狼っぽいのになった…タスケテ   作:富竹14号

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 仕事も一人称も一人称も難しいんじゃ…。


『狼』VS『鬼』③

 

 

 もう面倒だから無理矢理引き抜こう…そう思ったのはふとした時だった。

 

 何をしても抜けないし、一瞬緩んだっぽかったから抜けるかな? とか思ってたらすぐに固まって抜けなくなったし、もう一度言うがもう面倒なのだ。

 

 だからもう無理矢理行く、乱暴する。

 

 迫る刃を地面へと叩き落し、それを岩元素で適当に固定する。

 

 続けて草元素及び岩元素のリミッターを解除し、雷元素を含めた全三元素全てを固定されている箇所へと送り込む。

 

 元素を流し込めない? 乱される? 知ったことか。

 

 流し込めないなら、堰き止められるなら止められないくらいの量を流し込めばいい、乱されるなら乱されてなお問題無いくらいの量を流し込めば良い。

 

 流し込む、固定されているであろう腕へと元素を生成した側から流し込み、更にそこから万力の力で腕を引き抜こうとする。

 

 引き抜こうとする間に鬼が俺へと小太刀を振るってくるが、それを岩元素の刃を付けた尻尾で防ぐ。

 

 舐めんなよ、さっきまでならまだしもリミッター解除した状態の岩元素なら即急で作った物でも簡単には壊れんわ!!

 

 ミチミチ、ギリギリ、バキバキと金属と木材が砕け割れる様な音が鬼の鳩尾から響いてくる、つい先程まではそんな音しなかったのにだ。

 

 つまり…方法としてはこれが正解だ!!

 

 

『いい加減にぃっ…! ぬぅけぇろぉぉぉよぉぉおぉぉ!!!!』

 

 

 更に力を込めて腕を引き抜こうと声を荒げる、その間にも鬼の刀は俺へと襲いかかり、それを尻尾で防ぐということを繰り返す。

 

 バキバキバキ! メリメリメリ! ミキミキミキ! と鉄と木材の砕け散る様な音が周囲に大きく響き渡り、そして──

 

 

 

──グチャァ…!

 

 

 何処か生々しい音と共に、俺の右腕は鬼の鳩尾からすっぽ抜けた。

 

 びちゃびちゃ、ガラガラと生々しい肉が飛び散るような音と木と鉄が砕け散る音が辺りに響く。

 

 右手に目を向ければ、毒々しい緑色がこびりつき、それは今も尚ドクンドクンと鼓動でもするかのように脈打っていた、まるで心臓みたいだ。

 

 振り払おうとしてもこびりついている為なのか振り払えず、むしろ逆に纏わりついてきて気持ち悪い。

 

 とりあえずこいつは放置するとして…問題は向こうか。

 

 

「───」

 

 鬼は、何処か呆然とした様子で俯きながら風穴の空いた鳩尾を見つめている、その様子は思ってもみなかったことが起きた時の人のようだ。

 

 はっきり言う、隙だらけだ、しかも無防備。

 

 しかし何でだろう、攻めたら手痛い反撃を食らう未来しか見えない気がするのですがそれは。

 

 

「……クク」

 

 ふと小さく響く笑い声、何処から聞こえてくるかと言われればそれは目の前の鬼からな訳で。

 

 

「ククククククク…」

 

「クヒヒヒヒヒヒヒヒリヒヒヒッ……!」

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

 

 最初は小さく、笑っているのかどうかすら曖昧なソレは、段階を踏むごとに次第に大きく明白なソレへと変わり、最後には確信させるに足るソレへと変化した。

 

 笑っている、それはもう嬉しそうに嬉しそうに笑っている。

 

 穴の空いた鳩尾に手を当て、それを優しく撫でながら幸せそうに大笑いしている…何がそんなにおかしいのやら。

 

 

「グヒャ…! アヒャヒャハハハハハハハハハハハハハハッ!!! ………アァ…()()()()()…なんと素晴らしい」

 

 

 笑い声が鳴りを潜め、恍惚とした雰囲気を放ちながら、鬼は再びを口を開いた、先程までの片言ではなく流暢な言葉で。

 

 

「こんな痛みは初めてだ、こんな感覚は初めてだ、こんな気分は初めてだ…機能停止へと、死へと近づいているはずの我が身は、一体何に魅入られたというのか…いや分かっている、死だからこそ魅入られるのだ、死ぬからこそ魅入りられるのだ…嗚呼」

 

 

───我は今、生きている

 

 

 

 そう言うが否や、鬼の身体に変化が起きる。

 

 グチャグチャ、バキバキバキという音が鳴り響く、さっきまでの鉄と木材の砕ける音じゃない、まるで骨を砕いて肉と混ぜ合わせるかのような不快な音。

 

