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暗い暗い閉ざされた空間。
私は藍染に不覚をとり、この空間に封印された。
「……不覚」
油断しているつもりはなかった。藍染の一挙手一投足に常に注意を払っていたし、増援や鬼道に対して警戒するために霊圧感知は怠っていなかった。あらゆる可能性を想定していたはずだったのだ。封印など、戦闘前からずっと意識していた。藍染惣右介の取り得る手段として、かなり可能性の高い手段だったから。
しかし、その思考そのものが罠であった。
藍染のあらゆる罠を想定し過ぎるあまり、本人の鬼道の狙いを読み違えた。単に狙いが甘いだけだと、藍染を軽く見た。もし、あの男がなんの狙いもなくこのような避けやすい撃ち方をする筈がないと気づけていれば、この封印を避けることもできた。なんと間抜けなことか。
そもそも、初撃から周囲への影響や罠の警戒など考えずに全力でやっていたのなら結果は違ったのだ。私の甘さがこの結果に繋がったのは明白だった。
「……後悔しても仕方がない、か」
まだあの男の暗躍は続いているのだ。一刻も早くこの封印から抜け出し、戦線に復帰しなければ。
「……とはいえ」
いったいどうすればいいのやら。頑強な封印だ。どれほど時間がたったのか分からないが先程から霊圧を開放し容量過多を狙っているのだが、封印が綻ぶ気配は一向にない。このままでは封印が解かれる頃には事後である可能性が高い。敵ながら藍染の計算高さには感服である。
――だが、
「……そろそろ、かな?」
随分と時間がかかってしまった。
試しに思いっきり空を殴りつける。すると、確かな手応えとともにまるで空間そのものが軋むように揺れた。
「……よし。これなら――」
斬魄刀に手をかける。
瞳を閉じて、深呼吸を数度、極限まで集中力を高める。
「――今」
高まりきった集中力をそのままに斬魄刀を抜刀し、空間を斬り裂く。
『パキッ』
空間の罅割れる音が響いた。そして、次の瞬間には暗闇しかない空間に次々と光が差していき―――
◆◇◆◇◆
「……急がないと」
藍染達の霊圧は……!!
『護廷十三隊各隊、隊長および副隊長、副隊長代理各位、そして旅禍の皆さん。こちらは四番隊副隊長虎徹勇音です』
【天挺空羅】による捕捉と伝令。つまり――
『緊急です。これは、四番隊隊長卯ノ花烈と、私虎徹勇音よりの緊急伝信です。これからお伝えすることは、すべて真実です―――』
そして告げられる、藍染、ギン、東仙の裏切りの情報。既に桃と冬獅郎がやられてしまったようだ。それに、四十六室が全滅していたとのこと。藍染の斬魄刀の能力についても説明があった。
「……藍染…!」
怒りがこみ上げる。私を封印した後も好き勝手やったらしい。浦原や平子に続いて、桃と冬獅郎まで…!
「……許さない」
私はすぐさま双極の丘へと転移しようとして、それに気づく。
「……霊力の操作が上手くいかない」
封印の影響か、霊力が乱れ、霊力の精密な操作が必要な転移に失敗してしまった。
「……くっ!」
瞬歩で急いで出口へ向かう。
全力で急げば双極の丘まで約3分。
「……無事でいて、ルキア」
私にはそう願いつつ、必死に足を動かすしかできなかった。
◆◇◆◇◆
霊圧を消したまま、現場に向かい最速で駆けていき――
「……藍染!」
双極の丘に辿り着いた時、私の目に映ったのは、白装束で弱りきったルキアとルキアを抱いたまま倒れかけている傷だらけの白哉。ボロボロの恋次と一護。全身傷だらけでもはや戦えそうにないのに、なんとか立ち上がろうとしている狛村。霊圧で動けなくなっている一護の仲間達。意味深にニヤつくギン。まだ傷の治りきってないままに無言で佇む東仙。そして、小さなナニカを持って微笑んでいる藍染だった。
上空には空鶴と兕丹坊、そして高速で近づいてくる他の隊長や夜一の霊圧を感じる。
「いくぜ兕丹坊!【散在する獣の骨 尖塔 紅晶 鋼鉄の車輪 動けば風 止まれば空 槍打つ音色が虚城に満ちる 破道の六十三 雷吼炮】!!」
空鶴が藍染へ鬼道を放つ。それを躱した藍染に、夜一と砕蜂が刃を突きつけ、動きを止める。
「……良かった」
どうやら皆桃と冬獅郎以外の皆は無事らしい。後は藍染をここで仕留めるだけ―――
「ああ、すまない。時間だ」
藍染の声。藍染を拘束していた夜一と砕蜂が咄嗟に距離をとる。
瞬間、藍染の周りを覆うように天から光の柱が降りた。
「バ…バカな…」
「
空を見れば、空間に亀裂のようなものが入り、そこから大量の大虚が顔を覗かせていた。
