英雄の誕生を見届けたい(願望)   作:日彗

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主人公の名前表記、異世界の人間でありその他とは違うと言う意味を込めて漢字とカタカナを逆にしてましたが、なんか面倒くさくなってきたので全部カタカナに統一します。どうしても『コウスケ』はカタカナがいい。『タチバナ・幸助』にするくらいなら『タチバナ・コウスケ』にする。


第十七話 調理・戦闘・また調理

 

 リリと別れて数分後、『豊穣の女主人』の前を横切ろうとしたタイミングで店主のミアに呼び止められた。

 どうやら昼間にもかかわらず今日は客の入りが多いらしい。それで人の手が足りず困っているのだとか。

 正直、はぁそうですかと言って帰りたかったのだが、絶対に逃がさんという圧を放つミアが怖くて無理だった。

 

「すみません。ミア母さんが無理を言ってしまい……」

「まあ、暇だったからいいんですけどね……」

 

 わざわざ謝りに来たリューへそう言い返しながら、中華鍋を振るう。先ほどレシピに目を通してみたが、栄養バランスや旬の食材をよく考えて作られている。値段は少々お高いがこれなら客が増えるのも頷けるだろう。

 なにより図説が付いているのがいい。これのおかげで文字を解読する手間が僅かに省けた。ミア母さんスゲエや。

 

「………料理が、できるんですね」

「ええ、このくらいであれば。レシピ通りに作ればいいだけですから剣を振るよりもずっと簡単でしょう?」

「くっ……!」

 

 何故かリューは顔を歪めて胸を抑えた。人手が足りないんだからちゃんと働いてくださいよ。はい一品完成!

 

「こういうのはぶっちゃけ趣味みたいなものなんで、頭で一々考えなくとも身体が動くんですよね」

「ぐっ……!」

 

 再び蹲るリューを今度は無視する。ミアに怒られたとしてもそれは俺の責任じゃないからな。俺はちゃんと働いてるからな。二品目完成ェ!

 

「えーと、次はパスタか。……これならリューさんでも作れるのでは?」

「……以前、なぜか麺が爆散したことがあります」

「危ないんで金輪際厨房には立たないでくださいね」

 

 茹でるだけでいいのに爆散するパスタとはなんだ。何をどうしたらそんな現象が起こる。もはやパスタの方に問題があるだろ。

 疑問を頭の隅に追いやりながら麺を鍋の中に入れて、ミートソース作りに取り掛かる。

 ……この時間でもう一品作れるかな。

 店内に忙しく響く喧騒に耳を傾けながら、手だけは一切止めず食材を解体して調理していく。

 オラァ、三品目!

 

 

 

 

「ハアーーーーッ、疲れた!!」

 

 お昼のピークを過ぎたことでようやく休憩を取ることが出来た。

 従業員用の休憩室……はちょっと気が引けたためバックヤードにて適当なものを椅子代わりに腰を下ろす。

 今日はもう上がって良いとミアからお給料と共に言われたのだが、『今日は』とはどういう意味なのか。え、次があるの? 他にバイト雇いなさいや。

 

「おつかれさまです、タチバナさん」

 

 背後から透き通った声が降りかかる。

 聞き覚えしかないその声に振り返ると、やはりそこにはリューが立っていた。

 

「どうもお疲れ様です。リューさんも休憩ですか?」

「はい。ミア母さんが余裕ができたから休んでこい、と……」

 

 そう言ってリューもまた腰を下ろす。

 

「………」

「………」

「……えっと、なにか?」

 

 向けられ続ける視線に居心地の悪さを感じて身を捩る。

 だいたいこの人何でここにいるんだ。従業員用の休憩室があるだろうに。

 

「……不躾にすみません。どうも疲れた目をしているので」

「まあ、さっきまで大忙しでしたからね」

「それもあるのでしょうが、今日会った時から既に瞳から生気が失われていましたので何かあったのかと」

「生気が失われ……!? そんな酷いことになってるんですか俺!?」

 

 咄嗟に手で自分の目を隠す。今夜寝る時は蒸しタオルを使おう。そうしよう。

 たぶん24階層の件による疲労が抜けきっていないのだろう。死にかけていたのだから当たり前といえば当たり前だが。

 

「うぅん、お見苦しいものを……。少々厄介事に巻き込まれましてね。身の丈に合わない戦場に駆り出されて自分の実力不足に嘆いていたところです」

「実力不足、ですか」

 

