英雄の誕生を見届けたい(願望)   作:日彗

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序章

 

 迷宮都市オラリオ─────『迷宮(ダンジョン)』と通称される壮大な地下迷宮を保有する巨大都市。

 

 その都市の、がやがやと道を歩く人だかりをスイスイ進んでいく人影。その目的は一つ。ただ一つ。

 

「おばちゃん! 今日のイチオシおくれぇーー!」

「なんだいコウスケちゃんじゃないか。今日のイチオシはメレン産の新鮮な魚だよ! 安くするから買っていきな!」

「イヤッフゥゥーーー!! おばちゃん愛してるゥゥーーー!!」

 

 目当ての物を手に入れホームへと走る。人の間を縫う様に、時には建物飛び移り最短距離で向かう。

 

 行きついた先はオンボロの教会だ。見たところかなり古い。それもそのはず、今の時代では教会の必要性など皆無に等しい。

 その教会の奥にある隠し部屋。そこが彼らのホームだった。

 

 勢いよくドアを開け、大きな声で戦果を告げる。

 

「ティア! ベル! 喜べ、今日はご馳走だぁぁーー!!」

「あ、おかえりなさいコウスケさん─────って凄い立派な魚ですね!? オラリオに来てこんなに新鮮なのは初めて見たかも……」

「も~う、どうしたんだい? 人が寝ている時に「見ろティア! 今日の戦利品を!」うおおおおおおおお!? さすがコウスケくん! 君はボクの自慢の眷属だよ! じゅるり……」

「掌返しが酷いな。それと涎を垂らすんじゃない。神ともあろう者がそれでいいのか……」

 

 その手に持つ久々の御馳走に目を輝かせる家族(ファミリア)。それに釣られて思わず笑みが浮かんでくる。

 

 この教会をホームに活動している一柱の女神と二人の少年。

 

 黒髪を二つに結ぶ、俗にいうツインテールの少女、女神ヘスティア。

 

 白い髪に紅い瞳の兎を彷彿とさせる少年、ベル・クラネル。

 

 そして黒髪黒目でボロ着に身を包んだ少年、タチバナ・コウスケ。

 

 彼らは【ヘスティア・ファミリア】。女神ヘスティアを主神とし、恩恵を与えられた眷属達。

 

 時に笑い、時に泣き、時に戦う。

 ある者は『英雄になるために』

 ある者は『少年と共に歩むために』

 ある者は『至高の領域へといたるために』

 ある者は『恩を返すために』

 そして、またある者は『英雄の誕生を見届けるために』

 

 それぞれの目的、それぞれの夢、それぞれの理想を掲げて彼らは歩み続ける。

 

 これは少年(ベル)が歩み、女神(ヘスティア)が記す───【英雄の物語(ファミリア・ミィス)】───

 その、記されざる物語。

 

 英雄と共に歩み、後に【魔王】と呼ばれることとなる、神々にすら予測できない『規格外(イレギュラー)』の物語。

 

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