シャドウ様夢小説です。

コラボカフェでシャドウ様のグッズが出てくれなかったので
書けば来るの精神で書きました。
設定がそこそこガバイです。

それだけの話です。

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タグとかあらすじ通りです


勝手にやってろ

 

 

私と彼は友達で、唯一無二の存在だった。

たぶん私は、彼のことが好きだったと思う。

もう。顔も声も、殆ど思い出せないけれど。

 

それでも、あの約束だけは覚えてる。

 

何百何千の年月で薄れた記憶の中、1つだけくっきり残ってる。綺麗で大切な約束(思い出)のこと。

お互いに、死んでも守るって誓い合った、大切な大切な、私達だけの、秘密の約束。

守るためだけに、守って貰うためだけに、そして、私自身の望みを叶えるためだけに、私は色々なモノを犠牲にして、頑張った。

 

だからね

 

だから────

 

 

「約束を、果たしにきたぞ」

 

 

今の私は、きっと、笑顔だ。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 影野実くん。私の、大事な親友。

 私と彼は、いくつかの共通点があって仲良くなった。

 それは

 

 

「お前らホントにいいのか?俺ら前ヒーローやったから変わってやってもいいぞ?」

 

「良いよ。僕はこの役がやりたいんだ」

 

「私もこれが良いの!」

 

「変なヤツー。かげのじつりょくしゃ?とラスボスがやりたいなんて。ヒーローのが絶対カッケーのに」

 

 

 他の子達と、少し違う感性を持ってた事。

 

 まわりの子達と違って、私達はごっこ遊びでヒーローをやろうとしなかった。やろうと思わなかった。

 

 私は敵のラスボス。

 彼は、陰の実力者。

 

 一般的な子達が望む役割と全く違う役をやりたがる私達は、少しだけ他の子達から浮いてはいたけれど、他の子がやりたがらない役を受け持つから、最初のうちは遊ぶ相手には事欠かなかった。

 ただ、私と実くんが揃うと最終的に2人の戦いになっちゃうせいで、段々私達は2人で遊ぶようになっていった。

 

 実くんと私の関係は、幼稚園を卒業しても続いた。私は光野実(こうの みのり)で、彼が影野実(かげのみのる)。出席番号も近かったから、余計によく遊んだと思う。

 2人で遊ぶのも楽しいけれど、たまにまわりの子達の遊びに混ぜて貰えるのが本当に嬉しくて、私達は段々他の子達にも合わせるようになった。

 そんな時だった。

 

 

「お前らさ、いい加減陰のナントカだとかラスボスだとか、ハズイから止めろよ」

 

「まだごっこ遊びとかしてるの?そろそろ現実見たら?」

 

「大人になりなよ」

 

 

 何が切っ掛けだったのか。

 わからない。

 

 ただ1つ言えることは、私達は他の子達と違ったということ。

 "大人"になれなかったということ。

 他の子達が抱いていたヒーローへの一時的な熱と違って、私達の中のそれぞれの火は、永遠に灯り続けていたということ。

 

 陰の実力者への

 ラスボスへの

 

 いつまで経ってもつきることのない憧れと渇望が、私達の身を焦がした。

 

 それでも1度、私は折れかけた。

 

 少ないながらも存在していた友人達全員に否定され、馬鹿にされ、私は立ち上がることが苦しくなっていた。

 

 現代社会でラスボスを目指すのは間違っているのか?

 ガチヤクザやマフィアの親玉になるのは不可能なのか?

 世界を破滅させる悪の研究者になる事はできないのか?

