ようやっと書けた、もう完全にネタ切れだっぴ。
AC6、発売おめでとうございます。
「アッハハハハハ!! ヒィヒャァァァァァァッッ!!!!」
狂ったような笑い声をあげながら、鬼が俺へと突っ込んでくる。
その速度は先程までの比じゃない、見た目の変化は虚仮威しじゃなかったわけだ。
というか…うん、やっぱり気持ち悪い。
地面を砕き、風すら超えて俺へと肉薄し、その刀を大きく振りかぶって俺へと振り下ろす。
振り下ろされた刀には目に見えて分かるほどに鋭く風元素が付着していた、当然喰らえば一溜りもない、多分爪で防いでも危ないかもしれない。
だったら…まともにぶつかり合ってられるか。
「おごっ!?」
草元素をフル稼働させて地面へと流し込み、地面に埋まっていた木の根を急成長させて地面を突き破らせる。
地面を突き破って現れた巨大な根は槍のように鬼の腹部へと殺到し、その勢いのまま上空へと鬼を吹き飛ばす。
『そっからなら避けらんないだろ…!』
更に空中へと打ち上がった鬼に向けて、俺は岩元素の塊を連続して鬼へと射出する、一発二発とかそんなちんけな数じゃなくて十発から五十発、全部が全部が岩石と呼ばれる程の大きさだ…それをまぁこいつは…。
「温いぞ狼ぃ!」
何がどうそうさせるのか、斬撃を縦横無尽に繰り出して射出された岩石全てを粉微塵になるまで斬り刻んだ。
呆れるよ、何をどうしたらそんな動き出来るだよ、しかも見たところお前壊れかけだろうに、今のでタイムリミット減ったろうに。
一体何がお前をそうさせるのかと呆れた目を向けながら、俺は攻撃の手を緩めない。
ただ塊を連続して射出するってのが駄目なら、今度は塊じゃなくて柱をぶつけようと、以前鐘離さんに見せてもらった岩元素の柱を無数に生成し、それを鬼へとぶつける。
地面から無数に生えた柱はまるで蛇のような軌道を描きながら一斉に鬼へと向かっていく。
それに対して鬼は自身に当たりそうな物だけを最小限に斬り刻みながら、向かってくる柱を逆に足場にして俺へと向かってくる。
時に別の足場に飛んで柱を避け、避けられないと分かるや否や最小限の動きで柱をバラバラにして、走り込みながらまた別の柱に飛び移るという行為を尋常じゃない速度で行う…さながら八艘跳びのように。
『馬鹿じゃねぇのかあいつ…』
不思議と言葉が漏れた、まるで呆れたように、どうしようもない馬鹿に出会った時みたいに。
鬼の身体から破片が零れ落ちている、少しずつ少しずつ古びた壁の塗装が剥がれ落ちるように、少しずつ鬼の身体がパラパラと剥がれ落ちている。
分かっているのか、このまま続ければ先に壊れるのは間違いなくお前だ、俺が逃げに徹すればそれだけで壊れるのが今のお前だ。
何がそうさせる? 何がお前をそこまでさせる? 今にも壊れそうなのに、何がお前をそこまで駆り立てる?
嬉しそうな笑い声をあげながら、俺に向かって刀を振り上げる鬼をジッと見つめて、何をするでもなくパンッと手を合わせる。
瞬間、鬼の乗っていた柱が内包していた元素ごと弾け飛ぶ。
ぶくりと泡立つように柱が膨れ上がり、熱膨張でも起こしたみたいにボコボコと風穴が開き、最後に一気に弾けた…時間にして数秒と満たない。
「ッ!?」
爆風に鬼が巻き込まれる、辺りに満ちる光が俺の視界を埋め尽くした…ぶっつけ本番でやってみはしたけど…これは暫く封印だな、威力がデカ過ぎる。
パラパラと降り注ぐ柱の破片とモクモクと登る煙を見ながらそう考えて…爪に雷元素を纏わせた。
「ォォォォォォォォオオオオオッッッ!!!」
煙の奥から、鬼が咆哮と共に刀を両手で構えて接近してくる。
風元素を纏った刀の上段からの振り下ろし、それに対して俺は圧縮した雷元素を纏わせた爪で迎え撃つ。
「ヌゥゥンッッ!!」
唸り声と共に振り下ろされた刀が俺の振るった爪とぶつかる、重苦しい鉄の音と放電する雷、吹き荒れる風の音が周囲に響いた。
『ッッ…!』
改めて受け止めてみた結果、分かったことがある…さっきの刀四本の時よりも一撃が重い。
足が沈み込む、身体が軋む、咄嗟に岩元素で身体能力ブーストしてなかったらそのまま叩き切られてたかもしれないと、そう思わせられる程に重い一撃、何がおかしいってさっきまではそうでもなかったことだろう。
成長している…さっきから分かっていたその事実を、改めて再確認させられた気がした。
「ハハハッ!! さっきの驚かされたぞ狼! まだそんな隠し玉を残しているとはな、本当に本当に…驚かされたっっ…よぉ!!」
