仮に人間に『魂』という概念が備わっているとして、人間が死んだ時にその『魂』は何処へ行くのか。
行き先は善人なら天国、悪人なら地獄なのか? 参ったな、善行のチャージはしばらくお休みしていたから今の状態では天国に行けるかはイーブンかもしれない。
「そんな面倒な問いに価値はないけどね。善を成す魂も、悪を成す魂も、些細なこと。善行を積んでも、悪徳を成しても、何も変わらない。『魂』には価値なんてないよ」
......おい待てや、なんだ今の声。というか、サラッと考えていたけど今の僕はどうなっているんだ?
「へーい、そこのラッキー......死んでるんだしそうでもないか。とりあえずそこの迷える魂くんは早くこっちにツラ貸せにゃー」
さっきとはまた別の声が、脳裏に響く。不快ともまた違う耳鳴りに、思わず顔をしかめる。
気付けば自身の体は半透明になっていて、目の前には青髪とピンク髪の知らない女性が二人。ははーん......ついに幻覚が見えるとか、僕も頭がおかしくなっちまったか。
「ここは何処だよ......幻覚じゃないとしたなら、コスプレ会場に迷い込んだ覚えはないんだが?」
「誰の格好がコスプレだよ失礼だにゃー、死んだ人間の魂が行く先なんて決まってるじゃん。ここは天国と地獄の境界線、死後のセカイにようこそだにゃー!」
駄目だ、言ってる意味がまるで分かんねーぞ......?
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とりあえず、今の状況を纏めよう。正直まっっっったく理解していないが、混乱し続けるよりはマシだ。
僕は倒れた後に息を引き取り、こうして死後のセカイに来た。目の前にいる二人の女性は怪しいコスプレイヤーではなく『カミサマ』とやらで、僕のこれからを左右するらしい......非常に疑わしいが。
死後のセカイが思ったよりも緩いことに違和感を感じつつ、目の前の自称カミサマ達を眺める。
「ん、どしたのさ。やだにゃー、そんなにジロジロ見ても何も出ないぞー?」
青髪の女性と、ピンク髪の女性。しかし、それ以上の情報が分からない。虫食いによって欠けた日記帳を見ているみたいに、それぞれの情報が繋がらない。
「まぁそれは私らの認識阻害の結果なんだけど......それは気にしなくていいよ、本筋には関係ないから」
どうやら本筋には関係しないらしい。なんだよ、少し興味持ったのに微妙に損をした気分だ。
「ふーん......で、僕はどうなるんだよ。カミサマの事情とかは知らんが、この状態じゃ拝むくらいしかできないぞ」
「わーお淡白、拝まれて悪い気はしないけど私の仕事はそれじゃなくてね。ねぇ君、一度しかない人生をもう一度できるとしたら.....転生とかって興味あるかにゃー?」
「そりゃ面白い冗談......オイ待て、足元のコレは何?」
紡がれた言葉より早く、足元に不思議な模様が浮かび上がる。ははーん......え何それ。ちょっ、何する気だよ!?
「ホントはもうちょい遊びたいんだケド、私らの尺度で遊ぶといつまで経っても終わんないじゃん? まぁ......興味のないキャンペーンに当たったとでも思えばいいにゃー」
そう言ったピンク髪のカミサマは、軽く手を振りながら高笑い。あっ、こいつ僕の返答は聞いてないな!?
「おいカミサマ!? せめてもうちょいこう......選択権とかチュートリアルとかねぇのかよ!」
「んー、まぁ細かいところは現地で頑張ってね。新しいカラダも少ししたら慣れると思うし、案外楽しいかもよ?」
足元の模様が光り輝く。カミサマへの異議申し立ては問答無用で却下され、意識は光へ吸い込まれた。
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拝啓、ボクを転生させたカミサマども。お元気でしょうか、色々言いたいことはあるがテメェらはクソだ。
公園の噴水、水面に映るボクは見慣れた姿では無くなっていた。仮にも高校生だった肉体は、小学生くらいの背丈に。腰まで届きそうな黒髪と、綺麗な漆黒の瞳。
そして極めつけは、わずかに感じる胸元の膨らみと......消えた股間の感触。つまりこれは......
「TS転生とかあるならせめて先に言えやクソ神ィィ!!!?!」
深夜の公園に慟哭が響き渡る。元少年で現少女の、理不尽を嘆くちっぽけな叫びだった。
本編で語られないキャラ設定①
少年/七不思 廻(ななふし かい)
・ナナシの前世だった少年
・中学生の頃に両親は他界、天涯孤独に
・両親が遺した借金によって家を手放した
・最終的に過労と栄養失調により死亡
・カミサマのイタズラによって転生
・女の子になっちゃった←今ここ