 

 小学生という幼い年齢で、私は私の望むことや好きなもの全てを否定され尽くし、簡単な"皆と同じ"に流されそうになった。

 

 

「僕は、諦めない」

 

 

 その手を掴んで引っ張ってくれたのが、彼だった。

 実くんは、馬鹿にされても、1人になっても、夢を諦めるような事はなかった。

 それどころか、否定され尽くされた彼は、いつしか"ごっこ遊び"ではなく、"本気"で陰の実力者になろうとしていた。

 

 かっこよかった

 

 誰に否定されようが。

 誰に馬鹿にされようが。

 自分の望む道へ、自分の意思で突き進んでいく実くんに、私は救われた。

 

 それからは、私も本気で"ラスボス"を、目指すようになった。

 

 当然、彼と遊ぶ時間も減った。

 

 彼は筋トレや習い事で力を。

 私は自分の目指すものに必要な知識を身に付けていった。

 

 物理学、薬学、化学、生物学、医学、人間科学、数学、語学、人類学、心理学、博物学、歴史学、帝王学、経済学、政治学、宗教学…

 

 あらゆる知識を無理矢理にでも覚えて詰め込んで利用できるようにして、私は自分の成りたいものに手を伸ばすようになった。

 

 実くんは、体、精神、技術を鍛えて最強の陰の実力者に。

 私は、人も物も、全てを利用する最低最悪のラスボスに。

 

 お互いの目指すものは別だったけど、本気でそうなりたいと思っていたのは同じだったから、私達は本当に仲が良かったし、色々なことを語り合った。

 

 お夕飯前の30分。電話で行う会話。それが、私にとっての癒しだった。

 彼がどう思ってたかはわからないけど、成果を報告してくれる彼は楽しそうだったから、彼にとっても大事な時間だと思ってくれていたら、嬉しい。

 

 でもこのままじゃ、互いの成りたいものにはなれない。

 

 小学6年生の冬、私達はそう結論付けて、距離を置くことにした。

 

 

「「ラスボスと陰の実力者が頻繁に連絡を取るのはおかしい」」

 

 

 そう、お互いが思ったからだ。

 

 当たり前の事だ。

 でも、私はまだ子供だったから、それまでその事を言い出せなかった。

 このまま彼に甘えてたら、私は本当のラスボスにはなれない。

 そう思って私が留学の話をしに行った時、互いに同時に出た言葉がそれだった。

 彼も、ずっと、そう思っていたらしい。

 

 やっぱり私達は、似た者同士だった。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 別れの時。

 空港の端で、私達は向かい合っていた。

 どちらも、涙は無かった。

 少しだけ眉が下がって、少しだけ口角が下がって…それだけ。

 それが、私達に相応しい別れな様に感じた。

 

 

「寂しくなるね」

 

「…陰の実力者に、なるのに?」

 

「キミだってそうだろ?」

 

「…まあね」

 

「…あのさ、実くん」

 

「なに。実ちゃん」

 

「私ね、絶対ラスボスになるよ」

 

 

 キッパリ言いきった私に、実くんは笑う。

 

 

「知ってるよ」

 

 

「ッ…!‥‥‥絶対に。何年かかるかわからないけれど、世界を征服しようと動く。絶対に征服する。だからね。だから」

 

 

 その時は。そう続けようとした時、実くんが私の言葉を遮って言った。

 

 

「その時は、僕がキミを倒すよ」

 

 

 嬉しかった。

 

 ラスボスは、倒されるまでが演目。誰かに倒される幕引きがあってこそ、ラスボスという存在は輝く。

 

 私の持論。

 私の美学。

 いつも思っていて、でも、1度しか言った事のなかった言葉。

 それを、彼は忘れていなかった。

 

 勿論、本当は彼に倒されるのはダメだ。

 

 だって、実くんが目指しているのは陰の実力者であって、主人公じゃない。

 私を倒したら、成りたいものとズレてしまうかもしれない。

 

 けど

 だけど

 

 彼が、倒してくれると言ったのだから。

 

 

「うん……お願い。実くん」

「私。実くんが良い……実くんじゃなきゃ嫌」

「私を終わらせるのは、実くんであってほしい」

「何があっても、叶えてみせるよ」

「ラスボスに、なってみせる」

 

「大怪我をしても」

「病にかかっても」

「幽霊になっても」

「死んでも」

 

