつかれたんですよ!」
私はコーヒーを飲みながら、彼女の言葉に頷く。
「ありますよね~。特に最近は学園のルールも厳しくなって......」
「ほんと、みんなギスギスしてるわよね~」
彼女はその日の辛さを忘れるように、ビールを飲みながら言った。
「あんまり飲んでると明日に響きますよ~?」
「いいでしょ、今日の酒くらい明日に繋がるわ」
そして次の缶を開け、あっという間に飲み干す。
それに私が複雑な笑いを浮かべると、ふと時計が目に入る。
「ヤバ、もう12時回ってます」
「あら本当。じゃあこの続きは明日ね」
流石の彼女も飲むのをやめ缶を机に置く。
そして私は手を振った後、通話を切った。その後ため息をついてベッドに横たわる。
これから私が育てる子。そんなものを想像しながら、ゆっくりと目を閉じた。
「ああ、神様......どうか私に素敵な出会いを」
そう呟き、明かりを消した。
ーー 第1R 薄暮時の邂逅 ーー
時は午前7時。寝坊した私は、小走りでトレセン学園の広場を走り抜ける。
「おはようございます、留目トレーナー」
誰かがそう言ってくれたが......挨拶を返す余裕もなく、広場から職員室へと一気に駆け込んだ。
ぜえぜえと息を荒げながらドアを開くと、届先輩が私を出迎える。
「ゴール。十五着」
「はは、出遅れですね......」
肩をがっくりと落とす私に彼女は言う。
「まあまあ......まだまだこれからよ?」
そっと頷くと、彼女はにこりと笑った。
一時間後......私たちはグラウンドに居る。模擬レースを見て、担当するウマ娘を決める為だ。
沢山のトレーナーが観客席にずらりと並ぶ中、私の隣で届さんは言う。
「しっかりと見極めて、強そうな子を選ぶ事が大切......って教官の人が言ってたからね。よく見ておかなきゃ」
彼女は目を光らせ、フェンスの向こうを見ていた。
そしてウマ娘達がパドックに入る。一人一人、自信満々な顔で自分の仕上がりを見せては帰っていく。
どの子も、とても強そうだった。。
「う~ん、改めて中央トレセン学園は凄い所だって思うわ」
「これで模擬レースですもんね......地方くらいなら勝ってしまいそう」
そう話していると、次のウマ娘が入ってくる。
『6番、ヨアケノカネ』
しかし、そこに出てきたのは先ほどのウマ娘とは打って変わり、自信なさげで体も細く、元気のない子。
「ダメだな......」
「論外だね」
周りもざわつき始め、中にはスマホをいじりだす人もいる。
「......」
うつむきながらパドックを足早に去る彼女を見て、私は不安になった。
「あ、あの子......大丈夫かな?」
「どう見てもおかしい、走れる体じゃないよ」
十数分後......出走するウマ娘達がゲートに入り始めた。届さんはいい位置を見つけてギリギリそこに座れたが、私は入り込めず端の方に座っている。
そんな中で、私はなぜか彼女の姿を探していた。
(あの子でもない......あ、いた!)
双眼鏡を取り出し、必死でピントを合わせる。
焦点が合ったレンズが映し出したのは、まるで世界の終わりのような彼女の諦めた表情だった。
「彼女が気になるのか?」
隣にいた男が私に聞く。それに少し驚きながらも答える。
「いや......その、はい」
すると彼はため息をつき、空を見上げて言う。
「きっと苦労するよ。彼女、かなり変だから」
「......そうですか」
そしてファンファーレが鳴り、たくさんの人が見守る中ゲートは開かれた。
一人出遅れたが......それ以外の子はうまくスタートを切っていた。
彼女らが地面を蹴り上げる度に鈍い音が響き土埃が上がる。
しかしその中で、私は彼女から目を離せずにいた。
(他の子と比べて踏み込みがとても浅い.......フォームも滅茶苦茶だし、本当にトレーニングしてたのかな......?)
そう疑問に感じずにはいられない程に、彼女の走りは浅いものだった。
「お、外から凄い勢いで上がってくるぞ!」
彼の視線の先では、小柄なウマ娘がぐんぐん加速していた。
だが彼女は周りのスピードについていけず、あっという間に後ろへ置いて行かれる。
「あ......」
そして先頭がゴールイン。続いてぞろぞろとゴールし彼女の前にいた黒い髪の子も入り、それから数秒ほど間が開いて彼女も走り終わった。
周りのトレーナー達が一位になったウマ娘を凝視していても、まだ私は彼女を見ている。
泣きもせず、悔しみもせず、果てや笑いも喜びもしない。ただ俯いて、ここから逃げるように去って行った。
「残念だったか?」
また彼が聞く。
「はい......」
それに私は小さく返した......嫌だったからだ、変に見られる事が。それでも自分の気持ちに嘘をつくまいと、あいまいな気持ちで答えたのだ。
「彼女はそう思っていないようだがな。一刻も早く、ここから去りたい気持ちのようだ。中央に来ようにも来れなかったウマ娘達が聞いて呆れるね」
皮肉に返す彼に、私は苛立ちを覚えた。
ーーーーーー
レースが終わるとトレーナー達は一斉に成績の良かったウマ娘へと走り、誰よりも早くスカウトしようと、走るウマ娘にも負けぬ気迫で言い寄る。
一位だった子の周りには既に人だかりができており、私が足を踏み入れる地面すら無いような状態だった。
それ以外のウマ娘もトレーナーに連れられてどこかへと去ってゆく。
(ああ......)
