「実際これで釣れると思う?」
「釣れないと困るのだ、そろそろ刺激が欲しいしね」
一度ナナシとノアと別れた私達は、大阪の有名な橋の上にて罠を張っていたのであった。
観光地というだけあってそれなりに賑わっているが、フードを被るだけで犯罪者というのは姿を消す。テンプはふわふわと歩いているが、全体的に空気が緩いな......
街は夕暮れ、次第に世界は闇に包まれる。残念ながら主演はこの場にいないが、祭り事のメインヒロインはレッドカーペットの上でシャンパンを飛ばせば良い。
「さて、ナナシに許可は取ってるし......
「大阪の名所ねぇ......あ、大阪城とかどうよ。歴史的にも価値があるし、これからすることにはちょうどいいのだ」
「了解、まぁ初手は派手にやりますか......」
思えば、暗部への打撃で1番効いたのは先日のテロだ。だったら、もう一度似たことをやるのは妥当じゃないか?
「手数は?」
「仕込みは十分に、どれだけ嫌でも奴らは出てくるのだ」
「上等、吉報を持ち帰ろうか」
軽く指を鳴らして、目的地へ歩みを進める。それは均衡を崩す歩みだということは、まだ誰も知らない。
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全国を対象とした大規模な停電から数分、銃使いの時雨は先手を取られたことに歯噛みしていた。
いや、こちらに損失は今のところ出ていない。問題は先手を取られた方法であり、暗部が《天災》に露見したシチュエーションと同一。役者は違えど、天丼とも言う。
『はいはい、レディースアーンジェントルメーン。並びに紳士淑女じゃない凡骨共、こんばんはァ。大阪より皆さんの電子端末をジャックしてます、『
『そろそろ刺激が足りないだろうし......というわけで緊急特番なのだよ、題材は──街が壊される中、魔法少女は前線に出てくるのか。思考実験のお時間なのだ!』
カメラに映るのは、怪人の力を使う少女と──この放送を成立させている『電解』の魔女か。そして伏せ札は最低でも『歯車』の魔女、1人で相手取るには面倒だな......
「添元め......身内のケジメは自分で付けろよ」
ソシャゲ中毒者の同僚に恨み節を吐き、状況を整理する。まず先にアクションを起こしたのは向こう、口振りからしてカウンターを仕掛けようとしているのが見える。
誘いに乗らなかった場合も実にシンプルだ、言う通りならば関西の主要都市は大体破壊されてもおかしくないな。
「だが、それじゃ協会は【表】しか釣れないですよ?」
まだ協会としての面子が揺らいだ情報テロの方が、良い脚本だったと言える。こちらのアクションは沈黙、それだけで奴らのテロの目的は瓦解する。
こっちもそろそろ痺れを切らしているんだ、必要ないところは切り捨てる。関西の都市、市民の安全、協会の表側......それらは私たちのプランには必要ない。
「まぁ実はこっちも挨拶しなきゃいけないんだが。あーやだやだ、鉄砲玉は辛いですね」
とはいえ、プランのためにはわざと釣られる必要もある。結局は持ち札の使い方次第で、戦局は左右される。
さてどう出る《天災》、暗部の隠し玉......【
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大阪城の歴史は、それこそ古くは戦国時代に遡る。なんだかんだあって現存するのは後年に復興されたものだが、日本における歴史的な価値はかなり高い。
大阪の顔というほどではないが、シンボルマークの一つではある。そして人間は、そういう記号に価値を見る。
テロリストの様子を液晶越しに人々が見守る中、それはほんの一瞬の変化だった。
『【装填──
テロリストの片割れが何かを呟くと同時、その威圧感のある天守閣が瞬時に
相反する氷と炎が、巻き込む全てを塵にする。数百年とその地に鎮座したかつての遺物は、何も残さなかった。
その最期に誰もが、言葉を失った。普通ならありえない現象が、世界の法則を支配する。
『さァさァ、突然ではあるがお立ち合い。デモンストレーションは十分だろう、来いよ魔法少女』
怪物が、その力を振るう。『天災』による二度目のテロは、物理的損失を伴って始まった。
・ナナシ・ノア→京都へ、現在ナナシが昏睡中
・スレ民→イッチに干渉する為に暗号解読
・イナ・テンプ→大阪へ、二度目のテロ開幕(!?!!?)
次回は回想を挟んでノア視点です。