 

「生まれ変わってでも、絶対に成る」

 

 

 私は拳を握って、実くんの方へ伸ばす。

 

 

「そうだね。僕も、絶対に叶えるよ」

「陰の実力者になる」

 

「大怪我をしても」

「病にかかっても」

「幽霊になっても」

「死んでも」

 

「生まれ変わってでも、絶対に成る」

「それで、実ちゃんの企みを阻止して」

 

 

「キミの舞台を、終らせる」

 

 

 実くんも拳を握って、私の拳に伸ばしてくれた。

 軽く甲を触れさせて、笑う。

 

 

「じゃあ、名乗りを決めようよ」

 

「名乗り?」

 

「そう。実ちゃんが世界を征服する時と、僕が陰で活動する時に使う名乗り」

 

「フフッ良いかも!連絡いっぱいとるのは変だけど、陰の実力者とラスボスには浅からぬ因縁があるべきだもんね!」

 

「そうそう。ヤツの名は○○。我が倒すべき相手。お前達は関わるな……みたいなの。良いよね」

 

「うん!えっと、じゃあ…どうしようかな」

 

「僕はもう決めてるよ」

 

「嘘!なになに?!」

 

「シャドウ。シンプルだけど、わかりやすいし、何より僕の名字にも、目指すものにも関係ある言葉だし」

 

「おおー確かに!シンプルイズベスト!あ、じゃあ私はライト!」

 

「……ライト?ラスボスなのに?」

 

「シャドウと対みたいで良いでしょ?」

「それに、ラスボスなのにライトって名乗るのが、自分が正しいと信じて疑わないラスボス精神に相応しいの!」

 

「なるほど…良いね」

 

「フフッ……じゃあ、お別れ…」

 

 

 スピーカーから流れたアナウンスが、私達の逢瀬の終わりを告げた。

 

 今後出会う時は、私達は敵同士。

 

 私は、世紀の大犯罪者。

 彼はそれを陰から阻止する、陰の実力者。

 

 楽しみで楽しみで仕方がない。

 いっぱい、いっっぱい頑張ろう。

 1度折れかけた私と違って、彼は絶対に折れたりしない。

 諦めかけた私を救ってくれたのは、彼。

 今の私があるのは、全部実くんのお陰。

 私自身が成りたいと思っているから、あんまり恩返しにはならないけど…

 

 彼が活躍できる、そんな世界にしよう。

 

 私はラスボスらしい嫌な笑みを作り、新天地へと踏み出した。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 僕には、変わった幼なじみがいる。

 正確には、いた。になるのかもしれない。

 

 光野 実。5年程前に別れた友人。

 別に、死んだわけではない。

 

 なんなら、年に数度は彼女の写った新聞やテレビを見るから、僕からするとそこまで会えてないという感覚すらなかった。

 

 現在僕の学校は夏休み期間中。1日魔力を得るための修行に費やすため、その前に昼食と夕食の準備と朝食をしている。

 魔力を得るために断食をした事もあったせいで、栄養は大事だと身に染みてわかったからだ。

 それに僕にとって、食事の時間は大事な情報収集の時間でもある。

 

 彼女が正の成果ではなく、負の成果を上げ声を上げるのを待っているのだ。

 

 ラスボスになる。

 

 そう言った彼女が、そのために動き出すのを、僕はこの時間に確認する。

 神童だなんだと注目され成果を上げる彼女がラスボスを目指し続けてくれるのか、写真のないインタビュー記事をみた時は不安になったものだけど…

 

 

「あの目は、やはり…」

 

 

 普通の人とは違う、暗く淀んだ、しかし奥底に光を宿す彼女の瞳を見て、僕はRPをしつつそう呟く。

 彼女は必ず成し遂げるだろう。

 ならば、僕もやりとげなければならない。

 

 そう改めて決意して、彼女が手を出し始めたというアトランティス大陸の説明を聞き流しながら皿を流し場へ戻そうとして──

 

 

「た、たった今速報が入りました!!先日発見されたアトランティス遺跡の調査中、光野実さんが行方不明になったそうです!潜水艦による遺跡調査の最に事故が起こり、船員50名のうち、光野実さんのみが突如消えてしまったとのことです。現在は───」

 

 

 

ガシャンッ!!

