TS魔法少女イッチと掲示板と人外系美少女   作:餅持

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今章のエピローグです、と言ってもナナシくん達は出ないので......まぁ次への種まき程度に思って下さい。


軋みながらも世壊は廻る

 

 

「"天災"の事件、また凄いことになってるわね!」

 

「それ大きな声で話す話題でもあらへんわぁ、脛に傷持ちの私らなんて特に......やで、カスミちゃん?」

 

「ぐぐっ......でも、魔法少女なんてやめて正解だったわよ。あんな化け物にはなりたくないし......ねッ!」

 

 

 『天災』が起こした事件から数日、現場である関西はともかく──東京は仮初の日常を取り戻している。

 

 しかし公園には鴉の鳴き声が、やけに大きく響いていて。誰かといなければ、自分が霧のように消えてしまいそう──そんな幻覚に、誰もが呑まれていた。

 

 

「そうだセイナ、『黒い海月(クラゲ)』は知ってる?」

 

「何や知らんわぁそれ、新しい怪談かな」

 

「違うわよ、全身黒い戦闘服を着た謎の人物──魔法みたいな攻撃で怪人を倒すらしいけど、フードを被っていて誰もその顔を見たことがないんだってさ」

 

「なんで説明口調なのか気になって仕方ないわぁ」

 

 

 この二人も、そんな不安を抱えていた。今の普通の日常がいつ壊れるのか──ならせめて、今を楽しもうという歪んだ思考で、軽口を叩き合う。

 

 『天災』だけが、恐怖の対象ではない。得体の知れない組織も、不信感を募らせる協会も、力を持たぬ市民からすれば、何も変わらないのかもしれない。

 

 

 ▼

 

 

 金切り声と共に、夜の路地裏を少女が走る。暗闇に紛れ、魔力を灯した鉄パイプを護身用に抱えている。

 

 

「はぁ、はぁッ──なんで、私がッ!?」

 

 

 彼女は、魔法少女だった。普段は適当にグループを組み、たまに現れた怪人を倒す──異能の力を持ちながらも、力に溺れることのない善良な少女だった。

 

 だからこそ、少女は今の状況が解せない。頭は巷で流行り出したという『魔法少女狩り』に酷似していることを理解していたが、善良故にそんなことを信じたくは無かった。

 

 しかし襲撃者の攻撃は止まず、目立つ魔法を使えば市民をより刺激する。息苦しい板挟みだが、沿わなければどうなることか。もし世間を賑わす『天災』達にでも追われたら......まず生きては帰れないだろう。

 

 

「こ──のッ!」

 

 

 フードを被った襲撃者が放つ水の斬撃を、少女は鉄パイプで弾き飛ばす。星のない真っ暗な空模様の下では、対面する敵を特定することすら難しい。入り組んだ路地裏を舞台にして、静かな攻防が進んでいく。

 

 少女は周囲にあったゴミ箱を蹴り上げ、追撃の手を阻む。反撃の糸口は──自分で掴むしかない。

 

 

「倒れろッ──!!」

 

 

 襲撃者の脇腹に鉄パイプを浴びせ、反撃を警戒して距離を取る。魔力で補強した打撃なら無傷とはいかない筈、そう計算した少女は......すぐに後悔した。

 

 カンカンカンカン、と路地裏に響く音。それは質量を伴って少女の右脚を貫き、その動きを止めさせた。

 

 

「あ、ぐ──!?」

 

 

 強襲、その二文字が頭に浮かぶ。幾重にも壁を反射した弾丸が機動力を奪ったということは──意識せずに袋小路に誘われた形となる。

 

 そうしてが立ち止まった隙に、黒い影は路地を揺らめく。少女が捨て台詞を吐く暇もなく、襲撃者の水の刃が速やかに首を刎ねた。

 

 

「・・・・・・はぁ」

 

 

 影は揺らいで、狙撃の方向を見ていた。軽く息を吐いた後に、少女の遺体は昏い闇へと流されていった。

 

 

 ▼

 

 

「本っ当に......巫山戯るなよアバズレ共がぁッ!!」

 

 

 協会暗部の溜まり場は、一人の癇癪によって荒れ果てていた。鉄砲玉の時雨は敗れ、新兵器のマジカルクラフトも成果は上げておらず、まさに完敗であった。

 

 慢心していた? 敵の戦力を見誤った? それとも何だ、自分達の力を過信したのか? 否、否、否、否否否否否否否、断じて否だ、否定しなければ──

 

 

「そろそろ落ち着け添元、キレ方が薄っぺらいよ」

 

「大垣ィ──悪いが今の私は素面だ、だから何を言っても負け惜しみにしかならないことも理解している」

 

 

 だが、それはそれとして苛立つのは事実で......腹を立てながらも添元は次の計画を練っている。

 

 これだけの手痛い損失も、計画の為なら犠牲として割り切れる。それは昨日まで席を囲んだ仲間に対しても同じで、全ては目的の為の駒に過ぎない。

 

 状況は飛車角落ち──とは少し違うか。未だに無傷の天災と得体の知れない組織、そして脛傷を抱え過ぎた協会......このまま続行するには嫌な盤面だ。

 

 

「うわ、添元が見たことのない邪悪な顔してる」

 

「当然だろう。天災も組織もその辺の木端にも、これ以上計画は──『DEICIDE(ディーサイド)』の邪魔はさせないよ」

 

「まぁ、私としてもそれには賛成だけどさ」

 

 

 退屈な世界を壊すなら、やり方は派手な方が良いだろう。私達が()()()()()を果たすまでは──この程度では止まれない、止まるわけにはいかない。

 

 そうして彼女のスマホに映ったのは、簡略化された日本地図。次に厄災が牙を剥くのは何処か──?

 





カスミ&セイナ
・ナナシとイナに敗れた元魔法少女
・具体的に言えば最初に安価されてた奴ら
・今となってはオカルト大好き小市民

モブ魔法少女
・運が無い
・魔法少女狩りに遭う
・善良であることが死へと繋がった

襲撃者達
・魔法少女狩りの方々
・前衛と後衛の二人組、正体不明
・フードの下には何が......?

添元
・ついに余裕が崩れたテンプの姉
・計画の為なら仲間の命も経費
・次なる目的地を模索

大垣
・キレた添元を宥める(失敗寄り)
・基本ドン引きのスタンス
・それはそれとして計画には乗り気

次回は連載1周年記念の幕間です、現時点で1ヶ月遅れなのはともかく......今後とも拙作をよろしくお願いします。
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