「は?」
「だから、おれの妹が…」
「いやそれは分かったから………え何?深刻そうな雰囲気して話がしたいってこんな人気のない場所に呼びだしといて、いきなりあたしになんの相談してんの?」
「妹がⅤtuberだったって話」
「それは分かったつーの! っていうかあたしあんたに妹がいることすら初めて知ったんだけど」
「頼むよ!相談できる相手なんてお前しかいないんだ!」
「聞けよ……というかあんた普通に友達いるじゃん、高橋とか」
「いや、あいつはだめだ話にならない」
「なんでよ結構いいやつじゃない、クラスでも人気者らしいし……私は一ミリも興味ないけど」
「あいつに頼むぐらいなら死んだ方がマシだ」
「辛辣過ぎない?なんでそんなに敵視してんの」
「……この前のことなんだけどな」
「うん」
「妹と一緒に買い物してたら偶然、高橋が同じ店に来てな」
「…うん」
「俺とは普通に話してたんだが、妹を見る目が明らかに血走っていて」
「……」
「しかもあいつの性癖がどうやら噂によるとロリコ……」
「おーけー良く理解したわ、よくあたしに相談したわ英断よ」
「まああんな奴のことはいいんだ。最悪妹に手をかける前に俺がこの手で……」
「何をするかは聞かないでおくわ」
「警察に通報してやる……!」
「思ったよりまともだった。……というか何でよりによって相談するのがあたしなの?」
「いや、女子で仲いいのお前しかいないし」
「ああ…そういえばそうだったわね」
「そんなことはどうでもいいんだ!なあおれはいったいどうすればいい?」
「いやだから妹がⅤtuberだからって何が問題なのよ、世間的に恥ずかしいっってこと? けどそれならその妹ちゃんの好きなことをさせるのがよき家族ってもんじゃない?」
「いやⅤtuberって知ったときは驚いたけどむしろ嬉しかったんだ」
「嬉しかった?」
「ああ、妹は前まで引っ込み思案で友達がいなくて学校でも孤立気味だったらしいんだ」
「一時期は学校に行かなくなって引きこもるようにもなったし」
「俺含めて家族もどうしたらいいか分かんなくて」
「どうすればいいか慣れないパソコンで調べているときに」
「慣れない?」
「ああ、おれと親二人ともめっちゃ機械音痴なんだよね、だから高校生までスマホもパソコンも持ったことないんだぜ?今は結構わかってきたけど」
「マジ?そういえばあんたがスマホいじってるとこ見たことないかも、っとごめん遮った、続けて?」
「別にいいぜ、それになんかシリアスっぽくなると腹が減る」
「何故に」
「さあ?俺の体の55不思議の中の一つ」
「多すぎじゃない?」
「ちなみに一番不思議なのは朝起きると必ず2度寝したくなる」
「それは誰でもそう」
「……なんの話だっけ?」
「パソコンで調べているときに」
「ああそうだ、俺あの時何を思ったのかパソコンをあげてみようって考えたんだ」
「パソコン自体を」
「そう、ネットって色々溢れてるらしいし、俺でもYouTubeぐらいは時々見てたからなんか刺激になるかなって」
「妹ちゃんは機械音痴じゃなかったの?」
「どうやらそうだったらしい、それどころか説明書渡したら一瞬で使いこなしてたよ」
「それでさその時からだんだんと妹の目が輝いていってさ」
「まだ引きこもってたけど飯は一緒に食ってネットで見つけた面白いことを自分から話し始めたんだ」
「で、ある日いきなり学校にまた通い始めたんだ」
「理由を聞いたらやりたいことが出来たって言うんだ」
「そん時は知らなかったけど親にお願いしてⅤtuberになりたいって言ったらしい」
「それは……なかなかハードなお願いね」
「だろ?始めるだけでウン十万かかるって後から知ったときは飛び跳ねたよ」
「よく両親がOKしたわね」
「まあⅤtuberが何なのか知らないけどもともと妹にやりたいことはさせるつもりだった、って親父が笑って言ってたよ……財布を見て顔が引きつってたけど」
「そりゃそうでしょうね」
「ちなみに母親はその財布から中身をむしり取って投げ捨ててた」
「ひどい」
「まあその代わりちゃんと学校には毎日行くようにって交換条件だったけど……妹はむしろちょうどいいかもって言ってたよ」
「どういうこと?」
「そもそも妹がⅤtuberになりたかったのはどうやらおし?ってのに励まされてその姿に憧れたからだって」
「ああ推しね」
「妹が言うには数十人しか見てない配信だったけど、コメントで相談したら真摯に向き合ってくれたらしい」
「へー、いいやつじゃない」
「例えば学校で友達がいないことを相談したら『学校なんて社会の縮図よ、はみ出し者は弾かれるけども上手いこと同調しとけばなんかいい感じに輪に入れるのよ』とか」
「なんか適当じゃない?」