 思い返すのはやはり24階層のこと。Lv.1の俺が出来ることなどそもそもなく、道中も急いでいたため仕方がないのだが、俺は一体もモンスターを倒すことが出来なかった。

 強いて言えば俺が崩した岩山で数匹は死に、数十匹は生き埋めになっていたがあれをカウントするのもおかしな話だろう。

 

「魔法に関しても剣術に関しても、習得しなければならないものが山積みでどっちも中途半端なんですよ。特に剣が酷い。武器の性能に頼りきりで技量がまるで追い付いていないので、誰かに師事出来たらって考えてはいるんですがね……」

 

 『並行詠唱』よりもそちらを優先しなければならない。『洗礼』で揉まれているとはいえ、彼等は俺に指南しているわけではない。俺はいつも我武者羅に戦い続けているだけで術理も基礎も出来ていない完全な我流。だからこそ、これではいつか限界が来る。

 ベルはアイズから指南されるとして、俺がそれに混ざるとせっかくの空気が台無しになる。ヘスティアの伝手でタケミカヅチに、というのも考えたが武術だけならばともかく魔法剣士としての指南には期待できない。そもそも時系列的に今【タケミカヅチ・ファミリア】と縁を結んでいいものかという悩みもある。

 【フレイヤ・ファミリア】? ああダメダメ、あの人たちの場合修行じゃなくてリンチだし。

 

「ウチは零細ファミリアですし、他派閥の冒険者にお願いするのも難しいのでどうしたものかと……」

「なるほど………ですが焦りすぎるのも良くありません。タチバナさんは【恩恵(ファルナ)】を刻んでまだ一月ほどでしょう。ならば───」

「焦りますよ。今のままじゃ足りないものが多すぎる。このままだとベルを一人にしてしまうかもしれない」

 

 ベルの成長は止まらない。このまま幾度も『冒険』を乗り越えてずっとずっと強くなるだろう。

 あの子は臆病だが勇気のある子だ。誰かのために一生懸命になれる優しい子だ。

 だからこそ多くの人が彼に魅了される。だからこそあの白い輝きに目を奪われる。

 でも、俺はあの子の背中を見たいんじゃない。隣に立って、同じ方向を見ていたいんだ。

 

 アビリティが伸びた、スキルが発現した、魔法を習得した。だけど俺自身は恩恵を受ける前と何も変わっていない。

 数値や文字ではない、もっと根本の本質的な強さ。それがないと俺はここから先には進めない。そんな予感があった。

 

「────では、私がお教えしましょうか?」

「…………え?」

 

 美しい空色の瞳がこちらを見据える。

 はて、この人は今なんと言ったのだろうか。

 

「戦い方をお教えしましょうかと言ったのです。幸い私には刀の心得もある。基礎くらいであればお教えできるかと」

「そっ……れは凄くありがたいんですけど、いいんですか?」

 

 彼女の申し出は実のところかなりありがたいものだ。魔法戦と白兵戦、その両方に秀でているだけでなく、こと『並行詠唱』に関しては都市最高の魔導士、リヴェリア・リヨス・アールヴ以上かもしれないとか。それが本当なのかはわからないが、そう思わせるほど優れた技量を持っていることに変わりはない。

 なによりも本人が申告している通り、彼女は刀を扱える。かつてのアストレア・ファミリアの同僚であるゴジョウノ・輝夜の影響だろう。あれ? そう考えるとリューさん以上に条件に適した人っていなくね?

 

 ……でもこの人ベルのヒロインだしなぁ。いくらアイズ一筋とはいえ、修行を付けて貰うならベルも一緒の方が良いような気もする。

 

「嫌でしたら構いませんが……」

「いや是非お願いします!」

 

 まあベルはアイズの方で忙しいだろ!

 そう切り捨てながら咄嗟に掲げられていたリューの手を掴み────

 

「がっ………!?」

 

────次の瞬間、俺の身体は吹き飛ばされていた。

 

 咄嗟に腕を挟み込んだが、衝撃を受け止めきることはできず壁に叩きつけられる。

 激痛に脳を犯されながら、俺は諸悪の根源である薄緑髪のエルフへ視線を向けた。

 

「……リューさん」

「……はい」

 

 明らかに腕が折れている。夥しい激痛に脂汗を流しながら今起きた現象を思い返してみる。

 先ほど、手が触れたと認識するより速く、リューの腕が一瞬ブレた。と思えば次は尋常ではない衝撃が襲い掛かり、その衝撃によって俺の身体はゴムボールの如く跳ね飛ばされ、見事腕の骨を圧し折られた、と。

