ウマ娘プリティーダービー She'll be DAYBREAK 作:ポンドアップル
ただ聞いているだけでいい。自分の安心を分けてあげるだけでいいんだ。
階段を駆け下りて、雪の中。
窓の外からは罵声が聞こえ、ウマ娘が言い争いをしているのはもう見飽きた。
「はぁ......」
......私は夕焼けの中、あの忌々しいトレーナー室の前にコンビニ袋を持って立っている。
また、扉には落書きがされていた。手慣れた手つきでそれを消し、玄関へと逃げ込むようにして入る。
今日は酷かった、でも昨日よりはマシだ......そう自分に言い聞かせながら、机の上に荷物を置く。
「明日は......」そんな事、考えたくもない。
そう考えながら、今日も安いカップ麺にお湯を注ぐ。
生きている意味が分からない......いや、ヨアケノカネの為ーー
ーーその彼女も、もう部屋から出てこなくなってしまったじゃないか。何をやっていたんだろう......何をしてあげられたのだろうか、私は。
気を紛らわそうと、テレビを点ける。
『競馬速報です、先日ターフアドミラルがフェブラリーステークスGIで一番人気のテューフォンから余裕の6馬身差で逃げ切り、一着となりました。
これによりターフアドミラルは芝、ダート両方のGIを2連勝という怪挙を果たし、SNSや掲示板はどよめいています』
「......」
そして消した。こんなもの、気休めにもなりゃしない。
あの時から......デビュー戦から11か月が経った。
彼女はその後も......未勝利戦を6敗。一度も勝つことが無かった......いや、勝たせてあげられなかったんだ。
そして日に日にレースに出る頻度は下がり、遂にはトレーニングすらままならなくなって......心を閉ざした。
今も彼女はあの部屋に閉じこもったまま。何もしてあげられなくて、こうなった。
デトネータも厳しいレースの予定に追われて身動きできずにいる。彼女は今、独りだ。
「虚しい」
そう一言呟いてラーメンをすする。
そして今日も、ふかふかのベッドの上で寝る事は泣き疲れた後にしか叶わなかった。
ーー 第7R 分かり合う、分かり合える ーー
私は今日も学園内警備の仕事を任された。
なぜこんな仕事ばかり回ってくるのかと言えば......
「どけよこのノロマ!」
「ぐあっ......痛ってーな、誰に肩ぶつけたと思ってんだぁ!!」
......現在、学園内でウマ娘の不満が続出しているからだ。その影響でこのような喧嘩も当たり前のようにそこら中で起こってしまっている。
その問題の根底には、現生徒会長が深く関わっている。......そこで、一枚のポスターが目に入った。
『マナミカド生徒会長は、トレセン学園をより走りやすい環境へと変えていく事を宣言します』
白いベールのような衣装を纏ったウマ娘。彼女が生徒会長、マナミカドだ。
彼女は『トレセン学園には走るウマ娘以外必要ない』という思想を掲げて、以前から学園の規律をより厳しくしていた。
しかし。数か月前に行われた大規模な校則の改定によって、外出はおろかゲームまでもが禁止に。
他にも携帯電話や電子機器は全て管理され、教育内容も五教科に加えマナー講習や模擬レースなども全て必修科目化。
彼女の手によって、トレセン学園は大きく変わってしまった。
「どうしてこんな事したの......?」
そうポスターの前で呟いても、答えが返ってくる訳が無い。
また今日も......この地獄になってしまった学園を廻る。
ーーーーーー
(一体いつまでこんな事......同じことの繰り返しじゃない)
もう見飽きた風景を後目に、自分への不満を永遠と脳内で繰り返す。
その時。廊下の角で見覚えのあるウマ娘とばったり出会った。
「あなた......プロジェクタイルさんですか?」
「留目トレーナー! 学園内の見回り、ご苦労様です」
ビシッと敬礼を決める彼女に、私は言った。
「こんな状況ですし、警備委員の人たちは大変でしょう」
すると......彼女はいつもの凛々しいイメージとは裏腹に暗い顔をして答える。
「その通りです......」
そして、彼女は悔しそうに拳を握りしめ、涙ぐんで言う。
「でも......こうなってしまったのは、何もかも私の責任です!」
突然言う彼女に、私は困惑した。
「え......だって校則を変えたのは生徒会ですし、あなた達は何も......」
すると彼女は半泣きになりながらも、はっきりとした言葉で言い返す。
「命令したのは彼女らでも、生徒達を取り締まったのは我々の行動だ! そして......警備委員を設立した私には全ての罪を背負う義務がある!!」