「『どうせ死んだらすべて消え去るんだから今のうちにやりたいことではしゃいでおけばいいのよ、例えば嫌いな奴の靴の中にローションとか塗りたくったら面白くない?』とか」
「……ん?」
「『というか何で私が配信してんのにこんなに見てる数が少ないのよ、やっぱり手っ取り早く稼げるってのは噓だったみたいねー』とか」
「…………」
「他にも……ってどうしたんだ黙りこくって」
「……いや別に、……ねえ」
「うん?」
「ちなみになんだけど……その妹ちゃんが学校に行き始めたのっていつぐらいの話?」
「そうだなあ……確かあいつが10歳の時だったからちょうど3年前ぐらいだった気がする、その時にⅤtuberも始めてたらしいし」
「……えちょっと待って10歳!? ……ってことは小4!?小4でⅤtuber!?まってまって情報が多い!」
「なんだよ、今時小学生でも不登校になるやつはいるぞ?」
「そっちじゃねーよ!!えまって本当によく親が許したね!?」
「うちの親けっこう英語とか話せてグローバルだから」
「関係ねーよ?」
「まあそんなこんなで無事に妹も小学生に通いだして、来年にはもう中学1年生だぜ、大きくなるのは早えなあ」
「しみじみと言われても情報量についていけてないんですが」
「で、問題はここからでな?」
「はは~ん、お前さては人の話聞かないタイプだな?」
「いや実はさ、ここまで話しといてなんだけどさ……」
「なによ口ごもっちゃって、はあ、どうせここまで聞いたんだから何でも聞いてやるわ」
「え?今なんでもって」
「言ってない、ふざけるなら帰るが?」
「ああ待って!言う、言うから!」
「さっさと言いなさいよあんたはこの後部活があるでしょうに」
「今日は先生が昨日奥さんに離婚されたらしくて落ち込んでるから休みだぞ」
「ああもう話が進まないから無視!妹の話を続けて!」
「実は俺が妹がⅤtuberって知ったのって最近のことなんだよね」
「口ぶりから何となくそうだとは思ってたけど……最近っていつぐらい?」
「昨日」
「昨日!?」
「うん」
「さっき3年前からⅤtuber始めてたって言ってたわよね?」
「まさかそんな昔からやってるなんて全然気づかなかったぜ」
「隠し通した妹が凄いのかあんたが鈍いのか」
「確かによくよく考えてみたら毎日妹の部屋から『今日もみんなきてくれてありがと~、チャンネル登録もよければしてね♪』って聞こえてた気がする……!」
「後者だったわ」
「そういえばほかにも『今日も配信やってくよ~!』とか『スパチャありがと~~!』って言ってたような」
「訂正あんたは鈍いんじゃなくてただのバカ、……というか逆にどうやって気づいたのよ」
「いやあ妹に充電器貸してもらおうと思って部屋の前でノックしたんだけど返事がなくて」
「何となくオチが見えた」
「入ったらヘッドホンしてなんか画面の前で喋ってたんだよね。んで何やってんの?って後ろから声かけた椅子からどんがらがしゃごんって滑り落ちて」
「どんがらがしゃごん」
「それで画面が目に入ったから見てみたらなんかロリっぽいかわいい女の子が上を向きながら口開けてかたまってたんだよね」
「Ⅴtuberあるある」
「それで俺はピンときたね妹はⅤtuberだと」
「わかった風な顔してるけど気づける点はもっと前にたくさんあったからね?」
「そして椅子から転げ落ちた妹が慌てて配信を切って」
「ちょっとそれ配信は大丈夫だったの?」
「ちょうど始まる前の準備中だったからセーフ…!って冷や汗たらしながら言ってた」
「間一髪ね、家族が配信中に入ってくるとか放送事故以外の何物でもないからね」
「ああ俺も妹に怒られたよ、『こらっ!勝手に部屋に入っちゃダメでしょ』って」
「優しい」
「うん俺の妹は世界一優しくてかわいいから」
「聞いてない」
「……まあそんな感じで昨日妹がⅤtuberだってことを知って親にもいろいろ聞いたんだ」
「ということは知らなかったのはあんただけってことね」
「まったく教えてくれてもよかったのに」
「普通は気づくもんだけど」
「で問題はここからでな?」
「二度目」
「妹の過去の配信があるらしいからこっそり見てみたんだよ」
「アーカイブね」
「ちなみにこれが妹のチャンネルね」
「……ねえ待って私この子知ってるんだけど」
「そうか?よくわかんないけど妹が言うには登録者も結構いるみたいなんだけど」
「Ⅴtuberの個人勢で50万以上登録者行ってたらとんでもないわよ、というかロリ系ではあったけどまさかモノホンのロリだとは」
「そうか?別に小学生のⅤtuberぐらい珍しくないだろ?俺も昨日いろいろ調べてみた感じ小学生みたいな奴はめっちゃいたし、中には幼稚園児とかもいたけど」
