「実にアホらしい──失礼、随分と刺激的で不愉快な体験ですね。停電なんて甘えたレベルではないのですが、これでは私の諭吉ちゃんは……」
「いやァ、そんなこと言ッてる場合じゃねーし。狙い逃して逃げ遅れとか、あーしもヤキが……ッておい、サボってないで少しは手伝えし!?」
「手伝っても給料もメダルも玉も出ないので……」
「そういう問題じゃねェと思うけどね、ギャンブル中毒者」
数刻前までの喧しいと思うほどの音が失われた遊戯店……パチンコ屋を舞台に争っていた魔法少女達は、それを前にして目を疑っていた。
自分達の利を求め、『魔法少女狩り』や『天災』に与しよう。その為に邪魔になる敵は排除しよう。
そうして始まったはずのそれは、突如として池袋に現れた巨大兵器によって強引に中断される。飛び交う羽虫を気にせず、これが当然であるように歩く災害。
「あんなの出てくるとか聞いていませんからね、馬鹿らしい……対処は協会にしてもらいましょうかね、私このままじゃ大負けですし」
「互いに無駄なババ引いたッてことでこの場は手打ちにしたでしょうが──そっちの瓦礫退かして、それであーしがどうにかするから」
どれだけ利があったとしても、分の悪い賭けに命を張るほどの気概はなかったが故に。ズルズルと二人は手を組んだ。火事場泥棒でも、命は惜しいとも言う。
巨大兵器がもたらした爪痕は激しく、首を傾ければ歪な色の空が顔を晒している。と言っても瓦礫に阻まれて、その全容はまだ見えないが。
しかしそれでも、世界の終わりにはあまりにも唐突だが、息を呑むには十分な威圧感がある。青いはずの空の色は、黒く濁るような模様を見せていた。
あの様子では、逃げるだけでも危険だろう。確実にいるナニカを避けるか……見つかったら、
「ケホッゲホッ……ほんッとに最悪、何が寝返りだよ三流も良いところ……ッ!?」
「ちょっ……何、が」
廃墟と化した建物から抜け出したその時、メイドとギャル、二人の足取りが揃って止まる。嫌な汗が滴り落ちるのと同刻、最悪の予感が的中した。
死神は、嘲笑う相手を選ばない。突如として二人の頭上に降りかかろうとする怪物──仰け反った
二人の目の前に怪物……巨大兵器の頭が倒れてきた瞬間。爆ぜるような視界の明滅と、耳を灼くような轟音が響く。
「呆れるくらい頑丈なガラクタだなぁ……ん? こんな時に面倒な──見られちゃったから、
「……やッば」
──光が晴れた先には、池袋を破壊し尽くした怪物をスクラップにしようとしている怪物がいた。
怪物の牙が二人を喰らおうとするまで……数える暇は、ない。
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脳内でぐるぐると思考回路が蠢き、使えない選択肢を出しては必要ないと切り捨てる。ルートを定めたとしても、至るまでの道筋は重要である。
意味のないモノローグを頭の片隅に追いやり、ロータスと呼ばれる少女は思案する。自分たち、魔法少女狩りが負う損害が、果たしてどれほどに収まるか。
「事態の収束は協会が、でもそれだと天災の思惑通りかしら。介入するにも手数が削がれたから……あの子を拾って逃げ、か」
「ロータス、こっちは駄目だった。クラウズの反応は消えてないけど……長くは保たないわよ?」
見ての通り
先発を切ったクラウズはまだ無事らしいが、さて。面倒なのが来てしまった。しかも目の前に。
「奏、そこを退きなさい」
「え、何さ急に……「退けッ!! 」……ッ!?」
虚空から召喚された双剣が、歪みを切り裂こうと振るわれる。ロータスが声を上げた頃には、既に衝突は始まっていた。
「看破された、何故? ……面倒、それが能力?」
「不意打ちとはご挨拶ね、くっ……はぁっ!!」
指示をするより速く奏を蹴り飛ばし、隙間に割って入るようにロータスは双剣を振るい、踊らせる。姿は見えないが、確かに敵はそこにいるようだ。
考える時間は終わりと、少し大きく双剣で切り付けるが──何をされるか分からないと踏んだのか、襲撃者は後ろへ大きく飛び、その姿を見せた。
「……奏、貴女はクラウズを拾って離脱しなさい。この子は私と遊びたいらしいから」
「何だあれ──チッ、ゲテモノか」
「この子は
その襲撃者は藍色の髪を靡かせながら、能面のように無機質な表情を浮かべていた。ゆらゆらと蠢く得体の知れない何かを、背後に侍らせながら。
その名称のし難き何かを見た瞬間、二人は僅かに動揺する。呼吸が詰まるような感覚を覚えるが、なんとかそれを振り払って。
ロータスの指示に従い、奏は舌打ちを漏らしながら離脱を試みる。当然、敵は黙っている筈もないが──
「行かせると思う?」
「効率が良いから、弱い者から狙う方が。でも邪魔が入っては……仕方ない、優先度を変更する」
黙っている筈もないのは、襲撃者だけではない。双剣が揺れ、一振りで迫る攻撃をはたき落とし、二振りで自身に攻撃を仕掛けた何かを切り裂いていく。
二度、三度、四度……衝突は勢いを増す。
しかし、そんな鍔迫り合いを前にしても、襲撃者は微動だにしない。それが当然であるかのように、背後に蠢くソレが
「お仕事だよ、海月」
ごぽり、という、水中で空気が漏れたような、鈍い音が辺りへと響いた。後の激突を、観測する術は誰も持ち合わせてはいない。
次回は掲示板回+αの予定です、年内投稿は……できる限り励みます、はい。
パチカスクソメイド/???/???
・火事場泥棒A、怠惰な方
・雇い主は現場に来ないタイプ、辛い
・パチ屋が物理的に潰れた為12万負け
金髪ギャル/???/???
・火事場泥棒B、ツッコミ担当な方
・目論見全部壊れたから逃げてェ〜
・↑二人揃って明らかにヤベー奴と戦闘に
大垣/???
・巨大ロボを処理中、池袋はもう壊滅状態
・火事場泥棒たちを見つけたのはこの人
・見られたのでスクラップの時間
奏/??? ???/ロータス
・魔法少女狩りの方々
・敗戦処理はそう甘くはない
・前者は離脱、後者は戦闘へ
海月/???/???
・突然現れた襲撃者
・あくまでも『お仕事』らしい
・背後の何かは本来のものより変質しているらしい……