開拓系宇宙人に転生したので太陽系開拓しに行く   作:液体コーラ

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4話 はろーわーるど

「サーラ、サーラ、起きて。アメリカから連絡が来たよー」

 

……。ハッ!

 

食事を摂り、ベッドで横になっていた私の体を、マキさんがゆすった。

どうやら、一眠りしている間に米国から返事が来たようだ。

 

見ると、地球時間でしっかり12時間以内。 はやく交流したくて時間指定を急にしたけど、間に合わせてくれたみたいだ。嬉しいねえ。

 

私は早速、彼等からのメッセージを開いた。

 

内容は、当たり障りのないものだった。

来訪を歓迎する、うちのガニメデの保有を追認する、ママドとアメリカで話し合いがしたいから、ワシントンまで来てくれ、ってとこだ。

 

うん、とりあえず敵意がない様子でよかった。一番ありうると思っていた交渉失敗ルートの一つとして、私のガニメデ占領に怒って「ファッキューエイリアン、太陽系は人類のものだ!」って食ってかかられるというものがあったので、それは避けられて何より。

 

よし、ともかく、返事を返さなきゃいけない。

 

 

『貴国へのお招き感謝いたします。あなたがたに、ガニメデまで有人飛行する能力がない事は承知しています。

 なるべくそちらの混乱を抑えたいので、ステルス機能をONにして、合衆国政府以外からは観測できない状態でそちらへ向かいます。

 着陸場所もそちらの指示に従います。広さは、そちらで言えば、自動車1台分あれば十分です。

 日時ですが、なるべく早くの会談を望みます。

 またお近づきのしるしとして、贈答品を用意しますので、受け取って頂ければ幸いです』

 

うん、こんなもんだろう。

……その後何度かこまごまとしたやり取りをして、私は明日の正午、ホワイトハウスへと降り立つ事となった。アメリカ側は、なんか歓迎の準備とかどうこうで2週間くらいくれない?と聞いてきたんだが、そんなに待ちたくないので拒否って明日にしてもらった。ごめんね急で。

 

行くのは私と、あとお付きのアンドロイド二人。

やり取りの中では、地球人と同じものは食べられる?とも聞かれたので、いけるよと返事しておいた。

ひょっとして、何か食べさせてくれるのかもしれない。楽しみだな、地球の食事……。まあ1日しかないし、大したもの用意できないかもだけど。あ、そうだ。

 

「ねえ、二人は食事できるんだよね?」

 

聞くと、ゆかりさんが代表して答えた。

 

「できますよ。必要はありませんし、今の所したいとも思いませんが」

 

ん、やっぱりそうか。

学習元の動画では、あんまり詳しい食事シーンってないしね。

 

「そっか、わかった。

 じゃあ再設定するね。せっかくだし一般的な人間くらいには食欲持ってもらわないと」

 

彼女たちとはいずれ地球観光する予定だし、それに向けて食事はしっかりできたほうがいいだろう。

アメリカには悪いが、調整に付き合ってもらう。

なにしろ手持ちのデータで食事関係なのは、ママドや、ママドと国交のある国の味覚データだけだ。悪いとは言わないけど、地球の美味しいものを実際に食べて、それを基準に味覚を作れば、地球で遊ぶ時に一層役立つはずだ。

 

「ねー二人とも。どこ行きたいとか、ある?」

 

「え~? 特には……部屋でゲームしてたいです」

 

「私はライブとかいうのに行ってみたいな」

 

ウム、これは二人とも良い提案だ。

ゲームも音楽も、地球人類の生み出した素晴らしい文化だからね。

ライブは、まあすぐには難しいかもだけど、ゲームなら簡単だ。アメリカについたらゲーム機を譲って貰おうかな?

 

 

次の日、私は地球の傍まで来ていた。木星から地球までなら、ワープするまでもない。普通に飛んで1時間で着いた。

ちなみに、船団はほとんどガニメデに残して、自動で開拓を進めさせている。だから地球に来たのは、本船……全長30kmのでっかい開拓船だけだ。

ただ本船には多くの機能があるし、アンドロイドもたくさんいる。不足はないはずだ。それにこれだけ大きければ、ステルスさえ切れば地上からよく見える。会談が成功した時が楽しみだ。

……あ、今、国際宇宙ステーションとすれ違った。 ふん、原始的な衛星だな(宇宙人目線)

 

……ああ、しかし。青い、青い星。私の前世の母星。

本当に……美しい星だ。 私の実家の惑星グルス製薬も綺麗だけど、やはりこちらのほうが馴染む。それにしても、ママド本星とはえらい違いだ。あの星も昔はこんなふうに綺麗だったのかな。

 

……あ! アジアだ。日本列島がある!富士山も見えるぞ!周り平地なのに、あそこだけ盛り上がってる。雪で真っ白だ!