 

 

 

 

 

 

 なぜか、皿が床に落ちていた。

 

 なぜか、テレビが壊れていた。

 

 なぜか、手から血が出ていた。

 

 なぜか、僕は山のなかにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 ただがむしゃらに、修行がしたかった。

 

 

 

 何時間たっただろうか?

 思い出せない。

 昼の分のご飯や飲み物はしっかり減っていて、安心した。

 

 僕は、何があっても修行を、陰の実力者を目指すことを諦めなかったということだ。

 彼女も、何があっても諦めないと言った。そもそも行方不明になっただけで、死んだとは限らない。

 死んだとしても、彼女はやりとげる。

 そう、やくそくしたから。

 だから、転生してでもやりとげると、なしとげると、なってみせると言っていたから。

 

 ああ、頭がフワフワする。

 まるで、脳震盪でもおこしたみたいだ。

 何か、何かが、見える。

 

 何かを、感じる。

 

 呼ばれている様な、誘われる様な。

 

 ふと、ふたつの光が、遠くに見えた。

 

 あれは、魔力?

 

 走る

 

 走る

 

 走る

 

 魔力を、手に入れる。

 

 妥協は、許されない。

 

 僕は、絶対に

 

 

 

   陰             

 

         の

 

 じ                               

 

 

       つ

 

 

  り                                 

    ょ                              

 

 

 

               く

 

 

 

 

 

し               

  ゃ               

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

に────────

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「なぜ貴方はシャドウという名なの?その名には、私の名のような意味が込められていたりするの?」

 

 私は、彼の事を理解したかった。

 

 陰の叡知。その一端。私の名前は、その知識の中では最初という意味を持つらしい。

 なら、彼が自らを"シャドウ"と名乗るのはどんな意味なのか、シャドウという言葉にはどんな意味が込められているのかが知りたくて、私はそんな質問をした。

 

 

「ああ……シャドウは、影というような意味を持つ。影に潜み、陰を狩る。そんな我らに相応しいだろう」

 

 

 なるほど。確かにそうだ。

 

 影

 

 私達を照らしてくれた、私達の進む道を示してくれた彼がその暗い場所にいることは悲しいけれど、私達の苦しみや悲しみを覆ってくれるのはその暗闇なのだから、その名を持つのが彼で嬉しいし、彼に相応しいと思う。

 そう納得し返事をしようと彼の顔を見て、私は固まってしまった。

 

 

「あと…約束だから、かな」

 

 

 見たことのない、表情だった。

 

 彼は、1人孤独に戦う時も、私達悪魔憑きを見た時も、怪我をした時だって、めったに負の感情は表に出さない。

 

 なのに、こんな。

 こんな、寂しそうな顔。

 しらない。知らなかった。

 

 やくそく。約束。いったい、誰との?

 

 

「ああ、それと、もう1つ、僕にとって大事な言葉があるんだよ」

 

「ライト…って、言うんだ。光の意味を持つ言葉でね。僕にとって大事な言葉で、好きとは違うけど、思い入れのある言葉なんだ」

 

 

 戦闘や陰の叡知のこと以外で、こんなに嬉しそうに、楽しそうに、饒舌に…そして何より、寂しそうに笑う彼を、私は始めてみた。

 普段から言葉少なな彼が、ただ1人教団と戦うため陰を選んだ彼が、光を意味する言葉を楽しげに語る。

 その光景は、私に大きな衝撃を与えた。

 

 気づけば彼は小屋からいなくなっていて、私の隣にはデルタがいた。

 

 夕飯だから呼びにきた。

 早く食べたいから早く来て。

 みんな待ってる。

 