そんなこっちの心情なんて知らぬと言わんばかりに鬼は嬉しそうに俺へと言葉を叩きつけ、更には鍔迫りあっていた俺を強引に刀を振り切ることで吹き飛ばした。
吹き飛ばされながら、鬼のことを見る。
ボロボロだ、鎧は全身罅割れだらけで今にもボロボロと崩れてしまいそうで一部に至っては関節が剥き出しになってしまっている。
更に言ってしまえば、片足が一本まるごと吹き飛んでいた、本来合ったはずの場所には何も無く、代わりに抉れた足の断面から勢い良く伸びた緑色の元素が鬼の姿勢制御の代わりをしているようだった。
そんな状況で、あんなに楽しそうに笑ってるのかアイツは…気持ち悪いというか、いっそ恐ろしさすら感じてしまう。
改めて分かった、今の状態の鬼相手にインファイトはもう駄目だ、こっちが斬り殺される。
だったら──
(遠距離からチマチマと削る、隙があればガツガツ削る、チャンスがあれば───)
──一撃必殺。
吹き飛ばされた俺を追撃しようとしている鬼に視線をくれて、爪に雷元素を纏わせる。
…その時、ほんの一瞬だけ…雷が黒くなった様に見えた。
「飽きさせないなぁ、お前は」
目の前の光景を見て、私はふとそう独り言を漏らした。
飛んでくる紅い円盤を刀で弾き、更にその奥から飛んでくる無数の柱を身軽に躱し、更に地面から迫りくる無数の黄緑色の蔓をバラバラに斬り刻みながら、私は興奮を抑えずにはいられなかった。
戦い方が変わったと、直ぐに理解出来た。
あの時、私が狼の尻尾を斬ったあの時から、明確に私を殺しにきているとすぐに分かった。
先程までとはまるで真逆だ、近接戦闘主体だったその戦闘スタイルは、今では遠距離を主体としたスタイルへと変わっている。
引き撃ち…というやつなのだろうか、それを軸にしながら狼は私を今にも殺してやると言わんばかりの殺意溢れる瞳で私を見ている。
それを見て私は…不覚にも覚えのない衝動に駆られた。
それが何なのかは分からない、何せ経験したことのないそれだ、正体等分かるはずもないのだ。
しかし、それでも分かっていることが一つだけある、それは──
「オォカァァミィィィィィッッッ!!!!!!」
これをぶつける相手は、お前でなければならないということだ。
後ろに引きながら、此方に幾多とも呼ぶべき攻撃を放つ狼に向けて、私は被弾も気にせずに突撃を開始した。
幸いと言うべきか、私の片足は丸ごと欠損しており、そこから漏れ出る様に元素が溢れ出している、これのお陰で姿勢制御は疎か加速することすら容易だ。
意図的に片足に元素を流し込み、それによって勢い良く吹き出る風元素を加速の土台とし、私は狼へと一直線に突っ込む。
雷の円盤が飛んでくる、弾く。
雷の槍が飛んでくる、弾く…弾ききれずに肩が吹き飛ぶ。
岩の柱が、塊が、草元素の円盤が、槍が、蔓が、無数の攻撃が次から次へと片目の見えない私へ容赦無く襲い来る。
それら全てを弾き、防ぎ、躱し、時には受ける。
肩が吹き飛び、指の一部がもげる。
もう片方の足の爪先が欠ける、関節が悲鳴を上げる…それでも前へ前へと進み続ける。
(あぁ…なんて、楽しい)
楽しい、それ以外の言葉が浮かばないのだ。
近接戦闘に於いて、私は狼に圧倒され続けた。
攻撃の尽く通じず、唯一の通じたのはまぐれ当たりと言いたくなるような尻尾の切断だけ…これでどうして追いついたと言えようか、どうして一矢報いたと言えようか。
遠い、未だに私は奴の影すら踏めていない。
それがどうしようなく嬉しく、楽しいのだ。
「キヒヒヒヒヒヒィ…!」
兜の角が千切れる、脇腹が吹き飛ぶ…知ったことか、この身は絡繰だ、そんなことで動けなくなるほど軟ではないのだ。
踏みしめる、迫る柱を飛び交い避けて、その柱を足場に踏みしめ、そして跳ぶ。
狙いは一つ、宿敵の眼下へ。
「オオォカァァァミィィィィィィッッ!!!!」
雄叫びを上げながら迫れ迫れと踏みしめ駆ける。
見えたぞお前の姿が、見えたぞお前の手が、見えたぞお前の瞳が、見えたぞお前の影が。
視線の先には狼の姿がある、気づかぬ内に随分と近くまでやってきていたようだが、そんなことはどうでもいい。
届く、ようやく届く、ようやく届かせられる。
お前を斬る、お前を殺める、そうして初めて私はこの言いようのない心地の良い衝動に名をつけられるのだ。
故に──
「トッタゾ狼ィィィッ!!」
お前を斬るぞッッ…!!!