「いやそれはせって……げふんげふん、いややっぱ何でもないわ」
「そうか?それでそのアーカイブってのを確認してみたらさ」
「あ、まって分かったかも」
「妹が配信中におれの話ばっかしてるんだよなぁ」
「あぁ……」
「いや確かにうちは結構仲がいい方だとは思うけど普通ぐらいだとおもってたんだよね」
「この前まで一緒にお風呂入ってたもんね」
「えまってお前なんで知ってんの」
「配信で妹ちゃんが言ってた」
「ぐふっ、知ってるやつに言われるのってなかなかのダメージ、つかよく分かんないけどそういうのって炎上とかしないのか?」
「3年前からずっとそんな感じだったからリスナーはみんな知ってるのよ」
「初期から!?え、ていうかお前はそんな前から知ってたのか!?」
「ええこれでも最初の配信から見てる古参勢12人のうちの一人よ」
「えぇ……」
「ちなみにその12人は神話にあやかってオリュンポス12神と言われてるわ」
「どこかで聞いたことあるような」
「気のせいよ……それであなたはどうしたい訳?」
「どうしたいっていうと?」
「だから配信で言われるのが嫌なんだったら妹ちゃんにちゃんと伝えるとかした方がいいんじゃないってこと」
「いや別に配信で言われるのはちょっと恥ずかしいけど嫌とかではないんだ」
「じゃあ何が問題なの?」
「理性」
「は?」
「自分の理性がやばい」
「ごめん理解できない」
「いやさ妹が配信で俺のことを話すとめっちゃ愛でたくなるんだよね、具体的には頭をめちゃくちゃなでなでしてあげたい」
「ああそういうことね…、やってあげればいいじゃん、妹ちゃんも喜ぶんじゃないの?」
「だけどもし配信ライブ中に俺のこと褒められたらそのまま部屋に突撃してしまうんじゃないかって」
「放送事故再び」
「ただでさえ昨日過去のアーカイブを見た後に妹(の頭)を撫でまわしたのに配信中となったらもう自分が抑えられる気がしない」
「そこだけ聞くと完全に事案なんだけど」
「なあおれはどうしたらいいんだ!?」
「配信見なければいいんじゃない?」
「死ねと!?」
「めんどくせぇ…」
「今までは知らなかったから大丈夫だったが知ってしまった今、妹の配信を見のがすわけにはいかない!」
「はあ、だったらもういっそのことあんたもⅤtuberになったら?」
「!」
「あんたもⅤtuberになった一緒に配信もできるかもだし、機械音痴だっていうなら妹ちゃんに手伝ってもらえばいいんじゃない?」
「!! ……だ、だけどおれみたいに平凡な奴がⅤtuberなんかになれるわけが……」
「いやあたしあんた以上にこんな現実でキャラ立ってるやつ見たことないんだけど」
「おれのどこがキャラが立てるんだよ?」
「あんた髪の色きれいなプラチナブロンドよね」
「ああ、母親がフィンランド系だからなただの遺伝だろ?」
「口調が完全に男の喋り方よね?」
「それは幼いころ海外に居てあんま家に親父がいなくて母親に日本語教えてもらったらクセになっちゃって」
「男の子たちとよくつるむわよね?」
「いやなんか男と遊ぶ方が楽しいからよくつるんでたら気づいたらなんか女子からめっちゃ嫌われてて……」
「あんた高橋君を狙ってる女子の中であることないこと陰口されているらしいわよ」
「えぇー……でもあいつの家めっちゃいろんなゲームあるんだよなあ」
「ちなみに陰口の一つには家でやってる尻軽ビッチだって」
「どういう意味?」
「知らなくていいことよ、まあそんなことは置いといてどう?あなた以上にキャラが立ってるやつがこの学校にいる?」
「いやわかんないけど」
「それに妹ちゃんとも配信でゲームとかできたら面白そうじゃない?つーか私が見たい」
「本音出てない?」
「それにね妹ちゃんぐらいの登録者のⅤtuberとなるとだいたい年収がごにょごにょ……」
「やります」
「目が一万円札に」
「よし!とりあえず家に帰って親とか妹にⅤtuberになりたいって言ってくる!ありがとう!」
「いやあくまでこれはかなり上のⅤtuberの年収であってそんなすぐには…………行っちゃった」
「……まああたしも白蛍ちゃんのお姉ちゃんとの配信見てみたかったけど……、まさかあいつがねえ……」
「ていうかあの時相談に来てくれたのがまさか推しの白蛍ちゃんだなんて……世界って案外狭い」
「……ん?あ、やべ電話来てた ……はいもしもしマネちゃん?……はい、はい、そうですねこれから100万人記念配信の準備を帰ってからしたいと思ってます。……はい?来週の日曜ですか?……大丈夫です、え?全然ため息なんてついてないですよ、忙しすぎて会社爆破してやろうとか全然思ってないですから……はい、はい……それじゃお疲れ様でーす」
「はあ……帰ったら推しの配信見よ」