ウマ娘プリティーダービー She'll be DAYBREAK 作:ポンドアップル
ーー 第6R 灰の雪 ーー
そしてレース当日の早朝。私たちは車で東京競バ場へと向かっている。
助手席にいる彼女にこう言う。
「今回出走するのはメイクデビュー東京の芝2400m、天気は晴れになる予報よ。中距離適正があるみたいだからヨアケノカネちゃんは有利なはず」
「確か......私は差しが得意って聞きました」
「ええ、だから作戦もそれで行くわ。デトネータさんは先行で行くと言っていたけど、うまく差し切って見せるのよ」
彼女はこくりと頷き、深呼吸をした。
「大丈夫。きちんとセーブして走れば、最後に追い抜けるわ。耐え抜いた者が勝つの」
そう言うと、彼女の耳が動いた。
「それなら......得意です」
その一言を聞いて、少しだけ私は安心する。
......高速道路を走り続け、ついに東京競バ場に到着した。その恐ろしく巨大な建造物が私たちを見下す。
この舞台は、私たちには大きすぎるのかもしれない。
(怖がるな......ここでヨアケノカネは勝つんだ)
そう自分に言い聞かせ、中へと入ってゆく。
ーーーーーー
時は来たれり、パドックは終わり出走直前。
調整した成果が出たのか、ヨアケノカネは4番人気になる事が出来た。
様子を見る為に控室へ向かうと、そこには祈りを捧げる彼女がいる。
「どうか勝てますように......」
そう言って合わせていた手を膝に置き、すくっと立つ。
「きっと届くわ。神様は見てくれてる」
私が励ますと、彼女も笑って応えた。
「ヨアケノカネー! まだー!?」
相変わらずデトネータは元気そうだ。彼女は三番人気、かなりの強敵になるだろう。
しかし彼女はこう返す。
「ごめん、待たせちゃって。今行くね」
その返事は、まるで友達の会話のように軽いものだった。
そうして連絡通路に彼女らは並ぶ。私に手を振りながら、外の眩い光の中へと消えていった。
「......急ごう」
そうして私も関係者席へと向かう為に通路を走る。
その時。
「あうっ!」
前をよく見ていなかったせいで誰かにぶつかってしまった。急いで謝ろうと上を見ると、そこには漆黒の髪をなびかせるウマ娘......
「ターフアドミラルさんっ!? すみません、私のせいで......」
「大丈夫! ウマ娘の体は頑丈ですから。あなたこそ、お怪我はありませんか?」
そう言って差し伸べられた手を取って、起き上がった。
「ありがとうございます!」
お辞儀をすると、彼女は手を振って返す。
「それじゃあ、お気をつけて~」
......申し訳ない事をしてしまったと思いながら、私はその場を後にした。
ーーーーーー
ウマ娘達がゲートに入り始める。はしゃぎながら元気よくゲート入りをするデトネータを後目に、ヨアケノカネはスッと滑らかに入った。
席に座り、双眼鏡を握りしめる。
(順調ね......さすが)
そして実況が告げる。
『全ウマ娘、ゲートに入りました』
ファンファーレが戦士たちを奮い立たせ、場の空気は戦場と化す。
勝つ......彼女は勝つ。気付けば、私はそう祈っていた。
『スタートしました、先頭に躍り出たのは12番ライゼンデトネータ、並んで2番トライトゥウィン』
ヨアケノカネは後方できちんと待機できている。遅れる事もなく、きちんとついていけている。
デトネータも予想通り先行だ。これなら、勝てる可能性は十分にあるだろう。
実況が淡々と先頭からウマを呼び、ヨアケノカネは最後方で呼ばれた。
第一コーナーを曲がり、ここから長い下り坂に入る。ヨアケノカネも冷静に自分のペースで走っていた。
そしてその位置のまま上り坂に入る。
「ああっ!」
すると、ヨアケノカネが坂で失速してしまった。バ群から一人外れ、後ろに取り残される。
しかしその直後息を吹き返し、元の位置に戻ったのを見て私は胸を撫で下ろす。
先頭を見てみると、デトネータと同じく差しのトライトゥウィンが坂で失速してデトネータが一人先頭に立っている。
実況が言った。
『坂を乗り越えて先頭は変わらずライゼンデトネータ。このまま先頭を維持できるか? おっと、最後方のヨアケノカネが突如ペースを上げ始めました!』
慌てて後方を見ると、そこには後方から強烈な追い上げを見せているヨアケノカネの姿があった。
「ヨアケノカネちゃん!?」
双眼鏡の倍率を上げ彼女を見る。すると、彼女が自信に満ち溢れた顔をして走っているのが見えた。
その目線の先にはライゼンデトネータがいる。
(もしかして......ここでデトネータと勝負するの?)
