狼っぽいのになった…タスケテ   作:富竹14号

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 日記形式からいきなり外れていくスタイル、正直なんでも良いから戦闘描写がしたかった今日この頃。


『白狼』対『剣鬼』

 

 カチャカチャッと鎧の揺れる音が聞こえる。

 

 それは、唐突に動き出した。

 

 雨の中、地面に正座の体勢のままピクリとも動かなかったその甲冑武者は、『白い獣域ハウンド』が姿を表した途端に、唐突に動き出した。

 

 白い獣域ハウンド…そんな存在は見たことも聞いたこともなかった、実際に見て知ったのはその時が最初で最後だ。

 

 話を戻そう、その白い獣域ハウンドが現れてから鎧は動き出した、あの鎧が動き出す一定の距離に近づいてもいないのにだ。

 

 動き出した鎧を見て、白い獣域ハウンドは…『彼』は興味を引かれた様に鎧へと近づいていった、獣域達がする様に空を踏みしめながら。

 

 そして…鎧はそんな彼に向かって突然刀を振るった。

 

 地面を踏みしめて、一気に素早く距離を潰し、不意を打つ形で彼に刃を向けたんだ。

 

 当然知覚範囲には入っていない、『君』と戦った時みたいに近づかれるのを待つのではなく、自ら彼を己の知覚範囲に捻り混んだ。

 

 超高速で振るわれた斬撃に彼は驚いた様子だった、私から見ても突然だったのだから当然の反応なのだけど。

 

 しかし驚いたのは一瞬だけ、彼はすぐさま振るわれた斬撃を自分の爪で弾き返してみせた、ガギン! という重い金属音が辺りに響く。

 

 

 その一合を合図として、彼と鎧の戦いは始まった。

   

 

 

 鎧は弾かれた刀を弾かれた勢いのまま身体ごと反転させ、そのまま返す刀で彼に斬りかかった。

 

 上段を弾かれてからの下段からの一閃、普通なら死ぬ。

 

 しかしそれを彼はさも当然の様に身体を横に傾かせて躱し、傾かせた身体を回転させ爪を使用した連続攻撃を仕掛ける。

 

 突き進みながら放たれるまるで抉り取る様な連撃、刀を振り切りなおかつ超至近距離まで近づかれていた鎧にはそれを躱す術は無い。

 

 ガリガリギャリギャリと鉄を削り削ぐ音が辺り一体に響き渡り、その発生源では鎧に次から次へと切り傷や抉り傷が出来上がる。

 

 彼の回転速度はみるみる内に上昇し、ガリガリギャリギャリという音も何時しかバリバリッと音を変えていく。

 

 勢いは衰えず、鎧も彼の攻撃に何も出来ていない、刀を振るえる距離では無く、素手で掴もうにも弾かれるか切り刻まれるのが目に見えている。

 

 これで終わりだと、私は思った。

 

 

 

 けど…終わらなかった。

 

 鎧は風元素を纏い、それてそれを自分を中心として爆発させ、彼を吹き飛ばした。

 

 吹き飛ばされた彼は多少の驚きこそ見せても即座に落ち着き、空中で身体を数回回転させて軽やかに地面に着地してみせる。

 

 そこへ鎧は一気に突っ込み、再び刀を振るう。

 

 彼はそれを弾き、そのまま鎧の一懐に入り込んで爪を胴体へと向けて突き立てようとする。

 

 しかし鎧も馬鹿ではない、今度はそうはさせまいと突き立てられる爪を素手で掴み取り、そのまま彼を力任せに背後へと一本背負いでもするかの様に投げ捨てた。

 

 くるくるゴロゴロと回転し地面を転げる彼へ、鎧は更に遠く離れた位置から刀を連続で振るう。

 

 そうして放たれる、風元素による飛ぶ斬撃達。

 

 そのどれもが当たれば必殺の威力を誇る一撃、それら全てが地面を転がる彼へと向けられ、そして放たれている。

 

 彼もそれを理解していたのだろう、転がる勢いを殺し地面に足を踏みしめて右に跳んで一撃目を躱す。

 

