開拓系宇宙人に転生したので太陽系開拓しに行く 作:液体コーラ
「では、すこし時間を置きましょう。
お休みする時間が必要でしょうから。 それでよろしいですか?」
サーラ・グルスは気づかわし気にこちらを覗き込みながらそう言った。
深海生物の発光器を思わせるくりくりとした大きな目は、私に本能的な恐怖を感じさせ、目の前の女性が地球人とは全く異なった種族であることを痛感した。
ママドというのは様々な種族からなる国家なのだろうか、あるいはなにがしかの方法で変装でもしているのか。使者3名のうち2人は、地球人……アジア人と白人にごく近い見た目をしていたが、代表である彼女だけは違った。
骨のように真っ白な肌と青ざめた髪の毛は、まるでゴーストのようにも見える。造形だけに注目するのなら、二つの目に鼻、口があって髪の毛があり、ほとんど人間そのものにも思えるのに、その全身から感じられる異物感は、以前我が国の企業が造ったアンドロイドから感じた不気味の谷を想起させた。
もはや抵抗の意志は折れかけていた。
私は国家元首だ。偉ぶるつもりはないが、普段は相手の風貌などに怯えるような脆弱な精神はしていない。こんな思考が出る時点で、正常な状態でないことは簡単に判断できた。
再び合衆国大統領としての職務を全うするには、しばしの休憩が必要だろう。
私は彼女の言葉に頷き、我々が休憩をしている間に、彼女らには食事を摂ってもらう事とした。
ママドよりの来訪者たちが部屋を出て1分か2分、私はその場から動けないでいたが、しかし、いつまでも放心しているわけにはいかない。ともかく、これからの事を考える必要があるからだ。そうして痺れた様に動きの鈍い頭に活を入れ、どうにか思考を回しかけたとき、私に近寄る人影が一つ。
「ご無事ですか、大統領」
「エドワードか。 君はすごいな……サーラ・グルスと、ママド人とああまで話せるとは」
他の誰もが半ば放心する中で、真っ先に私に寄り添って言葉をかけてきたのは、古くからの盟友であり、今は国務長官としても私を支えるエドワード・フォーサイスだった。
彼は先の会談の中で、サーラ・グルスの悪意ある恫喝に怯え、二の句の継げなくなった私に替わり果敢にも交渉を継続してくれた。その胆力は驚くべきものだと言えるだろう。
「いいえ、いいえ。あなたの重責に比べれば……」
「謙遜はよしたまえ。私はエイリアンの恫喝に屈して何も言えなくなってしまった。恥ずべきことだ」
「あれを前にすれば、誰しもがそうなります」
「……なあエドワード。
サーラ・グルスは自分はコルテスやピサロとは違うと言ったが……
やはり悪事とは返ってくるものなのだな」
「閣下?」
「先住民族を抹殺しなり替わった我々は、今度はそっくりそのままその脅威にさらされると言うわけだ」
「……」
私は、心のうちの不安を吐露した。
先ほどの会談……それは最初から最後まで、サーラ・グルスの宇宙的悪意に彩られたものだった。
たとえば、彼女は自分をコンキスタドールとは違うと称したが、この大陸で我々がしてきたことを考えれば、そして今の状況に照らし合わせれば、あまりにも悪意のある言葉だった。
新大陸への新たなる来訪者は、かつての我々がそうしたように、我々を殺戮し国を倒し、もう一度この大陸の支配者を変える事も、そして名前を……かつて旧大陸から白人が乗り込む前に呼ばれていた名前が忘れ去られたように、アメリカという名を、いや地球という名すら、この世から消すことすらも可能なのだと、彼女はそう示唆したのだ。
歴史……そう。歴史だ。
今やわれわれの歴史そのものが、彼女の掌の上にある!
