原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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27階層の悪夢、ジャガーノート編
神の瞳、いざ開眼


 

アストレア・レコードも終わり、【アストレア・ファミリア】本拠に帰ってきたルシア。

仲間にどこに行ってたのかなどと問いただされたが輝夜が誤魔化してくれた。

そして、死の7日間にて闇派閥の野望を打ち砕いたことへの祝勝会をし、ルシアがたらふく飯をかけこみ、お前ばかり食うなと皆からボコボコにされた頃。

 

「ルシア。食べてるところごめんなさいね。ちょっといいかしら?」

「はふぃ。ふぁんふぇひょう?」

「うーん……飲み込んでからでいいわよ?」

 

アストレアに言われると、ルシアはゴクッと喉を大きく鳴らして口に含んでいたものを全て胃袋に流した。

ライラに「ちゃんと噛めよ……」とドン引きされる。

 

「ルシアに限らず皆もだけど、今のうちにステイタスを更新しておきましょう」

「なるほど。確かに今日は祝勝会で1日休養(オフ)だ。明日からまた都市が騒がしくなるかもしれん」

「それで今のうちにってことね!さすがアストレア様!」

 

アストレアの言う通り、正義の派閥である彼女達の休息などそうそうない。

ゆっくりできる今だからこそこれからに向けた準備は済ませるべきだ。

 

「じゃあアリーゼ順番にいきましょうか。ルシア、貴女は最後になるから認識しておいてね」

「なるほど。それで私に声をかけたと。了解しました」

「おま、待ってる間に全部食うなよ!?いいか?フリじゃないからな?」

「ゲエッ。わかりました」

「説得力ねえよ!!」

 

全員が腹を抱えて笑った。

こんなに団欒な時間はいつぶりだろうか。

大勝し、犠牲も少なかったということもあり、皆今日は心の底から楽しめていた。

その光景を見るルシアは……心の底から嬉しい。

出会った頃、彼女たちは日々の活動に心労が凄い様子だった。

それが今はこの笑顔の輪。

自身の知恵を使ってよかったと心の底から思える。

この光景が見たかったのかもしれない。

ルシアはそう頬を緩めながら……めちゃくちゃ食った。

 

「おいこら、ルシアぁ!ちょっとぁ自重しろ!いいか!?私の更新が終わって残ってなかったらマジぶん殴るからな!わかったな!?」

「ゲェェェェェッ。わかりました」

「わかってねえだろ!!あ、おい!言いながら口に運ぶな!」

 

ライラが騒ぐ中、アストレアに連行され少し静かになった。

やっと食事に専念できるかとルシアはさらにフォークとナイフを巧みに使う。

そこに輝夜が顔を顰め、鼻と口元を隠しながらこっそり近寄る。

 

「……お前が最後の更新なのは、"そういうことだろうな"」

「はい。いや、あの、その汚物を見るような目どうにかなりません?」

「やめて欲しくばその汚い大食漢をやめろ」

 

輝夜にとってルシアの食事は下品極まりない。

所作はハイエルフなので上品なのだが、食う量が上品ではない。

そうして輝夜と話してると、ルシアの番も回ってきた。

 

「ルシア、次は貴女よ」

「はい」

 

ルシアが部屋に入る。

皆、自分のステイタスに夢中でその様子を気にも止めていない。

扉が閉まり、皆の賑わいが遮断されてすぐ。

アストレアは振り返り、開口一番。

 

「ルシア、貴女はおそらくランクアップするわ」

「でしょうね」

 

アストレアに告げられ、ルシアはあっさり同意した。

ルシアはヴァレッタを殺した。

一応ステイタス上はLv.1でLv.5の【殺帝(アラクニア)】を倒したと認識される。

偉業の達成として申し分ないだろう。

 

「問題は、ランクアップを先延ばしにするかどうかよ。ここでランクアップしたら不自然だわ。皆、貴女が【殺帝(アラクニア)】を殺したことを知らないし、言えない」

 

