ウマ娘プリティーダービー She'll be DAYBREAK 作:ポンドアップル
ーー 第4R 優しさを享受する難さやどれ程 ーー
翌日。今日は晴れた日になるとの情報なので、外でトレーニングをする事にした。
しかし、今回のトレーニングは鍛える事が目的ではない。ヨアケノカネちゃんの脚質を見切る為のものだ。
「ふん......ふっ」
私が最終確認をしている横で、彼女はただひたむきにストレッチをしている。
「よし、じゃあやってみましょうか」
「うん」
大きなトラックの隅にある小さなトラックで、彼女は走り出した。
しかし。はっきり言ってしまうと、彼女は遅い。
パワーもスピードも無く、息が切れない訳でもない。やっぱりこのままでは無理がある。
レースどころか、トレーニングすらできない。
「そこまで。休んでいいわ」
私がそう言うと、彼女はすぐに止まった。
なかなか息も戻らない。細い四肢に伝っている汗は、彼女が本気で走っていた事を物語っている。
「正直に言うと、まだ体が整っていないわ。まずはいっぱい食べて、走れるような体にするのが先決ね」
「はぁ......うぅ」
そう言って次に連れて行ったのは、スイーツのお店だった。
「どうしてスイーツなんですか?」
首を傾げる彼女に、私は言う。
「おいしいものを食べれば、栄養も採れるし気分も上がるしであなたにとっていい事だらけでしょう?」
「でもお金は......」
そう聞く彼女に、明るく笑って私は返した。
「いいの。あなたの心身が少しでも良くなるなら安いものよ」
「......ありがとう」
ーーーーーー
「はい、どうぞ」
「わぁ......」
メニュー端末を開いて渡すと、彼女は目を輝かせながら画面をスワイプする。
そしてカヌレの項目を指さしながら、私に向かって聞いた。
「......これ、欲しい。どうしたらいいの?」
「そこをタップするのよ、こうやって......」
代わりにやってあげようとすると、彼女は首を横に振る。
「自分でやってみたい」
「ふふ、それはいい事よ」
興味津々な顔をしていたので、私は彼女に任せる事にした。
しばらくすると、店員さんがそれを運んできた。
「お待たせしました、カヌレでございます」
「ありがとうございます」
小さくお礼すると、ヨアケノカネはじっとそれを見つめている。
「初めて?」
そう聞くと、彼女はかなり間を置いて答える。
「............いいえ、姉がよく作ってくれていました」
「お姉ちゃんいるの? どんな人?」
そう聞いた時。彼女の頬に一筋の涙が伝う。
それと同時に、私は己の行いを深く後悔した。
「......ああ......」
彼女は涙を流したまま、ゆっくりと口を開く。
「いいんです......もう4年も前の事ですから」
ナプキンで涙を拭い、赤く染まった目のままカヌレを食べた。
「......悔しい、おねぇちゃんのよりも美味しい......ちくしょう......」
「ごめんね、嫌な事思い出させちゃって......」
「嫌なんかじゃないよ......あの記憶も、今の事も」
楽しくなるはずだったこの瞬間を、私のせいで灰色に染めてしまった。
「ごめんなさい......嫌な空気にさせてしまって」
その時。遠くの席から、聞き覚えのある声が聞こえた。
「大丈夫ー!? ヨアケノカネちゃん!」
「ライゼンデトネータさん!?」
二人で驚いていると、ヨアケノカネが彼女に聞く。
「外出禁止のはずじゃ......」
「隠れて食べるつもりだったけど、友達が泣いているのを黙って見てる程バカじゃないよ!」
彼女の言葉を聞いて、ヨアケノカネは驚いた。
「友......達?」
真剣で......真摯ながらも、明るい顔でデトネータは言う。
「がんばる人を応援するのが、私の役目だから!!」
底抜けに明るい彼女に、私は神々しさのようなものすら感じた。
「ほら、話聞くよっ?」
デトネータはヨアケノカネの隣に座って、彼女に顔を寄せる。
「いや......その......ここだと話しづらいから」
「そっか~じゃあ、他の話しよっか!」
そうしていろんな事を話していくにつれて、彼女の表情は直ぐに和らいでいく。
まるで魔法のように心を癒していく彼女に、私は驚きを隠せないと同時に深い敬意を抱いた。
「機能もネスマクちゃんに料理作ってもらったんだよ! 本当にそれが上手でさ~、おかわりもいっぱいしちゃった!」
「あはは! 私も食べてみたいかも!」
ヨアケノカネちゃんも、今まで見た事のないような笑顔を見せている。
そんな二人を、私はついニヤッとしながら見つめてしまっていた。