久しぶりに見た富士山は、しかし地上から見たものと違って、どこか新鮮だった。

 

「綺麗だね!」

 

私は横で一緒に景色を見ていたマキさんに声をかける。

彼女は頷いて、

 

「そうだねえ。植物も沢山生えてるし、良い星だね」

 

と返した後、そういえば、と言葉を続けた。

 

「さっきから遊んでるけど、ちゃんとお仕事の準備はしたの?」

 

「……もちろん! 

 持ってくもの全部ポケットに突っ込んだし平気だよ」

 

マキさんが心配してくれたので適当に返しつつ、私は窓から目線を切って、荷物の再確認にかかった。いや、言われると不安になるんだよね私。

 

整理中、そういえばゆかりさんは何してるんだろうと、ちらりと様子をうかがうと、貸してあげた端末でずっと動画を見てるみたいだった。 君、ドライブ中にずっと携帯いじってるタイプ?

 

さて、そうこうしていたら、アメリカ上空に到着。

時刻は予定通り、正午10分前だ。

 

さあ、下りるぞー! 

 

簡単な操作をすると、ボッ、と、大気圏に突入した時特有の音を立て、船は地球へと侵入する。

 

地球よ!帰って来たぞ!!!!

 

えーっと、あとはホワイトハウスの庭に下りればいいんだよね。地図はもう作ってあるし、これに従おう。まずワシントン上空に行って、ホワイトハウスはこのへん……あ、あった。なるほど、ヘリポートみたいに、分かりやすいマークが刻まれている。ホワイトハウスの綺麗な芝生に、なんか申し訳ない気分。

 

「で、どうやって降りるの? 

 この船を下せる場所なんてないよね」

 

「うん。だから船は上に停めて、エレベーターで降りるよ」

 

マキさんの疑問に、私は簡潔に答えた。

この船には、SFのUFOが出してるような、貨物を出し入れできる光を出す機能がある。それを使って下りるのだ。なんか正式名称あるらしいけど、面倒なので私はエレベーターと呼んでいる。これ、周りの景色も見えるし、浮遊感が楽しいんだよね。ロープウェイとか観覧車好きな人なら絶対楽しいはずだ。

父は「貨物用だから使っちゃダメ」とよく言ってきたけど……なに、これは私の船だ、文句を言う人はいないのだ。

 

「え、テレポートじゃないんですか?」

 

訂正。いたわ。

ゆかりさんは嫌そうというか、若干引いた顔をしている。

学校で同級生が良くしてた表情だ。 すごい腹立つ。

 

「……テレポートがいいならそうするけど」

 

「拗ねないでくださいよ、面倒くさいな……」

 

「なんだとこのやろう」

 

「まあまあまあ……ほら、早く行こう。時間になっちゃうよ二人とも」

 

ムムム。 まあ、それもそうだ。

私はとりあえず留飲を下げた。 あとで覚えてろよマジで。

 

 

そして……私は18年ぶりに地球の土を踏んだ。

 

「……」

 

あっ。

 

やばい。

 

泣きそう。

 

感無量だ……。

 

……でも、感じ入っている暇はない。

周りを見渡すと、なにやら政府高官っぽい人達がじっと空を見上げて待っており、その周囲を軍人が警備していた。大変物々しい。

見れば、ニュースとかで見た要人を迎える際の儀仗隊ではなくて、バチバチに武装した、戦闘用の兵隊のように見えた。

 

恐らく、私たちから要人を守るための警備に違いない。

いやあ、警戒されてるねえ。

まあ、それも当然だろう。宇宙人だし。アメリカ、宇宙人嫌いでしょ多分。映画で見た。

だが、こんな程度の兵力で私と戦おうとは笑止千万。

どうあがいても勝ち目はないので、無駄な抵抗はよしていただきたいものだ。

 

ちなみにまだステルス切ってないので、私たちはみんなに見えていません。

一言も発さず、偉そうな、いや……必ずや偉いであろうおじさまたちがじいっと空を見てる光景はかなりシュールだ。

 

「……」

 

時計を見る。

まだ正午まで時間はあるようだ。

 

ようし、悪戯でもすっか!!

