軽く息を吐き、ふと我に返った。軽い自問自答が脳内を駆け巡る。これから自分達は何をやらかそうとしているのか、その意味をしっかり理解しているのか? 今ならまだギリギリ引き返せる、そもそもこんな事をして何になる?
当然考えるべきはリターンだ。冒すリスクに対する、ボク達が得るリターン。とはいえその問いは簡単だ。
『こちらテンプなのだ、順調だから手筈通りにいけるよ』
「うん......うん。分かった。テンプは今回の作戦の要だ、しっかり活躍してくれよな」
それは可愛い彼女の為だ、というか元を辿れば自分達の安寧の為だ。そのリターンの為だけに、他の全てを敵に回す。これからボク達は、邪魔をするなら例え神が目の前に立とうと
「イナも問題ないな? もしここが攻撃された場合の迎撃......
「うん、任せて......私たちの邪魔は、誰にもさせない」
都会のビルはなんと高いことか。高層ビルの屋上、時刻は大体夕ご飯が美味しい時間。今日この時この場所で、ボク達の最高の
「よし、じゃあ回線を繋げて―――始めようか」
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魔法協会は、混乱に包まれていた。都内を中心とした
『ンレ、ディースゥ! エーンド・ジェントルメェーン‼︎ あと紳士淑女でも無い凡庸の一般市民どもコンバンハ! いや、朝のニュースでこれを見る不健康な愚民もいるかもだからオハコンバンニチワとしておきまァす‼︎』
モニターに映し出されたのは、普段見る無機質なグラフではなく人を小馬鹿にしたような態度を取る少女。当然訳の分からない現状に叫びたくなる職員もいたが、少女の顔を見た瞬間に軽く息を呑んだ。
歳の頃はおおよそ中学生前後、雪でも被ったように真っ白な髪に、生き血でコーティングしたような真紅の瞳。黒色を基調としたゴスロリ服に身を包んだ、人形のような印象を受ける美しい少女だ。
......恐らくこの異変の犯人が彼女であることに目を瞑れば、誰もがその神秘的な姿に見惚れるだろう。彼女には、それだけの人を惹きつける力があった。
『......おいテンプ、なんでこんなテンションの高い役やらせんの? ボクがこういうの苦手なの知ってるよね?』
『まぁ良いんじゃないの、たまには面白いと私は思うよ』
『イナがそう言うなら良いけどさぁ......』
声の主は聞き手を置き去りに、一方的なショーを見せ続ける。ハイテンションのDJのようなスタートから打って変わって、ダウナーな青年のようなローテンション、この場の誰もが、その異様な雰囲気に翻弄されていた。
いや、それ以上にだろうか。この場においては動揺が大きいと感じられる。少女の顔を見たことがない職員はいないだろう、だって彼女は、いや、奴は......
『ハァーイじゃあまず自己紹介フェイズでーっす‼︎ ボクは【歯車】の魔女、ナナシっていいますヨロシクぅ‼︎』
紛れもない、災厄だ。
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一つ数えて息を吸う。身体は激鉄のように熱い、まるで熱病に侵された時のように、あるいは果てしない高揚感を得ている時のように。
『今回のライブは全国生中継‼︎ どんな片田舎だろうがスマホの一つでもあれば乗っ取ってるはずだから盛大に無礼講で行こうぜぇ! ほらテンション上げて、イェーイ‼︎』
二つ数えて息を吐く。口は別人のように言葉を紡ぐ、まるで自分自身が仮初のゲームアバターになったように、今の状況は現実感に欠ける。まるで夢の中みたいだ。
『んー、まぁそんなこと突然言ってもお茶の間の皆さん揃って困惑しちゃうよな? 仕方ないなぁ、そんなチェリーボーイ達にはこの配信の主題を教えてあげよう‼︎』
三つ数えて理解する。何かを壊す解放感が、全てに勝るような優越感が、今この瞬間ボクを包んでいると。
『今日の番組は緊急特番! 魔女と学ぶ協会の魔法少女スペシャル‼︎ ミステリアスなあの子達や、今をときめく新人ちゃんもまとめて
大変だよなぁ、【
守るべき市民が、簡単にその背中を突き刺すんだから。
ナナシ
・アルビノゴスロリ少女
・MC担当
・慣れないキャラの台本に必死
イナ
・今回は画面外から
・『おもてなし』担当
・ハイテンションなナナシもアリ
テンプ
・今回の過労枠
・東京全域を停電、その後全国の端末を乗っ取る
・裏方担当