オーバーロードの地球のアーコロジーでの一幕
現実世界での出来事がテーマの二次創作が少ないので……

1 / 1
短編:「狭い世界」

 今日もお天道(てんとう)様は姿を隠している。

 完全環境都市(アーコロジー)を覆う半球天蓋(アストロドーム)の外は、今日も真っ黒な雨雲が隅々まで広がっている。昨年亡くなった曽々(ひいひい)(ばあ)ちゃんの代までは、環境汚染はここまで酷くなかったらしい。らしいと言うのは、高祖父母が昔撮った田舎の写真を見ても何も感じないから。

 秋の刈り入れの時期の田んぼを(うつ)したものらしく、にぎにぎと実った黄色い稲穂と高い空に薄く(なび)く白い雲、そして燦々(さんさん)と輝く白い太陽。曽々(ひいひい)(じい)ちゃんが現役の農家だった当時は、酸性雨が降ることはあったものの常に酸っぱい匂いがしていたわけではなかったらしい。

 何度も聞かされた昔話を思い出しては、本物の太陽を見てみたいと思い至る。だけどこの世界は富裕層(バカ)が自分たちに都合の良い世界に作り変えた結果、いつ滅びてもおかしくない荒廃した環境になった。

 そして僕も体制(能無し)の側の人間と言うのは、皮肉ととらえていいのかな?

 

「君、迷子かい?」

 

 ぼんやりとドームを見上げていると、巡査(おまわり)さんに声をかけられた。お母さんを待っていただけだけど、迷子に見えたみたい。嘘を吐く理由もないし素直に応じれば、巡査(おまわり)さんは「一緒に待っててあげる」と答えてくれた。

 そこから後は楽しい時間だった。その巡査(おまわり)さんは僕と同じくらいの頃から仮面○イダーとかウルト○マンとかスー○ー戦隊が大好きで、そういったヒーローに憧れて巡査(おまわり)さんになったことを教えてくれた。

 

「ク○ガは刑事ドラマとしても最高なんだ!」

「侍ヒーローならシン○ンジャーが一番好き!」

 

 好きなものが同じ人がいるのは、本当に嬉しい。人目も気にせず時間も忘れて、このヒーローはここがかっこいいとか、この怪人はこんなところが面白いとか、そういったことを何十分も語り合っていた。

 そして楽しいお(はなし)も話題が尽きる頃。お母さんに呼び掛けられて、帰る間際になってもその巡査(おまわり)さんは嬉しそうな顔で、よく見えるように大きく手を振って見送ってくれた。

 

「○○くん!また会ってお(はなし)しようね!」

 

 優しくて、力強い声が後ろから聞こえる。手を引くお母さんは目もくれないけど、僕はゆっくり振り返って……

 

「うん!ありがとう!」

 

 たった二言しか答えられなかったけど、はっきりとお礼を伝えた。恥ずかしいのを隠すために、もう一度ドームを見上げる。

 

「…………あれ?」

 

 真っ黒な雨雲の中に一瞬だけ、太陽が光るのが見えた気がした。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。