 そう言ってピョンピョン跳ねるデルタと、その奥に見える私達の家に、私は思考を切り替える。

 

 確かに、あんな彼の顔は始めて見た。

 確かに、彼の中には、孤独がある。

 

 なら、私達で埋められるように、彼を助けられるように頑張ればいい。

 頑張って、頑張って、彼の役に立つ。

 

 それと、彼が大事だと告げたライトという言葉は、私も大事にしよう。

 

 そう、思った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「………は?」

 

「ヒッ…!」

 

 

 持ち寄られた報告書に記されていたもの。

 それを見た時、私は激情を隠せなかった。

 思わず魔力を放出して威圧してしまった。報告書を届けてくれただけの彼女には申し訳ないとも思ったけど、それでもこの激情を抑えることはできなかった。

 

 

【ディアボロス教団開祖兼現教祖 "ライト"】

 

 

 彼にとって、大事な言葉。

 

 彼にとって、大切な言葉。

 

 彼の名と、対になる言葉。

 

 

 その言葉を、ディアボロス教団のボスが使っている?

 彼の大切な言葉を、1000年もの間人々を苦しめ続けたヤツが?

 

 彼に闇を、陰を進むしかない道を選ばせておいて───

 

 

 

 

 光を、名乗っている?

 

 

 

 もちろん、ソイツにその意図はないのでしょう。陰の叡知に関わる言葉を、そんな外道が知るはずもない。

 実際、私もアルファという名前の人間を見かけたことがある。

 深い意味はないのかもしれない。

 

 でも、関係ない。

 

 

 ディアボロス教団の創設者が

 

 世界を、私達を、彼を苦しめ、悩ませ続けた存在が、その名を使う事が気にくわない。

 

 

「ごめんなさい。下がって良いわ。彼に知らせるのは…私がやる」

 

「は、はぃ…」

 

 

 でも、冷静にならなきゃ。

 私は、シャドウガーデンのまとめ役。

 七陰の第1席。

 彼から、シャドウから統率を任された者。

 

 短慮な考えで、一時の感情で動いて良い立場じゃない。

 

 なんにせよ、今まで全く掴めなかった奴らのボスの情報を手に入れられたのだから、ひとまずシャドウの指示を仰がないと。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 なにを、まちがえたの?

 

 

「それは、本気でそう言っているのか?」

 

「アルファ」

 

 彼が怒ってる。それはわかる。

 でも、なぜ?

 本気でそう言っているのか。

 つまり、調査結果が間違っていた?

 

 わからない。

 魔力のあつで、いきができない。

 また、まちがえた。

 かれに失望されてしまった。

 どうしよう。

 すごく、おこってる。

 どうしよう。

 捨てられる?

 捨てられてしまう。

 どうしよう。

 どうすれば。

 

 

 

 

「……ごめん。1人にしてくれるかな」

 

 

 

 あつが、きえた。

 

 彼の声は平坦で、顔は後ろを向いてて表情は伺えない。

 

 怒ってる様子はない。

 まだ、大丈夫。

 早く出ないと。

 

 

「わ、かった、わ。ごめん、なさい」

 

 

 急いで部屋を出る。

 何がダメだったのか、何が彼を怒らせてしまったのか、わからない。

 

 ディアボロス教団のボスがライトという名前を使っていること?

 なら、どうしてあんな言い方をしたの?

