ここだけマダラがイザナギに失敗死亡して未来転生、アスマと大親友になった世界(完) 作:EKAWARI
今回地味にスレに投下したバージョンより文章量2.2倍くらいに大増量しました。
主に今回収録の話書いてた時には出てなかった設定部分の描写追加というか。
とりあえず一日一話ペースでアップ目指します。
ピュルリと鳥が鳴き、空を行き交う。
抜けるような晴天に、暢気に聞こえてくる砂利共の笑い声。
マダラの時では考えられぬ程、今日もこの里は平和だ。
こういう日は趣味の鷹狩りに打ち込みたい所だが、あいにく今日は非番では無く、任務があった。まあそれも先ほどさっさと済ませたんだが。
「ゴガク」
オレがうちはマダラの記憶を蘇らせた翌日、任務帰りに商店街近くの大通りをブラブラ歩いていると、よく知った声に名を呼ばれ振り向く。
そこにいたのは思った通り、オレの親友たる三代目の息子猿飛アスマだった。
相変わらず煙草を口にくわえて飄々とした態度で「よっ」と軽く腕を上げている。眠そうな目元に逞しい体格、もみ上げから繋がった顎髭がよく似合っている。見れば見るほど、うちはにはあまりいないタイプの男前だ。
「応」
そんなアスマに対し、いつも通りオレが手を掲げ応えると、アスマはニヤリと笑ってから、オレの肩をガッシリ組んでこんなことを言う。
「安心したぜ。顔色も悪くねェし、どうやらもう大丈夫そうだな」
「だからなんでもねェって言っただろうが」
腕を払い、オレが呆れたように言うと、アスマは気を悪くするでもなく肩を竦める。
「ハッ、昨日はあんだけ白い顔しといてよく言う」
ポンポンと続く軽口の応酬。
実のところ本題は昨日どうしてオレが急にああなったのかを聞きたいのだろうが、オレが昨日の事は聞くなと態度で示すとそれ以上は踏み込んでこなかった。アスマのこういうところが助かる。これがもしも柱間の奴だったらうぜェくらいギャアギャア騒ぎ立てるに決まっている。
だからこれは前世の友である柱間には無かったアスマの美徳だ。
と、そんなことを考えていると、目の前に逆立ちで爆走する碧い猛獣が通りかかった。
濃い眉毛に濃い顔。緑の全身タイツに身を包み、周囲からの視線など物ともせず爆走しているこの男もオレからして見ればよく知った相手だ。アカデミー時代からの同期でもある。
男の名はマイト・ガイ。木の葉隠れの里きっての体術使いだ。
オレ達の姿に気付いたからだろう、ガイはパッと笑みを浮かべると、いつも通りの気持ちいい大声を出す。
「おお、アスマにゴガクではないか! どうだ、青春してるか~!?」
「ガイ……」
ふむ、ここで会ったのも何かの縁だ、これは丁度良いか。
「お前に頼みがある」
* * *
「まさかゴガクの奴、ガイと手合わせしてくれとはなぁ」
苦笑しながら審判として立つアスマがそうボヤく。
まぁ、そう言うな。オレにはマダラの記憶が蘇った、この力を試してみたいとそう思うのは自然なことだろう? そう心の中でアスマに返答し、苦笑する。
オレがガイと手合わせすること自体は珍しいという程少なくもないが、それでもそこまで多いわけでもない。
アカデミーに入学したばかりの頃、オレの評判はうちはの天才児、マダラの再来というものだった。
だからこそだろう、体術くらいしか得手のない……当時はそれも微妙な実力だったが、ガイはオレと、それから同時期に白い牙の息子として、これまた天才少年と持て囃されていたカカシによく勝負を挑んできたものだ。
その度に返り討ちにして「弱ェ!」とか煽ってたもんだが、なんだかんだへこたれず何度でも向かってくるガイの相手を、オレ自身も楽しんでいた記憶がある。
……まあそれもオレの妹が病に倒れるまでの話だったか。
オレが妹の看病に忙しくなった頃から、ガイはオレにはあまり勝負を挑まなくなったが、それでも会えばオレに話しかけてきたものだ。二言目には「ではなゴガク! また今度、お前の都合の良いときに勝負をしよう!」だったか。今思えば、気遣われていたのだろう。
あの頃のオレは精神的に追い詰められていた自覚はある。そう思えばアスマといい、ガイといい、友人には恵まれたものだ。
そんなガイはオレに勝負を挑む回数が減った分、それまで以上にカカシに特攻するようになった。本人曰く「永遠のライバルだ」だそうで、まあ良い関係を築いているようで何よりだ。
そうしてカカシと切磋琢磨し続けたのもあるのか、今のガイの奴は体術に限って言えば木ノ葉隠れの里でも有数の実力の持ち主だ。
これほど戦い甲斐のある相手もそうそういるまい?
