今日はバレンタイン当日、学校中がチョコだなんだと浮ついた空気になる。
それは彼女、松永優香にとっても同じことで…

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僕がオプチャで参加してる小説家の集いのメンツからバレンタインで一本書こうって話が上がったので書きました
恋愛モノは初めて書いたので多めに見ていただけると…


今日は雨が降るらしい

『それではお天気です、滝川さ~ん』

『はーい!関東は午後から雨が降るでしょう。降水確率は〜』

「え、雨〜?最悪……」

 

 鏡の前でテレビから流れる天気予報を聞き流す。

いつもより念入りに髪をセットしリボンをキュッと締める。

 

「ちょっと優香、グダグダやってると遅刻するわよ!」

「わかってるよお母さん!」

 

 そんなやり取りをしながらバタバタと自室に戻り教科書をリュックに放り込む。

リビングに戻るとテーブルの上にはお弁当と丁寧に装飾された箱が置いてある。

今日は2月14日、世間一般でバレンタインデーと呼ばれる日だ。

 

「おっきい傘持ってかなくていいの?」

「折り畳み入ってるから大丈夫。荷物になるし」

「そう、行ってらっしゃい」

「……うん。行ってきます!」

 

 今日、私は告白をする。

 

 ────────────────────

 

 学校に着くと、そこかしこにそわそわした空気が流れている。

それもそうだ、今ここにいるほとんどの人が誰かにチョコを上げようとしている仲間であり、同時に敵でもあるのだから。

 

「優香、おっはよー!」

「うわぁ!?ちょっと真紀ちゃん今日はダメだって」

「あ、そっか。ごめんね~?」

 

 朝から抱き着いてきたのは私の友達の真紀、バッグにチョコレートが入っていることをわかってか、何やらにやにやしながら謝ってくる。

 

「で、できたの?」

「一応はね、やっぱり慣れないことはするもんじゃないね」

「でも大丈夫だって、そういうのは出来じゃなくて想いだよ!」

 

 そう言って肩をポンポンと叩いてくる。

私が緊張しているとき、真紀はこうしていつも肩を叩いてくれる。

真紀のやさしさに感謝しつつ深呼吸を一つして、落ち着いたタイミングで教室の外が騒がしくなる。

時間を見ると8時25分、もうすぐ先生が教室に来る時間だ。

 

「よしっ!」

 

 リュックの中に入れたチョコが外から見えないようにもう一度確認して席に座る。

決戦は、放課後。

 

 ────────────────────

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

 時刻は進んで昼休み。

放課後に向けて頑張るぞ!と、意気込んでいたのはよかったものの、どう渡すべきかの脳内シミュレーションばかりを重ねてしまい、しかもそんなタイミングで先生に当てられるもんだから盛大に恥をかいてしまった。

でも、方法は決まったので良しとすることにした。

その方法も下駄箱に手紙を入れておいて放課後にチョコを渡しながら告白という古典的なものになってしまったが。

まるで戦場に向かうかのような面持ちで下駄箱に向かう。

幸いにも昼休みということであたりに人はいない。

こっそり下駄箱の中に手紙を入れようとしていると

 

「あれ、松永さん?」

「な、中島くん!?」

 

 呼ばれて振り返るとまさに下駄箱に用事のあった中島くんが立っていた。

中島大地くん、私の好きな人。

きっかけは委員会の仕事が同じだった時に助けてもらった、そんなささいなことだったけど、私にとっては大切な思い出だった。

 

「どうしたの?ここうちのクラスの下駄箱だけど」

「う、ううん!何でもないのほんと何でもないから!」

「そう?ならいいんだけど」

「……あのさ」

「ん?」

「こ、これ!」

 

 私は無理矢理手紙を中島くんに渡す。

 

「とりあえず、言いたかったことはそこに全部書いてあるから!」

「え、ちょっと!」

 

 返事も聞かずに私はその場を後にする。

 

 ────────────────────

 

 時間は放課後、昼休みのポカのせいで今日の授業の内容は全く頭に入っていない。

あとで真紀にノートを見せてもらおうと考えながら校舎裏まで歩いていく。

校舎裏には手紙を持った中島くんが辺りを見回しながら立っていた。

 

「中島くん!」

「松永さん」

 

 声をかけると中島君はにこりと笑って返事をしてくれた。

 

「来てくれてありがとう、待たせてごめんね?」

「ううん、俺も今来たところだから」

「えっと……」

 

 緊張して、言葉に詰まる。

それにさっきから心臓の音がうるさい。

 

「こ、これ!バレンタインのチョコ、です」

「嬉しい、ありがとう!」

「そ、それから……」

「うん」

「……」

「……」

「……ずっと前から、中島くんのことが好きでした!私と付き合ってください!」

 

 そう言って頭を下げる私、少しの沈黙でもまるで世界が止まってしまったような感覚に陥る。

いや、いっそのことこのまま世界が止まればいいのに。

そうしたら……

 

「告白、素直にうれしいよ。でも、ごめんなさい」

「ッ……理由、聞いてもいいかな」

「他に好きな人がいるんだ」

「そ、っか……頑張ってね」

「松永さんも、俺のことを好きでいてくれてありがとう」

 

 そう言って、大地くんは少し暗い顔をしながら去っていった。

 

「あーあ、慣れないことなんてするもんじゃなかったなぁ……」

 

 ふと空を見上げると目の横を雨が伝う。

そういえば雨降るって言ってたっけ、そう思いハンカチで雨をふき取ると目から涙が止まらなくなった。

慌てて傘を取り出そうとリュックの中を漁るが、どこにも見当たらない。

 

(あーあ、なんで今日に限って忘れるかな……)

 

 一層強くなる雨脚と止まらない涙で手に持っていたハンカチは何を拭いたのかわからないほど濡れていく。

でも今は、今だけは濡れていく感覚が嫌じゃなかった。

 

 

今日は、雨が降った。




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