 腕から肩へ、肩から背中へと移動するようにビクンビクンと痙攣し、ミチミチと肉を突き破ろうとしているような音がする。

 

 いや、ようなじゃなくて実際そうなんだろう、事実正面から見ても分かる程に背中からナニカが突き出ようとしているのが見える。

 

 グイグイと引いては押し、引いては押しを繰り返し、ソレは懸命に外へと出ようとしていた。

 

 

 

 そしてそれは遂に外へと姿を現した。

 

 

 

 グチャと緑色の血の様に見える液体を撒き散らしながら、それは飛び出る…それはまるで腕のようであった。

 

 大きな鉤爪の付いた大きな手、まるで脈打つ様にドクンドクンと光る緑色の細い線が何処か不気味さを増大させている。

 

 それは目覚めの余韻を満たすように、拳を握ったり開いたりして、両の拳と拳をぶつけ合わせる、まるで何時でも行けるぞと意思表示するみたいに。

 

 

「──征くぞ、狼よ」

 

 

 地面と空気が爆ぜた、少なくともそう勘違いしてしまう程の衝撃音を響かせながら鬼は俺へと突っ込んで来る。

 

 地面を踏み鳴らしながら俺へと肉薄した鬼は、その背に生えた二対の腕をハンマーの様に俺へと振り下ろされる。

 

 受け止めるか受け流して反撃しようかと思ったが…やろうとしたら寒気がした、悪寒が走った、これは絶対に避けなきゃ不味いと本能が語りかけていた。

 

 瞬間的に俺はその場から大きく飛び退き、瞬間移動を使用して更に後方へと飛び退いた。

 

 その直後にやってくる、巨大で重厚な衝撃波。

 

 地面が砕け、その砕けた地面の先から先へと罅割れていく、しかもそこから風元素の塊というか爆流みたいなものが勢い良く吹き出してくる。

 

 離れていたから無傷で済んだけど、あれは絶対に食らったらヤバイヤツだと本能的に悟り、頬を冷や汗が伝った。

 

 

「ウオォォォォォッ!!!」

 

 

 気迫の雄叫びと共に鬼が刀を両手に再び突っ込で来る、さっきと変わらず二対の腕は元気そうにブンブンと振るわれ…ちょっと待てお前刀持ってんじゃねぇか!? 四刀は流石に聞いてないぞ!?

 

 

 そんな俺の心情なんて何のそのとでも言わんばかりに両手の刀と背中の二対が持つ刀が大上段から同時に振り下ろされる。

 

 そんなの喰らってやれるかと刀が完全に振り下ろされきる前に鬼の懐へと一気に踏み込み、そのまま拳を腹へと放つ。

 

 拳は腹へと吸い込まれ、ダガァンッ! と重い音を鳴らす…しかし───

 

 

(手応え薄っ…!?)

 

 

 まるで手応えが無い、これはアレだ、一番最初の頃にスライムをぶん殴った時みたいな感触だ…ふざけんなさっきまで普通に効いてただろうがよぉ!?

 

 こいつさっきの腕と言いこの鎧の感触と言い、何をどうしたよコンチクショウめが。

 

 

「どうした、軽いぞ狼」

 

 そんな言葉が聞こえるのと同時に、俺は掬い上げるようにしてアッパーカットを放っていた。

 

 ガンッと鬼の頭が打ち上げられ、ほんの僅かではあるが身体が揺れる。

 

 そこに飛び掛かる形で足を置き、そのまま勢いで後方に大きく跳ねるようにして蹴り飛ばした。

 

 鬼は一歩二歩程後ろにたたらを踏む、そんな鬼に向けて俺は両手に作り出した雷元素と草元素のチャクラムを思い切り投げつける。   

 

 高音を放ちながら高速で飛来するチャクラムに対し、鬼は背の腕が持つ刀でそれを容易く弾き飛ばす。

 

 その様を確認した俺は、更にチャクラムを複数作り出してそれを鬼目掛けて連続で投げ込んでいき、そしてそれを態勢を整えた鬼は手に両手と背手が持つ四刀で弾いていく。

 

 投げては投げ、その度に弾かれあらぬ方向へと飛んでいくチャクラムを横目で見て、手に残ったチャクラムを投げつける同時に鬼へと突っ込む。

 

 投げつけたチャクラムを弾くことなく首を傾けて躱した鬼は。ぐるりと踊るように回転し──

 

 

「ヌゥゥン!!」

 

 刀を大きく振るった。

 

 そうして襲い来る、懐かしいかな飛ぶ斬撃。

 

 よく知っている、最初の頃に無茶苦茶苦戦させられたし、何だったらさっきも見たような気がする。

 

 それでも問題なのが、腕が四本に増えてるから純粋に手数が倍増してるってことなわけで。

 

 

『ッ…!!!』

 

 

 鬼の方向から大量の刃…最早壁と呼んだ方がしっくりくるレベルの斬撃の塊が超高速で飛んでくる、しかも風元素と氷元素が混ざっている類の斬撃だ、俺これ苦手なんだよなぁとか思いながら斬撃の壁へと突っ込んでいく。

 

 横とか上とかに避けれはするけど、どうせ俺が避けそうな方向全部に置き撃ちしてるだろうからこのまま真っ直ぐ行った方が被害は少ない…と思いたい。

 

 まぁそんなわけでして、いっちょ行ってみますか…!