刀を逆手に持ち替え、刃を握り込んで居合の形を取る。
なんだかんだと言ってこれなのだ、腕四本の四刀でも元素を多重に絡ませた遅れてくる斬撃でもない、これなのだ。
私が最も扱い慣れ、そして最も威力と速さを両立出来る方法は何処まで行ってもこれなのだ。
知っているだろう狼よ、これがなんなのか、どういう技なのかをお前は良く知っているだろう。
そして理解もしているはずだ、この距離と今の私の速度ならばお前が瞬間移動を行う前に私はお前を切り裂ける。
お前が足場を爆破するよりも速く、私はお前を殺しきれる。
焼き付けろ、目を見開け、見せつけられてばかりだった私とお前の戦いで、今度は私がお前に見せつける番だ。
「──斬り穿つ」
加速する、加速する、加速する、鬼の眼前へと真っ直ぐと加速する。
元素を放つ間など与えない、そんなことに思考等割かせない、お前の視線も思考も何もかもを、私に釘付けにしてやる。
さぁ…私を見ろ。
刀を振り抜く、握り込んでいた指達を何の容赦もなく斬り刻みながら、振り抜かれた刀はいとも容易く音を超え、狼の首へと肉薄する。
目に映る全てが遅く感じる、振り抜かれた刀がゆっくりと狼の首筋へと近づいていく、ゆっくり…そうゆっくりと。
何時触れるのか、何時首を斬り飛ばすのか、何時それにこの宿敵は気が付くのか…それだけで頭がいっぱいだった。
刀が狼へと近づく、近づく、近づく、近づく、近づく…触れた。
触れた、触れた、狼の首筋から僅かに血が滲み、それがゆらりと刀の先を伝っていく。
あともう少し、もう少し、もう少しで全てが終わる…そう確信していた…少なくとも私は。
しかし、それを目の前の宿敵は許さなかった。
刀は狼の首筋を
(なんだ…この感覚は?)
勝った気がしない、首を斬ったはずなのにまるで勝ったという感覚がしない、達成感が無い。
何故だ? 私は今、狼の首を斬ったはずだ、時間の感覚さえ戻れば後は狼の首が落ちる瞬間を眺めればいいだけのはずだ…なのに何故こうも勝った気になれない?
何かがおかしい、決定的に何かが違う、根本的なものを見落としている気がする。
首を切り飛ばしたはずの狼をジッと見つめる。
なんだ? 何が違う? 何を見落としている? 私はお前の何を見ていない。
見る、視る、観る、覽る、流れの遅いこの場でただひたすらに狼のことだけを視界に映し、そこから違和感を探ろうとする。
しかし見つからない、振り切られた刀がゆったりと私の身体を越えようとする程の時間が経ったにも関わらず、私は何も見つけられない、逆を言えばそれほどまでに違和感が見当たらない。
何処にもおかしな点は無い、全てが私の勘違いでこの感覚が消えれば狼の首は落ちていると、そう思いたくなる…それでも私の直感は違和感を訴え続けている、それが酷く不気味で…恐ろしい。
なんだ、何処だ、何が私に訴えかける、何が私を駆り立てる、何が…何が──
(……あ…)
見つけた…爪の先だ。
爪の先が……消えている。
私がそれを自覚した瞬間、スローモーションに感じていたはずの時間が、急速に元の速度へと戻っていく。
刀によって首を切断されたはずの狼は、その首を落とすこと無く、そこに鎮座していた。
しかし、それも数秒のことだ、異変はさも当然のように私の目の前で起こり始める。
先程見つけた消えていた爪を起点として、狼の姿が一瞬にして私の目の前から溶けるように消えていく、まるで幻のように。
そしてその溶けるように消えた狼の更に先に…四つん這いになり、
(まずっ──)
私の本能が危険を告げるが、それも最早手遅れだ、私は判断を大いに間違えた。
私がそれを認識し、そして自覚したのは…私の胴体が、下半身と泣き別れした直後のことだった。
鬼
上半身と下半身が泣き別れした、真っ二つになった。
主人公
雷元素が黒くなった、多分元素爆発。