ここだけマダラがイザナギに失敗死亡して未来転生、アスマと大親友になった世界(完) 作:EKAWARI
今回はゴガクの過去編その1です。
例によって元スレ版より1.5倍くらいに文量大増量しますた。
……今でも鮮明に思い出す。
オレ……うちはゴガクが初めて死というものを意識したのは、齢四つの頃の事だった。
その年、母は五人目の子供を孕んでいた。
「もうすぐゴガクに二人目の妹か弟が出来るのよ」
大きな腹を大切そうに撫でながら、そういって笑っていた母の顔を覚えている。
次に生まれるのは妹かそれとも初の弟か、いやどちらでもいい。
三つ下の妹であるクロキもこんなに小さくて可愛いのだ、きっとどちらでもさぞ可愛いことだろう、とオレは末の兄妹の誕生する日をワクワクと待ち望んでいた。
兄さん達がオレを可愛がってくれたように、オレもうんと可愛がるんだ。
無邪気にそんな事を思い、母の腹に宿った新しい命と顔を合わせる日を今か今かと楽しみにしていた。
しかしそんな幼子の、細やかな願いは叶わなかった。
……三日三晩の酷い難産の後に生まれた赤子は既に死んでいたのだという。逆子で、臍の緒が首に絡んでの窒息死だったのだと何年も後になって知った。
死産した赤子は女の子、妹だったのだという。
オレは末の妹の顔も名前も知らない。
幼い子供に見せるのは酷だと思われたのだろう。長兄を除きオレ達兄妹に末の妹は引き合わされる事すらなく、簡素に葬られたとそう聞いている。
そして酷い難産と末の子供が死産だったショックが重なったのだろう。
母もまた体を壊し、生死の境を彷徨った。
「母さん……」
オレは何度も母の病室に会いに行った。まだ1歳の幼い妹クロキを胸に抱えて。
妹は幼い。物心すらついていないような赤子なのだ。
漸く「にいちゃ」や「とうちゃ」等簡単な単語を口に出来るようになったばかりで、ただオレに甘えるようにきゃっきゃと笑い、ひっついて幸せそうに眠る、母のことも何も分からない妹がオレは不憫でならなかった。
とはいえ当時はオレもまた幼かった。
当然母さんの元に向かう時も妹と2人きりというわけではなく、兄さんや父さんに連れられて見舞いに通っていたわけだが、母さんがふと眼を覚ましたその時はたまたま兄さん達は席を外してて、オレとクロキの2人しかその部屋にはいなかった。
「……ゴガク」
「! 母さん、眼が覚めたのか。待ってろ今兄さんたちを呼んでくる!」
そう言って走り出そうとするオレの手をそっと引き留め、母はゆるゆると顔を横にいると「……兄さん達は?」と尋ねた。
「アカデミーの先生と上忍師の先生に呼ばれて少し外してる。でもすぐに戻ってくるよ」
「そう……ねぇゴガク」
ギグリと体が強張る。
オレに向かって伸ばされた母の手は酷く冷たく白く、まるで血など通っていないかのようだった。
窶れて尚まるで人形のように美しい母の眼から、透明な滴が伝い落ちる。
青白い肌に、血の気の引いた唇。その呼吸は弱く、ともすれば今にも止まってしまいそうだった。
「クロキのことお願いね……妹のこと、守って、あげて……」
何も見えていないかのように、母さんの手が弱々しく宙を彷徨う。オレは其の手をしっかりと掴みながら母を安心させるように断言する。
「……ああ、ああ任せろ! 妹は、クロキはオレが守る!!」
母は微笑む。
きっと何ももう見えていないけど、それでもその約束を聞いてまるで安心した、というように。
妹は、クロキは何もわからないようにすよすよとオレの背中で眠っている。
冷たいんだ。
こんなに背中にある命は温かいのに、この人の手は冷たくて、オレの手で暖めたいのに、この手はあまりにちっぽけで。
温かくて寒くてグチャグチャで胸が苦しい。
それでも、オレは貴女の息子で、クロキの兄だから、だから約束をする。
貴女の最期の望みを叶えることを。
「守るから、だから……!」
死なないで、の声は震えて言葉にならなかった。それに多分オレは心のどこかでそんな事を願っても無駄なことを、理解していたようにも思う。