私は何も言えずにいた......ただ、突っ立っているだけ。あの時のように。
そして彼女は遂にその場から走ってどこかへと去った。そして思う。
(同じだ......私は、あの日から何も変わってない)
私は激怒した。その事に気付いてしまったからだ。
いっつもそうだ、明日こそはと言い結局変わることなどできない。より良くなるどころか、悪化していくだけ。
やる気を出せば出す程どんどん悪くなる。良かった試しなんてない。
思い返せばヨアケノカネが回復したのも全て周りのみんなのお陰だった。私は何もしてなかったじゃないか。
しかし......今やもう、そのみんなまでもが狂ってしまっている。最早助けなど、借りる事はできない。
このままでは、彼女は取り残されたままだ。
「............このままじゃいけない」
遂に私は踵を返し、走り出した。
「変わらなきゃ......今、変わらなきゃ!」
無数の人だかりを乗り越え、私は走る。
走る、走って助けに行く。もうそれしかできないんだ。
拒絶されるかもしれない。聞いてもらえないかもしれない。
でも何もしなければ、一歩踏み出さなければ、また同じ事を繰り返すだけだ。
「今日を生きるのは今日だけでいい......早く明日へ行かなくちゃ!」
日は沈み月が空に浮かぶ。2月の夜空の下、私は走った。
ーーーーーー
そして私は彼女のいる美穂寮へと辿り着く。警備委員の人に駆け寄って、私は言った。
「ヨアケノカネのトレーナー、四ツ谷 留目です! いきなりですが、美穂寮の中に入らせて下さい!」
唐突な言葉に彼女は驚いていたが、その後すぐに言う。
「現在、校則によって生徒以外の人間は寮への立ち入りを禁止されています。ヨアケノカネさんの事は分かりますが......申し訳ありません、今日はもう......」
私は彼女の腕を掴み、目を見て返す。
「助けたい人がいるの! 今日だけでいい、理屈なんて捨てて!」
すると、彼女は私の手をどける。そしてかけていたタスキを私に預けた。
「......このタスキを。ここを監視している赤外線レーダーの対象から逃れられます」
「ありがとう、このお礼はいつか」
それを掛けて玄関へと急ぐ。扉を開けると、イエローポイント寮長が驚いて私を見ていた。
「き、君! 何をして.....」
息を切らしながら、できる限りの大声で私は言う。
「ヨアケノカネさんは今ここにいますか!?」
その一言で彼女は全てを理解し、答えた。
「彼女ならあの部屋に居る。頼んだぞ」
そう言って彼女は道をを封鎖していた扉を開ける。そしてまた、廊下を走り回った。
長い階段を上り、やっとの事でそこへ辿り着く。
(ヨアケノカネちゃん......どうか答えて!)
そしてドアをノックする。
......すると、なんと扉が開いた。私はそのまま中に入る。
「動かないで!!」
なんとそこには......銃を構えたヨアケノカネがいた。
「ヨアケノカネちゃん!? どうしたの!」
「......ッ!」
私の問いかけに応えない。ただ、銃口を私に向けて引き金に指をかけているだけ。
しかし......照準器越しに見える彼女の目は、大きく揺れていた。
「やめて! そんなもの持たないで!」
彼女は震えた声で言い返す。
「お前を殺して死ぬ......もうそれしかできる事はない!!」
私は戦慄した。私が動かないでいた間に、彼女はここまで心を病んでしまっていたんだ。
行動の遅れが、彼女に歪みを生んでしまった。
「......」
でも、もしかしたら。
そう思って、私は前へと踏み出した。
「......何をしている!」
もう一歩踏み出す。まだ間に合うかもしれない。
「やめろ! ......やめて」
そして遂に、銃口が額に触れた。
彼女はただ怯えている。
「あ......ぁ......」
竦む彼女に......私は言った。
「ごめんね。言えなくて......何もできなくて、今までごめんね」
その時......彼女はその銃を手から落とした。
両手の力が抜けて、頬に一筋の涙が伝う。
「............留目さん......私、もうこんなになっちゃって......今からでも、やり直せるかな」
そう言う彼女の手足は、もう走れそうに無い程痩せこけてしまっている。
涙ぐむ彼女を、私はそっと抱き寄せた。
「きっと大丈夫よ、また頑張っていきましょう」
「......ありがとう」
私はヨアケノカネを抱きしめる。
すると、彼女は言った。
