ここだけマダラがイザナギに失敗死亡して未来転生、アスマと大親友になった世界(完) 作:EKAWARI
今回で書き下ろしイタチさん視点番外編終了です。
別名この世界版うちはクーデター編。
次回からまたゴガク視点の本編に戻ります。
オレが事態を知ったのは、四代目火影波風ミナトの直属である暗部に入隊してからの事だった。
否、それは正確ではない。
中忍であるオレには前提の部分が伏せられていただけで、会合での主張や言動から予測は出来ていたのだから、確信が与えられたのが暗部に入って四代目自身から九尾事件の時の詳細を聞かされてから、といった方が正しいか。
九尾事件以来、うちは内部は二つに分れていた。
多少の不満があるが、それでも自身が不利益を被ってもうちはを庇った四代目を信じようという派閥と、そもそも写輪眼を持っているというだけで九尾事件の犯人扱いした上層部がどうしても許せない! うちはこそが木ノ葉のトップに立つべきではないか、その力もあると驕った派閥だ。
数としては前者の方が多いし、族長である父も前者だ。
だが、父は族長としてあくまでも公平に、前者のほうが一族全体の意思だとして尊重している姿勢であったし、後者に関してはどうも誰かの入れ知恵によって煽られている節もあった。
(……ダンゾウ、か)
そしてオレが暗部に属した頃から、彼らタカ派は明らかに外国誘致罪と呼ぶべきか、他国の手まで借りて木ノ葉にクーデターを起こし、地位を簒奪せんとしている事が判明した。
たとえ未遂でもこれが決行されたらどうなるのか……内紛のはじまりだ。否、それにつけ込んだ諸外国の手によって再び忍界大戦が起こるやもしれない。それはなんとしてでも避けたい。
「オレに任せてくれ」
そこでそう声を上げたのが、シスイだ。
瞬身のシスイの名で知られるうちはシスイは、万華鏡写輪眼を開眼しており、その眼……
タカ派を名乗る彼らはうちはの恥だ。同族の汚名は同族で雪ぐべきであり、別天神を使って彼らタカ派連中全ての認識を書き換えクーデターを止めてやると、そう決意し、苦渋の判断ながらも四代目も許可を出した……その直後だった。
ダンゾウに騙し討ちにされ、シスイの片目が奪われたのは。
そしてシスイはもう片方の眼をオレに託し、「一族と里を頼む」とそう告げて死んでいった。
シスイの死がまるで条件だったかのように、オレの万華鏡写輪眼も開く。もしかしたらアイツのことだ、開眼条件を知っており、オレに力を託すためにわざと目の前で死ぬことにしたのかもしれない。
そんな苦い気持ちを抱えながらも、オレは全てを四代目に報告した。
「そうか……」
オレと同じく苦い顔をしながら、四代目はため息を一つつく。
「すまなかったね、イタチ。オレの力が足りないばかりに君達には面倒ばかりかける……」
「いえ……四代目様のせいではありません」
心底落ち込んでいるように見える四代目……波風ミナトだったが、大戦の英雄でもある彼は切り替えもまた早い。「ん……ダンゾウ様が絡んでいるとなると、うかうかしていられないかな」それからシスイの死に関しては証拠がないからダンゾウを追い詰めることは出来ないことを謝罪される。
「これからの事を考えよう」
そういってうちは一族一人一人に至るまで詳細を調べ、報告し、根のほうにも探りを入れ、ダンゾウがいつ動くのかの目処をつけた四代目は、オレにタカ派連中の抹殺を命じた。
シスイの言葉ではないが、同族の汚名は同族の手で雪ぐのだ、ダンゾウが余計な事をするより前に。
それが四代目の決定だった。
「すまないね、イタチ……」
決行二日前に四代目は再び謝る。
オレは裏切り者であるタカ派連中を始末した後、暁と呼ばれている犯罪者で出来た組織にそのまま潜入しスパイとして情報を集めることとなっていた。君ほどの実力者にしか任せられない仕事だと、四代目は言った。それでもオレだけに全てを押しつけているようで心苦しいらしい。
……『陰から平和を支える名もなき者』それが本当の忍びだ、オレはシスイにそう教わった。
オレ一人の犠牲で木ノ葉の平和が守れるのならば安いものだ、気にしなくてもいいのに。だが、里の忍び全てを我が子と思えるからこそ、この人は火影なのだろう。
「イタチ、暫くは無理だけど……時期が来たら呼び戻す。だからその時はちゃんと戻っておいで」
どうやらオレの戻れる場所もちゃんと用意するつもりらしい。甘いことだ、いやそれとも用意周到なのか。この火影は若いながらもやり手だ、いつまでもダンゾウの好きにさせるつもりはないと、そういうことなのだろう。
「……はい」