 ……いや、分かっている。迂闊だったのは俺の方だ。これに関して彼女を一方的に責めるわけにはいかないのだろう。

 

「……確かに不注意だったのはこちらです。別に、エルフの方々が肌に触れられるのを嫌う事は知ってるんで、怒ったりしませんよ。……でも触れられたくないのならせめて手袋くらい着けませんか? 修行中に手が触れたからだとかそんな理由で今の一撃を喰らい続けてたら、さすがに死にます……」

「も、申し訳ありません……」

 

 潔癖すぎるエルフの習性を忘れていた。とはいえ本気の拒絶はちょっと傷つく。

 「やはりベルがいないとダメかなぁ……」などと考えながら空を見上げる。

 今日の天気は、憎たらしいほどに快晴だった。

 

 

 

 

 毎度の如く魔法で傷を癒すと、特訓は明日からということでその場は解散した。

 耐久が馬鹿みたいに上がってもあまり実感として現れないのは相手が格上だからだろうか。前提としてLv.1が紙装甲すぎるせいかもしれない。

 本当はボロボロになった黒コートの代わりになる新しい戦闘衣(バトルクロス)を買いに行くつもりだったのだが、気が付いたら俺は【フレイヤ・ファミリア】のホームに到着していた。

 

「うーん、習慣っていうのは怖いなぁ……」

 

 なんだか色々とありすぎて久しぶりに感じる。みんな俺が来なくて寂しがってはいないだろうか。

 まずありえないだろうが、少し顔を出していこうと俺は重苦しい門を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおらあああああ!! いい加減くたばりやがれえええええ!!」

 

 久しぶりの『戦いの野(フォールクヴァング)』。久しぶりの『洗礼』。目に映る全てが敵のバトルロイヤル。

 目の前の犬人(てき)に斬りかかると同時、背後から迫る棍棒を頭部を低くすることで回避して蹴り飛ばす。

 目まぐるしく変わり続ける戦況。これのおかげで24階層でもあれだけ取り乱さずに動けたのだ。これらは決して無駄ではなかった。

 

「クッソがあ! 部外者はいい加減引っ込んでろよぉぉおお!」

「うるっせえ!! お前ら全員経験値にしてやらあ!」

 

 Lv.1、Lv.2。稀にLv.3も混じったこの区画はもはや全員が顔見知りだ。どいつもこいつも無駄にしぶといためメチャクチャ疲れる。

 だぁけぇどぉなぁ。

 

「お前の動きはもう見切ったああああ!」

「ぐああッ!?」

 

 顔面に右ストレートを炸裂させ、吹っ飛んでいくヒューマン。

 ふっ、同じレベルなら【フレイヤ・ファミリア】相手でも戦えることが証明されてしまったな。

 

「「「「死ねええええええ!!」」」」

「な、なにィィ!? 四人同時だとぅ!?」

 

 だが今度は種族もバラバラの四人組が一斉に武器を振り下ろしてきた。寄ってたかった攻めるなんて卑怯な! 恥を知れ!

 まず手に握っていた砂を一番近くの兎人(てき)に投げつけ、その隙を狙ってもう一人のドワーフ(てき)目掛けて投げ飛ばす。

 突然投げ飛ばされてきた一人分の重みに気を取られたところを、両者まとめてドロップキック。跳び蹴りの威力を受け止めきることができず、仲良く吹っ飛んでいった。

 

「「こ、この卑怯者!?」」

「黙れ外道ども!! 卑怯なのはテメエらだろうが!!」

 

 残りの二人に照準を定めて突進。まずは両手剣を構えている虎人(てき)目掛けて刀を投擲。それを慌てて弾いたところをすかさず懐に潜り込み─────股間を思いきり蹴り上げる。

 

「~~~~~~~~~~~~~~ッ!??!!!?!?」

 

 顔を真っ青にしてガニ股になる虎人(てき)の両手剣を奪ってもう片方の小人(てき)へとフルスイング。

 間に武器を挟みこまれたが、『力』と遠心力を存分に乗せた一振りを受け止めきることはできず、足が地面から離れた瞬間凄まじい勢いで転がっていった。

 

「ふは、ふはは、ふははははは!! どうしたどうしたこんなものか!? だったら次はお前の番じゃい!!」

 

 アドレナリンに支配された脳が次の敵を求める。周囲を見渡して真っ先に視界に入ったのは褐色の肌に銀髪の黒妖精(ダークエルフ)。なにやら禍々しい剣を持っているが知った事じゃない。

 俺に倒されて糧となれ羽虫がァ!!

