ここだけマダラがイザナギに失敗死亡して未来転生、アスマと大親友になった世界(完) 作:EKAWARI
今回も前回に続きイタチ視点書き下ろし番外編です。
あと一回だけ続くのじゃ。
ゴガクさんが家に来たのは、ご家族のお葬式を上げた2日後のことだった。
「お、お邪魔します」
お葬式が済んだゴガクさんはまるで借りてきた猫みたいにソワソワと落ち着きがなく、肩身が狭そうにガチガチと緊張している。
そんなゴガクさんを見て、ふと母さんが言った言葉が脳裏をよぎる。
『ええ……ゴガクくんなら大歓迎よ。イタチのお兄ちゃんになってあげてね』
そうだ、オレはこれからこの人と家族として暮らすのだ。
なら、ゴガクさん、って呼び方は適切ではないな。
……ゴガク叔父さん?
いや確かに彼は父の従兄弟だし、続柄的には親戚の叔父さんといって間違いでは無いけれど、彼はまだ10代前半の少年だ。流石に未成年を相手に叔父さん呼びするのは気が引ける。
(なら……兄さん、かな)
母も言っていたじゃないか、お兄ちゃんになってあげてね、と。
なら、それでいいか。
「ゴガク兄さん」
そう思ったオレが彼を呼ぶと、ゴガク兄さんは吃驚したように眼を見開き、パチパチと瞬きを繰り返す。
「おじゃまします、じゃないでしょう。これからはゴガク兄さんの家でもあるんだから」
そのオレの言葉にどう思ったのか、はよくわからない。
ただ、それはゴガク兄さんにとっては多分嬉しい言葉だったのだろう、と思う。
彼はジワジワと耳から頬まで赤く染めて、やがてクシャリと顔を歪めると、破顔して「……ただいま」と泣きそうな声で言った。
「おかえりなさい」
そして手を繋いで居間まで歩く。
ちょっと不思議な気分だった。
別に、今まで兄が欲しいと思ったことは特には無かったけれど、ゴガクさんは意外にも小さな子と手を繋いで歩くことになれているのか、歩調をオレに合わせ、嬉しそうに笑う。なんだかそんな風に嬉しそうに笑われると、オレも嬉しくなってきて、兄とはこんな感じなのかなとそう思う。
「あ、ゴガクくん、いらっしゃい。ご飯今用意しているからちょっと待っててね」
母は味噌汁をかき混ぜながら、いつも通りの調子で振り返りそう声をかける。
そんな母を見てゴガク兄さんは「いえ、ミコトさん手伝いますよ」と袖を捲って、とても慣れた調子で台所に向かう。
「いいのよ、そんなこと」
「いや、これからオレも家族として一緒に暮らすんですよね、ならやらせてください」
「……わかったわ」
そう言って母はにっこりと笑う。
ゴガク兄さんは実際日々の家事に慣れていたのだろう。とてもテキパキとした調子で母の指示通り動き、綺麗に寸分の狂いも無く料理を皿に盛り付け、運ぶ。
「驚いたわ、慣れているのね」
まさか10代前半の少年が家事慣れしているとは思ってなかったからだろう、母がちょっと吃驚したような調子で感嘆混じりに褒めると、ゴガク兄さんは「うちは母さんがいなかったから」とちょっと困ったように頬をかいた。
それからゴガク兄さんもうちで暮らすようになった。
……とは言っても、時は第三次忍界大戦中だったし、この前の戦での功績で推薦が貰えたのか、ゴガク兄さんは上忍に昇格し、益々忙しくなったようで、あまり家に戻ってこれる日はそう多くはなかったし、顔を合わせるのは多くても週に1度か2度……下手すると数ヶ月会わない事も珍しくは無い。
それでも家にいるときのゴガク兄さんは、積極的に母の家事を手伝い、母と一緒に台所で並んで料理を作る事も珍しくは無かった。
「ゴガクくんは本当に料理上手ね」
「へへっ、イタチ美味いか?」
「うん、うまいよ」
照れて、得意げにする少年の笑顔が特徴的だった。
そんな顔を見る度、よかったなと、そう思う。
一度は冷たく昏い空気を纏ってたこの人が、段々と元の明るさを取り戻していくのが嬉しくて、オレはもう一度「うまいよ」と口にして、この人の手作りだという稲荷寿司を口にする。ちょっと甘めのそれはとても繊細で優しい味がした。
そしてオレが4歳の時に第三次忍界大戦は終わりを告げた。
その間、色々あった。
父に社会勉強として、戦場の跡地に連れて行かれたこともあった。
「イタチ、よく見ておきなさい」
そうしてまざまざと見せられた戦争の爪痕に、ジクジクと胸が痛む。
(どうして人は争い合うんだろう)
痛み苦しみ、恨み、辛み。
戦場には負の念が満ち満ちている。
里に帰る途中で見た人々の恨みが籠もった眼差し。戦争の被害者である彼らには碌な保証すらないのだ。これが戦争が生み出したもの……平和が欲しいと、切実に思った。
だから、大戦が終結したと聞いたときはほっとした。
けれど、これで終わりなわけがない、寧ろ始まりだ。
平和とは努力して得るものだ、これが永遠に続くなんて、そんなわけがない。
