狼っぽいのになった…タスケテ   作:富竹14号

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 一人称視点むじぃぃ…


『狼』VS『鬼』②

 

 

 頭の上を刀が通り過ぎ、更にそこから返す刀で斬りかかられる。

 

 それを爪で弾き、そこから鬼の懐へと飛び込む…そんな俺の視界に唐突に映り込む緑色、いや膝が迫る。

 

 それを上体を大きく反らすことで躱し、そのまま後ろに一回転しながら尻尾を振るう。

 

 地面を擦り、火花を散らしながら迫る俺の尻尾を鬼は片方の手にある小太刀で難なく弾いた。

 

 そこへ更に接近、爪を握りしめて拳の形にし、それを思い切り鬼へと突き出す。

 

 突き出された俺の拳は同じく突き出されていた鬼の拳によって堰き止められ、そこからほんの僅かに押し合う…のなんて俺が一々待つわけがねぇのである。

 

 押し合いになっていた拳から力を抜いて後方へと振り払う、すると鬼の体幹が僅かに揺れ、こちら側に転ぶように近づいてくる。

 

 押し相撲と同じようなものだ、力をいきなり抜いてこっちに引き込む、よくある手法だ。

 

 そうしてこちら側に近づいてきた鬼へと向けて、俺は紅い雷元素と草元素を合わせた通称『九尾チャクラナ○トモドキパンチ』を顔面に叩き込み、そのまま鬼を殴り飛ばした。

 

 吹き飛ばされた鬼は二転三転と地面にぶつかって最終的に近場の岩場に頭から突っ込んだ。

 

 ドガァァンという音が鳴り響き、岩場の岩がガラガラと次々に崩れ落ちてくる、当然行き先は鬼が突っ込んだ場所だ。

 

 岩場に埋もれ、ピクリとも動く気配の無い鬼…これで終わりかなと思ったやつは一回バリカンで頭をハゲツルにしてきてほしい。

 

 

 岩場から風元素の刃が岩を斬り裂きながら次から次へと数えきれないくらい飛んでくる。

 

 それら一つ一つを爪やら尻尾やらで弾き弾き弾き、爪を掠めさせて軌道をずらし、時折混ざっている氷元素の刃を殴り飛ばして他の刃にぶち当てて防ぎ…そこに突っ込んできた鬼の繰り出す斬撃を瞬間移動で躱す。

 

 次いで瞬間移動で移動した先で尻尾に雷元素を集中させる、イメージは輻射波動の応用編及び某否定の意味を持つロボット。

 

 バチバチバチバチ! と音を鳴らす紅い元素がその形を変え、次第に巨大な円形のチャクラムの様な形状へと変化していく、この間役2秒弱……思ってたよりもデカいなこれ?

 

 まぁ…別にいいや…そう思いながら、尻尾が円の中心に入るような形で浮いているチャクラムをクルンクルンと尻尾を動かして回転させて──

 

 

『よいしょぉぉ!!』

 

 そのまま鬼に向かって投げつけた。

 

 キィィンとアニメの刀とかでよく鳴るSEみたいな音を鳴らしながら、チャクラムは飛んできていた刃を尽く蹴散らして鬼へと向かっていく。

 

 さて、スピードは上々、勢いや威力も恐らく上々…さてさてどうなるかな?

 

 

「…笑止」

 

 

 鬼的にはダメだったらしい、鬼は片手に持った刀を無造作に振り下ろしてチャクラムを安々と両断した…両断だ、弾いたわけじゃなくて両断だ。

 

 俺がリミッターを解除した雷元素を両断された、別に悔しくもないしショックも受けてないけど…ちょっと意外だ。

 

 あれって鳥にも効いたし何だったらアイツの翼をもぎ取った技なんだけどなぁ…相性悪かったかな?