誰もスカウトできそうにない。絶望に打ちひしがれていると、ふと彼女の顔が脳裏をよぎる。
あの子は......誰にも声をかけられる事もなく去って行った。じゃあ誰が面倒を見る? トレーニングは?
考える度にあの諦めた顔が思い浮かび、私は居ても立ってもいられなくなった。
「......行かなきゃ」
芝の地を踏みしめ、走り出す。
そして色んな場所を探した。人だかりの中から、トラックの外れまで。
果てには途中で入ったトイレの中でも、彼女が居ないか勘ぐってしまう。
しかし......急がねばならなかったのだ。空は灰色に染まり始め、首筋を冷たい水滴が撫でる。
やがてそれは雨になり、私の身に降り注ぐ。
「はぁ......はぁ......」
もう駄目か、いやまだだ。
挫けまいとする私の瞳に、何者かの人影が映った。
雨に打たれながらそれの元に歩く。影は近づき、その頭には耳らしきものが見える。
一輪の花すら生えていない花壇の中、彼女は一人寂しげに佇んでいた。
「あ、あの!」
最後の力を振り絞り、彼女に声を掛ける。
するとこっちに振り返ってくれた。俯く彼女のレインコートの隙間からは、彼女の黒い前髪が見えている。
「あなた、ヨアケノカネさんですよね?」
そう聞くと、彼女は顔を上げフードを外す。ボサボサの髪を濡らしながら、耳を絞って私に返した。
「......私に何か言いたいの? こけにして、今日の酒の肴にでもするつもり?」
「違うの!!」
力いっぱい大声で言う。そして、彼女に歩み寄った。
彼女はびっくりして、ぽかんとした表情で私を見る。そして私は精一杯の笑顔を作り彼女に言った。
「あなたの......力になりたいんです!」
「え......私の?」
表情を崩さずに、彼女を怒らせないように必死で言葉を考えながら続けようとしたが......
「あ......その、えっと......」
うまく気持ちを言い出せない。大雨の中立っている彼女の異様な雰囲気に、私の足は激しく震えていた。
「......」
ただ彼女は私を睨んでいる。ごうごうと降る雨の中、私は一歩踏み出せずにいた。
そして遂に、彼女は踵を返してどこかへと歩き始める。
「あっ、待っ......」
彼女の背中を追いかけようと踏み出した時、私は足を滑らせて転んでしまった。
「いったぁ!!」
コンクリートのざらざらした地面に身を打ち付け、激しい痛みが走る。
「あ」
すると彼女は勢いよく振り返って駆け寄り、私の目を見てゆっくり言った。
「......ケガとか、無いですか? 大丈夫ですか?」
「う、うん。大丈夫だよ」
しかしそう言って伸ばした私の手のひらからは血が出ている。膝からも出血しているみたいだった。
彼女はそれを見ると私を肩に担ぎ、走り出す。
「うわぁ!?」
思わず声が漏れてしまうが、彼女はただひたすらに走っていた。
「......あと少しです」
そう呟き、速度を上げる。
やがて校舎に入り、無数の人混みを越えて辿り着いたのは保健室。
がらっと扉を開けて入ると保健室の先生は一瞬びっくりした様子を見せたが、直ぐにずれた眼鏡を掛けなおし彼女に聞く。
「ヨアケちゃんどうしたの! ってか留目さん!?」
「この人、倒れてケガしたんです。処置お願いします」
冷静に彼女は言い、私の体を椅子に優しく下した。
そして私は、彼女に頭を下げる。
「ありがとう、優しい子なんだね」
「......」
彼女は私を見つめ続ける。しかしその表情は、前とは変わって少しだけ柔らかいものだった。
「見たところ肘と手のひら、あと脛だねー。それ以外に痛みは無いですかー? 骨の痛みは?」
「あ、はい。大丈夫です」
先生は私の返事を聞くと、サッと傷口を洗い消毒し絆創膏を貼ってくれた。
「歩けそうかなー?」
「問題ないです、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げると、私を見つめていた彼女は言った。
「あなた......留目さんって言うんですね」
「うん。あなたは?」
そう聞くと少し考える仕草をして、数秒の間の後彼女は言ってくれた。
「......ヨアケノカネです」
怖かっただろうけど私に名前を言ってくれた彼女へ、できる限りの笑顔でこう返した。
「素敵な名前、きっといいウマ娘になるわ」
そう言った時、彼女の耳がぴくりと動いた。
「......ありがと」
本作品はpixivにも投稿されています。ご了承ください。
また、執筆にはAIのべりすとを使用しております。
生成された文章には加筆・修正を加えて投稿しています。
AI/人力の割合は4/6程です。
感想や良点悪点などございましたら、ぜひコメントお願いします。
参考にさせて頂き、本作品の改善に努めて参ります。
私の小説が、あなたの日常に少しでも彩を加えられたのなら幸いです。
ここまで読んでくれたあなたに幸のあらんことを。
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