原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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厄災を起こす者

 

「厄災の名は、ジャガーノート……だと?」

「はい」

 

輝夜に問われ、ルシアは頷いた。

本拠に帰ってすぐ輝夜とアストレアに相談した。

2人は渋い顔をする。

 

「そして、お前はその男に最終手段としてドラゴンを使って対抗すると言ったのか?」

「はい。まあ本気ではあひまひぇんが」

「当たり前だ。バカ者め」

「痛いぃ……」

 

輝夜にゲンコツされたルシア。

頭を抑えて涙を流す彼女をアストレアも心配する。

 

「ルシア。冗談でもそんな危ない橋を渡るようなこと言って欲しくないわ?輝夜も私も貴女を心配してるのよ」

「はい。すみません。ただあの場では本当に彼との会話を切るためだけに言ったので」

「なぜ会話を切った?その男が何者か。特別な存在なら追求すべきではないのか?」

「もう彼から得られる情報はなさそうでしたし、問題かと。それと、この世の全ての謎や重要人物を明かす必要はないと思います。大事なのは目的を達すること。目的と手段を履き違えてはいけません」

 

人生とは、世界救済とは、正義執行とは、謎解きゲームではない。

ルシアはそう述べる。

大事なのは結果で、やるべきはより良い結果に結びつけることだ。

あれもこれも暴いて寄り道する必要はない。

 

「私達は物語の人物ではありません。消費者の為に全て紐解いて楽しませる必要はないかと」

「なるほど。一理ある。お前はそうやって無駄をなくして問題解決に導いてきたわけか」

「そうですね。王の好みがそれだったというのもありますが」

 

ルシアの話を聞いて、輝夜は彼女が結果至上主義の王の元で働いてたのだなと理解できた。

だが、そんな話はいい。

本題に戻る。

 

「とにかくそのジャガーなんたらを倒さねばならん。でなければ我々の生きる道はない」

「いえ、あります」

「何?」

 

まさかの否定に輝夜が思わずルシアを見る。

ルシアは視線を返して、フェルズと名乗った男の言葉を思い出した。

 

「彼はその怪物を倒せないと言っていました。実際に倒すことが可能かは置いといて、彼が話した厄災の概要から察するに、ダンジョンはその怪物が倒されることを想定した仕組み(プログラミング)を施してないのかもしれません」

 

つまり、倒すことを想定して創られていないと。

ルシアはそう言う。

大前提として倒されないように生み出されているのなら、そっちの攻略に躍起になる方が苦労(コスト)がかかる。

 

「もちろん倒せるのが1番ですが、害虫駆除の為に作動したそれが用途的に倒しにくいように造られていると言うならば、まず最初は考えるのは倒すことではなく『生み出されることを阻止』することです」

「……なるほど。"発生"の方の原因を探り、未然に防ぐわけか」

「はい」

「そうね。ルシアの言う通り、そっちの方が合理的ね」

 

ルシアの言うことに2人は同意する。

しかし。

 

「ルシア。お前の言うことは正しい。肝心のその原因がわからんということ以外はな」

「そうですね。ただ予測はできるかと。【アストレア・ファミリア】がダンジョンを著しく傷つける場面に出くわすとすれば、正義を執行する時。つまり」

「……闇派閥を追い、ダンジョンまで逃げ込まれた際に罠を仕掛けられている時か」

「そういうことです。闇派閥の現状の戦力で階層を破壊できるとは考えにくい。となると何かしらのやり方で事を起こすでしょう」

「ならまずは相手を特定したいわね」

「はい。それだけの事を何かしらの方法で起こすなら"準備期間"があるはず。1番はその段階の際に特定し、叩くことです」

「その時の敵か……候補が多すぎるが」

「最近活発になっている闇派閥の調査と、アリーゼ団長が次に目を付ける悪党を彼女の思考パターンから導き出すしかありませんね」

 

一気に建設的に話が進む。

ルシアがいるとこうも回転が早い。

とはいえ、まだこれからやることは山積みだ。

 

「相手の特定から始めなくては……と、本来なら言うところだが、お前のその口ぶり。まさかもう大体の目測はついているな?」

「はい。全ての条件に合致するのは現状1つの派閥」

 

ルシアは1拍置いて、告げる。

 

「【ルドラ・ファミリア】です」

 

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