その後に彼女の見せた、時間を戻してしまう薬。あれこそ、彼女も持つ我々の歴史を消してしまおうという悪意を証明しているだろう。
「あの薬。 あれを、姿を隠した宇宙船が空から撒けば、我々はおしまいだ」
「それは、そうですが、しかし」
「人間だけではない。地表に存在するすべてが、想像を絶する苦痛の中で生まれる前へと戻され消え果てるのだ。地球の歴史そのものが失われてしまうかもしれない!」
言いながら、私は自らが感極まるのを感じる。
うっすらと涙すら浮かんできたようだった。
あの時間を巻き戻す薬を億単位で用意できると言うのが本当ならば、彼女は地上に在るあらゆる生命を、恐るべき苦痛を与えながら原始に返し、消してしまうことができるのだ。海中や地中なら、あの影響から逃れられるのだろうか? いいや、そんなことは期待すべきではないだろう。
この星は彼女がその気になれば、生命はおろかその痕跡すら一かけらも存在しない、ただの土くれとなり果てる――
合衆国どころではない。全人類がどうこうなどというちっぽけな話でもない。
46億年、連綿と続いてきた地球の歴史が無かったことにされてしまうかもしれないのだ。
かつてアメリカにあった文明でさえ、すべてが消え果てたわけではない。
チョコレート、トマト、タバコ、チリ・ペッパー、そしてコーン。
これらはすべてアメリカの先住民たちが営々積み上げた文明の成果であり、同時に地球の紡いだ生命の歴史の一端だ。彼等の文明が滅んだ今も、これら作物は我々人類を力強く支えている。
人類の創造性は、力による破壊と殺戮などに負けない強さを確かに持っているのだ。
だが……あれはすべてを消してしまう。
すべてのことを、全くなかった事にしてしまうのだ。
どんな破壊よりもずっとたちが悪い、発生そのものの否定。
あるいは彼女の言葉、コンキスタドールとは違うというのは、私はコルテスやピサロほど甘くはないという宣言、なのかもしれなかった。あんな中途半端な連中とは違い、自分は何もかも、跡形もなく消してしまえるのだと。
その恐るべき脅威に対しては、どのような抵抗も無意味だろう。
あの薬剤は液体だ。大気中に持ち込まれる前に彼女たちを追い払えば、ともかくその脅威は去る。だが、そのような事は夢物語で、全く不可能だ。
姿を隠した宇宙船で、木星から地球まで半日で……下手をすればもっと早く移動できるような機動性を発揮し、地球のあちこちをレーザーで焼き払う。それだけで我々地球人類はなすすべなく敗退するはずだ。
加えて、概念補強薬とかいうもので見せたように、あの船は物理的な力では傷つかないように細工してあるに違いないし
あの途方もなく巨大な船に何万と乗っているだろう乗員たちは、サーラ・グルスが見せたような、コミックヒーローと見紛う力に耐久性、超能力を使ってくる超人兵士なのだろう。
人類世界最強の米軍も、両手に余る核兵器も、こうなればむなしいばかりだ。
「……まだ希望が無くなったわけではありません、閣下。
もとより宇宙人相手に戦争など、選択肢にありませんでした。
武力で劣っていたとしても、それは問題ではありません」
「エドワード、エドワード……エドワードよ、違うのだ、そうではないのだ。
わかるだろう?重要なのは我々がエイリアンに勝てないことではない。連中がそれを見せつけ、我々を恫喝したという事実だ」
つまり、彼女に我々を尊重するつもりがまるでないという事が問題なのだ。こちらを恫喝するためだけに、仮にも会談を行っている相手国家の元首に拷問じみた真似をすることすら厭わなかったほどなのだから。
このような相手との交渉は、極めて困難だと言わざるを得ないだろう。
「なにより……もう、我々は手遅れだ」
そして、仮に今後の話し合いが最大限うまくいき、これまで通りの生存を許される、あるいは宇宙文明からの福利を巧く享受できたとしよう。
だとしても、
発展の可能性そのものが蓋をされた……人類の未来は閉じられたのだ。
「私はてっきり、ガニメデは随分前から開発されているものだと思っていたよ。
太陽系の木星より外側を順次開発する……その意味を私はまるで理解していなかった」