 

 

 

 

 いやもうホント、調子に乗りました。マジすみませんでした。

 

 黒妖精(ダークエルフ)に斬りかかろうとした俺は、気が付いたら別の場所に運び込まれていた。

 何が起こったのかまるでわからない。一瞬で気絶させられたとでもいうのか。そんな馬鹿な。 

 

 馬鹿は俺でしたね、はい。

 

 黒妖精(ダークエルフ)なんて珍しい種族、それも【フレイヤ・ファミリア】であれば該当するのはおよそ一人。第一級冒険者【黒妖の魔剣(ダインスレイヴ)】ヘグニ・ラグナールしかいないだろう。

 この迷宮都市オラリオにおいて【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】と合わせて『最凶の魔法剣士』とまで呼ばれている【フレイヤ・ファミリア】の幹部。

 

 相手が悪かった。まさかあんな一瞬で意識を刈り取られてしまうとは。最凶の魔法剣士の『技』を一度見てみたかったが、まさに目にも止まらぬ速さだった。アレンさん、ひょっとしていつも手を抜いてくれてたのかなぁ。やはりあの人もツンデレだったか。

 

 拳を数回握っては開いて身体の調子を確かめる。どうやら誰かが治療してくれたらしい。

 服に付いた埃を払って、今じゃ随分と慣れてしまった厨房に入っていく。ここでは日没後、本拠内にある『特大広間(セスルームニル)』で盛大な晩餐が行われる。地獄のような特訓をした後に豪勢な宴をして一日を締めくくらないと、明日以降の英気が養えないからだとか。実に正論だ。食べた物が肉体を形作る。負荷をかけた後は栄養をしっかり補給しなければいけない。ウチでも取り入れた方がいいだろうか。

 

 素早くエプロンを身に付けて厨房に立つ。余っている食材から適当に作っていこう。……あれえ?肉が一切残ってないんですが。せめて魚くらい……あ、ダメだ。全滅してる。

 仕方がない。残りの物で簡単に作るしかないか。野菜に果物、ミルク、砂糖、他調味料も残ってる。デザートは十分つくれるが、あの人たち甘い物とか食うのか? 残したらミアさんに報告しないと。

 

「こんにちは。精が出ますね?」

「え? ああどうも。また勝手に厨房をお借りしてすみません」

 

 ところで、冒険者達が食事を貪るように食べている中、だれがその料理を作っているのか。

 それにはまず彼女達のことを説明しなければならない。

 

 【フレイヤ・ファミリア】では『洗礼』によって技と駆け引き、心身を鍛え上げられた団員たちを『強靭な勇士(エインヘリヤル)』と呼んでいる。

 そして彼ら戦う者がいるように、癒す者もまた存在する。

 それが彼女ら治療師や薬師の女性だけで構成された『満たす煤者達(アンドフリームニル)』だ。

 

「構いませんよ。こちらとしても手を貸していただいてとても助かってますから」

 

 そして目の前の彼女についても話そう。

 

 薄紅色の長髪を二つに結えた美少女だ。美少女………なのだがいつも死んだ魚の様な目をしている。

 彼女の名前はヘイズ・ベルベット。赤いエプロンドレスと白衣で看護師を連想させるが、レベルは4、ついた二つ名は【女神の黄金(ヴァナ・マルデル)】。

 若くして『満たす煤者達(アンドフリームニル)』の筆頭格となった才女である。

 

「多少は強くなったかと思ったんですが、まだまだですね。何をされたのかわからないまま気を失いました」

「お相手があのヘグニ様なのですからそれも仕方がないでしょう。ですが気絶した貴方を運んだのはあの方なんですよ?」

 

 クスクスと微笑むヘイズだが、やはり目が死んでいる。

 『強靭な勇士(エインヘリヤル)』の存在意義が戦うことだとするなら、彼女達『満たす煤者達(アンドフリームニル)』はサポートこそが仕事だ。怪我の治療や薬の調合、そして料理の支度に関しても。

 そしてヘイズの治癒師としての腕前はオラリオで二番目に高く、事実上彼女一人で『洗礼』後の治療を行っているに等しい。そのため常日頃酷使されているのだとか。そりゃ死んだ魚のような目にもなりますわ。

 いつだったか、俺が治療の肩代わりをした時なんかは無言のまま涙を流していた。あまりにも不憫すぎて余り物の材料でパフェを作ったら泣き崩れていた。どれだけ酷使されてるんだろうねこの人。ちょっと職場がブラックすぎるよ。

 

「貴方さえよければいつでもファミリアに歓迎しますよ。安心してください、フレイヤ様には私の方から掛け合いますので」

「ははは、ヘイズさんは冗談がお上手だ」

「ふふ………冗談などではございませんが」

 

 口元に手を当てて、薄く目を開いた彼女はそう告げた。

 冗談でなければ何だと言うのだ。脅迫か?

