開拓系宇宙人に転生したので太陽系開拓しに行く   作:液体コーラ

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2話 準備をしよう

これは私の地球支援プロジェクト参加が決定する前日の事。

 

風光明媚なリゾートホテルの特等室。

そのバルコニーで私たちは向き合っていた。

 

「ふむ、地球への支援ねえ」

 

片方は見目麗しい美女、まあ私で、もう片方は恐らく昔にスポーツマンであったろう名残のある、ガタイの良い、でもどこかくたびれたおじさんである。

 

光景だけ見るとパパ活のそれだが、実は真逆。この部屋も、飲んでるジュースも全部私持ちで、私が一方的にお願いする立場だった。

 

というのもこのおじさま、我が国の栄えある貴族議員の一人なのだ。

彼の一族と私の一族は、代々ガッツリ癒着し、互いに利益があるように行動してきた。

 

だからこそ、私が呼びつければ、先生はわざわざこのリゾート惑星――グルス家保有――へと足を運んでくださると言うわけ。

 

そこで私は、先生に最後の根回し、というかお願いをしていた。

 

目的は勿論、私の地球渡航……もとい、地球への支援の許可、もっといえば後押しのお願いだ。

 

単なる渡航なら、要するに地球人に紛れ込んで、地球を観光するだけなら簡単だ。

 

だが、私はこれを機に、地球に宇宙文明の恩恵を与えるつもりでいた。そのためには、法的根拠が必要になる。私はドキドキしながら話を続けた。

 

「はい。資料にあるように、地球人の衛生環境は劣悪極まりないもの。

 これを放置することは、宇宙に冠たる平和国家、ママドの名折れです。

 早急な人道支援が必要でしょう」

 

私は、地球を観測して手に入れた資料……具体的には発展途上国とかの資料をまとめてプレゼンを行っていった。情報に偏りがある? 文明に偏りがある地球が悪いでしょ(真顔)

 

だが、その資料を見ても先生は顔を微妙に顰めるくらいで、どうにもピンと来ていないようだった。

 

「しかしねえ。あの地球だよ?

 辺境地の蛮族だ。文明も発達していなかったんじゃないか?」

 

「ええ。彼等は母星の衛星にようやく手を掛けた程度の文明しか持ちません。

 文明国の基準に達するには最低でも数百年は必要かと」

 

「非文明国への支援、か。労多くして功少なし。国民の理解は得られないだろう」

 

労多くして功少なし。うん、事実だ。

 

そもそも、だからこそ、宇宙のどの国家も地球に干渉していないのだ。

 

太陽系はさして大きな星系でもないし、取り立てて環境がいいわけでもない。そのうえ、文明国がたくさんある主要地域からかなーーーり遠いド辺境。

 

強いて言うなら地球という最初から居住可能な惑星はレアだけど、そこにウジャウジャと70億もヤバイ蛮族が住んでるんじゃもう誰も寄り付かないのだ。

 

まあでも、我が国は豊かでのんびりしてるから、地球を支援するってなったら「地球? はえー、いいんじゃない?」って感じで受け入れるとは思うから、先生の言う「国民の理解」は「欲の皮の突っ張った偉い人達の理解」と変換して受け取ったほうが良いけど。

 

ともあれ受け入れられない事は理解していたので、私は次のカードを切った。

 

「承知しています。 

 ので、支援物資は私がすべてを提供します。対応も私がすべて行う予定です」

 

要するに、金も人も出したくないのなら、全部私が出すぞ!ということだ。

 

私の貰った船団はかなりの規模のもの。ほぼすべての作業は自動化されてるし、人間と変わらないAI搭載型のアンドロイドだって何人もいる。カタログ情報だが、そこそこの大きさの惑星でもあっという間にテラフォーミングできるそうだし、各種生産設備に短距離のワープポータルやら宇宙港のような高度な設備すら、現地の資源を使えば建造できる。その規模の拠点があれば地球1個の支援なんて造作もない。

 

そんな私の発言を受けて、先生は一瞬黙り込んで、

 

「……本気かね? 御父上はなんと仰ってるんだ?」

 