アストレアの言う通り、ヴァレッタを殺したといえば"どうやって?"という話になるのは必然。

竜人形態になって殺しました、なんて口が裂けても言えない。

そこでアストレアからの提案はランクアップを先延ばしにして、期間の帳尻を合わせること。

幸い、偉業は作戦面で貢献しましたでいけるが経験値(エクセリア)は誤魔化さないといけない。

それに、先延ばしには他にもメリットがある。

ルシアは現状ランクアップ可能だが、偉業は達成していてもステイタスの規定値はギリギリ。

細かい部分を伸ばしてからランクアップした方が強さの質は上がる。

しかし、ルシアは。

 

「ランクアップでお願いします」

「それは、どうして?」

「例え中身(ステイタス)がスカスカでもLv.差は絶対だと今回経験した数々の戦いでよく分かりました」

「そうね」

「はい。それにアルフィアさん達に公約した迷宮完全攻略を果たすためにも、私が人類の味方で正義であると示すためにも一刻も早く強くなることは必至だと感じたためです」

「……そう」

 

ヴァレッタを倒したこと。

ザルドとアルフィアを癒し、交友関係を築いたこと。

全てアストレアには話してある。

そして、それらを経てルシア自身が望むなら。

それでいてルシアの立場を危うくしないのであれば。

アストレアは応援したい。

現状、ルシアが強くなるのは逆に良い事だ。

それは物事が上手くいかず、ルシアが人類に害と見なされた場合でも同じ。

その時、ルシアに力があるかないかで彼女の生存率は大きく変わる。

その点で、確かにLv.差の絶対的要素を考えれば、彼女のランクアップしたい理由に、アストレアも賛成だ。

そうと決まればあとは実行するのみ。

 

「わかったわ、ルシア。ランクアップしましょう」

「はい」

 

アストレアが承諾して、ルシアが背中を向けるよう前を向いて姿勢を正す。

その背中に刻まれたステイタスに触れて、アストレアはランクアップ前の最後の雑談を楽しむことにした。

 

「ふふっ。Lv.2になったらルシアにもアリーゼ達みたいに2つ名がつくわね」

「おや、それは素敵ですね。皆とお揃いは嬉しいです」

「貴女はどんな2つ名がいい?」

「そうですね……【ミノタウロス定食100人前】!とかですかね」

「本気で言ってる……?」

 

そんな微笑ましい?会話を挟んでアストレアは困惑しながらステイタス更新を始める。

手続きは簡単に済み、ランクアップもステイタス更新もあっという間に順調に進んだ。

 

 

―――――――と、思ったその瞬間。

 

 

「………………えっ?」

 

ルシアの更新されたステイタスを見て、アストレアは瞠目し、固まる。

以下がルシア・マリーン・ドラゴンの新しいステイタスである。

 

 

 

 ルシア・マリーン

 

 Lv.2

 力:I0

 耐久:I0

 器用:I0

 敏捷:I0

 魔力:I0

 

神秘:I

 

《魔法》

【アヴァロン・リビヴァル】

 詠唱:【生きる者よ、死にゆく者よ。我は其方等の生を願う、その命に咲く花を枯らさない。もし、呪われし我が身を受け入れるなら。其の身体を治そう。父の呪い、塔の呪い、龍の呪いを有した我が求める。理想を身に宿し者、我の名はマリーン。我は冠位グランドの称号を持つ者也。花の魔術よ、命を咲かせたまえ】

 効果:

 ・対象1人。

 ・全癒。

 ・状態回復。

 ・呪詛解除。

 ・異常回復。

 ・元気復元。

 ・疲労除去。

 ・一定時間、対象者を自動回復し続ける。

 ・稀に『奇跡』を起こす。

 

