人権なんて無視した魔法少女の闇を暴いてから程なくして、世界を揺るがした最悪の情報テロ配信は幕を閉じた。ボク達は行方を晦ませており、足取りは掴めず。だが代わりにしてはそれすら霞む話題が世間を賑わせていた。
事の発端は当然、先の情報テロ事件からだろう。最後にボクによって放たれた特大級の爆弾は、少女達を道具のように操る制御チップの存在。これによって起きたのは――
『魔法少女達の脳に仕込まれた制御チップは告発によれば政府によるものだと――』『ですから、魔法という物は思春期の少女達には過ぎた力だと――』『魔法少女達の人権を取り戻せ! だんまり政府に抗議を――!』『協会には少女達の身を守るということも出来ないのか――』
政府、ひいては協会に対する不信感の芽生え。少なからずテレビに出ていた
『魔法少女達も協会によって操れるってこと――?』『どれだけ非人道的な行為をしたのか協会は分かって――』『魔法少女ってだけでもう信用出来ないな――』『何時暴れてもおかしくないとか怖いよ――』
そして魔法少女という存在について、一般人達は考えることになる。怪人を倒す正義の味方? 異能の力を振り翳せる現代の魔女? それとも何食わぬ顔で人を殺す悪魔か?
配信で魔法少女の負の側面を見てしまったことで脳裏によぎるのはマイナスの意見だ。正の側面より、負の側面に目が行きやすいと言い換えても良い。そうして少しずつ、マイナスの力が増え始める。
一般人1人が持つそのマイナスの力は小さい、息を吹けば消えてしまう蝋燭の火のように。しかしそれは――
『『『魔法少女も怪人と同じ、
やがては束となり、周囲を焼き尽くす業火となる。一般人の民意という物はとても脆く、とても強固で、とても流されやすい。一度流れを作れば、後は簡単に燃え広がる。
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「そして魔法少女達は異能の力を恐れた人々に迫害、親類も自宅にマスコミが来たりする。正義の味方が隙を見せればこれとか、現代の魔女狩りは随分陰湿になったのだな」
「テンプはそう言うけど、実際どうなのこれ?」
イナからそういう疑問が飛ぶのは無理もない。この状況、あまりに混沌としている。市民達は魔法少女を恐れ、協会は不信感から蚊帳の外、魔法少女達は守るべき市民に背中を狙われる。まさに最悪のトライアングルだ。
「......守られてるって立場が当たり前すぎて、一般人が増長してるようにしか見えないな。魔法少女についての是非、とかで特番一つ作れるんじゃない?」
そんな中、ボクとイナとテンプの三人は拠点で祝勝会とばかりに鍋を囲んでいた。菓子パンとスイーツ以外を食べるのは久しぶりだが、たまには良いか。
「んふふーほれほれ、ナナシもイナも我を讃えるのだ。今回の計画、私はマジで大変だったんだぞー?」
「はいはい、凄い凄い。じゃあ最強のテンプ様は肉ばっかりじゃなくて野菜も食べれるよね?」
「ここぞとばかりに野菜を私の器に乗せるのやめてくれない!? 鍋っていうのは肉食うもんでしょ!?」
イナとテンプは、最初こそ険悪な雰囲気だったが今では普通に仲良くしている。じゃれ合う仲とでも言えば良いのか、良い関係に落ち着いただろう。
少し話を戻すがこんな大事件を起こした以上、当然だがボク達のこともニュースに流れていた。扱いはまさにテロリスト、好き勝手にメディアは色を付けて報道しているが、それこそボク達に報復されるとか思わないのだろうか。
『この少女は歯車の魔女、ナナシ。過去に魔法少女協会所属の魔法少女を殺害した容疑がかかっており、専門家からは国際的武装組織との関連があるとの指摘もありました。警察と協会では市民の情報提供を求めており――』
テレビの画面には、この前の配信の時のボクの写真がデカデカと映っている。ボク自身は食後のバニラシェイクを吸いながら肩を震わせ、滑稽にも思えるニュースの言い分を聞いて首を捻っている。
「どこの漫画の主人公の設定だありゃ。確かに魔法少女と戦ったことは何度もあるけど。国際武装組織とかボク知らないんだけど、一体何処から付いた尾ひれだ?」
身に覚えのないワードと容疑をかけられ、普通に混乱している。別に罪が重なることなんてのは気にしていないが、そこまで盛られると正直興味が出てきてしまう。
まぁ想像するとすれば、小娘程度に良いようにされちゃ政府のメンツが立たないからとかだろう。にしても設定が飛躍しているが、細かいことは指摘するだけ野暮か?
続くメンバー紹介には配信現場にいたイナと、謎の銃使いと交戦したテンプも名を連ねていた。そして――
『緊急のニュースをお伝えします。歯車の魔女を初めとする犯行グループ、政府はこれを【ディザスター】と命名。魔法少女協会はこれに対し、徹底的に追跡、撃破することをメディアに発表しました――』
「良かったじゃんナナシ、犯行グループ扱いになったよ」
「変なグループ名付けられたからトントンじゃない?」
「えー、我は珍しくセンスあると思うけどな」
割り込んだ緊急ニュースでテンプが目を輝かせそうな名称を付けられた。ディザスター......《
何せ予測ができない。首輪のついていないボク達は、奴らからすれば紛れもない怪物だ。出来ることなら今すぐでも倒したいのだろう。
協会側にそんな余力があるのか、と疑問に思ったこともある。しかしそれはテンプが交戦した銃使いの存在からある程度予想が付く。まだ、表の戦力を削ったに過ぎない。
というか今回の事件に怪人達、つまりは組織が首を挟まなかったのも気がかりだ。奴らもまだ幹部格が8人はいるわけだし、油断はできない。
考えるだけで目眩がするほど、先は遠い。だが、ボク達はハッピーエンドへの道を着実に進んでいる。
「......この先を考えて、大変? 少し休んでも良いよ?」
ボクが疲れていると思ったのか心配してくれるイナ、マジで可愛いな。顔が良いし、声も良いし、もう何もかもが良い。彼女が今のボクが生きるモチベーション、カミサマ普段は馬鹿にしてるけどここだけはマジで感謝。
いや今は神に感謝している場合じゃないか。ボクが目指すのは
「まだ何も決めてないんだよね。今後、どうしよっか?」
イナとテンプ、二人の目を見て今後のことを話す。普段なら掲示板で安価でもするところだけど。なんとなく、今は掲示板で話す気は起きなかった。
「ナナシのやりたいように。それが私達の進む道だから」
「我も同じく。ナナシの好きなようにやるのだ!」
問いかけに返ってくるのは頼もしい返事、二人がボクを信用しているという証。それじゃあ――
「次のターゲットは――」
無邪気な子供のような笑顔で、この空前絶後の犯罪事件は幕を閉じた。だけれどそれは、始まりに過ぎなかった。
ナナシ
・今回の事件の主犯
・設定盛られすぎワロタ
・次のターゲットを決めた
イナ
・完全に嫁のムーブ
・テンプとは仲良くなった
・包容力
テンプ
・鍋は肉しか食わない
・弄られキャラを確立
・カッコいいグループ名にご満悦