驚異的な加速でどんどん他を追い抜き、遂にデトネータの背後に付く。
『4番ヨアケノカネが先頭12番のライゼンデトネータに追いついた! 予想外のレース展開、これはどうなるのか』
(まったくその通り、大丈夫かな?)
第二コーナーの途中で彼女らは競り合い始めた。
お互い一歩も引かず一進一退の攻防を続ける。次第に加速していき、ついにはバ群を後方に置き去りにしてしまう。
そんな彼女らはどこかとても楽しそうな表情をしていた。
(はっ!)
その時、私は思い出す。私が初めて見たレースを。
互いに切磋琢磨し合い、競いながらも高めあってゆく。本当の『ライバル』の姿。
『他のウマを置いてけぼりにして二人が最前線で争っている! なんといい笑顔、あれがまさに青春か!』
実況の人もさっきまでの冷静さをかなぐり捨てて彼女らの雄姿を熱く語っている。
その光景に、もう勝ち負けなど考えられなかった。
『最終コーナーが近づく、しかし先頭はまだ二人、後続を引き離すように走り続けている。勝つのはデトネータか、それともヨアケノカネ!?』
二人のデッドヒートに誰もが目を向けていた。そして遂にコーナーを乗り越え、直線に入る。
ここからは急勾配の上り坂だ。ここで差し切れれば勝てる......!
そんな時だった。
『ここで後方からターフアドミラルが来た! グイグイと上り詰めて先頭に迫る!』
そんなばかな。......ばかな、ばかな!
すぐ後ろに彼女は迫ってきている。坂をものともせず、漆黒を靡かせ競り合う彼女らに差し掛かる。
「来るな......来ないでくれ!!」
ターフアドミラルが二人の間を切り裂き、ナイフのような切れ味でそのまま先頭を奪った。
そしてヨアケノカネはそのままバ群に飲み込まれ......姿を消す。
想いは二月の空に舞い上がり砕け、闇は光まで届いてしまった。
『ターフアドミラルが二人を追い抜いたぁ!! そしてそのまま一着でゴールイン! ライゼンデトネータは二着、続いて後方からビクトリーハンド、ミヤノジンクスもゴールを通過しました。競り合ったヨアケノカネは五着、惜しくも敗れました......』
絶望が視界を覆い尽くす。目先の物は歪み、空が見えない。
その正体は、あふれ出た涙だった。
......ヨアケノカネはただ茫然と立ち尽くしている。あまりの事に、理解が追い付いていないようだった。
そんな彼女にデトネータは駆け寄って、泣きながら必死で肩を揺すっている。
私は関係者席を飛び出して、彼女の元に走った。
「留目さんっ! ヨアケノカネちゃんが!」
彼女に揺すられるヨアケノカネの目は、ただ虚空を見上げている。
そしてぼそぼそと呟いていた。
「あり得ない、あり得ない、こんなはずじゃない」
壊れたように繰り返す彼女を前に、腰抜けな私はただ唖然とするしかできなかった。
入場チケットの紙屑が雪のように宙を舞い、ターフの地に降り注ぐ。
「ああ、ぁぁああ!!」
そして私は何を思ったのか、その場から逃げ出してしまった。
怖かったからだ。さっきまであんな笑顔を見せていたのに、こうも壊されてしまうなんて。
この世は歪んでいる、現実なんてくそったれだぁ!!
......しかし、その途中で私は覚えていた。
彼女らを追い越し、一着となったターフアドミラルが自分の手を怯えた顔をしながら見つめていた事を。
そして瞳孔をかっぴらいたまま、立ち尽くすヨアケノカネを見る。
その顔は......彼女もまた何か、信じられないものを見たかのようだった。
本作品はpixivにも投稿されています。ご了承ください。
第5章と第6章は文字数を少なめにし連続投稿とさせて頂きました。
理由としましては、レース描写に力を入れたかった事が挙げられます。
ーーーーーー
今回、初のレース描写となりましたが非常に勉強となりました。
元々競馬をあまり知らなかった事もあり苦労しましたが、この経験を後々に生かしていこうと思う所存です。
また世界の広さや自分の非力さを再び再確認し、自分の中でも新たな考え方が生まれました。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
執筆にはAIのべりすとを使用しております。
生成された文章には加筆・修正を加えて投稿しています。
AI/人力の割合は4/6程です。
感想や良点悪点などございましたら、ぜひコメントお願いします。
参考にさせて頂き、本作品の改善に努めて参ります。
私の小説が、あなたの日常に少しでも彩を加えられたのなら幸いです。
ここまで読んでくれたあなたに幸のあらんことを。
この後の展開が気になりましたか?
-
気になった
-
気にならなかった
-
どちらとも言い難い