狼っぽいのになった…タスケテ   作:富竹14号

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 軽く一ヶ月ぶりの原神…それはそれとしてこれどうやって決着つけよう?


『狼』VS『鬼』⑤

 

 

 

「狼ぃぃ!! オオカミィィィイィィィィィッ!!!!」

 

『うっさい騒ぐな今更ァァ!!』

 

 なんだこいつ、なんなんだこいつ!?

 

 何か危ない、とにかく危ない気がする、具体的には言うと命じゃなくてもっと別の何かに対しての危険性を感じる。

 

 端的に言おう、さっきよりも気持ち悪い。

 

『来んなアホーー!!』

 

 拳を放つ、岩元素を纏わせた最高硬度の一撃、ただ硬いものをぶん殴るという括りで言えば上位の火力に位置するだろう一撃を、俺は何の躊躇もなく鬼へと叩きつける。

 

 この程度じゃ壊れんだろうという嫌な確信を抱きながらもとりあえず離れたいという思いから放たれたその一撃は、呆気ないほど綺麗に鬼の顔面へと吸い込まれた。

 

 バガゴォォン!! と山が砕けるんじゃないかってくらい大きく重々しい音が鬼の顔面を中心として響き渡る。

 

 普通ならここでゲームセット、顔面砕けて終わり……のはずなんだけどなぁ…。

 

 

「アヒャヒャヒャヒャヒャャヒャヒヒャャァァァァァァッ!!!!」

 

 拳を喰らった直後に嗤声が俺の耳に届き、そこから振り抜かれるように半透明な緑色の鉤爪が迫りくる。

 

 迫る鉤爪を岩元素の腕で抑え込み、放った拳を後ろに引いても更にもう一度拳を叩きつけんと鬼目掛けて振るう。

 

 しかしそれは叶わない、拳を振るうその直前に俺の視界が急速にブレたからだ。

 

「今度こそおぉぉ…ツカマエタァァァァァァァァッッッ!!!!!!!」

 

 鬼が手を大きく振るった姿が見えた瞬間、俺の視界が急速にブレた。

 

 グンッと勢い良く視界が上下に入れ替わり、ジェットコースターさながらのスピード感が身体にのしかかる。

 

 そしてその勢いのまま、俺は地面に叩きつけられた。

 

『ッ……!!』

 

 戦いが始まってから初めてまともに食らったダメージ、叩きつけられた影響で息が止まる、衝撃が身体中に響いてくる、痛いし苦しいしでどうしようもない。

 

 ほんの僅かの浮遊感と共に、再び急速に視界がブレる。

 

 グンッと横合いにブレていく視界を目に納めながら、何処を掴まれているのかと視線を身体へと向ける。

 

 見てみれば、先程の緑色の鉤爪が俺の尻尾の部分をガッシリと掴んでいた、尻尾の感覚は正直薄いから気づかなかったのにも納得する…そんなことを考えてる内に、再び俺の身体は打ち付けられた。

 

 岩か何かの砕ける音と共に身体に衝撃が走る、今度は悲鳴すら上がらない、息が詰まって仕方がない。

 

 再び浮遊する、今度は何処に当てる気なのか…そんなことを考えている内に無性に苛ついてきている自分が居た。

 

『舐ぁぁ…メンナァァァァァァァッッ!!!!』 

 

 爆発した、何が切っ掛けとか自分でも分からない、ただ無性に苛ついたからキレただけ…多分それだけのはず。

 

 俺は尻尾を掴んでいる鉤爪を逆に掴み取り、それをそのまま釣り上げるように思い切り引き寄せる。

 

 抵抗は一瞬、まさかあの状況から逆に引っ張られるとは思ってもみなかったのか、鬼は足を踏み締め耐えることすら無く、呆気なく鉤爪ごと俺の攻撃範囲に引きずり出された。

  

『いっったいだろうがぁぁこの変態マゾ剣鬼ィイイィィッッ!!』

 

 渾名としてはこれ以上無い程に失礼な呼び名を怒りと共に吐き出しながら、俺は引き寄せられた鬼の顔面を岩元素の拳で殴りつけ、更にそのまま吹き飛んでいった鬼に向けて突進し、激化反応を纏わせた爪で思い切り顔面…というより目玉の部分を斬りつけた。

 

 ガシャンと、今までにない音を響かせながら鬼の片目の部分が爪の形に抉り取られ、光っていた部分から光が失われた。

 

「ッッ… オォォォォォォッ!!!」

 

 それでも流石は剣鬼と言うべきか、そんなの知らんと言わんばかりに刀を振るってくる、振るわれた刀は半ば反射的にされた俺の尻尾をいとも容易く切断した。

 

 激痛が奔る、本来あったモノが無くなる痛み、普段俺が散々っぱら愛用していた俺の尻尾が斬り飛ばされ、宙を舞う。

 

『アァォァォァァァァッッ!!!』

 

 鬼を斬りつける…だからどうした?