ガニメデの地表だというその画像は、ニューヨークの摩天楼、あるいはロンドンかイスタンブールを思わせるほどであり、それが数日で為されたものなどということは想像の埒外だった。
だから私は、ママド人がかなり以前からあの星に根を張っていたと思ったし、逆説的に、いかな宇宙文明とて、遠く離れた星に大規模な開発をするには相当な労力と年月を必要とするはずだと考えていた。
だから、奴らが最初に木星より外側の太陽系の星々の領有を宣言したときも、不快には思っても、差し迫った危機を感じはしなかったのだ。宇宙のどこから彼女たちがやってきたのかはわからないが、なにしろ地球は太陽系に属しているのだから、太陽系の星々を開発するにあたっての地理的な優位はこちらにある。
であれば、交渉次第で、将来的には太陽系全土を人類の手に取り戻すことも可能であろうし、彼女の言う「諸権利の譲渡」に際してこちらが提供する代償も、そう過大なものにはならないだろうと楽観した。
だが、それはすべて間違いだったのだ。
想像を絶する開発力……。あれほどの大都市がわずか二日で造られたということであれば、ママドにとって、もはや各種資源や距離など問題ではない事を意味している。
とすれば彼女がその気になれば、太陽系の主だった星々が開発されつくすのにそう長い時間はかからないはずだし、既に開発された星々を返還してもらうためには、途方もない代償を支払う必要があるだろう。いや、あるいは返還など永久にしてもらえないかもしれない。
さらに悪い事に、木星以遠の太陽系の星をママドに占領されてしまえば、我々は太陽系の外に出る時には必ずママドの領土を通らなければならなくなるのだ。
地球はこの無限の宇宙の中で、太陽系の内側の、たった4つの惑星分の範囲に閉じ込められた、宇宙の内陸国になってしまったのである。
仮にこの宇宙にママド以外の宇宙文明があったとて、それと交流するには、きっとママドを通さなくてはならなくなる。
外交権の喪失……。 属国、という言葉が私の頭をよぎった。
「地球人類の未来は、宇宙へ飛び出す夢はもはや閉じられてしまった。全て私のせいだ……」
「閣下、どうか冷静に。いいですか閣下、まだ何も起きていません。まだ、何も起きていないのです。我々は未だ世界最大の超大国であり、宇宙人ははるか空の彼方、小さな星に都市一つ分の勢力を持つにすぎません」
「楽観だな……それも極端な」
「いいえ大統領。なにより彼女は我々に、その強大な力の一端の譲渡を提案しました。表面上の事かもしれませんが、件の脅迫に関しては謝罪すらしてみせたのです。その誠意を信じることはできませんか?」
「しかし……」
「恐怖は判断を誤らせます。恐怖や無理解による一方的な決めつけは、何よりも憎むべきもの。その真理は、宇宙人相手でも地球における外交と変わらないはずです」
「……」
「強大な軍事力による恫喝ごときで、対話を辞めてはいけません。
文明で劣る我々に許された唯一の行いが、対話なのです、大統領」
そうか……ああ、そうだな。 その通りだ。
そういえば私は今、弱気になっていたのだった。 ならば今までのすべての考えに意味はない。
私は首を振って、世界中を覆ったかに見える絶望を頭から追い出すべく努力した。
「しかし、それにしても……随分ひどい目に遭った。 久々に娘の悪戯を思い出したよ」
私は気分を切り替えるべく軽口をたたいた。
するとエドワードも小さく笑いながら応える。
「おや、しかし閣下、時間旅行ができてうれしかったのでは?」
「ははは! まあ、若返ったのは良かったかもしれないな。
だがせっかく苦しむなら20代にでも戻してくれればよかったのに」
「その場合、我々の記憶や自我はどうなるのでしょうね?」
「さて。1時間戻されても記憶はそのままであったし、そのままなのではないか」
まるで空想科学に関する議論のような内容。
あまりの荒唐無稽さに、話していて軽い羞恥すら覚えるほどである。
だが、これは現実なのだ。サーラ・グルスの示した薬品群は、たった一つでも人類社会を激変させうる、文字通りの劇薬ばかりだった。
しかし、彼女はなぜあれほどのものを我々にくれるのだろうか?
