マザコンなトガちゃん   作:白虎しゃも

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スイ○ラコラボでトガちゃんと火伊那ちゃんが並んでいて情緒を滅茶苦茶にして詳細情報を調べようとしたら『スイ○ラ 北海道 ない』とサジェストが表示されたので書きました。


付録『お菓子が溢れる楽園に乾杯を!』

 幼女は赤色のクレヨンを手に取りました。

 

 画用紙にグリグリと丸く円を描き、そのまま真っすぐ線を引きます。線は既に描かれていた子どもの手に届いて止まりました。カラフルに描かれた人たちは稚拙ながら、生き生きとしています。

 

「七夕のときの絵ですか?」

「! うん」

 

 幼女の手元を覗き込んだ母親は、じぃっと絵を眺めると微笑ましそうに目を細めました。

 

「ふむ、楽しい気持ちが伝わってくる良い絵ですね」

「そ、そうかな?」

「えぇ、壊理さんだからこそ描ける素晴らしい絵です」

 

 はにかむ幼女の横顔を見つめながら考えます。この家に画材は有り余るほどありますが、玩具はそこまでありません。少女が三歳くらいまでに持っていた玩具は引っ越すときに処分してしまいましたし、それからは玩具で遊ぶよりも母親と同じように絵を描きたがり、あまり玩具を欲しがりませんでした。

 子育てに玩具は大事だと本で読んだことがあります。本人が欲しがらないならともかく、欲しいものがあるなら調達しようと思いました。話し合いの上で幼女を実家から引き取ったので、大人としての責任を果たそうと意気込んでいます。そして、欲しいものを真正面から聞いても遠慮してしまうと、火伊那ちゃんから学んでいた母親は、遠回しに探ることも覚えています。

 

「壊理さんはプリユアお好きですか?」

「プリユア……?」

「おや、ご存知でない様子。えーと、文明の利器で調べてみましょうか」

 

 スマートフォンを両手でポチポチと操作しました。彼女はパソコンでキーボードを叩くときも人差し指でポチポチする人間です。

 

「ふむ、たくさんあってよくわかりません」

「あにめ? おねえちゃんもみてたの?」

「初代は結構喜んで観てましたね。その後は……ハッピーツリーヒーローズ? というアニメに嵌っていたような」

「そうなんだ」

 

 観てみたい、と顔に書いてあったので、公式が配信していた初代プリユアをテレビで再生します。その間にハッピーツリーヒーローズについても調べてみましたが、(あ、これ火伊那ちゃんに相談したほうがいいやつです)となったので、そっとスマートフォンをテーブルの上に置きました。

 

「あの、おねえちゃんとカイナさんは?」

 

 一話目が終わったタイミングで幼女が訊ねます。母親はチラリと時計を見上げました。

 

「んー、まだキッチンだと思います。お菓子作りは時間がかかるそうなので」

「おかし」

 

 幼女は涎をこくんと飲み込みます。

 

「はい、ちょっと間違えると炭になったりするお菓子です。私は出来上がるまでキッチンを出禁になりました」

「できん」

 

 幼女は首をこてんと傾げました。

 

***

 

 少女は蛇口の栓を閉めました。

 

 一通り洗い物を終えて、後はお菓子が焼き上がるのを待つのみです。妹ができた記念に、アップルパイにタルトタタン、それからザクロジャムのクッキーにエトセトラエトセトラと、ここはパラダイスかというほどにスイーツを作っていました。

 隣で手伝いながらいくつか出来上がったお菓子を見て(炭じゃない……!)と感動している火伊那ちゃんに、鍋を片付けようとしていた少女が、果物と赤い液体が入ったボトルを指差しながら声をかけました。

 

「火伊那ちゃん、これ何です?」

「ん? あぁ、サングリアだよ。ワインに果物漬けたやつ」

「あれ、なんかそれって法律的にダメじゃありませんでしたっけ?」

「税収のためだけに作られた法律なら、超常改革のときにどさくさ紛れで廃止されたな」

「あー、酒税法。興味無くて忘れてました。お酒なんて私まだ飲めませんし……美味しいのです?」

「サングリアは甘いから美味いほうかな、ま、酒なんて酔えりゃ何でもいいンじゃねェの」

「ふぅん」

 