 

 尻尾が無くなったからなんだ、そんなのとっくに覚悟していたことだろう、あの時…初めて鬼に会った時からそうなるかもしれないって分かってたんだから。

 

 痛い痛い痛い…けど死んでない、容易く動ける、たかが尻尾が斬られた程度で死ぬやつなんているものか。

 

 斬る、抉る、自慢の爪で鬼の鎧にこれでもかと深々とした傷を抉り付ける。

 

 当然鬼も黙ってはいない、俺が爪で斬りつけている間にも俺に刀を振るってくる、振るわれた刀は俺の身体を裂き、俺の身体から血が吹き出る…だからなんだ…。

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…それでも…お前だけは殺す。

 

 

『ウゥゥガァァァォァァァォォォォアァァァォァァッッッ!!!!!!!』

 

「オオォォォォォォォァァァォォォオォォッッ!!!!!!」

 

 気づけばお互い叫んでいた、気づけば互いに吼えていた。

 

 生きるか死ぬかの瀬戸際を、一緒に生きている、片や血に塗れ、片や破片と油に塗れて、互いが互いに殺すか殺されるかの世界で今生きている。

 

 それに何か思うかと言われれば何とも言えず、何も思わないと言えばそれこそ嘘になってしまう…なんとなくではあるが、今話せば仲良くなれる気がしてくるのだ、互いに生きたまま帰れる気がしてくるのだ。

 

 …しかし、しない…仲良くなれようがなれまいが関係無い、互いに生きて帰れるかなんてどうでもいい。

 

 どれだけ気が合おうが、剣鬼(お前)だけは殺すと決めている。

 

 

 


 

──あぁ…なんて、なんて恐ろしいもの(美しいもの)を向けてくれるんだ。

 

 

 私はそう思わずにはいられなかった。

 

 右から、左から、上から、縦から、真ん中から…無数の方向から襲い来る爪を弾き防ぎながら、私はただただ至福の真っ只中にいた。

 

 それもこれも、眼の前の狼から向けられる視線のせいだ。

 

 先程までは、ただ倒すという敵意だけしか感じ取れなかった…しかし今は違う、明確に私を殺すという意思を感じられる、そう狼の目が言っている。

 

 気配も変わった、つい先程までは何処か柔らかさを感じた気配が、今ではピリピリと鋭い刃物で突き刺してくるようなソレへと変わっている。

 

 それが堪らなく嬉しい、それが堪らなく愛おしい。

 

 だって目の前に存在する私の唯一が、ようやく私をちゃんと愛してくれ(殺してくれ)ようとしているのだから。

 

 

「ハハッ! 嬉しいなぁ狼よぉ! ようやく、ようやく私をちゃんと見てくれたなぁぁッ!!!」

 

『うっさいんだよ変態が! もうなんでもいいからさっさと死ねぇ!!!』

 

 売り言葉に買い言葉、私が売ってお前が買う私達の会話、その中で私はお前に刀を振り、お前が防いでまた爪を振るう…この応酬のなんと楽しいことか。

 

 刀を上段から振るい、その素っ首叩き切ってやると言わんばかりに勢い良く振り下ろす。

 

 それを狼は紙一重で避けながら、そこから更に私の懐に突っ込む…ことをせずに唐突に口を大きく開けた。

 

 瞬間、私は半ば直感的にその場から横合いに大きく飛び退いた。

 

 その数瞬後に、バチリという何かの弾ける音を鳴らしながら私の居た場所を大出力の元素の塊が通り過ぎた。

 

 いや、塊というよりも光線、赤い光線がつい先程までは私の居た場所を容赦無く抉り、消し飛ばす。

 

 当たっていればほぼ間違い無く致命傷、或いはそのまま消し飛ばされて死合終了の知らせが鳴るであろうそれを目前で見て、私は……どうしようなく興奮した。

 

 なんだ今のは? まだあんなものを隠し持っていたのか? 戦い始めてから随分経ったのに、まだそんな手札を残していたのか? と無いはずの心臓が鼓動が早まったような気がした。

 

 そんな私に、狼は牙を剥き出しにして襲い掛かってくる。

 

 その瞳から隠しようもない程に濃い殺意が満ち満ちており、今にも喰い殺してやる言わんばかりの目をしていた。

 