そしてみんなおなか一杯になる頃には、彼女の心は大いに安らいでいた。
「ありがとう......こんなに楽しかったの、いつぶりだろう?」
「私も! いっぱい話してもらえて嬉しかった!」
ヨアケノカネがそう言うと、二人はこちらに目を向けてきた。
「ヨアケノカネちゃんが元気になってくれて良かったし、ライゼンデトネータさんも本当にありがとうございます!」
その言葉を聞いて、二人はさらににっこりと笑ってくれた。
ーーーーーー
私はその後、ヨアケノカネちゃんを連れてトラックへと再び向かう。
そこで待っていたのは、届さんだった。
「あの人、だれ?」
「私の先輩よ」
彼女は何やら分厚い本を読んでいる。そしてこちらに気付くと、本を閉じた。
「来たわね、その子が担当かしら?」
私が頷くと、彼女はヨアケノカネを見て少し驚いて言った。
「可愛い子じゃない! ただ、やっぱり細いわね......」
「今はバ体を整えつつ、トレーニングを始める準備をしている所です」
現状を伝え、私はヨアケノカネの技能表を彼女に見せた。
入学時のものだが、これを見てもらえれば何か分かるかもしれない。
「......なるほど。これ、写真撮らせてもらってもいい?」
「はい、いいですよ」
彼女は書類をスマホでスキャンし、私に言った。
「お互い新人トレーナーですもの。協力していきましょう」
「はい! そういえば......届さんの担当バは?」
そう聞くと、彼女の後ろから一人のウマ娘が出てくる。
彼女は嬉しそうにその子を紹介した。
「私の初担当、ターフアドミラルよ」
そう言われて出てきた黒髪のウマ娘は、ヨアケノカネの姿を見るとどこか悲しげな顔をした。
「あ、あの模擬レースの......」
「知ってるの?」
そう聞くと、彼女はアドミラルに歩み寄る。
「あの......私、ヨアケノカネって言います......」
「え、うん......」
彼女はヨアケノカネの事を、どこかよそよそしい態度で受け流した。
「ごめんなさい、ちょっと用事があるので……」
それだけ言って、彼女達は立ち去ってしまう。
私は二人の背中を見つめながら、何も言わずにいた。
「......あの時は、ありがとうございました」
一人そう言った彼女に、私は聞いた。
「どうしたの?」
「模擬レースの前......緊張して気持ち悪くなった時、助けてもらったんです。聞こえなくても、お礼くらいはしておかないとと思って......」
すると、届さんが顎をこすりながら言う。
「彼女、少し不器用な所があるから......ごめんねーほんと」
そう謝った先輩に、ヨアケノカネは小さくお辞儀し笑って返した。
「大丈夫です......私のせいですから」
「ヨアケノカネちゃん、何もそう言う事はーー」
すると、彼女はにこりとして私にこう言った。
「大丈夫です。彼女はいい人だって分かってます......私を助けてくれたから」
そして続ける。
「いつもだったら、良くて冷ややかな視線を浴びる。悪くて......何か言われる。それくらいです」
そんな彼女の表情は、本当になんとも思っていないようだった。
「だから......大丈夫です」
しかし。彼女の透き通った目の奥底に、私は地獄を見た。
過剰な表現だと思うかもしれない。けど、その言葉の重みは私のような人間には分からない。
けど......彼女がどんな視線を浴びて生きてきたかは、同じ腹にいたかのように理解できたのだった。
「......今度また、スイーツ食べに行こっか」
その言葉に、彼女は小さく頷いた。
ーーーーーー
その後、私は届さんから色々話を聞いてから彼女と別れる。
ヨアケノカネちゃんも、お祈りをする為に寮へと帰った。
「はぁ......たまには学園を散歩するのもいいかな」
そう言って、生徒だらけの廊下を一人歩いていた。
その時、廊下の角に差し掛かった所で一人のウマ娘とぶつかる。
「うわっ、すいません!」
「チッ......」
そう舌打ちして、彼女は足早に去って行った。
「ああ......廊下を曲がるときはきちんと確認しないとダメだなぁ、はは」
自分を恥じつつも、校舎を一人探検する。
そして歩きに歩いた所でふと気付いた。
「あれ、この部屋は......?」
何やら、何重にも複雑に鍵がかかった扉を見つけた。
パンフレットや職員用のマップでも調べてみるが、ここの情報はない。
周りを見てみると、ウマ娘どころか職員の姿も見えなかった。
「......?」
すると、突如その鍵が一つ一つ音を立てて開き始める。
ガシャンッ! ガチャン!