だからこそ、戦争が終わり、以前ほどの忙しさから解放されたゴガク兄さんに「修行を見てやる」と言われたのは、オレにとって僥倖以外の何物でも無かった。
「火遁、豪火球の術!」
まずは見本だと、放たれたそれはとても見本とは言えない大きさの豪火だった。囂々と燃え上がる炎は湖全体を覆うように広がり、球なんて可愛い代物ではないことは誰の目にも明白だった。
それを見てゴガク兄さんは、「あ、ヤベやりすぎた」と顔にかいて、ごほん、咳払いをしたあと今度はチャクラ量を調節してもう一度豪火球の術を放つ。
すると今度は綺麗にお手本という名に恥じぬ大きさの豪火球が湖の上に現われた。
「これが豪火球の術だ。うちはの基本忍術でもある。うちはは火を扱う一族だ。これを出せるようになってうちはの人間は一人前と認められる。とはいえ、砂利のうちは身体エネルギーが未熟故に扱いは難しい。うちはは隠遁に適正がある分精神エネルギーは成長が早いが、それも個人差があるしな。とにかく、やってみろ」
そういって、丁寧に必要な印をゆっくりと再現して見せてくれる。
特に苦も無く一度で手順を覚える。そしてオレは、言われたとおり、湖に向かって「火遁、豪火球の術」と寅の印を組んで術を発動した。
果たして豪火球の術は……出た。
ゴガク兄さんの出したそれに比べると一回りほどは小さかったが、これはチャクラ量の問題だろう。お手本をなぞるように、綺麗に発動している。
それを見て、ゴガク兄さんは「ハハ……イタチ、お前こんなに小っちェえのにチャクラコントロールすげェな?」と吃驚したように感嘆の声を漏らすと、オレの脇に両腕を突っ込んで持ち上げ、ぐるんぐるんしながら「さっすがオレの弟だ! お前は天才だな、イタチ!!」そう言って楽しそうに笑って回った。
それからも色んな術や知識を教えて貰った。
時には一緒に狩りに行く事もあった。
ゴガク兄さんの鷹の口寄せが羨ましくなって、こっそりと烏と口寄せ契約を結んだときはいっぱつでバレて、「へえ~?」とニヤニヤ笑ってきたので、恥ずかしくなって、ベシベシ叩くと、「そんな照れるなよ、いいんじゃねェか? 烏、よく似合ってるぜ?」そう言って慣れた手つきでオレの頭を撫でる。
それにああ、本当にこの人はオレの兄さんをやっているんだなとそう思ったことを覚えている。
そんな日々は悪くはなかった。
けれど、そんな日々も終わりが訪れる。
切っ掛けは母さんが
そのくらいから、ゴガク兄さんはいつまでもこの家に居座っているわけにはいかないだろうと、考え始めたらしかった。
それにこの家で暮らし始めた頃のゴガク兄さんは精神的に不安定な事も多かったけど、この頃には大分安定していたし、時々垣間見えた危うさや昏さも随分と鳴りを潜めていた。年齢的にも忍びの子としてはとうに独り立ちしてておかしくない年齢なのだ。
それを思えばちょっとした寂しさはあっても、この巣立ちは必然に思えた。なにより、オレもまた兄になれる事は嬉しくも楽しみだった。
ゴガク兄さんに弟として扱われる度、オレも弟や妹が欲しくなってしまったのだ。だから、母のお腹の中にいるという弟と会える日が待ち遠しくて仕方なかった。
「……今までありがとうございました」
そうしてオレの5歳の誕生日を祝った後、サスケが生まれる前にゴガク兄さんは生家に戻っていく事になった。
「寂しくなるわね」
と母が言った。
「そうですね」
とオレが答えた。
そうすると母は「もう、なんて顔してるの。たとえ離れたとしても、ゴガクくんはイタチのお兄ちゃんでしょ。今度会ったら思いっきり甘えてあげなさい」と母はオレの背を叩きながらそんなことを言ってきたけど、それでもケジメはつけるべきだと思った。オレはこれからサスケの兄になるのだから。
次に会ったときに「ゴガクさん」と呼ぶとゴガクさんは、一瞬悲しげな顔を浮かべたが、次に仕方ないなって顔をして「困ったことがあったらいつでも呼べよ」とオレの頭をくしゃりと優しく撫でて笑った。
だからだろう、四代目に言われた時この人を連想したのは。
第三次忍界大戦が終結して約8年が過ぎた年の事だ。
オレの親友、うちはシスイが死んだのは。
続く
今回の話の元ネタ↓(以下元スレコピペ)
二次元好きの匿名さん
イタチがゴガクの鷹の口寄せをみて烏の口寄せに決めてたら可愛いし、何ならサスケもイタチを憎んでないしゴガクに修行つけてもらってるから口寄せが鳥類になってるかもしれんな。
このスレだったら、ゴガクが大戦から帰ってきた後、フガク一家と同居してた時期があるだろうし、サスケが生まれるまでは兄弟に憧れてイタチがゴガク兄さんって呼んでたけどサスケが生まれてお兄ちゃんしようとした結果さん呼びに変わったりってエピソードがありそう。
ここのイタチさんはシスイさんこそ失ったけど両親も兄貴分も生きてるしサスケに憎まれてもないから原作に比べて大分精神的に余裕がありそう