アメリカに地球を支配させるつもりなのだろうか?
思いつくのは、地球の歴史にもあった間接統治の手法だ。
直接支配するのではなく、傀儡にした現地勢力を支配者に仕立てる事で、手間なく効率的な支配を行うことができるというもの。
私がその疑問をエドワードと共有すると、彼もまた同じことを考えていたようで、眉を潜めて唸った。
「正直申し上げて、分かりません。
ただ、彼女の申告した地球来訪の目的が事実ならば、我が国に世界を征させる思惑は無い……と考えてよろしいかと」
「ふむ、地球の多様な文化資源が目的だとかいうやつか」
確かに、米国が地球を制覇すれば、多様性は確実に減じるだろう。
「ならばなぜあの薬を?
やはり文化が云々というのは建前に過ぎなかったのだろうか?」
「その点についてですが、"チーム"から追加の考察が届いています。
お聞きになられますか?」
「それはすばらしい、聞こう」
チーム……とは、合衆国の俊英を集めた対宇宙人用の研究対策チームの事だろう。
我々は、彼等未知の存在との遭遇からわずか1日というごく短い時間で、できる限りの準備を整えた。そのうちの一つが、このチームの結成だ。
多くの高名な科学者、技術者、宗教家にSF作家までをかき集めて作り上げたそのチームは、一応の成果として、交渉直前の私に宇宙人サーラ・グルスの性質についての考察を手渡していた。
まあ、実のところ、そんな考察を活かせるような余地はほとんどなかったわけだが――
曰く。
『サーラ・グルスは地球人を強く見下しており、一連の行動には自国の強大さ、先進性を我々に見せつける意図がある』という事。
そして我々政治家が「こちらに準備をする時間を与えないためだ」と考えていた、極めて性急な事の進め方に関しても、単にこちらの都合を一切無視しているだけという説が支持されていたという事だ。
私が彼女から感じ取った強大な悪意や害意を思えば、彼等の考察はいささか的外れだったと判断せざるを得ないが、それでもエドワードの言うように、彼女は一応の誠意らしきものを示したことから見て、あるいはあれは悪意からの行動ではなく、ゾウが道端のアリを踏みつぶしても気づきもしないように、強大な存在が気ままに振舞っただけのことなのかもしれない。
とにもかくにも、我々だけでは議論も煮詰まってきたところだ。彼らチームの報告を聞くことは、きっと有意義なものになるだろう。私はエドワードに続きを促した。
彼はひとつ頷くと、チームがよこしたという、宇宙人来訪の目的についての考察、を読み上げた。
「この広い宇宙では、太陽系の星々は基本的にありふれたものです。地球そのものを狙うならまだしも、生物の居住できない星を改造して利用するというのであれば、それが太陽系である意味はない。であれば太陽系を開発したのは、地球人類を起点とする何かしらの事情があってのことだろうとのこと」
「……ふむ」
「たとえば、彼女の申告した理由と併せて、サーラ・グルスの開発は地球の保護が理由なのかもしれないという仮説も出されています」
「保護?」
「はい。サーラ・グルスは木星より外側の太陽系の開発に着手するとか。であれば、地球は彼女の支配地域に囲まれることになります」
「……そうか。我々は出られないが、ママド以外の宇宙人も入ってこれないという事か!」
「ええ。地球の文化が固有で貴重だから、その純粋性を保つために囲い込んだのかもしれない、と」
「……はは、つまり、ここは宇宙の自然保護区というわけか」
「あるいは北センチネルか」
そこまで言って、私たちは笑い合った。
何もおかしい事はないのに、不思議な事だった。
「……さて、ではその"チーム"に顔を出しに行くとしようか。彼等は今も議論をしているはずだね?」
「ええ。 あなたが顔を出せば励みになるでしょう」