「いざ」
「嬉しいぞゴガクよ! これぞ青春だ!! よし、いつでも来い!!」
「忍び組み手始め!」
言うなり怒濤の攻撃が始まる、それをいなしながらマダラの知識とオレの実際の動きに対するすり合わせを行う。ガイは止まらない。まるで本物の猛獣のようにしなやかな筋肉をバネのようにして、駆ける。翔る。
「どうした! いつもと重心がずれているぞゴガクよ!!」
「ハッ、抜かせ」
ガイはオレの目を見ることもなく次々に攻撃を仕掛けてくる。そも、奴は強い。
ガイがライバル視しているカカシはうちはオビトの片目を引き継いでおり、元より写輪眼を所持している相手の対処という意味では、この男ほど手慣れているものはそうはおるまい。
だからこそ、相手にする価値がある。そうでなくては面白くない。オレ……ゴガクとして染みついた動きと、マダラの知識の中のそれにブレがあることなど先刻承知している。だからこそその是正をするにあたり、この男と組み手を交わすのがもっとも手っ取り早いのだ。
その一撃一撃の重み、緊張感、次々に変わる戦況、知らず唇の端が弓なりに吊り上がる。
(面白い)
この場で使うのは体術だけだ。それに限定している。
そうであるとしても、全力でぶつかり合える相手がいるというのは幸せなものだ。
口角が上がる。ニィと眦が緩む。
嗚呼……愉しい。
「ハハッ……フハハハハハ!!」
マダラの型を確かめる、そんな建前すら投げ捨て、いつからか大声で笑いながらこの攻防を楽しんでいた。
* * *
半刻ほどのじゃれ合いを終え、和解の印を結ぶ。
「楽しかったな!」
と、ガイが言う。キラキラと眩しいような笑顔を浮かべて。
オレも思わず釣られ笑う。
嗚呼、楽しかった。本当に。
そんなオレの気持ちは言わずとも伝わったのだろう、ガイは行きと同じく「またやろう!」と逆立ちして去って行った。
そんな碧い猛獣を見送りながら、ポツリとアスマは言う。
「……驚いたな。元から強かったが……いつからそこまで体術も得意になったんだ?」
まあアスマが驚くのも無理はない。別に元より体術は不得手ではなかったが、マダラの時ほどゴガクは得意としていなかったのも確かだ。体術・忍術・幻術全て高水準である自負はあるが、それでもやはりオレが一番得意といえるのは、大規模火遁の数々で纏めて焼き尽くす戦法だろう。
「男子三日会わざれば、刮目せよというだろう」
「よく言う」
それがオレの誤魔化しの言葉だとわかっているからだろう、やれやれと肩を竦めながらアスマが言う。
「こりゃオレも頑張らねェといけねえな。……なああの時の事覚えてるか?」
腰のチャクラ刀をトントンと指さしながらアスマが言う。
「……ああ」
忘れるわけもない。覚えているに決まっている。
昔からアスマは父である三代目とは折り合いが悪く、実家はアスマにとってそれほど居心地の良い場所ではない事は、詳しく聞かずともオレは知っていた。
ある日の事だ。
まあ父親と十中八九何かがあったんだろうが、アスマが家を飛び出してうちに来たことがある。
昏い眼で『泊めてくれ』と言い出したアスマの腕を引き家に入れた。たまたまあの日は上の兄も非番が重なってたもんだから、そりゃあ『アスマくんいらっしゃい、いつもいつも弟に良くしてくれてありがとうね』と大歓迎で、次々食えないくらい飯を食わそうとしてくるもんだから困ったもんだ。
ありゃアカデミー卒業直前くらいの時期の事だったな。
たらふく飯を食って、甲斐甲斐しく世話を焼こうとしてくる兄を部屋に追い払い、風呂に入り、オレのベットの横にアスマ用に来客の布団を敷いて、髪をタオルで拭きながらオレはアスマを見た。
アスマはその日は酷く静かで、でもオレはアスマが何も言わずとも何を考えていたのかはわかったような気がしたんだ。
このチャクラ刀を複雑な眼で見ながらじっと燻る少年は父を越えたいと、そう望んでいた。
慰めの言葉なんて求められていないのは見てて分かった。
だからオレは殊更明るく、昏い雰囲気を吹き飛ばすように笑って言ってやったんだ。
『知ってるか、アスマ。風は火を大きく燃え上がらせるんだぜ?』
……ってな。
それに対してアスマは始めオレに言われた意味がわからなくてキョトンとしたが、次いで『なら、オレ達二人なら最強になれるな』そう言って泣きそうな顔で笑った。
『ああ、二人で最強だ』
オレの言葉で救えた等と自惚れるつもりはない。
だがオレのその言葉を聞いた後、アスマが肩の荷が落ちたように、妙な力が抜けるようになったのは確かだ。
「オレ達二人で最強になる……そうだろ相棒?」
「ああ、そうだな」
そういってあの頃のように二人揃って空を見上げ笑った。
続く