TS魔法少女イッチと掲示板と人外系美少女   作:餅持

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議会は踊る、されど進まず

 

『じゃあ次の子は......CMでもお馴染み魔法少女スターライトちゃんだねぇ、そんな彼女の本名は星空光ちゃん‼︎ ○○町の......おっ、この子の実家は喫茶店みたいだねぇ、じゃあ今度コーヒーでも飲みに行こうかなァ!?』

 

 陽気に唄う巫山戯た声が各地に響く。嬉々として開示されるのは市民の日常を守る正義の少女達の個人情報、悪意に満ちた声はブレーキを知らない。この配信を眺める誰もが、その暴挙に言葉を失ったままだ。

 

『いやぁこんなデカいステージで宣伝されるなんて広告費が浮いたんじゃない? そこはボクらに感謝してほしいくらいだよねぇ......ま、()()()()()()()()のお客様が増えるだけかもしれないけどねー』

 

 政治の街、市ヶ谷。そこに構えられた『魔法少女協会本部』でその狂気の放送を聞いていた協会の幹部達は、顔を真っ赤にしながら拳を震わせていた。

 

 一部の善良な者達は魔女が行う狂気の演目に怒りを露わにしているが、悪どい事をしている者達はそれが明るみになるかどうかで首を絞められている。二重螺旋の災厄だ。

 

「歯車の魔女の放送は止められないのか、これは歴とした情報テロだ! 協会所属の魔法少女の情報をこのままペラペラ話されてみろ、明日には協会所属ってだけで外を出歩けなくなるだろうが!」

 

 事態の深刻さが浸透するにつれて、議論は活発となっている。混迷を極めた協会幹部達の会議では、中には怒号を飛ばす者もいた。

 

 当然だろう、こんなことをされたら明日にはニュースはこの話題だけで一面確定、マスコミはネタが出来たとこれ幸いに人の不幸を嘲笑いに来るだろう。

 

 民意というものは何よりも恐ろしい。まるで自分達が正義である、と確信したような愚か者達が善意の刃を振りかざすのは、それこそ恐怖を感じざるを得ない。

 

「とりあえず手の空いている魔法少女達に出撃要請は出しましたが......火を消化するのにガソリンを使うようなものでしょうね、焼け石に水とも言います」

 

 そんな議会で、冷静に状況を分析できたのは果たして何人いたのだろうか。少なくともこの場で真っ先に動いたのは、彼女だと言える。

 

「......大垣くん、君にも出撃要請は出した筈だが?」

 

 隣の席の老人から半目で睨まれている大垣と呼ばれた人物は、この場においては異質な印象を受ける。

 

 見た目は高校生ほどの年若い少女だ。長身で痩せ気味、カジュアルなジャケットとスカートを身につけた風体は、スーツ姿の幹部達の中では一際強い異彩を放っている。

 

「それが嫌だから幹部権限使って、出たくもない会議に出てるんすよ。正直このままじゃ時間の問題でしょうけど、今自分が行ってどうにかなるわけでもないしなぁ......」

 

「......だったら何だね、このまま歯車の魔女の暴挙を黙って見過ごすと言うつもりか!? 協会所属の魔法少女である以上、これはお前も他人事ではないぞ大垣!」

 

 怒号を飛ばしていた幹部の矛先が少女に向かう。しかし少女はそんな怒号を歯牙にもかけずに軽くいなす。

 

「......これだけの規模の情報テロを単騎でやるほど歯車の魔女も馬鹿じゃないでしょう?」

 

 この場合考えるべきは『誰が』『誰と』敵対しているのか、だろう。

 

「歯車の魔女のバックにいる人物を特定しないといけませんよね、無策で切り札を使ったらこちらの大損ですよ。だから私は他の子達が情報を探ってくれないと動けない」

 

 怒号を飛ばしていた幹部もこれには顔の色を白くした。そのまま軽い呻き声を鳴らして自分の席に着くが、そこに先程までの勢いは無かった。

 

 そう、警戒すべきは何も歯車の魔女だけではない。怪人達を生み出す組織や、下手をすれば影に潜んでいたテロ組織が歯車の魔女の後ろにいる可能性がある。情報が少ない内は少女は動かない、否、まともに動けない。

 

『おっ、話をしてたら特別ゲストがご来店〜。ちょうど話にも出てたスターライトちゃんじゃん‼︎ 実家の喫茶店は明日から大盛況だと思うよ感謝してほしいなァ!?』

 

『こっの......人の個人情報をペラペラとッ!!』

 

 配信画面では狂人の前にようやくヒーローが現れる。だがそれでも狂人はヒーローを嬲るために配信を続ける。

 

『大変だなぁ魔法少女は......イナ、しっかりもてなしてあげな。その間に〜、こっちは特別ゲストのスターライトちゃんの私生活でも流しちゃおっかな〜!』

 

『させない......ッ!? ちょ、何これ、触......手!?』

 

『お前の相手はナナシじゃないよ、まぁ私はナナシほど加減はできないから骨が数本折れても気にしないでね?』

 

 断片的に配信で流れるヒーローの苦しむ姿、悪趣味極まりないその行いの中で、少しずつ手の内の探り合いは始まっている。尤も魔女達にそんな気は無いのだが。

 

 ▼

 

 実際の所、この状況は半分以上詰んでいる。

 

《イナと呼ばれている少女は触手を操っている......映像は途切れ途切れですが、よく見れば彼女の頭部にはツノが生えている。あの怪人をポコポコ作る組織と手を組んでいる、と見るのが自然でしょうが......何か違う気がする》

 

 大垣が今ある情報を元として脳内で組み立てた仮説、それには何か違うと自分で感じるだけの()()()がある。まるで墨をぶちまけたキャンパスを、白い絵の具で補修したような根本的な違和感。何処だ、何処が違う―――?

 

それが魔法協会(あんたら)のやり方か。......残念だよ、結局は組織と何一つ変わらない。同じ穴の――

 

 かつての邂逅、軽蔑するような彼女の眼差しが脳裏によぎる。あれは人を見限る目だ。組織と協会(こちら)を同列に語るなら彼女はもうそれらを信じることはないだろう。

 

 あの時抱いた印象とはかなり性格が違うが、それはパフォーマンスに過ぎないだろう。だから考えるべきは――

 

《全国の電子機器を乗っ取った手段は? そもそも歯車の魔女が手を組むなら誰か? 最終的な敵の目的は?》

 

 無数に浮かび上がる問いに対して、ヒントが少なすぎる。だがそれでも情報の暴力は、着実に世界に向けて拡散されている。状況は確実にこちらが不利だ。

 

《......今はまだ情報が足りないか、キッツいなぁ》

 

 少しでもヒントを得る為にこの悪趣味な配信に齧り付く。胸糞悪いが、反撃の糸口を探す為には致し方ない。

 

 こうやって魔法少女達の犠牲の上で、外面だけを取り繕った俗物達の議会は続く。

 





ナナシ
・情報テロ真っ只中
・普段とキャラが全然違う

イナ
・触手プレイ中
・組織の手の者だと思われてる
・加減はあまりできない

モブ魔法少女
・可哀想な犠牲

大垣/???
・若くして協会の幹部格の少女
・ナナシとは面識あり
・協会サイドの狂言回し
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