と、聞き返してきた。

 

……うん。まあ。

 

「父は私にこの規模の船団を預けました。 そういうこと、です」

 

私は船団の資料を先生に手渡して、そう言った。

うん、つまりそういうことだ(匂わせ)。

 

実際はただのリフレッシュ用のプレゼントなんだけど、私の健康などを気遣った父によって、私の船団は趣味用というにはかなりのオーバースペックを誇る。もうほとんど後進文明へのODA徳用パックみたいになってるのだ。ぶっちゃけこの規模なら、準文明国どころか下位文明国だって相手にできちゃうと思う。この船団を見れば、ほとんどの人は私が父から地球の支援をしに行くよう言われたのだと信じるだろう。親バカが裏目に出たな父上!

 

そして先生も、そのように信じたようで、深く頷いた。

 

「分かった。 その内容ならすぐにでもまとめられるだろう」

 

「ありがとうございます、先生!」

 

「詳しい内容は追って伝える。君は出立の準備をしておきたまえ」

 

そう言われた私は、小躍りしそうなのをこらえながら、もう一度先生にお礼を言うと、メイド役のアンドロイドたちに、先生をしっかりともてなすように伝えてから自宅へと帰った。ちなみにお渡しするお土産はいつもの山吹色のお菓子。この星の特産で、訪れた要人はみんなもらって帰る代物。一体どんな味なんでしょうねぇ(目をそらしながら)

 

さて、帰宅すると、父は不在だった。

 

いらん時に居て、こういう必要な時に留守とはなんて間の悪い人だ。独断で動き回った後だから、流石に一言言っておきたかったのに。

 

まあ書置きでも残していけばいいか。

 

「えーっと、ごめんなさい、地球に行ってきます。お仕事です。悪いようにはしません、と」

 

まあこんなもんだろ。

 

私は満足して、宇宙船の整備へと移った。

 

 

先生との密談から1日。

宇宙船の整備が終わった私は、父から捕縛されるのを避けるため、ワープ機能の試運転を兼ねて1時間に1回、船団丸ごとママド国内のどこかにランダムワープするという宇宙海賊じみた行為を働きつつ、本省からの連絡を待っていた。

 

ちなみに父からの連絡は着拒してあるはずなんだけど、超技術でクラッキングを受けるせいで意味を成しておらず、すごいペースで着信が鳴り響いている。うるせえなあ!

 

今この瞬間も、ピピピ、と無機質な電子音が、メールが届いたことを伝えている。はー本当にしつこい……あれ?

 

あ、これ厚生省からだ!

私はあわててメールを開くと、どうやら地球支援の内容が詳しく決まったようだった。素晴らしい!

 

いろいろ持って回った書き方がされているが、その内容を簡潔にまとめるとこんな感じになるようだ。

 

 

・プロジェクトは厚生省とグルス製薬を主導として行う事

 

・双方の代表者として、サーラ・グルス(私)をあてること。

 

・代表者には対地球のあらゆる権限が委任され、政治的手法も許可される事。

 

 (ただし使っていい資源は私の持ち出し分だけ。)

 

・医療・医薬品の支援を主とするが、他の事をしても良い事

 

・現地への影響を抑制するための禁止事項が複数。物資を渡すのは良いけど生産技術や生産設備を渡すのは禁止。

 

 また人をこちらの保有する施設・設備に招くのも禁止。

 

・プロジェクトは本日付けで開始されるのですぐ移動する事

 

 

 

である。うーんガバい。

 

まあ大切な物は渡すな見せるな連れてくるな、あとは本国に迷惑かけない範囲で好きにするようにという事だ。しかし、本当にびた一文くれないとはな。しかも形式上だけでも報告義務とかあると思ったけどそれもない。マジで私が好き勝手していいみたいだ。

 

というか期間の定めすらもないとかマジ? これもう島流しだろ。

 

ま、まあいいや。

 

もとより資源は私が丸抱えするつもりだったし、期間の定めがないのも報告義務が無いのも、私にとっては渡りに船だ。

 

ともかく、詳細が決まったのならとっとと国内から逃げ出してしまおう。

なに、太陽系まで行けば父も追っては来ないはずだ。

 

……そこで、私ははたと気づいた。

太陽系のどこに行こう?

