その異音は、意識を失って倒れていたはずの魔法少女から響いていた。ぐちゃり、という内臓を掻き回すような気味の悪い音は、果たして誰に届いたのか。
「ぅぶっ゛...ぁ゛、ぁ゛?」
その少女の幸福は、あくまで自分の信念に基づいて戦ったこと。その少女の不幸は......そんな想いは、誰にも尊重されずに踏み躙られること。
「んん、アイツら......何をしているのだ? まぁ別に良いか、『放電』っと」
死に際の自爆技を警戒しつつも、トドメを刺す為に電撃を放つ。これで全員感電死は免れない。
「はいはい終わり終わり、──ッ!?」
「險ア縺輔↑縺�ィア縺輔↑縺�ィア縺輔↑縺�」
「おいおい、何言ってるか分からないけど......いつから魔法少女ってのは第二形態が実装されたのだ?」
始末は完了したと想いテンプが背を向けた瞬間──その顔の横を何かが掠めた。自然と後ろを再確認、そこにいたのは魔法少女とは言い難い生物だった。
例えるならば、ゲームに出てくるような異形。でも組織の怪人とはまた違う......強いて言えば『魔物』か?
どう見ても人の形を保っていない獣型のシルエットを前に、テンプは思わず笑みを浮かべる。そして、よく見ればその影は次第に数を増やしている......
「あんまりワクワクさせるなよ、今回はイナが主役なのに──そんなことされたらさぁ、私も遊びたくなっちゃうのだよ?」
テンプはそう言って配信カメラを揺らし、目前の変わり果てた怪物をシャッターに収める。どちらが正義なのかは、最後に決まるだろう。
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歯医者で施術中に流されたアニメが退屈だった時のように、すでに終わった退屈な話ばかりが目の前を過ぎていく。12話分のクソアニメを流し続けるようなセンスのない拷問で、心は冷え切っていた。
ボクのせいであの二人は死んだ、守るべきモノなど無い。考えれば、そもそも未練なんて──諦めても、
『寝坊するにしてはちょっと幕間が足りないと思うよ、寝起きは鬱になるタイプなのかいナナシくん?』
『......ノア、か?』
嫌な記憶を流し続けるだけの空間に、異常を告げるノイズが走る。蹲るように過去から逃げようとするボクを見下ろすように、虚空からノアは現れた。
......嫌な顔だ。全てを見透かすように舌を見せて、ここで蹲るボクを糾弾しようとしている。
『そうだよ、大体全ての元凶たるノアさんだ──詳細は省くが、いつまでそうしているつもりだい?』
『......るっせーよ』
『わお辛辣、確かにこりゃ不快だが......
たかたが目の前で恩人が死んで、
魔法少女になっても何も守れず、
恩人に託された妹ちゃんは呪詛吐きながら死んで、
信じようと思った大人は腐っていて、
変身アイテムを奪われた挙句に拷問、
ぐちゃぐちゃの妹ちゃんの遺体を拷問に使われて、
組織と協会に良いようにされて空回り......
命からがら逃げた先に、派手な活動を控えて、
でも自棄になって、テロを起こした?
『っせーよッ......うるさいうるさいうるさいんだよ! ああそうだよ、この程度でキレたんだよボクはッ......』
その程度......ははははっ、ボクが体験してきた地獄をその程度と申すか。よし分かった、やっぱり潰そう。
もう疲れた、何かを忘れている気がする......もういいや、ノアを倒して、考えるのを止めればいい。
『殺る気かい、悪夢を見て自殺を図ろうとする奴は止めるのが私なりの流儀だが』
『......』
『さっきまで動けなかったくせに......ヘラった女なんて面倒なだけだよ? それこそ.....
これもある意味、過去との決別なんだろう。何を忘れたままに、召喚した歯車を揺らす。
気付いたらナナシくんがヘラってノアと戦い始めてる......なんで......?
テンプ
・裏方担当は今日も忙しい
・殺しに躊躇いはない
・魔物との戦い、ファイッ!
魔法少女の成れの果て(魔物)
・原材料→魔法少女
・数→いっぱい
・特徴→尊厳破壊
ナナシ
・悪夢の連続で鬱状態に
・過去拡張の余地アリ、お好みの曇らせをどうぞ
・なんでこんなことに......(作者)
ノア
・自身の一部をナナシの意識に溶け込ませて侵入
・大体ハガレン106話のアレと一緒
・鬱病患者と化したナナシと精神世界でバトル