 

 

「…狼ヨ…何故本気デ来ナイ?」

 

『? ん〜〜……様子見中だから?』

 

 

 鬼の言葉に俺がそう返答すると、鬼は風元素を使用して加速、そのまま俺へと突っ込んできた。

 

 そしてそのまま刀を俺の首筋目掛けて振るう、それを俺は避けるでも防ぐでもなく、刀が加速しきる前に懐に潜り込んで刀を掴んで止めた。

 

 刀を掴んだ俺に対し、鬼は刀を手放してから更に風元素を纏わせた拳を俺に突き出す。

 

 それを首を反らして躱した俺に向けて、両手に生成した風元素と氷元素の小太刀で俺に斬りかかる。

 

 右から左から上から斜めから、多種多様の方向から繰り出される多種多様な技を俺は持ち前の爪で迎え撃つ。

 

 一合一合ごとに鉄の音が鳴り響き、一合一合ごとに大きな火花が散り渡る、まるで花火が何かの様に。

 

 

『不満か?』

 

「不満ダ…トハ言エナイ、出シ惜シンデイルノハ此方トテ同ジコトダ」

 

『じゃ、お互い様だな』

 

「アァ、オ互イ様ダ…」

 

 

 軽い感じで、世間話でもするように互いに本気を出していないことを暴露し、その横で互いが互いに相手を捉えんと爪と刀が高速で交差し火花を散らす、ガキンガキンッと鉄の音を響かせて。

 

 

 ガキンガキンッ、ガキンガギンガキンッ、ガギギンガキンガギャンギギギキギギっと徐々に交差する感覚が短くなっていく、鬼の刀を振るう速度が上がってきている。

 

 だったら俺もと速度を跳ね上げる、今は互いにその場に止まって打ち合いを続けているせいで何時もみたいな速度は出しづらいけど、決して出せないわけじゃない。

 

 ましてや今は雷元素のリミッター解除してる状態だ、普段よりも速さを出すのが余程楽。

 

 高速で、連続で、何度も何度も何度でも、俺の爪と鬼の刀はぶつかり合っては捌き捌かれを繰り返し、その間に他愛も無い会話を互いにちらほらと語り出す。

 

 やれ中々俺のことが見つけられなかっただの、やれ俺の気配がする所に行ったらオレンジ髪の男に襲われただの、やれ金髪の女に襲われただの、あぁだのこうだのとちょっとした愚痴の言い合いと言う名の世間話を俺達は繰り広げた…爪と刀をぶつけ合いながら。

 

 自分でもおかしなことだとは思う、正直何してるんだよとは思う、けどどうにもそういう雰囲気から脱せなかった、だって何か他人って感じがしないんだものこいつ。

 

 時間にして恐らく2分か3分程度、その短いようで長い時間の間、俺と鬼は一歩も動くことなく爪と刀をぶつけ合い続け、それと同時に世間話をし続けた。

 

 まるで、果たし合いの前に過去の思い出を語り合う、友人か何かの様に。

 

 

 

「…ココマデダ」

 

 

 ふと、鬼は唐突にそう呟いた。

 

 瞬間、連撃の中で急速に速くなった一閃が俺に迫るが、それを横合いから勢いを付けてはたいて進路をずらし、その勢いのままぐるんと横合いに回転し、その遠心力諸々を載せた右拳を鬼の鳩尾目掛けて放つ。

 

 抉り取る様に、突き穿つ様にして放たれたその拳は鬼の鳩尾に深く抉り込み、そのままその絡繰りの肉体を破砕音と共に貫通した。

 

 しかしこれでは終わらない、これではきっと終わらない、そんな予感が俺の中にはあった。

 

 そして事実、それは当たっていた。

 

 

「捕マエタゾ」

 

 

 自分の傷を意に返さず、鬼は刀を俺の首へと振るった。

 

 なんとなくそういうことしてくるだろうなと予想がついていた俺はそれを尻尾で弾き、貫通した腕を引き抜こうとする。

 

 しかし抜けない、幾ら力を込めても抜けない、ガッチリと固定されているみたいに抜けない。

 

 いや、みたいというか多分ガッツリと固定されている、だって何か押さえつけられてる感じが凄いするもの。

 

 締め付けられる様な圧迫感に加えて何かが俺の中に流れ込んできてるような感覚がする。

 

 これはヤバいと瞬間移動で逃げようと思ったら…なんか出来ない、ジャミングされたみたいに元素が纏まらない、飛べない。

 

 

「捕マエタト言ッタゾ…」

 

 

 その言葉と共に、再び鬼が刀を振るう。

 