「ん、良い子だ。それとイタチ、四代目火影の名において許可を与える」
里抜けする前に一人だけ、この任を明かして良いと、自分に何かあった時の為頼る相手を選びなさいとそう四代目は優しい顔で告げた。
その時、脳裏をよぎったのはオレを実の弟のように可愛がる従叔父の姿だった。
うちはゴガク。
エリートと呼ばれるうちは一族きっての手練れで、二つ名は獄炎のゴガク。
三代目火影猿飛ヒルゼンの息子アスマを親友と呼ぶ里の上忍師。
うちは一族の人間ではあるが、警務部隊とは距離が有り、以前オレが『ゴガクさんは警務部隊には入らないんですか?』と尋ねた時は、『オレには向いてねェよ』と苦い顔で否定していたが、知っている。
警務部隊の制服を見る度に、よく知るものでないとわからないほどに微かに眉を顰めていた事を。……おそらく、警務部隊に所属していた父兄の死を連想してしまうから、苦手なのだろうとそれを見て思ったものだ。父がゴガクさんに警務部隊に入るよう勧めないのも同じ理由だろう。
だから彼は上忍師として里に貢献する道を選んでいるし、他の一族のものよりはフラットな立場でものを見れるだろう。
父に話す事も一瞬考えたが……父は駄目だ。
オレの父フガクは、オレの父である以前にうちはの族長で有り、そうあらんとしている。ならば、言えるわけがない。里と一族の板挟みになった時きっと父は一族を取る。
だが、ゴガクさんなら、火影の息子を親友と呼ぶあの人なら万が一でも里を裏切る事はないだろうし、サスケの事も気にかけてくれるだろうとそう思った。
だからその旨を四代目に告げると「そうだね……彼なら或いは……」そう言いながら表情を曇らせる。
「こういう時……オビトがいてくれてたらな……」
「オビトさん、ですか。確かカカシさんと共に貴方の部下だったと」
「良い子だったんだよ。オレと同じ夢を見てて、一生懸命で……オレの跡を継いでくれたらどんなによかったか……まあでも言っても仕方ない事だけどね」
確かゴガクとも同期だった筈だよ、と苦笑して四代目は言った。
そこですうと四代目は火影の顔に戻し、表情筋も引き締め、「イタチ、頼んだよ」と厳かにそう告げた。
* * *
「うぐ……お前、イタ」
ザシュ。
口元を塞いで一撃で頸動脈を断ち切る。
崩れ落ちる体を音を立てぬように落とし、そしてその眼から写輪眼を回収し、次に向かう。
……これもまた、四代目の指令だった。
一族抹殺レベルのやらかしなら未だしも、ただ、同族を殺して回って里抜けしただけではS級犯罪者に指定され、暁に潜入出来るかはわからない。
だから、眼を奪う事によって残虐さを宣伝すると共に、眼欲しさに同族を殺して回ったという欲深さを演出する、というのもあるが……一番は、仮面の男とダンゾウ対策だ。
うちはの敷地内に度々潜入している仮面の男がいることは知っていた。
四代目に報告した所、その男が九尾事件の犯人である可能性が高い事も。そしてダンゾウもそうだが、彼らこそが最も写輪眼を欲していた事に違いは無い。
シスイの話を聞いて気付いていた。
どうやってダンゾウがシスイを騙し討ちにしたのか、その手段はおそらくイザナギだ。
イザナギ、それは失明と引き換えに運命を書き換えるうちはの秘術。これを多用するつもりなら写輪眼はいくらあっても足りないと言うことは無いだろう。
ダンゾウはうちはマダラの恐怖を知っている世代だ。木ノ葉を奴なりに守ろうとしている事や、その為にうちはを危険視している部分もあるのだろうが、しかし……そんなもののためにタカ派を煽り、明確な里の裏切り者として、一族族滅の口実に繋がるよう裏で画策してたことは許せることだろうか。
だが、それはオレが口を出す問題ではないことも事実だ。
四代目は言った。
今夜抹殺する予定のタカ派連中から写輪眼は回収してくれ、と。その上でその写輪眼をどうするかはイタチ、君に任せると。
だからオレは決めていた。
シスイの眼と、あとは暁加入の手土産用に一組だけ残し、あとは全て燃やし尽くすと。
踊らされていることにも気付いていない哀れな連中だ。
彼らも死んだ後まで利用されることはないだろう。
そして淡々と任を果たし、オレは里を抜けた。
予定通り暁に所属した。
その時、再びあの仮面の男にも出会った。その時に牽制した。木ノ葉に手を出すなと、約束するならこの写輪眼をくれてやると。
男にとってオレは目の上のたんこぶなのだろう、鬱陶しそうにしながらも了解して写輪眼を受け取った。
そして時は流れる。
いくつもの任を熟した。この手はいくつもの血で塗れている。お世辞にも綺麗な道を歩いてきたとはいえない。それでもよかったんだ、オレは。それで戦争が起きないなら、平和が守れるのならそれでよかった。