「では、急ごうか。サーラ・グルスが昼食を終える前に」
彼等は今、東棟地下の危機管理センターで話し合いを行っている。
あのレーザーを前にして、地下室で話し合う事にどの程度の意味があるかは分からないが――。
そこまで考えた時。
部屋の扉を乱暴に叩く音が私の耳に飛び込んできた。
直後、私が返事をする間もなく、部屋に一人の男が飛び込んでくる。
彼は今日、警備のためにホワイトハウスへと集めた軍の指揮官だった。
その顔は蒼白で、ただならぬことが起きたのだとすぐに分かった。
「何事だね?」
「ハッ。報告します。市内で暴動が発生した模様。
極めて大規模なもので、警察も消防も機能していません。異常事態です」
「何だと!」
「また、少数の理性的な警官や役人の報告によれば、突如として人々の考えている事がすべてわかるようになった、また自分の考えも人に伝わるようになってしまった、とのこと。暴動の要因は、それで間違いありません」
「何を言っている!? まるで意味が分からんぞ!」
まるで精神異常者の妄想のような話だ。
そのような事が、あるわけが――
「まさか、それは……!」
私が咄嗟に否定しようとすると、エドワードはサーラ・グルスから受け取った薬の目録をめくり始めた。
「これか! 他人との意思の疎通を補助する――思考を完全に他者へ伝える薬剤!」
「なっ、それではまさか!」
「誰か!! 警備のものは! 宇宙人は今どうしている!」
「……そんな、ああ、なんてことだ」
私は震える手で、自身の携帯端末を起動させた。
報告を聞くまでもなかった。
そこには、相争い自壊する国家の姿があった。
町中から火の手が上がり、人々は血走った眼で隣人を殴打し、銃撃し、轢殺している。私の目が正しければ、警官同士で撃ち合っている動画さえもあった。
SNSで、ニュースサイトで、世界中にこの事態は伝えられているようだ。
だがレポーターすらも襲われ、発狂し報道もままならないと。
「いません! 部屋はもぬけの殻です!」
「馬鹿な、そんな馬鹿な、一体どうして!なぜこんな!」
エドワードがうろたえた様に叫ぶと、段々と事態を飲み込み始めたのだろうか、今の今まで放心していた高官たちもざわざわと騒ぎ始める。
中には自身の所管する役所へと連絡を試みている者もいるようだが、どうやら無駄に終わっているようだった。
国家機能が、マヒしている。
その事を理解した私は深く息を吸い込み、そして吐いた。
「分かった。……ともかく、これ以上の被害拡大は防がねばならない。
今、動かせるのは?」
私が尋ねると、連絡に来てくれた隊長はきびきびと答えた。
「市内の警察・消防を始め、行政機関は連絡が付きません。
今、周辺の軍や警察を集めさせていますが少し時間がかかります。
すぐ動かせるのは……このホワイトハウスに集まっていた者たちについては、無事です」
成程。
宇宙人を警戒していたかいがあったというべきか?
ホワイトハウスには、通常では考えられない量の実働部隊が集っている。
彼等を使えば、事態の収拾を図れる可能性は十分にあった。
私は頷いて指示を出した。
「であれば、ともかくそれを使うしかない。
ここの警備は良い。全員出動し、市内の治安を回復させるんだ。多少乱暴な手を使って構わん。最初に警察や消防の機能を回復させるんだ」
「しかし、これが宇宙人の仕業であれば、ここも危ないのでは?
それにいなくなった宇宙人共の捜索は――」
「警備も捜索も必要ない。そもそも無意味だ。どうせ勝てやしない。
今やるべきは、この混乱による被害を少しでも軽くする事だ」
私が断言すると、隊長は無言で敬礼を返し、すぐに部屋から退出していった。
「……神よ」
窓から外を見る。
何者にも犯されたことのない誇り高き町の空は、黒々とした煙に覆われ、燃え盛る炎で照らされていた。