 興味津々にボトルを眺める少女に火伊那ちゃんは心配になります。正直、先輩が作ったそのサングリアも持て余していました。

 

「……先輩死ぬほど酒弱いから、おまえも気をつけろよ」

「学校でやったアルコールパッチテスト、真っ赤でした!」

「よし、一生呑むな」

「それは別に良いのですけれど、火伊那ちゃん。つまり酔っ払ったときのママのことを知っていますね?」

「……」

 

 不味ったな、とポーカーフェイスを保ちながら思います。少女はニッコリと笑っていました。笑顔の起源は威嚇なのだと、火伊那ちゃんはどこかで聞いたそんな話を思い出しながら黙っています。

 

「さぁ、洗いざらい全て吐きましょう! 大丈夫、お菓子が焼き上がるまで時間はたぁーっぷりありますから!」

 

 なんで一般人の女子中学生と会話しているだけなのに、公安で仕込まれた拷問対策が頭の中に浮かび上がるのか、これがわからない。

 

 

 

 なんとか口八丁手八丁で少女の《言いくるめ》に成功した火伊那ちゃんはホッと息をつきました。これで失敗したりファンブルしたりしたら死ぬほど面倒なことになるのは目に見えていたため一安心です。

 

(……糖分が欲しい)

 

 疲れた脳味噌が動力源を欲していました。いっそのことサングリアを呷りたくもなりましたが、流石に自重します。現在進行形で作られているスイーツをつまみ食いすることも憚られ、冷蔵庫を開けました。

 先輩の実家から送られてきたお中元に入っていたグレープジュースとお菓子作りで余ったフルーツを取り出して、フルーツ入りグレープジュースにします。やっぱりサングリアへの未練があるなァと、ほぼ無意識に作り上げたドリンクを眺めて苦笑しました。

 

「わ、カァイイ。そーだねぇ、飲み物もこだわりたいねぇ」

 

 火伊那ちゃんの手元を覗き込んでいた少女はむふぅ、と意気込んで拳を握ります。もともと、紅茶を飲みやすいようにミルクと砂糖をたっぷり淹れようと考えていましたが、そこにフルーツも足してみようと思いつきました。幼女にはリンゴを、自分にはザクロ……はクッキーに使ってしまったのでストロベリーを。それから、ママには何がいいかなぁと思案します。

 

「ママの好きな食べ物って何でしょうねぇ」

「好きになるほど食べ物に興味無いだろ、あの人」

「むぅ、それはそうですけどぉ……」

「強いて言うなら、被身子の作った料理なら何でも喜ぶと思うぞ」

「ふむ」

 

 母親を真似て顎に指を当てた少女は、そのままナイフを手にとって、自分の血液を紅茶に垂らそうとしました。

 

「待て待て待て待て」

 

 火伊那ちゃんは少女の腕を掴んで制止します。

 

「大丈夫ですよ。私もママと一緒に血液検査してますから! 安全です!」

「いや、え、それならいいのか? いいのか!?」

「いいのですよ。大体普通の人だって好きな人同士でキスをして唾液を、体液を摂取しているでしょう? それと一緒です」

「それは……っ、おまえ本当に先輩とソックリだな!」

 

 前提条件や人間の心を無視して何もかも一緒くたに混ぜ返す感じが、火伊那ちゃんの思考を狂わせました。少女の言葉にあやうく納得しかけたので、もう駄目かもしれません。

 

「急に褒められると照れますねぇ」

「褒めてねェ!!」




38巻を読んでさらに情緒がシッチャカメッチャカしています。
帯裏トガちゃんカワイイヤッター!!
あとこのお話、トガちゃんの物語は完結していますが、レディ・ナガンの物語は完結していないことに自分の中でなりました。
今後の原作によってはトガちゃんの物語も完結していないことになります。原作が連載中なのでそういうこともあります。
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