「え、何事!?」
十数回に渡り鈍い音が響き、最後にスマートロックが解除されドアが開く。
すると、そこには白衣を着たウマ娘が大きな荷物を抱えて立っていた。
「だ、誰だ! 生徒会の回し者かぁ!?」
そう言うと彼女は光る警棒のようなものを抜いた。
「違います違います!!」
腰が抜けながらも必死に弁明する。
そして伝わったのか、彼女は警棒をしまった。
「まったく......ああ、もういいか。折角だし見ていくと良い」
「な、何をですか?」
すると、彼女は胸を張って言う。
「ようこそ! トレセン学園科学研究部へ!」
「か......科学?」
確かに、彼女は白衣を着ている。彼女の脇から見える部屋の中には、怪しげな器具やタンクが並んでいるのが見えた。
そして連れられ、その中に入る。
「少し散らかっているから、気を付けてくれ」
部屋の床には無造作に機械や棚が乱立し、足を踏み入れる場所も少ない。
すると、そこにいたウマ娘が彼女に聞いた。
「クォークスノー部長、その女性は誰ですか?」
「ここに迷い込んでしまったらしくて......少し見学をしてもらおうと」
「はぁ......」
ため息をつくと、彼女は再び部屋の奥へと戻った。
「科学部......って事は、あなたも何か研究を?」
「ああ、やっている」
そう言うと、彼女は机の上にあった物を手に持った。
そしてそれを差し出し、私に聞く。
「私が開発しているのは、ウマ娘用の義足だ」
彼女が見せた義足は、足全体をカバーするような構造になっている。
先端はバネになっていて、その構造もしっかりしたものだった。
「これ、一人で作ったんですか?」
「半分は......そう言える」
すると、向こうからまた一人。スーツを着たウマ娘が歩いてきた。
「クォークさん、電気分離機の調子が......あれ、職員の方?」
問いかけに頷くと、慌てた様子で彼女は言う。
「い、今何か飲み物用意します!」
去って行く彼女の脚をふと見ると、右足が義足になっていた。
それに気付いた私を見てクォークは言う。
「スカラさんには一応ここの顧問をしてもらっているんだ。彼女、元々中央で走っていたんだけど......予後不良で走れなくなってからここによく来ては研究に没頭するようになった」
「そうなんですか......お辛いですね」
私は彼女を見上げた。すると、彼女は語る。
「私の母もウマ娘なんだ。でも、生まれつき両足がない。......私はそういう人たちに、走る楽しさを知ってもらいたいと思っているんだ」
そう言って、私の持っていた義足を見た。
「この義足が、いつか彼女らの人生に光を灯せれば......ってさ」
すると、再び彼女が戻ってくる。
「はい、持ってきました!」
その手に握られていたのは、何やら緑色の液体だった。
「え......これって?」
「ロイヤルビタージュースです、飲みませんか?」
その名を聞いて、私は震えあがった。
あの伝説の飲み物......極の栄養と引き換えに、食べたものの脳髄に一生付きまとう程の苦味を持つ。
良薬口に苦しの極地、まさに命を削って身を潤わせる行為。私は真っ先に、彼女に言った。
「あ、私要らないです!」
すると、彼女はやっぱりと言った顔をする。
そして表情一つ変える事無く、それを飲み干した。
「ごく......そうだ。代わりにお水でも飲みますか?」
「もう大丈夫です、ありがとうございます」
若干畏怖しつつも彼女にお礼をする。
そんなやり取りを見ていた彼女は、呆れたように言った。
「まったく......人前ではやらないでくれと言ったのに」
そう呟くと、デスクに座って作業を始めた。
本作品はpixivにも投稿されています。ご了承ください。
また、執筆にはAIのべりすとを使用しております。
生成された文章には加筆・修正を加えて投稿しています。
AI/人力の割合は4/6程です。
感想や良点悪点などございましたら、ぜひコメントお願いします。
参考にさせて頂き、本作品の改善に努めて参ります。
私の小説が、あなたの日常に少しでも彩を加えられたのなら幸いです。
ここまで読んでくれたあなたに幸のあらんことを。
この後の展開が気になりましたか?
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気にならなかった
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どちらとも言い難い