「あなたなら......私を、分かってくれるかな?」
彼女の言葉に深く頷く。すると、彼女は語り始めた。
「私は......家族の期待を背負って、ここまで走ってきました」
そこまで言いかけて止まってしまう。私はそっと、その続きを待つ。
「......一家は、中央で活躍し輝かしい戦績を残していました。しかし......私のおばあ様が生まれてから、その状況は一変した」
「ブラックナイト......そのウマ娘は、中央で惨敗しました。......それまでの功績が嘘のように。続いてその血を継いでいた兄弟も、負けていった。その子供も負けた......そしていつかそれは『夜の呪い』と呼ばれるようになって、やがてナイト家は......競バの歴史から忘れ去られました』
「そして数十年の時が流れて、私が生まれた。今や地方の一家と成り果てたナイト家の子供などに、世界は見向きもしなかった......でも、家族は私に大きな期待を寄せた」
「家族は私に愛情を注ぎ、育ててくれました。『お前は走れば世界を取れる』......そう言って、疑いませんでした」
「実際に検査結果は良好で、私も走るのが好きだった。だから、私は若くして中央に行く決心をした。でも......」
......聞いていると、再び彼女がまた泣き出す。
「大丈夫よ、ゆっくりで良いから言ってちょうだい」
そう慰めると......彼女は何とか続けた。
「......私には姉がいました。『ジョヤノカネ』......彼女は最初から成績の良かった私とは逆に......一家ののけ者でした......でも、人一倍に頑張ってた」
「ですが......私が生まれると親はそっちに目を向けるようになって......彼女はそれが嫌だった。私もそう思ってた。でも......家族は聞こうとしなかった」
「『あんなの気にする事はない。お前はあいつより強いんだから』......遂には彼女が中央の内定を取った時にも、何も言わなかった。口から血を吐くほどに練習しても 、そっぽを向いたまま」
「家を出る彼女を見送ったのも、私だけでした。彼女は私に『邪魔者は出ていくからね、お嬢様はGIを取れる年になるまでお茶でもすすってゆっくり待っててね』」
......そう言って、彼女は出ていった。
痛い程にその言葉が分かった。まるで自分の体験のように、その情景が呼び起こされる。
「そして......遂に私の番が来た。私は煌びやかな衣装を纏って家族総出で見送られた。でも、そんなのいらなかった。ただ......分かってほしかった。私以上に頑張っていた、おねぇちゃんの事を」
「でも......彼らは私に『愛してる』と言って、飛行機で飛んで行く私をただ突っ立って見ているだけだった!」
「それから何をやっても彼女の事を思い出して、その度に私は暗い事を考える! ......遂には人を信じられなくなって、人にも信じられなくなった............」
彼女は、全てを私に語った。それまで誰にも話せなかったであろう全てを、勇気を振り絞り日の下へとさらけ出したのだ。
そんな彼女を、私はただ抱きしめた。
「辛かったね......今までよく頑張ったね!」
ただ、彼女を心から理解する。それだけでいい。
理屈なんていらない。事実なんてどうでもいい。聞いて、理解する。
本当に、彼女は苦労を続けてここまで来たんだ。それだけで十分。
「留目ざん......うわぁぁああぁぁぁぁ......」
夜空の下で、落とされた銃が見守る中。
私は泣き叫ぶ彼女をただ抱きしめていた。
本作品はpixivにも投稿されています。ご了承ください。
執筆にはAIのべりすとを使用しております。
生成された文章には加筆・修正を加えて投稿しています。
AI/人力の割合は4/6程です。
ヨアケノカネと留目トレーナーは、遂に心から分かり合う事が出来た。
そしてやっと、物語は進みます。
本当に長らくお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。
今日から私生活の方が少し忙しくなるので、投稿頻度が落ちてしまうかもしれません。
最低でも二日に一章は投稿します。どうか、お待ちください。
感想や良点悪点などございましたら、ぜひコメントお願いします。
参考にさせて頂き、本作品の改善に努めて参ります。
私の小説が、あなたの日常に少しでも彩を加えられたのなら幸いです。
ここまで読んでくれたあなたに幸のあらんことを。
この後の展開が気になりましたか?
-
気になった
-
気にならなかった
-
どちらとも言い難い