 あの言い方は、私のミスを咎めるようなものだった。

 

 わからない。

 私には、私の頭は悪いから、私がダメなせいで、私は彼を理解することができない。

 どうしよう。

 涙が溢れる。

 城を出た瞬間、背後から凄まじい魔力の波が迸った。

 破壊ではなく、魅せるための閃光。

 

 それと同時に、彼が城から出ていくのが見えた。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 もしかしたら、とは思ってた。

 

 数々の事件に巻き込まれて、巻き込まれに行って。

 本当に色々、紆余曲折があって。

 僕はディアボロス教団が実在していた事知って、その時が最初。

 それからは、本格的にディアボロス教団達を倒すために活動した。

 その活動の最中と、これまでの事を振り返った時が、二度目。

 そして、今が三度目で、同時に確信した。

 

 アルファがライトという名前を、彼女の事を話題に出して来て、最初、ほんの一瞬、からかわれたのかと思った。

 でも、少し考えたら当然だと気づいた。

 

 彼女が消えたのはアトランティスの遺跡調査中で、古代アトランティスは元々この世界のもの。

 そしてあの時、こっちの世界と向こうの世界は近づいていた。

 彼女だけがやたら過去に飛ばされた理由はわからない。

 でも、その名前をこの世界で名乗ってるのは、そういうことだ。

 

 先程アルファがくれた資料には、ディアボロス教団本拠地の予想地もいくつか書かれていた。

 その中から、いかにも彼女の好きそうな場所を見つけて、思わず笑ってしまった。

 

 

「ホント、僕らって似てるよね」

 

 

 この世界の人からすれば。

 これまで虐げられ、虐殺されてきた悪魔憑きや勇気ある人達からすれば、僕らの行動は最低最悪なんて言葉で言い表せるものじゃないだろう。

 

 

 何せ、数千年だ。

 

 

 千年を越えた年月もの間、彼女と僕は、この世界で遊んでいたのだ。

 

 あの日のごっこ遊び、その延長。

 

 世界を跨いで巻き込んだ、はた迷惑なお遊戯会。

 

 僕と彼女の演目は、数多の罪無き人々、その死体の上が舞台だ。

 

 最低だ。

 

 彼女を、自分の孤独を減らすために引き留めてしまった事。

 彼女と、あんな約束をしてしまった事。

 彼女の転生した時から、何千と遅れて生まれてしまった事。

 それが、僕の罪。

 

 最悪だ。

 

 僕に恩を感じているシャドウガーデンの子達だって、コレを知れば僕を憎むだろう。

 

 

 最低で、最悪で、だけど、それ以上に。

 

 

 でも、まるで気にならない。

 だって、シャドウガーデンの子達から離れても、1人じゃないと気づいてしまった。

 

 かつての僕にとって、陰の実力者になるという目的とほぼ同じぐらい大切だったもの。

 

 その彼女が、この世界にいる。

 その彼女が、気の遠くなる様な時間を経てなお、僕との約束を守り続けてくれている。

 その彼女が、僕の夢を、絵空事だと諦めかけていた野望を、望みを、叶える環境を作ってくれていた。

 

 

嬉しい。と、思ってしまった

 

 

 彼女は、孤独になりかけた僕を支えてくれた。

 

 彼女は、僕の夢の手助けをしてくれた。

 

 彼女は、僕との約束を、守ってくれた。

 

 

 なら、次は、僕の番だろう。

 

 

 幕引きは、派手に。

 

 ラスボスの最期は、美しくあるべきだ。

 

 

 だから、派手な狼煙を上げる。

 

 

 彼女以外のディアボロス教団はここに向かってくるだろう。

 霧もあるし、イータの防衛機構もあるし、ここにいる限り心配はない。

 

 追ってこようとすれば大量の教団員に邪魔されるかもだけど……彼女達は賢いから、そんな無茶はしないだろう。

 

 

 走る。

 

 教団員も、魔獣も、進むのに邪魔な奴らは全部無視して、彼女の場所へ。

 

 シャドウガーデンの皆もそのうち気づいちゃうだろうから、急がないと。

 

 そうじゃないと、邪魔が入る。

 

 

 

 約束が、守れない。

 

 

 

 隠された古城の最上階。

 

 大きなステンドグラス。

 

 それを蹴り破って、僕は───

 

 

 

 我は、ライトと対峙した。

 

「約束を、果たしに来たぞ」

 

 そう言って笑えば、ライトもまた、ゾッとするほど美しく、笑ってくれた。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 パチ。と、目を開けて、驚いた。