 

 

 突撃だ…!!

 

 

 


 

 

(あぁ…良い)

 

 その姿を見て、その姿に魅入られ、我はここに立っている。

 

 自らが作り出した斬撃の壁、飛ぶ質量の塊、触れればまず間違いなくミンチ以下のナニカになり果てるであろうソレ。

 

 常人ならば逃げるだろう、只人でなくとも受けようとは思わないだろう、最強の名を持つ何かでもない限り真っ向勝負とはいかないだろう。

 

 そんな技を相手に、そんな物量を相手に───

 

 

『───ッ!!!』

 

 

 あの狼は今、真正面からソレに挑み、そして()()()()()()()

 

 氷が砕け、風の弾ける音が連続して渦中の元から聞こえてくる。

 

 ズガガガガガガッと、あの時…我が喰らったあの乱打の時のソレと全く同じ音が、斬撃の砕ける音と共に聞こえてくる。

 

 此方も逐一斬撃を飛ばして塊に斬撃を追加している…しかし追いつかない、此方が増やすよりも奴が塊を砕く方が断然早い。

 

(あぁ…とても良い)

 

 そうだ、そうでなくては…この程度で終わってしまうわけがないのだ、何故なら()()()宿敵(とも)なのだから。

 

 ほら見ろ───

 

 

『ガァァアァォァォアッ!!!』

 

 やってきた。

 

 刃の塊を、元素を混ぜ合わせた暴力の荒波を、狼は簡単には踏み越えてきた。

 

 拮抗していた時間は精々が十数秒、それだけ持ったことを褒めるべきなのか、それとも恥じ入るべきなのか、狼はそんなものは知らんと言わんばかりに緑と白で彩られた斬撃の塊を突き抜け、真っ直ぐと私に迫ってきていた。

 

 

「くひっ…!」

 

 迫る狼へと向けて、四本の刀で少しずつタイミングをずらしながら連続の突きを見舞う。

 

 それに対して狼は…やはり流石と言うべきか、何事もなく対処してみせた。

 

 一撃目は顔を傾けて躱し、二撃目は爪で弾かれ、三撃目と四撃目は繰り出した私の元素刀を圧し折ることで防がれた。

 

 直ぐ様失った二刀を作り出し、四刀による無数の斬撃を狼へと繰り出していく。

 

 右から左から上から斜めから、無数の角度からフェイントを織り交ぜながら次から次へと斬撃へと組み込んでいく。

 

 速く、遅く、少し速く、少し遅く…様々速さと角度、更にはタイミングも含めてバラバラにして斬り掛かっていく。

 

 しかし当たらない、かすりはするが当たらない、紙一重の所で逃げられる、反応は出来るが追いつけない。

 

 

 それのなんと…素晴らしいことか。

 

 

 身体を捻り、上段斜めから四刀を一斉に振り下ろす。

 

 振り下ろされた刀を狼は横から軽く刀の腹を叩いて軌道を反らす、逸らされた刀は地面を斬り裂いて真一文字の傷跡を作る。

 

 そこから更には燕返しと同じ要領で四刀をV字にして跳ね上げて斬りかかるが、今度は岩元素を纏った尻尾によって元素刀の一部が手から弾き飛ばされる。

 

 そんな私の目の前で狼は爪を上から構えて、それを一気に私に向けて振り下ろした。

 

 それを背腕の持つ二本の元素刀で防ごうとするが、そんなものは無意味だと言わんばかりに元素刀ごと私を斬り裂いた。

 

 鎧の破片が宙を舞う光景を尻目に、私の思考は喜びでいっぱいだった。

 

 

 死なない、死なない死なない死なない…!!! 殺せない、殺されない、殺せる気がしない!!

 

 あぁ…やはりお前だ…お前こそが───

 

 

 

───私の(唯一)だ…!!!

 

 

 

 

 





主人公

 思考とは裏腹に基本的に強さが裏ボスのそれ。

 本人が苦戦してるなぁ〜とか思ってても傍から見たら大して苦戦しているように見えないというあるあるなタイプ。




 主人公との戦いの中でどんどん人間みたいになっていってる元傀儡、腕が四本になった。

 実は風スライムを大量に取り込んでおり、それを利用して人間の筋肉によく似た人工筋肉を作り出している。

 モチーフはコエテク発産の和風死にゲーに登場する腕四本の鬼。
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