狼っぽいのになった…タスケテ   作:富竹14号

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 割りと久しぶりの一人称視点、疲れますがな。


『狼』VS『鬼』➀

 

 

 暗い暗い雲が空を覆う昼真っ盛り、鬼は一人そこに居た。

 

 正座の体勢で、何をすることもなくただじっと身じろぎもせずにそこに居た。

 

 …後ろ姿だけしか見えないけど、何処か前とは違うように見える。

 

 割れた鎧を別の何かで補強し、それが積み重なった末に別の姿を取った様に見える黒く濁った緑色の鎧。

 

 兜から突き出た太く長く鋭い大きな黒角、まるで脈動でもしているかの様に薄く怪しく光る白色。

 

 変わっていないのは側には突き刺さっている大きな刀、無骨で鋭利で、それでいて綺麗な俺のよく知る大きな刀。

 

 あぁ、良く知ってる、何せ一番最初に俺を殺しかけた鬼だ、よく知っている。

 

 

『…来たよ』

 

 

 つい、何時もの癖で喋るように吠えてしまう…俺的には喋っているつもりでも傍から聞いたらただ鳴いてたり吠えてたりする程度にしか聞こえないのだから、嫌なものだ。

 

 

「……来タノカ」

 

 

 正座の姿勢を解かず、後ろを振り返ることもせずにその声は帰ってきた、どうやらこいつには俺の言葉が通じるらしい。

 

 前に確認するのを忘れていただけに、言葉が通じるっていう事実は俺に多少の安心を与えてくれる。

 

 まぁ、これから殺し合う相手には感じるような感情じゃないんだけどね、普通は。

 

 

「…探シテイタ、待ッテイタ、求メテイタ…コノ時ヲ…コノ時ダケヲ、ズット、ズット」

 

「貴様ト、オ前ト、オ主ト、貴殿ト…貴方ト死合コノ時ダケヲ…タダ求メテイタ」

 

 

 刀を手に持って立ち上がり、片言で振り返りもせずに捲し立てる様に言葉を紡ぐ。

 

 その言葉からは、募りに募らせた感情が見て取れた。

 

 

『…随分と喋るんだな…前は一言だって喋らなかったのに』

 

「必要ナイト思ッタ、タダ剣デノノミ語リ合ウガ望ミデアリ、我ガ存在ノ証明デアッタガ故ニ」

 

『…そういうもんか?』

 

「ソウイウモノダ」

 

 

 

 そういうものらしい。

 

 剣で語り合うこと、それだけがこいつの存在証明…だったらこいつが今から俺と戦うのもきっと自分の存在を証明するためなんだろうと思う。

 

 俺を倒して自分の存在を証明する、証明するためだけに存在する…こういうのを手段と目的が逆転してるっていうのかな?

 

 

「シカシ、貴殿ニハ『ソレ』ガ必要デアルト判断シタ…ソノ為ニ言葉ヲ覚エタ、使ウコトノナカッタコノ無駄ニ搭載サレテイル『コレ』ヲ使ッタ」

 

 

 そう言って、鬼は俺の方へと振り返った。

 

 兜の面は砕け散り、機械的な中身が顕になってしまっている。

 

 歯は無く口も無し、何処から声を発しているのかがまるで判断出来ない…スピーカでもあるのかな?

 

 翠色に輝く綺麗な二対の瞳、機械的なはずのそれには人の様に堪えきれない感情が滲み出ているかのようだった。

 

 

「貴殿ニ会ウ…ソノ為ニ幾度モノ存在ヲ斬ッタ」

 

「貴殿ニヨク似タ紛イ物ヲ」

 

「貴殿ニ似タ気配ヲ持ツモノヲ」

 

「貴殿ノ気配ガシタ地点ニ居タモノヲ」

 

「斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬リ続ケタ…言葉ヲ覚エタノハソノ道中ダ」

 

「幾度デモ言オウ、当方ハ求メテイタ、貴方ト殺シ合ウ(語リ合ウ)…コノ時ヲ」

 

 

 

 その言葉を最後に、鬼は刀を構えた…どうやら問答はここで終わりらしい。

 

 姿勢も構えも何も変わっていない、変わったのは外見と雰囲気と…後は気配だけか…強くなってるんだろうなどうせ、こいつのことだから。

 

 あぁ…駄目だ……爪が疼く。

 

 

『あぁ…始めよう』

 

「イザ…尋常ニ」

 

 

──推シテ参ル…!!

 

 

 その言葉を切っ掛けに、鬼は一気に俺へと向けて踏み込んでくる、やっぱり前よりも速い…しかも俺の予想よりも更に速い。

 

 構えは上段、何をしてくるかと言われれば恐らく振り下ろし一択、避けるか防ぐかそれ以外か…避け一択に決まってるだろう防げるかバカ!!