 この人は会うたび俺に改宗(コンバージョン)を勧めてくるのだが、聞くところによると彼女には色々と噂があるらしい。

 

 曰く、都市最高の治癒師、アミッド・テアサナーレに次ぐ腕前を持っており、この二人を指して《銀の聖女》《黄金の魔女》と呼ばれている。(byアルフリッグ)

 曰く、普段は温厚を装っているが、敵に対しては一転して憤慨し、激しい口調に変貌する。(byドヴァリン)

 曰く、神々の後頭部を無言で杖で殴ったことがある。(byベーリング)

 曰く、第二級冒険者程度であれば杖で撲殺できる。(byグレール)

 曰く、『洗礼』後の晩餐で猪の肉を出してくる。(byオッタル)

 

 二つ目以降は知りたくなかった。俺にはもうこの人が狂神者にしか見えない。オッタルに関しては意味が分からないが。

 そういえばかの【猛者(おうじゃ)】は稀に俺の所へやってきてスイーツを作って欲しいと頼んでくる。

 その図体で甘い物好きなの?と思っていたが、ひょっとすると誰かに持って行っているのだろうか。

 この間渡した『抹茶パウンドケーキ』なんかは比較的簡単だ。本当は小豆なんかを入れるともっと美味しくなるのだが、この厨房に置いてなかったためそこは妥協した。

 ……今度レシピでも渡してみよう。あの人がエプロンを着て料理しているところを想像するとちょっと面白いが、何事も経験だろう。

 

「ヘイズさん、ちゃんと休憩取ってます? 俺が代わるので休んできていいですよ」

「まあ。ふふふ、大丈夫ですよ。ちゃんと十六時間前に頂きましたから」

「……それ、全然大丈夫じゃないやつです。いくら冒険者だからって自分の身体は大切にしてくださいね」

 

 十六時間て馬鹿か。いくら恩恵があったとしてもそれは辛い。

 また今度甘い物でも作ってあげた方がいいかなぁ。どうせオッタルも頼んでくるだろうし、女子はスイーツに目がないってヘスティアも言っていた。別に甘い物が苦手な人だっていると思うが、我らが女神が断言したのだ。きっとそうなのだろう。

 

「───────」

 

「どうかしましたか?」

 

 突然反応がなくなったため振り返ると、ヘイズは肩を震わせて俯いていた。

 なんだなんだ、今度はいったいどうしたというんだ。この人たまに情緒不安定になるから一々気にしていられないんだよなあ。

 

「他人に心配してもらうなんて、いつぶりでしょうか……」

「ああ~~~」

 

 なるほど、理解した。むしろ貴女が改宗(コンバージョン)した方がいいですって。我らが【ヘスティア・ファミリア】は優秀な人材であればいつでも歓迎してますよ。ヘスティアは嫌がるだろうけど。

 

「ほんと、休める時に休んでくださいね。……とりあえず余り物で簡単に作ったので満たす煤者達(アンドフリームニル)の皆さんとどうぞ」

「これは……?」

「『かぼちゃの塩バター蒸し』に『三種の野菜スティック(特製ソース付)』、『野菜たっぷりトマトスープ』です。野菜しか残ってなかったので、物足りなかったらすみません。でも疲れた身体にはちょうどいいと思いますよ」

 

 本当はもう少し時間をかけて作りたかったのだが、それはまた今度にしよう。はやく食べさせないと彼女達が過労死しかねない。

 スープを器によそいでお盆に乗せていく。すると突然ギュッと手を掴まれた。

 

「ど、どうか【フレイヤ・ファミリア】に入ってください!」

「ははは、冗談がお上手だ」

 

 そんな切羽詰まった声で言われても全く響かない。

 この惨状を見て入団したいと思う奴は変態か狂人くらいだ。ちなみに、このファミリアの人たちは大体が後者である。

 

今作品のヒロイン投票!!~《彼に相応しいのはキミだ》選手権~

  • ①レフィーヤ・ウィリディス
  • ②リュー・リオン
  • ③アイズ・ヴァレンシュタイン
  • ④アミッド・テアサナーレ
  • ⑤フィルヴィス・シャリア
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