「魔力反応は......ここか」
冷え切った風が、小さな顔を撫でる。私の氷と炎に支配されたこの戦場では、常人は震えるしかない。
ようやく捉えた魔力の反応を印に、異形の羽を揺らして空を舞う。配信はテンプに任せて......大丈夫かな?
「ようやく見つけたよ......釣れた暗部はお前か」
「ありゃお早い、時雨さんに何か御用で──」
そしてこの状況で平然とビルの屋上に立つのは、まともじゃない人間しかいない。挨拶代わりに切り掛かるが、その攻撃は魔力で編まれた防壁に阻まれる。
不意打ちは失敗──まぁこの程度で倒せるとも思っていない。むしろ小手先で相手の手札を確認出来ているのだから、上等な成果だと言えるか?
「『
「話が長いな、銃使い」
「うへぇ、なんだか辛辣ですねえ......魔女達じゃないのは残念ですが、まぁ良いでしょう」
話が長いと軽く睨み付けると、銃使いは舌を出して首を揺らす。なんだその反応、挑発のつもりかな。
こいつの主な魔法は領域の生成──それと指定の魔力を付与した弾丸を使った射撃の2つ、前者は近距離で後者は遠距離に強いのが特徴と言える。
そして奴が漏らした魔力を辿っている以上、ここは仕掛けられたフィールド......つまり警戒するべきは。
「『
──前者の、既に完成された領域生成魔法だ。
▼
魔法少女が扱う魔法には、三種類の系統がある。
まずは基本となる汎用魔法──手の平から炎を出したり、水を出したりする魔法で、魔法少女なら誰でも使うことができる。魔力の量によって最大の出力を調整することが可能で、最も応用の幅が広い。
次いで、実用レベルに達する魔法少女の少ない上級魔法──主にナナシが扱う回復魔法などが該当する。
特徴としては実戦の際に使われる殺傷性の高いものが多く、思春期の少女にとっては少し刺激が強い。
「ふふ、久々だとどうにも鈍ってしまいます......」
「ちっ、そりゃ当然準備はしているか......!」
──そして、他の魔法少女には決して真似できない神業たる"固有魔法"は、まさに切り札と言える。
銃使いの時雨──長いから時雨でいいか。彼女の固有魔法の領域は、名が示す通りの牢獄であった。薄暗く、何かが軋む音のする、閉ざされた世界。
周囲の空間を塗り替える、まさに神業。これが完成された領域魔法──侵入者に考える時間は、無い。
「【装填──
「ふむ......そういえば貴女の権能は知りませんねえ」
「ッ......!?」
触手に魔力を込めて、衝撃波を飛ばす。領域内からの脱出を狙おうとするが......当然逃がしてくれる筈が無い。壁に貼り付けられた装飾品が動き出し、喉元まで襲いかかる。避け──無理だな、迎撃しかないか。
「良いことを教えて差し上げます──領域内での私は無敵なんですよ、これでも『歯車』の魔女を殺す気で来ていますからね」
「ふ〜ん、そういう台詞はもう少し追い詰めてから言うものじゃないか......【装填──
「檻の中の
ッ──!?」
寸前で突っ込んで来た飛び道具を叩き落とし、反撃へ乗り出そうとする私に、二度目の違和感。無数の眼差しに嬲られているような、不快な感触。
どこか余裕のある時雨の声音が、濁りを含んだドス黒いものへと変貌する。それを裏付けするように荒々しく胸ぐらを掴まれ、壁に向かって叩きつけられる。
「か......はぁッ!?」
「──協会って正直、私から見ても烏合の衆なのは事実なんですよ。まぁそこが可愛いんですけどね?」
「知るかッ......よ!」
続いて飛んでくるのは、銃弾の雨あられ──お前のその拳銃どうなんてんだよ、ガトリング砲みたいな音したぞ。弾切れが無いとはテンプから聞いていたが......威力と密度は領域で強化されているか。
ポケットから取り出した短剣に魔力を込めて、力のままに振るう。風圧で弾幕が揺らいだ隙をついて、牢を蹴破り時雨と向かい合う。
まずい、意気揚々と攻撃を仕掛けたのにこのペースでは──協会側の描いたシナリオ通りだ。反撃の糸口を見つけなければ、ジリ貧で負ける。いや......
「──ハハッ、そうか、そうかもなァ」
「んんん、虫ケラもようやく諦めましたか?」
違ェよ銃使い、諦めだなんてとんでもない──攻略の時間だ。無敵だろうが何だろうが、私達の前に立つならば星だって堕としてやる。
今月中にこの章が終わって1周年記念の幕間を入れて......多分そんな感じですかねえ......()
イナ
・配信の目的だった釣り出しには成功
・対魔法少女の知識はノアから
・次回、反撃の刻──
時雨(銃使い)
・協会暗部のパシリの人
・ある地雷を踏むと本性が表れる
・領域内だとチート級......?