 続けて襲いくるニ撃三撃を空中で身体を捻りながら斬撃の隙間を縫う様に躱し、更に自ら斬撃へと突っ込む。

 

 突っ込んだ先に待ち受ける四撃目を地面を這うようにして躱し、続く五撃目を元素すら纏っていないその爪で弾き飛ばす。

 

 弾き飛ばされ、明後日の方向へと飛ばされた風元素の斬撃は、偶然進行方向にあった巨大な岩石を斜めに通り抜けて消えた。

 

 通り抜けられた岩石には斬れ目が走り、ズズズっと音を立ててズレていく。

 

 そんな光景を尻目に彼は鎧へと肉薄し、その爪を高速を超える速度で振るっていく。

 

 そしてそれは鎧も同じで、手元の刀がブレる様な速度で振るわれる。

 

 ズガガガガガガガッと連続で響き渡る衝撃音、最早鉄がぶつかって鳴るような音ではない、まるで巨大な物質のぶつかり合いの様に感じる。

 

 片や圧倒的な手数と速度で相手を翻弄し、その鎧に幾多の傷を刻んだ存在、ただし決定打は無し。

 

 片や手数や速度でこそ劣るものの、一撃でも当たればそれだけで致命傷を与えかねない鎧の姿をした人形、ただし当てられない。

 

 彼が…『白狼』が先に鎧を削り切るか、それとも鎧が…『剣鬼』が一撃を直撃させ勝負を決するか……これはそういう戦いなのだと、私はその時理解した。

 

 

 

『………………!!』

 

 長く続いた連撃の応酬、それは『剣鬼』が彼を無理矢理弾き飛ばしたことで終わりを迎えた。

 

 『剣鬼』の鎧は既に斬り傷や破損箇所だらけで既にズタボロもいいところ、限界が近いことが察せられる。

 

 からくりでなければ、とうに倒れているだろう傷だ。

 

 

 対して彼はほぼ無傷、掠り傷等はかなり多く見受けられるが言ってしまえばその程度、体力も未だ有り余っている様に見える。

 

 しかし、それでも一撃でもまともに喰らえばそれで終わってしまう、元素を扱える者とそうでない者にはそれだけの差が存在する。

 

 片や軽装全てが命取り、片や重装既に満身創痍。

 

 有利不利は無い、どちらも状況は似通っている。

 

 状況は変わらない、先に削り切るか、先に当てるか…二つに一つ。

 

 

 

『………!!!』

 

 『剣鬼』が動いた、その身から元素を溢れさせ、一つのモノを形創る。

 

 溢れた風の元素はまず足を造り、足から続けて膝を、膝から続けて胴体を、胴体から続けて腕を、腕から続けて顔を…そして最後に、その手に持つ刀を創る。

 

 ここに、鬼がもう一匹生まれた。

 

 

「………グルぅ(嘘やん)…」

 

 

 彼は何処か唖然とした様な雰囲気で、一つ唸った。

 

 その鋭い目は何処かまん丸としているようにも見える。

 

 風元素で創られたもう一体の剣鬼は、刀をブンブンと一振り二振りすると、徐に本体と共に視線を彼へと向ける。

 

 

 瞬間、二体と彼は同時に動き出した。

 

 『剣鬼』二体は同時に飛ぶ斬撃を放つ、その数は先程までの倍近いだろう。

 

 彼はその尖い尾を地面に叩きつける、ズザァ! と土の削れる音と土煙が舞い、それが明確な武器の一つであることが分かる。

 

 向かってくる斬撃の大群、それを彼は真正面から迎え撃った。

 

 無数に襲い来る飛ぶ斬撃の一つ一つを、その両の爪で一つ残らず弾き飛ばし、二体の『剣鬼』目掛けて突っ込んでいく。

 

 突っ込んでくる彼を相手に『剣鬼』の本体は片手に氷元素の刀を出現させ、元から持っていた刀と氷元素の刀を逆手に持って勢い良く地面へと突き刺した。

 

 

 そうして巻き起こり、襲い来る白と緑、風と氷の衝撃波。

 

 暴風に吹かれ荒れる海の様に、暴風と共に迫りくる鋭く凍てつく氷の荒波。

 