 

 だって、知ってる場所じゃなかった。

 

 潜水艦に乗ってたはずなのに、私はいつの間にか、女性の腕に抱かれていた。

 

 手も足もふっくらしていて、赤子か乳児のものだと理解する。

 

 回りを見て、数瞬の間思考して、なるほど異世界というヤツかと、私は理解した。

 

 それからの行動は早かった。

 なんせ、時間がなかった。

 前の世界は基盤があったけど、今の世界は私が使える力の基盤がない。

 

 ラスボスになる。

 死んでも、生まれ変わっても。

 

 彼との約束は、破りたくなかった。

 

 始めての拷問も、人殺しも、今世の親を殺すのも、人体実験も。

 

 なにも感じない訳ではなかった。

 

 私は彼みたいに強くなかったから、何度も吐いて、何度も躓いて、それでもラスボスという強く気高い存在になりたかったから、私は努力をし続けた。

 

 なんとなく、確信もあった。

 

 彼は来る。

 来てくれる。

 

 私という闇に侵食され、数多の悲劇が引き起こされたこの世界に彼が来ることを、私はなぜか確信していた。

 

 

 

 

 -年。

 今だと少し困るから、来るのはもう少しまってほしい。

 ラスボスがこんなこと考えるのは、ちょっとだけ情けないけど。

 色々大変だったけど、まあ得るものもあったし良かったと考えよう。

 でも、組織の足掛かりはできたけど、名前はどうしよう。

 少し悩んだけど、決めた。

 ディアボロス。

 ディアボロス教団でいこう。

 実験体もいろいろ確保できたし、これからいっぱいがんばろう。

 

 --年。

 魔力って凄い。魔界って凄い。全部全部、面白い。

 組織は完成した。

 王国の研究員とか、竜とか言うのも使って頑張った結果だ。

 殆どの準備ができた。完璧な不老の薬も飲んだから、いつでも大丈夫。

 見た目の若いうちに作れてよかった。魔力様様だ。

 ラワガスさんに手伝って貰えたのは行幸だった。

 

 ---年。

 少し遅い。教団存続には悲劇が必要。見てて楽しいけど、可哀想だし早く来てほしい。

 オリヴィエちゃん達英雄とかアウロラちゃん他実験体に、少しだけ罪悪感が湧いたし、必要なものは作ったから、少しだけ自我を残して封印してあげた。

 主人公ポジになりそうな人を引き込んで洗脳、これが最近のトレンド。

 なんかラウンズ達が完全な不老不死薬ほしいみたい。不老はともかく不死は上げられないし、不老も完全なモノは特別感演出で私以外には飲んでほしくない。

 適当に、より活躍した者に与えるとか言っておいた。

 どうなるかな。楽しみ。

 ラウンズが減った。席を掛けて争わせたら、戦争してくれた。楽しかったな。

 

 

 ----年。

 だいぶ遅い。

 教団制御してニマニマするのもマンネリ化してきた。

 変化が無い。時々主人公みたいな人も現れるけど、彼がいないんじゃ倒されてはあげられないし、大体がラウンズに殺される程度。

 つまらないし、RPも殆どできない。

 仕方ないから吸血鬼とかいうのを捕らえて実験する事にした。

 人間だけじゃ、飽きて来ちゃったし。

 

 

 ----年。

 遅い。

 ラウンズ達を見るのも、最近は面白くなくなった。

 愛想笑いは疲れるから、もうやめよ。

 統治も…ラウンズ達に任せよう。

 裏ボスっぽくなっちゃうかも、だけど…

 

 

 

 ────年。

 

来た。

 

なんとなく、わかる。

 

遅いよ実くん。

 

でも、良いよ。

 

実くんは、約束破ったりしないだろうし。

 

もう少しだけ。待つよ。

 

だから、早く―――――

 

 

 

 

私の舞台を、終わらせて

 

 


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