【ブリタニア・オブ・アヴァロン】

詠唱:【今も遠き理想郷。我は此処が理想郷。汝は何処が理想郷。我が想えば何処でも理想郷。故に我が居ればそこが理想郷。故に汝も此処が理想郷。()が忌まわしき呪いを受け入れるは正義の使者。異端たる我を受け止めるのは正義の寵愛。我を愛するは正義の心。(われ)が愛するのは正義の慈愛。愛を有する我は、友の加護を願う。正義の血統。紅い衝動。輝く月の夜。知恵を有する小躯。疾く駆ける風。その全てに包まれし我に、黒き拳と青き象の友も宿る。我が理想郷に踏み入れる者達よ。我は許す、汝の許しに感謝する。我が理想の加護を受けよ。花の魔術よ、友に永遠を与えたまえ】

効果:

・付与魔法。

・対象者(味方)は拒否できる。

・一定時間、対象者を自動回復し続ける。

・対象者に竜属性付与。

・耐熱付与。

・耐久補正。

・力補正。

・仲間のエルフの精神力(マインド)、その消耗を抑える。

 

《スキル》

正義寵愛(アストレア・ホールド)

 ・魔石が割れにくくなる。

 

冠位魔士(グランド・メイガース)

 ・治療師ヒーラーとしてある段階に達した時点で、最高位の回復魔法を超越する。

 ・死者蘇生を可能とする。

 ・回復だけでなく、修復も可能とする。尚、修復は自身には使用不可。

 ・最低でもLv.9である必要がある。

 ・あらゆる魔法を使える。

 ・精霊とのコンタクトがしやすくなる。

 

 

 

 

 

神ノ瞳眼(せんりがん)

・千里眼とも呼ぶ。

・全てを見通す。

・世界情勢の把握。

・神の力。

・予言を齎す。

・予言が十二刻に至った時、使用者が神でなければ絶命する。

 

 

 

 

 

 

 

「……?どうかしました?アストレア様―――」

 

アストレアの反応を背後で感じ取って、不思議そうに振り返るルシア。

しかし、その直後。

 

「…………っ!!」

「ルシア!!」

 

ルシアの瞳に神々しい金色が宿る。

そして。

 

 

「―――【刻、一刻】。【予言】の開始。【27階層に悪夢、来たれり】」

 

 

ルシアが壊れたブリキ人形のように首がガクッと折れて上を向く。

その口から謎の言葉が告げられる。

それは、まだ続く。

 

 

「―――【刻、二刻】。【予言】の再開。【灰色の厄災、正義の使者を食い尽くす。今は遠き森の空。友を灼き滅ぼす】」

「ルシア!戻ってきなさい!ルシア……!!」

「ハッ……」

 

ルシアの瞳の色が戻り、アストレアの訴えが届いた。

彼女は大量の汗と共に混乱した様子でアストレアを恐る恐る見る。

 

「わ、私は今、一体何を―――っ!」

「ルシア……!」

 

ルシアの瞳がまた金色を宿した。

今度は、先程とは違う。

意識は持っていかれていない。

しかし、ルシアの頭の中に何かが流れてくる。

 

 

―――それは、【()()()()()()】。

 

 

―――景色が全て、リアルタイムに、同時に、【()()】としてルシアの小さな脳みそに一気に()()()()()()()

 

 

―――その情報量は膨大。決して、人1人の脳みそでは処理し切れる量ではない。

 

 

―――結果…………………………ルシアは脳みそが割れるような激痛に見舞われた。

 

 

「うっ……あ……うっ……!」

「ルシア!」

「あっ……あっ……!ぁ……」

「ルシア!!」

 

ルシアは頭の中をほじくられてるがの如く、壊れたブリキのようにカクカクと左右に頭を揺らしたかと思うと。

白目を向き、泡を吹いたところでやっとその瞳は輝きを失った。

彼女が気を失って初めて起動(スイッチ)もオフになる。

 

そして、彼女はバタリと倒れる。

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