 

 上段から振り下ろされる刀を避ける…やっぱり前よりも速いし鋭い…しかも若干ディレイ入れよったなこいつ。

 

「マダダ」

 

 悪寒、寒気、怖気…この三つが言葉が聞こえた瞬間に一気に背中を走った。

 

 防がきなゃ死ぬと、そう直感した。

 

 振り下ろされた刀を見る、本来振り下ろされた刀…剣とか斧にしてもそうだけど基本的に振り下ろされた物っていうのは地面に激突するかしないと止まらない、何処でそう聞いた。

 

 それが止まっている、地面スレスレの所でピタリと止まっている、あの大きな刀がだ。

 

 つまり…刀が返される、つまり──

 

 

──燕返し

 

 

 振り下ろされた刀が跳ね跳ぶ様に、俺へと迫る。

 

 至近距離、直撃距離、攻撃力危険地帯、致命傷の可能性大、回避は可能、しかし可能性は低い、防御は…可能。

 

 迫る致死の斬撃、当たり所は恐らく胴体、当たれば両断は免れないしよしんば浅くても多分次が来る。

 

 だったら…噛みつく。

 

 

 迫る刃、その刀身に俺は思い切り噛み付いた。

 

 胴体狙いだったのが功を奏した、胴体に辿り着くよりも先に俺の頭が、牙が刀に噛みつく方が速い。

 

 

 ガキンッと音を鳴らして刀から火花が散り、刀の勢いが収まっていく…正直凄く痛いし硬い、もう二度とやるまい。

 

 だけど…捕まえた。

 

 爪を立てて、心臓部分目掛けて貫手? を放つ。

 

 刀には無茶苦茶力入れて噛み付いてる、避けるなら刀を手放さきゃならない…こいつなら普通にするだろうけどそしたらそしたらで刀を俺が使えばいい。

 

 手放さずに避けて体勢が崩れたら五の字、崩れなかったら刀を持つ手を狙う、削ぎ斬ってやる。

 

 他にも色々と思いつくけど、こいつは何をどうするか。

 

 周りがスローモーションみたいに見える、放った貫手がゆっくりと鬼の心臓部へと突き進んでいくのが見える、鬼は何もしない。

 

 行くか? と思った…少なくとも鬼の左腕に元素が集まるのをみるまでは。

 

 集束していく、色的に風元素だ、それが鬼の左手に急速に集束していき、一つの形を作り出す。

 

 それを見て思い出した…あぁ、そういえばこいつはそういうことをするやつだったと、それに苦労させられたのだと。

 

 そして同時に思った、これは不味いと。

 

 集束が終わった鬼の手には、爛々と力強く輝く風元素の脇差みたいな刀があった…脇差しだ、通常の刀じゃない、短いから使いやすい上に取り回しも良い脇差しだ。

 

 それを認識した瞬間、俺は瞬間移動で後方へと移動していた…そのすぐ後につい先程まで俺が居た場所に振るわれる風元素の刃、通常の刀でも以前の風元素の刀とも違う速さ、多分今までで一番速い、急所斬られたら終わるな。

 

 それを認識した俺がしたことは、鬼へと突っ込むことだった。

 

 突っ込んで肉薄し、インファイトを仕掛ける。

 

 脇差みたいなの作れるんだから肉薄しても意味が無い、刀捨てて両手に脇差とかされるとインファイトの利点が殆ど潰される…そんな考え無粋なのだ。

 

 突っ切ってぶちのめす、少なくともそれが今の俺だ。

 

 右爪を横薙ぎに振るい、そこからタイミングをずらして左爪を袈裟懸けに振るう、それを高速で繰り返す。

 

 右、左、右左右左と何度も何度も繰り返す、それら全てを鬼は両手に作り出した脇差…もう小太刀でいいや分かりづらい!! それで俺の連撃を逸らして防ぐ。

 

 逸した先から反撃が飛んでくる、顔面目掛けて放たれる鋭く素早い刺突、それを顔を反らして躱し、次いで振るわれる胴体への斬撃を爪で叩き落とす。

 

 続けて仕返し代わりと言うべきか、俺は雷元素を纏わせた爪で鬼へと斬りかかる、上から振り下ろすように振るわれた俺の爪は鬼に手首を掴まれたことで止められる。

 

 その止めた腕とは逆の腕で、鬼は俺へと刺突を繰り出す、狙いは胴体にあるであろう俺の心臓…まぁ知ってた。

 

 地面から岩元素の刃が複数突き出る、それら一つ一つが意志でも持ったかのように鬼へと襲いかかる。

 

 それに鬼は、急激に自身に風元素を集束させ、開放することで全てを吹き飛ばした、前と同じだな。

 

 開放された風元素は岩の刃を容易く切り刻み、その真っ只中に居た俺にも襲いかかる。

 

 向かい来る風の刃、至近距離過ぎて瞬間移動も間に合いそうに無い、じゃあどうするか……それ以上の高出力で押し潰す。

 

 

 

『…ゥゥ…ガァァァァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!』

 

 

 吠える、吼える、咆える。

 

 雷元素を最大出力で放出し、それを風元素の刃達…いや、全方位に向けて射出する、簡単な話がアサルトアーマー。

 

 けど、ただの最大出力だと拮抗するだけで終わりそうだから…リミッターを解除した上での最大出力で行く。

 

 蒼かった俺の雷元素が、赤く紅く染まっていく。

 

 周囲一体が紅く染まり、バチバチと帯電して地面が焼け焦げる。

 

 吹き飛ぶ、鬼も風も全部が全部俺の側に居たもの全てが。

 

 鬼は俺に吹き飛ばされた余波でズザザと足を地面に擦り付けて受け身を取っていた。

 

 これ…どころか元素を見せること自体が初めてだから、若干の驚きの感情が見える。

 

 しかし、それでこそと言わんばかりに意気揚々と立ち上がり、地面に刺さっていた刀を引き抜いて一払いする。

 

 

 

「……ヤルナ」

 

『そりゃどうも』

 

 

 その言葉と共に、俺達は再び互いに向けて突っ込んだ。

 

 





 一人称無茶苦茶難しいんですがそれは。
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