亀裂は広がっていき、拘束されていたギンと東仙にも光の柱が降りる。
光の柱は、岩盤ごと彼らを亀裂へ吸い込んでいく。
「逃げる気かいこら!」
射場が藍染を追おうとするが、
「――やめい。」
おじいちゃんが止める。
「あの光は
鋭い眼光で藍染を睨みつつも、そう説明するおじいちゃん。
「ぐっ! 東仙! 降りてこい東仙! 解せぬ。貴公はなぜ死神になった? 亡き友のためではないのか! 正義を貫くためではないのか!! 貴公の正義は、どこに消えて失せた!?」
「言ったろ狛村。私のこの目に映るのは最も血に染まぬ道だけだ。正義は常にそこにある。――私の歩む道こそが正義だ」
狛村の慟哭も東仙には届かず、大逆人はソラへ登っていく。
「メノスとまで手を組んだのか。何のためにだ?」
浮竹が問い立てる。
「高みを求めて」
憮然とした態度で藍染が答える。
「地に落ちたか、藍染」
「驕りが過ぎるぞ浮竹。最初から誰も天に立ってなどいない。君も、僕も、神すらも。だが、その耐え難い天の座の空白も終わる」
藍染はゆっくりと眼鏡をとり、それを砕いた。
「これからは、私が天に立つ」
――ソレを聞いた瞬間、私の足は動いていた。
「……む?」
私の接近に気づいた藍染が怪訝な表情を浮かべ――
『バキッ』
「ガハッ!?」
次の瞬間には反膜を破った私の拳が、藍染の鳩尾にめり込んでいた。
「……
そこは、己の求めた場所。
そこは、己の最果てと定めた場所。
「貴方が
「貴方が
「【落とせ
斬魄刀が、呼びかけに応じて真の姿を見せる。その姿は能力とは裏腹に、まるで天へ羽ばたく一片の羽のようであった。
「私が
◆◇◆◇◆
事態は一瞬だった。その時、誰もが藍染の戦線離脱の成功を確信していた。それはそうだろう。あの反膜は破れないというのは一般常識である。どんなに力があろうとも、それは変わらないはずだった。
ある意味、奇襲を仕掛けるなら至上のタイミングであったことは否めない。どれほどの知略を持っていようとも、準備もなしの生身の死神の反膜の外からの攻撃など予測できまい。
つまり、結論―――藍染惣右介のソウルソサエティにおける計画は、最後の最後で規格外の
「中野…ハクナ……だと…!?」
さしもの藍染も顔を歪める。己の計画において、このような事態は想定していなかった。後一歩で計画完遂といったところで邪魔をされたのだ。藍染といえど、心が乱れる。
「馬鹿な!? 確かにアレに封印した筈――少なくとも丸一日は持つ計算――っ!?」
反膜の中で動揺していた東仙、そして市丸が突然地面に叩き落される。
そして藍染も、身体が地面にめり込んでいた。
「コレが、ヤツの斬魄刀の能力…!」
隊長格を容易く抑え込む重さ。先程の解号から、斬魄刀の始解の能力の一部と見て間違いないだろう。黒崎一護以下動けない連中には効果が無く、山本元柳斎重國以下この場に居合わせていた連中は範囲外へ避難していることから何かルールがあるか、ある程度は調整可能ではあるのか、今の情報では推し量ることはできない。どちらにせよ、この場で藍染達にこの能力から逃れる術はなかった。
「くっ……随分と早かったね、中野ハクナ…!」
「……いや、充分時間稼ぎされた」
藍染やその部下にとってみれば冗談ではなかった。
中野ハクナが想定以上の力を秘めていた時のために開発しておいたとっておき。それがあの特別性の
「まさか、これほどとはね。驚いたよ。流石は護廷十三隊最高戦力」
「……遺言はそれでいい…?」
ハクナの声。彼女はいつの間にか動きを封じられた藍染の側に立ち、その首筋へ刀を向けていた。
「………いや、一つだけ」
藍染がニヤリと笑う。
「君の詰めが甘くて助かったよ、中野ハクナ…!―――【破道の九十一
「なっ……くっ!」
ここに来て九十番台詠唱破棄。それも狙いは倒れ伏す黒崎一護や阿散井恋次、朽木ルキアに朽木白哉。山本元柳斎重國以下健在の者達はハクナの斬魄刀の範囲外へ移動済み。故に、彼らを守れるのはハクナだけだった。
咄嗟に皆の下へ向かい、その攻撃から一護達を守る。
「今だギン!!」
「分かってますよ、東仙隊長」
市丸ギンが白い包帯のようなものを取り出す。
「高みでまた会おう、中野ハクナ」
ソレは瞬く間に藍染達を包み込み、掻き消えるようにその姿を消した。藍染の最後の言葉だけが、双極に響く。
「……また、逃げられた」
度重なる失態に、中野ハクナは己の未熟を噛み締める。
己がもっと知恵を絞って藍染の裏をかけていれば、今頃は――。
「……次は、殺す」
罪人を殺し、皆を助ける。それこそが、己が生きる意味であり、贖罪なのだから。