 

誰にしようかな。偉い人は、この後の会談に響くかもしれないし、やっぱり兵隊さんだよね。それもなるべく若いの……。

 

私はそのへんの若い兵隊さんに駆け寄り、認識表を盗み見た。

ふむ、ジョージ君か……。ま、この子でいいだろう。

 

私は彼の首筋をつーっと指先で撫でた。

 

「……っ!?」

 

彼は驚きつつ、しかし他の兵士さんが何も反応をしていないのを見て、気のせいだろうと思ったのか。

声を必死に抑えながら、警戒を続けている。

 

ウム、かわいい。

 

ふふふ……。

 

「なーに馬鹿なことやってるんですか」

 

ゆかりさんは呆れ顔だ。マキさんも温かい目をしている。

なんだよ、悪いかよ! これでもちょっと緊張してるから、リラックスしたいんだよ!

 

その後も私は、時間一杯まで彼をくすぐったり、銃のマガジン取り上げたり、ゴーグルを曇らせたりというチンケな悪戯を繰り返して遊ぶのだった。

 

あー楽しかった。

この子、根性あるね! 何度か危なかったが、悪戯中も一切くじけず気を付けを続けていた。

気に入ったよ。あとでまた声をかけよう。

 

私は彼の服に、私の端末直通の番号と、「連絡してね」「人に教えたら大変なことになるよ」というラブコールを書いた紙を忍ばせて、偉いだろうおじさんたちの前に戻った。本船が太陽系にいる限り、あの番号を使えば地球の電話からでも通話ができるはずだ。

連絡来ると良いなー。

 

……さて、おふざけはこのへんにして。正午ピッタリだ。

ステルスを解除し、声をかける。

 

「こんにちは、地球人類の皆様」

 

「っ!? あ、ああ。これは失礼……」

 

私がステルスを解除すると、ざわっ、と一瞬どよめきが広がった。

まあそりゃそうだよね、急に3人も出現したんだから。うち2人はアンドロイドだけど伝えてないし。

見渡すと、兵士の中には、思わず銃を握りしめた者もいたようだ。

ジョージ君などは既に銃を構える寸前で、周りの兵士と比べても気が高ぶっているようだった。どうしてだろうねえ……。

 

ともあれ私は、さっそく自己紹介を行った。

 

「私はママド国より、対地球の全権を委任されております。

 サーラ・グルスと申します。メッセージにてやり取りを行っていたのも私です。

 今回は我々との交流をご検討頂けるという事で、大変喜ばしく思っています」

 

だがやはり、高官らしきおじさまはさすがで、動揺はごく一瞬、すぐに気を取り直してこちらに握手を求めてきた。

 

「サーラ・グルス殿。ようこそ合衆国へ。

私は大統領のショーン・バイディンです。合衆国政府、そして地球人類を代表して、あなたがたを歓迎します」

 

なんと、先頭のおじさまは大統領らしかった。

マジか、大統領がこんなところまで? 危なくない? 勇気あるなあ。

普通、大統領は奥の方で待ってるものじゃないだろうか。

 

「これはこれは、ショーンさん。

 わざわざ大統領にお出迎えして頂けるとは嬉しいです。

 それで、会談でしたね?」

 

「ええ。我が星と、ママドの将来のための。さあどうぞ、中へ」

 

「ありがとうございます」

 

一つ礼を言い、建物を見上げる。

 

ホワイトハウス。

ママドの専門書で地球について調べた時、国連の本部を差し置いて最も多く書かれるのはこの建物だった。地球に百以上存在する小国家の中で、最も力のある国の本拠地として、その名は宇宙にまで広まっている。

 

さあ……ここからが本番だ。

頑張れ私ぃ!




拙作などに過分な評価をいただいており、驚いています。
まあすぐ下がるでしょうけれど……このジャンル、需要に比して全然供給がないんだなと再確認。転生宇宙人来訪物もっと増えて。
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