 今度は風元素と氷元素の小太刀ニ刀で首を挟み込むようにして振るわれたそれを片方は尻尾で弾き、もう片方は爪で受け止める。

 

 ギャリギャリと爪と小太刀が擦れ合う音と尻尾と小太刀がぶつかり合う音を尻目に、俺は貫通した右腕を何とか引っこ抜けないかとグイグイと引っ張る…がまるで手応え無し。

 

 だったら元素を流してこんで中から吹き飛ばしてやろうとしたらそもそも元素が流れない、多分中で何かしらして元素が流れるのを邪魔してるんだろう、じゃなきゃ元素が流れない理由も乱される理由も説明がつかない。

 

 

 えぇ…どうしよこれ。

 

 

 


 

 

 やはりだ、やはりそうだ、そうでなくては、そうこなくては。

 

 己の鳩尾を貫いた眼前の宿敵に対して、ふとそう思う。

 

 その速さ、その鋭さ、攻撃の正確さ耐久性、全てが今までのモドキとは一線を画している…その事実を心の底から喜ぶ己が居る。

 

 鳩尾を貫かれこそしたが、それを利用して右腕を固定して使えなくし、そこに攻撃を叩き込んだ…普通ならここで死ぬのだ。

 

 だが死なない、どれだけ打っても死ぬどころか傷すら負わない、掠り傷すら付けられない。

 

 死なない、決して死なない…未だ全力を出していると言えないこの状況の中でこの白狼は死んでいない、今までのモドキ達ならばこの状況で何度死んでいただろうか? …きっと数えきれないに違いない。

 

 実際、あの大きな紅いのは己がダメージを受けたフリをした際に油断してその肉体をバラバラに切断されているのだから。

 

 それに比べてどうだ? 目の前の宿敵は…油断なんて一欠片もしていない、一切の油断も驕りも慢心もしていない、だから殺しきれていない。

 

 それがどうしようもなく嬉しくて仕方がないのだ。

 

 右腕が使えない目の前の宿敵に幾ら刀を振るっても尻尾と左の爪で防がれる、ならば足でと思い蹴りを入れてみれば貫通した右腕が固定されていることを利用し、己を軸にして跳び回る、なんだったらそこから己を投げようとする。

 

 更に逃げられないのはお前も同じだとでも言わんばかりに顔を殴る蹴る等の打撃を繰り出し、腕だけで抜けないならと己を足場にして足を使って腕を引き抜こうとする。

 

 当然それを見逃す馬鹿はいないと刀を振るえば、振るった力を利用されそのまま以前の様に投げ倒された。

 

 以前と違ったのは腕を固定されていたお陰であの時の様な乱打を打たれなかったこと、そしてその代わりとでも言わんばかりに繰り出されたのが腹部への蹴りだったことだ。

 

 鎧にヒビが入り、バキバキと何かがメリ込み感触と共に激痛が腹部を駆け抜け、更に雷元素を纏っていた為かそこから元素が流れ込みほんの一瞬だけ腕の拘束が緩みかけた。

 

 もしも緩みかけていた拘束を直すのがほんの一瞬でも遅れていたら、きっと狼は即座に腕を引き抜いていたことだろう。

 

 そうなっていたら、そこからどうなったかは分からない、もしかすれば全力を出せずその場で終わる可能性もあるにはあった。

 

 その事実が、己に更なる高揚を与えた、決して消えない高揚とそれに対する渇望を。

 

 

 

 嗚呼、素晴らしきかな我が宿敵よ、愛おしきかな我が宿願よ。

 

 己が身は、我はきっと…お前に出会う為だけに、生まれてきたのだから。

 

 

 





『狼』

 某上弦の参みたいな危機的状況になってるのにそれに構わずバカスコと攻撃を繰り出したやつ、アホじゃねぇの?

 首筋斬られかけて絶体絶命の状況で出た言葉がどうしようこれ? 辺りからもうマトモじゃないと思いました、まる。


『鬼』

 カカタとタミミが無茶したんだからお前も出来るだろうと考えた結果、心臓部のある鳩尾ぶち抜いても普通に動いたやつ。

 カカタとタミミは出来たぞ? ヴァルぜライド閣下なら出来たぞ?(違う)
 
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