 そんな狼に好きにさせるかと刀を振るうが、それを両手の爪で抑え込まれ、更にその体勢のまま勢い良く身体ごとぶつかられて揉みくちゃになりながら地面を転がる。

 

 すぐさま起き上がって攻撃してようとするが、それよりも早く眼前に白が映り込み、そこから顔面に衝撃が走った。

 

 殴られたと、そう理解する前に更にもう一発、顔面に衝撃が響き、身体が後方に大きく下がる。

 

 不味いと思ったがそれはもう後の祭り、大きく後退した私に向かって幾多の打撃と斬撃が打ち込まれ始める。

 

 腹に腕に足に喉…人間で言う所の急所を中心として打ち込まれるそれらの威力は絶大で、私自身もあまりの速度の攻撃に抵抗が出来ない状態だった、速すぎて元素を展開する隙すら無い。

 

 雷元素のバチバチという音と共に、私の身体がみるみる内に砕け、削れていく…どれもが本来なら必殺のソレのはずだ、ソレに尚耐えられているのは私の身体が頑丈であることと私が痛みを感じない傀儡であるからこそだろう。

 

 故に、だからこそ、分かってしまう…このまま行けば、問答無用で削り潰されると、ここで終わってしまうと。

 

 

 

 

 

 それは…許容出来ない、それだけは駄目だ。

 

 

 

「アォァッッ!!」

 

 元素を全力で圧縮して鎧代わりにする、以前のように吹き飛ばすことはしない、意味がないからだ。

 

 鎧を纏ったことで響いてくる衝撃が若干ではあるが弱まり、ほんの僅かばかりの余裕が出来た、しかし本当に僅かだ、すぐに破られる。

 

 だからその前に、押し返す。

 

「オオカミィィィィィィッッ!!!」

 

『しっつこいなぁお前ェェ!!!』

 

 狼の乱打のスピードが跳ね上がり、雷元素の出力も同時に上がる、鎧に掛かる負荷も高くなり次から次へとヒビ割れていく。

 

 しかしそれでも、一瞬は稼いだ。

 

 元素の出力を最大値にまで引き上げ、そこから更に数値を振り切るレベルで暴走させる。

 

 最大値を振り切って暴走を開始した元素は私の体内で渦を巻くように暴れ回り、内側から私の身体を破壊していく。

 

 飛び出すように、私の身体から風元素の光が漏れ、幾度の間も置かずそれら尽くが刃となって狼へと襲い掛かる。

 

『チィッ…』

 

 舌打ちしながら狼は後方に大きく飛び退くことで、風元素の刃を危なげなく躱してみせ、更に警戒するように此方を目聡く見つめている。

  

 それを機能している方の片目に納め、私はゆらりと立ち上がった。

 

 元素は未だに体内で暴走している、そのせいなのかほんの少し動いただけで私の身体はボロボロと崩れ落ちていく。

 

 パラパラと身体の破片が地面に落ち、落ちた破片の部位を埋めるように風元素の光がそこから溢れ出してくる、何時の間にか背後の二対の腕は消えていた。

 

 刀を握る手はボロボロで、何時手放してもおかしくない、寧ろ壊れてないのが不思議なくらいだろう。

 

 それでも、まだ動けると、私は確信していた。

 

 

 

『…まだ何かあんのかよお前』

 

「こちらの台詞なのだがなぁ、それは」

 

 呆れたような狼の言葉に脊髄反射で答える…あぁそうとも、まだ私は終わらないし終わらせない、終わってたまるか。

 

 だって私は…まだまだこの時間を味わっていたいのだから。

 

 無理矢理暴走させたのだ、この身体は最早持たない、動ける時間も範囲も残り僅か…それでも構わない。

 

 

 私は自分が破損(死ぬ)その時まで、この至福の時間を堪能し続ける、私はそうしたい、私はそうして壊れたい(死にたい)

 

 勝っても負けても結末は恐らく同じだ…だから、あともう少しでだけこの壊れかけの傀儡に付き合っておくれ、我が唯一よ。

 

 その果てに私の望んだものが、きっとあるのだから。

 

 

 

 







 勝とうが負けようが壊れることが確定した人間みたいな傀儡。

 やってることは狼と一緒だが、効率も出力制御も総じて狼よりも下の為、同出力で戦っても狼には程遠い、お労しや。




 ドン引きして尻尾斬られて遂にキレて本気で殺す気になった…逆を言えば今までは倒す気はあっても半ば無意識的に遊んでた部分はあったりする。

 多分意識的な意味で本気で戦ったのは鳥とお父さんと鬼だけ。



 
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