 それが、真っ直ぐ『剣鬼』目掛けて突っ込んで来ていた彼にカウンター気味に放たれる。

 

 避けるには近すぎる、離れようにも止まれない。

 

 回避不可の絶対距離のタイミングで放たれたその大技は、確かに彼の命を奪い去るはずのモノ。

 

 

ガァァァァァァァァァァァ(邪魔ァァァァァァ)!!!」

 

 

 しかし、彼はそれを容易くねじ伏せる。

 

 迫ってきていた氷と暴風に対し、彼は爪を大きく下に振りかぶり、地面に爪を擦りつけるギリギリの位置から川の水を勢いを良く掬い上げる様にして、薙ぐ。

 

 それだけ…たったそれだけで二つの元素を併せ持ったそれは彼の眼前から消滅した。

 

 

 しかし、そうなることを最初から『剣鬼』は分かっていたのだろう、『この程度では殺せない』と。

 

 それを裏付ける様に、薙ぎ払われた暴風と氷の波の奥から現れる、居合の構えを取った『剣鬼』の姿。

 

 彼によって薙ぎ払われた風と氷の元素、それらの残滓が『剣鬼』の刀へと収束していき――

 

――斬!

 

 横一文字に振るわれる。

 

 居合抜きによって放たれた超高速の一閃、それは『剣鬼』の大技を薙ぎ払って突っ込んで来た彼の身体へ吸い込まれるように振るわれ、そのまま彼の肉体を両断――

 

 

――ガンッ!!

 

 することはなく、逆に『剣鬼』の頭部が何かにぶつかった様に後方に大きく仰け反った。

 

 更に仰け反りバランスを崩してしまった為、彼へと振るわれていた居合はその矛先から大きく逸れて空を斬る。

 

 そして、それを見逃す彼でもなく、仰け反った剣鬼の懐に一気に踏み込む。

 

 その手を徐に大きく振りかぶり、手を拳の形に握り締めて『剣鬼』を…正確には『剣鬼』の持っている刀、その柄を握っている『剣鬼』の手を刀の柄ごと殴り抜いた。

 

 

 殴り抜かれた彼の拳に『剣鬼』の手の中にあった刀は容易く弾き飛ばされ、つい先程斜めに切断された岩の断面に甲高い音を立てて突き刺さる。

 

 更に刀を剣鬼の手から弾き飛ばした彼はそのまま勢いに任せて『剣鬼』に掴みかかり、そのまま力任せに『剣鬼』を引きずり倒して馬乗りになって一方的に『剣鬼』を殴り始めた。

 

 上から『剣鬼』の頭の部分を殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴り続ける。

 

 『剣鬼』が何をしようが殴る、拳で反撃してこようが殴る、顔を掴み引き剥がそうとしても殴る、拳を防ごうがとにかく殴る。

 

 殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。

 

 拳を『剣鬼』に撃つ度に、叩きつける度に速度が増し、鋭さも一段と上昇していく、拳の暴風雨とでも呼ぶべきだろうソレ。

 

 

――ガンッ!

 

 しかしそれも、何か硬い物を叩いた様な音と共に唐突に止まってしまう。

 

 彼の拳は虚空で静止していた、まるで何かに遮られた様に。

 

 

「……………」

 

 

――ガンッ!!

 

 

 彼が再び拳を振るう、しかしまた虚空で静止した。

 

 

「………」

 

――ガンッ!

 

 止まる。

 

――ガンッ!!!

 

 止まる。

 

―ガガンッ!!!

 

 また止まる、剣鬼はそれをジッと見つめている。

 

 

 

「…………………………………クゥ〜」

 

 二度三度拳を叩きつけ、その全てが虚空で静止したことを確認した彼はほんの一瞬、ほんの一瞬だけ小さく息を吸い――

 

 

 

 

 

 

――ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 先程までの速度より更に数段上の速度で静止する虚空へと拳を叩きつけ始めた。

 

 ほんの一瞬止まっていた彼に反撃の構えを取っていた『剣鬼』は反撃の為のそれを投げ捨て、何かを押し出すように両手を振るわれる拳の嵐へと突き出す。

 

 その動作の影響なのか、彼の拳の位置がほんの僅かに押し込まれた様に動く…が――

 

 

――ドガガガがガガガがガガガがガガガがガガガがガガガがガガガがガガガガガガがガガガがッッッ!!!!!

