今回はイッチに敵対する組織側の視点です。
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人型の異形が、神聖なる教会にて円卓を囲んでいた。
「これは由々しき事態だ」
円卓の席にて行われる議会、その場の雰囲気は最悪に近いものだった。議題を取り上げたのはまだ若手の男。第7席と呼ばれている男だ。
実践的な経験こそ浅いが実力は確かなものであり、有望株とされる男は空気が読めなかった。全員が面倒そうな顔をしているが、涼しい顔でそれをスルーしている。
「皆も知っての通り、第16席の『翼裁』がやられた。
奴は末席だったが、天界教の幹部である我らは超人に分類される存在。改めて認識をすり合わせようと思ってな」
認識をすり合わせると言ってはいるが、円卓にはポツポツと空席が目立つ。今も何かをしているか、はたまた邪魔者を消しているのかは分からないが。
「改めて聞いても耳を疑うなぁ、あの『翼裁』が。
悪名高い『電解』の魔女でも出てきたのかぁ?」
円卓の席に肘を付いている男がケラケラと若手の男を揶揄う。それは緊張感の無い発言にも取れるし、重苦しい雰囲気を取り払うための発言にも取れる。
「軽はずみな言葉は慎みたまえ、第9席。此処は崇高なる我らが神が授けて下さった——」
「あーはいはい、確かに今のは俺の言葉が軽かった。で、誰に倒されたんだ? 協会のなら痛み分け程度だろ」
肘を付けた男の眼差しの色が変わる。鉄板に穴を開けられそうなほど鋭い視線に遊びの感情は一切無く、冷徹な殺意がその『誰か』を静かに見据えていた。
「——それが最も危険で底の知れない悪魔。
『歯車』の魔女、ナナシといえばその名は通るだろう?」
重苦しい雰囲気の議会に、衝撃が走る。ある者は口を開き続け、ある者は泡を吹いて意識を失うほどのショックを受ける。此処にいる者がどれだけの危機に晒されたのか、それは考える余地もない。
「おいおい、そりゃまた厄介なヤツだな......」
「ただの魔法少女なら我らには勝てない。特異な力を持ったルール破りの魔女でも、協会の猿どもがいる限り時間の問題となる。法に縛られる存在だからだ」
つまりこの話を総合すれば脅威となり得るのは、協会の猿どもの椅子を守っている強力な魔法少女のみ。だが......。
「唯一の例外が『電解』と『歯車』、この魔女だ。
『電解』は危険な思想を持つ頭の狂った女だが、『歯車』はまだ交渉の余地がある......と、思っていたのだが」
「今回のことがあった、と。いくらでも替えが効く低級の怪人や、返り討ちに遭った者がいるくらいなら良いが、『翼裁』がやられたとなればそこで話は変わってくるな」
肘を付いていた男も、『翼裁』には同情していた。彼は傲慢で自身の実力を疑わない奴だったが、人一倍仲間を大切にしていた。その顛末が災害にも等しいイかれた魔女に倒されたというのは、哀れとしか言えない。
「......皆の者、静粛にしたまえ」
流れを断ち切るように、腹の底から寒気がするような声が協会に響き渡る。声の発信源は上座に腰掛けている男。第1席も第2席もいないこの議会において、絶対の権限を持った男だった。
「——第3席殿、あなたを煩わせるほどの案件では」
「冗談も休み休み言いたまえ、第7席。この円卓を囲む者の内、何人が現在まともな思考を保っている? 私には、そんな者は片手の数で数えられると思うのだがな」
指摘は短く、確かな物だ。この場には自身の実力を過信する馬鹿者はいない、そんな奴は『歯車』の魔女に殺されかけているからだ。敗北の恐怖は、簡単には克服できない。
「『歯車』の魔女も厄介だが、第2席が管理していた研究施設から逃げ出した実験体17号も危険だ。我らが神に仕える『天使』を模したのだから当然だが、自我が芽生え明確に反逆してもおかしくないだろう。この現象を仮に名付けるとすればそうだな......『堕天』とでも名付けようか」
「第3席殿、研究畑だということは存じておりますがその視点は後ほど。下位の者が困惑しておりますので」
若手の男が指摘すると、第3席はバツの悪い子供のような笑みを浮かべた。純粋な子供、あるいは新たな事実に興奮を隠せない科学者のような顔だ。
「まぁ許してくれたまえよ。重要なのは17号を回収しようとした『翼裁』が『歯車』の魔女に倒されたことだ。17号と『歯車』の魔女が共謀している可能性がある」
「それは......危険ですね」
『歯車』の魔女だけでもかなり危険だというのに、戦闘能力が未知数の17号がいる。学習機能に振り切った育成をしていて戦闘データを取っていないことが仇になるとは、というのが実験を知る者の総意だった。
「第2席は研究施設の後始末で忙しいそうだ。本来ならば奴が落とし前を付けるべきなのだが......第9席、頼めるかね?」
つまりは代理の穴埋めだ。だが『歯車』の魔女と堕天した天使でも、第9席を倒すことはできまい。
「げぇ〜、俺かよ。まぁ良いけども」
肘を付いていた男は指名されると立ち上がり、獰猛な牙を見せた。こうして、次なる刺客が迫り来る。
ナナシ(TS魔法少女イッチ)
・知らなかっただけで何人か幹部格と戦っている
・悪魔扱いされてる
イナちゃん(実験体17号)
・なんか色々危険視されてる
・戦闘データが組織に無い
『翼裁』
・ナナシに焼かれたおっさん
・ハゲの丸焼き
・組織においては幹部の末席だった
第9席
・どこか態度の軽い男
・次なる刺客に選抜される