そうして月を見上げたり、野山に咲く花を見るときにサスケを思い出す。
あの子は、弟は大きくなっただろうか。どう過ごしているだろう、苦しい思いはしていないか。
いつだって心配は尽きない。でもあの人が『任せろ』とそう言っていたから、きっとサスケは心配ないんだとそう思えた。
そんな中届いた訃報、大蛇丸によって起こされた木ノ葉崩しによって四代目が死んだとそう聞いた。
戻っておいでと微笑む里長の姿が脳裏に浮かぶ。
四代目、あなたは優しい人だった。
(戻れるわけがない)
陰から平和を支える名もなき者……それこそが本当の忍びだ。それがわかっていたら別に何も怖くはない。
父さんや母さんに会いたくないわけではない、サスケに会いたいとも強く思う。
それでもオレが戻るのは、違うのではないか。
今更の話だ。
オレはここから、外から木ノ葉を守る。
そう思いながらも、四代目が亡くなったのならば、引き継ぎをしなければいけない。もしもオレに何かあったときはこれをと四代目に託されていた文を隠し持ち、暁としての活動を装って里へと足を踏み入れる。本当にナルトくんを連れて行くつもりはなかったので、守り役が自来也様であることに、寧ろ助かったとすら思った。この人が相手なら堂々と任務失敗の言い訳に出来る。
5年ぶりの弟はとても元気そうで、安心した。きっと周囲からの愛を受けて、幸せに育ったのだろう。
サスケが無事なら、何も悔いは無い。
生きていてくれるのなら、それで十分だ。
……あの人には会わなかった。それでも烏に密書を託し、あの人の鷹の元に飛ばす。あの人ならそれだけで理由を察してくれることだろう。仕方ないな、と苦笑する姿が浮かんで、手間をかけるなとは思ったが、きっと大丈夫だと思う。
それを信頼というのだろう。
そうして更に時は過ぎる。
風の噂でサスケが中忍に上がったと聞いた。よかったな、と思っていたら、酷く息が苦しい事に気付く。
「イタチさん……?」
暁でツーマンセルを組んでいる鬼鮫が怪訝気な顔をする。
それになんでもないと返そうとするも咳込み、噎せる。
「風邪でも引かれたんですか?」
そう口にしているが、「まさかアナタが?」と言わんばかりの口調で、気にするなと話してそのまま旅を続ける。けれど、落ちていくチャクラ量と体力、そして夜ごとに訪れる咳とある日喉元に迫り上がった血に、病にかかっていると自覚せざるを得なかった。
だが抜け忍の犯罪者であるオレが早々医者にかかれるわけがない。
オレは薬で誤魔化しながら、日々生きていた。
だから、誤算だった。
まさか、一目見られただけで病を看破されるなど思いもしなかった。
あんな……泣きそうな顔で見られるなんて思いもしなかった。
オレは恐らく、あの人の、ゴガクさんへのオレへの思い入れを見誤っていたのだろう。
「お前の任務はわかっている、見守るつもりだったさ! だが、お前が病に侵されてるってなら話は別だ!! 例えお前が嫌がろうが泣き叫ぼうがオレはお前を里に連れ帰る!!」
どうしてとオレは思った。
あの人は亡くなった妹がオレと同じ病だったのだと告発した。
この人にとって、今のオレの姿そのものが
血の気の引いた顔で、ゴガクさんは笑う。
「なァイタチ、オレに再び家族を与えてくれたのはお前なんだぜ?」
その過去を知らずとも、オレは前から知っていた。
この人は、うちはゴガクという人は誰よりもうちはらしくなくて、同時に他の誰よりもうちはらしい人だということを。愛情深く家族想いでプライドが高く、誰かを守るために強さを求める、そんな人だと。
きっとそんなこの人にとって最も大切で大事な存在は、家族なのだと。
(嗚呼、オレは、アナタにとって家族だったのか)
分かっているつもりだった。
どうやら本当に、つもりだったらしい。
「だから、頼むイタチ……オレからもう家族を奪わないでくれ。オレはもう家族の死に顔なんて見たくねェんだ……!」
(仕方ない人だ)
アナタからこれ以上家族を奪うのは、あまりに可哀想だ。
それにオレを失ったこの人がどう転ぶかも分からない。
だから、仕方ない。
そう思ってしまった、オレの負けだ。
「ゴガク兄さん……」
「ハハッ、久しぶりにそう呼んでくれたな」
青白い顔でゴガクさん……ゴガク兄さんが笑う。
咳込む、血を吐く。
「……飛ばすぞ、死ぬなよイタチ」
まるで傷ついたひな鳥を守るかのような、温かい体温に包まれながら、オレはこの先の事や鬼鮫のこと、サスケの事など色んな事を考えることもひとまず忘れて、眠りについた。
了