 

 

 更に速度が跳ね上がった彼の拳によってすぐに元の位置に押し戻される。

 

 更に速度の上がった彼の拳、一秒と絶えることの無いその大嵐の様な連打は、次第にその場にある物を映し出す。

 

 それは罅、何もないはずの空間に、彼が殴り続けている場所に次第に罅割れが見え始める。

 

 それを認識したのだろう、彼は徐に拳の手を止め、握りしめていた拳を開き、罅割れている箇所に向けて両手の爪を突き刺し――

 

 

「…ガウッ(邪魔)

 

 左右に、思い切り引き裂いた。

 

 抵抗は一瞬、その一瞬の後にバリンッ! と何かが割れる、砕け散る。

 

 透明なナニカが今、そこら中に破片をばら撒きながら引き裂かれる、『剣鬼』を護っていたナニカが、無残に。

 

 

『……………!!!』

 

 

 その直後に、つい先程までの身動ぎもしなかった風元素で構成されたもう一体の『剣鬼』が動き出した。

 

 本体を助けんと風元素の飛ぶ斬撃を複数放つ。

 

 迫る風元素の刃達、それに対して彼は……徐に自分が引きずり倒した『剣鬼』の胸倉を掴み、そのまま後方に勢い良く回転しながら巴投げの要領で『剣鬼』を自分に迫る斬撃達へと向けて投げつけた。

 

 すぽーんっと投げつけられた『剣鬼』に風元素の刃が殺到する、鋭く正確なその刃は一つの例外も無く『剣鬼』へと命中し、その鎧に傷を付けていく。

 

 まさかあの状況から自分の分身が放った攻撃に向けて放り投げられるとは思ってもみなかったのだろう、『剣鬼』の反応が先程までのものより鈍く感じる。

 

 そして、そんな『剣鬼』に向かって、彼は何の容赦も無く突っ込んだ。

 

 突っ込み、肉薄し、その手で剣鬼の顔面を鷲掴みにし、地面へと叩きつけた。

 

 地面が割れる、『剣鬼』の顔が地面へと食い込む、最早私からは『剣鬼』がどうなっているのか見えない程に。

 

 更に、その状態から更に彼は加速した。

 

 加速し、その手に掴んだ地面に食い込んだままの『剣鬼』を力任せに引きずる。

 

 地面を抉り、鎧が接触したことに起こる火花と共に『剣鬼』を地面に押し付けたまま、地面を砕きながら真っ直ぐに突き進む。

 

 『剣鬼』は何の抵抗も出来ず、そのまま彼によって地面諸共削られながらその場から居なくなった。

 

 

 

 

 当時、呆然としていた私をその場に置いて。

 

 

 

 

 

 

 

     

 

 

「というのが、私が持つ『白い獣域ハウンド』に関する情報の全てだ…満足できたかい? 『旅人』さん?」

 

 

「うん、十分だよ、ありがとう」

 

 

 

 

 





主人公

 この後、『剣鬼』を海まで引きずり続けた後に日記の通りにジリ貧と感じて逃げた。

 実は引きずっている間に軽く三つくらいヒルチャールの集落を破壊している。

 実は疲れすぎて当日の天気を間違えて日記に書いている。

『剣鬼』

 正式名称『魔傀剣鬼』

 リアルなら遠距離だけじゃなくて近接も盾で防ぐだろうという作者の妄想から無茶苦茶硬い盾をヤバイ時に展開する様になった。

 実は主人公に逃げられた後、ずっと主人公が逃げた方向を見つめていた。


『私』

 偶然主人公が戦っている姿を見つけ、それを旅人に教えた存在。

 こいつが主人公を彼と呼ぶのは、主人公の姿を見た数日後辺りにナニカに襲われているところを助けられているから。


『旅人』

 冒険者協会からの依頼で『白い獣域ハウンド』の情報を集めている、この後吉次郎に全部教えてもらう。

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