 

向こうでまずやることは、あっちに生産拠点を設ける事だ。支援も何も物資がないとどうしようもないしね。したがって、距離的には月にワープしていろいろ作るのが一番なんだけど……さすがにンなことしたら大混乱待ったなしだろう。

 

同様の理由で火星・金星もアウトだ。近すぎるし、もっといえば惑星を占拠しちゃうのはちょっとかわいそう。地球人の今の科学で金星の開拓とかムリムリの大無理だが、火星には探査機とかも送り込んでたはずだ。そんなところに勝手に行って領有宣言は、なんかダメな気がする。

 

とすれば、もっと遠く、かつ衛星の……木星の衛星、ガニメデあたりがちょうどいいだろうか。このへんなら、今の地球人じゃつま先も引っかからないほどの距離だし、占拠しちゃってもそう問題ないだろう。

 

冥王星とか海王星でもいいけど、もうちょっと近いほうが地球からもコンタクト取りやすいだろうしね。

 

それに、木星の衛星を本拠地にすれば、いずれ開発が進んで資源が必要になった時に木星からいろいろ採取することもできる。 

 

木星みたいなガス惑星は、さすがに住むのに向かないが、資源の採取という点で考えたらかなり良いのだ。

 

よし、じゃあ決定! 私の拠点はガニメデにしよう。この星は衛星としてはかなりでかく、月より大きく太陽系の衛星じゃ最大だ。氷だらけだけど、これくらいなら居住可能にするのは容易い。それこそ半袖で外出できるようにしてしまうことも可能だ。

 

だがまあ、居住可能にすると星の見た目変わっちゃうし、そうなるとさすがに私の来訪がバレてしまうだろうから、最初は普通に建物作るくらいにしておこう。で、拠点ができたら地球にコンタクトだ。相手は……まあ、アメリカでいいだろう。

 

前世が日本人の私としては、日本に積極的に連絡したい気持ちはあるんだけど、日本に最初にコンタクト取ったとして、かの国が良い感じに国際社会をリードできるビジョンが見えないんだよね。というか下手をしなくても大事過ぎて、国際社会から孤立しかねない。宇宙人の手先!とか言われたりしてね。その点、アメリカなら多分大丈夫だろう。アメリカだし(ふわふわ)

 

それに、別にアメリカとしかやり取りしないわけではない。まず最初は、ってだけだ。仮にかの国が私との取引を独占しようとしても無駄だ。そんなことは絶対に許さん。

 

……ちなみに、私はこの最初の拠点づくりにあたって地球人の許可を取るつもりはない。拠点は絶対に必要だが、絶対にごたごたするしね。そもそも地球は100以上の国家に分裂してる。許可なんて誰にも取れないだろう。

 

まあなんだ、宇宙文明の恩恵を受けられるわけだからこらえて欲しい。

 

よーし、それじゃ、ガニメデまでワープ開始ぃ!待ってろ太陽系!

私は、父からの鬼電を無視しながらワープゲートを開き、船団を突入させた。

 

……で、2秒後。もうついた! 早い!

 

「……わぁ、木星、木星だ!」

 

ガニメデまで飛ぶと、遠くに、昔懐かしい木星の姿が見えた。

船の望遠機能で拡大すると、前世で何度も見たあの有名な大赤斑も見える。

 

こうして見ると、まるで吸い込まれそうな不気味さがある。でも、でも、ついに帰ってきたんだ、太陽系に!

 

……ああ、ああ、はやく地球に帰りたいなあ!

 

「よし、じゃあ急ぐか!」

 

まずはガニメデを開拓する!

 

ママドの法律では開拓した星はその人のものになるというものがあるが、ここでいう開拓とは、「生活インフラの整った定住可能な建造物を造る」「資源の採集・採掘を行い一定量産出する」事の二つを条件としている。

 

こんなもの、持ってきた設備を広げれば半日でクリア可能だ。

 

頑張るぞー!

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