直後に母は意識を再び失う。
けれど、それと同時のタイミングで兄達も帰ってきた。
「兄さん、母さんが!」
多分オレはその時泣いていたのだろう。
それを見て兄達は事態を把握し、長兄が父を呼びに行ったが、もう既に遅かった。
母は既に亡くなっていたのだ。
死に化粧を施され棺に納められた母は、抜けるような白い肌も相俟って、精巧な人形のように美しかった。
もうその母が優しくオレの頭を撫でる日も、オレの名を呼ぶ日も来ない。
葬式とは残された生者の為に行われるのだという。
ならば母はきっと幸せ者だったのだろう。
忍びならば戦に出た先で死体すら返ってこない事も、葬儀すら個別に行われない事とて別に珍しくないのだから。けれど母は夫や子供達に囲まれこうして花で彩られ死を惜しまれている。
……ただ、母の死を理解出来ない
母の死体は棺ごと父の火遁によって綺麗に焼き尽くされた。残されたのは遺灰だけだ。それを壺に入れて墓に納める。
鮮やかで見事な火遁は父から母への贈り物なのだろう。
ならいつかオレも、この火遁で大切な人を送り出す日が来るのだろうか。
……そんなことを考えていた事を覚えている。
母が死んだ。
それでも悲しみは時が癒やしてくれる。
母の死すらわからぬ幼い妹の笑顔は確かにオレの活力となり、母との約束だ妹を守らないとという想いが、オレには出来る事がやるべき事があるのだという使命感が、オレを支えた。
妹の面倒を見て忙しく過ごしていれば、余計な事を考えずにすむ。その事がオレにとっても有り難かった。
そうして母が死んだその1年後、5歳になったオレはアカデミーに入学してアイツと……アスマと出会ったのだ。
「うちはゴガクだ」
「オレは猿飛アスマだ、ゴガクだなヨロシク」
奴とは初めて会ったその時から妙にウマが合い、出会ったその日に意気投合した。
顔見知りくらいはいたが、友達なんて初めてだ。
家に帰ると可愛い妹が「にいちゃんおかえり」とわざわざ玄関まで出迎えにきてくれたし、中忍になった上の兄も下忍になった下の兄も、早く任務が終わった日や、非番の日には「ゴガク、おかえり、今日はハンバーグだぞ」と手が空いているほうが料理をして、笑顔でオレの帰りを待ってくれたものだ。
「ああ、ただいま」
幸せだった、間違いなく。
気の合う友がいて、オレや妹をとても可愛がってくれる優しい兄達がいて、口数は少ないし多忙な人だったが優しい父もいて、オレを見ては嬉しそうにコロコロ笑う可愛い妹もいて。きっとオレはこの頃が一番幸せだったのだろうと今でも思う。
前世のマダラの人生では考えられぬ程に、この頃のオレは幸福だったのだ。
事態が急展開したのは、オレが6歳の誕生日を目前にした時の事だ。
「げほ、ごほ……けふ……ぅ……うう、ひ、ぐ」
「クロキ風邪大丈夫か?」
その時、妹は体調を拗らせ何週間も寝ていた。
冬も近い時期だ、小さな子供の体に寒さが堪えたのだろうと、風邪だとその時のオレは思っていたのだ。
……妹が血を吐くまでは。
「けふ、ふ……がは」
「……クロキ?」
べったりと妹の紅葉のように小さな手が真っ赤な血に染まる。
グッタリした体はあまりにか弱くて、死を連想させずにはいられなかった。
「ただいま。……ゴガク? 一体どうしたんだ?」
「兄さん、クロキが、クロキが血を吐いた!」
家に帰ってきた下の兄と共に、急ぎ病院へと向かう。
その間も兄の腕に抱かれた苦しそうな妹の手を握り、声をかけ続けた。
「おい、クロキ!? しっかりしろ、クロキ……!!」
確かに前々から調子が悪い日は続いていたんだ。
クロキは元々オレよりも頑丈じゃなかった。
妹は度々熱を出し、その度にオレはクロキの看病をし、額の汗を拭いながら水を飲ませ、「早く良くなるんだぞ」とそう声をかけ励ました。
ちょっと咳き込んでいても、微弱な風邪が続いているんだとそう思っていた、なのに違った。
妹は肺の病に冒されていたのだ。
丁度その頃世間は戦争に向かっていた。
第二次忍界大戦が終わってそれほど経ってはいないのに、不穏な空気は治まる気配を見せず、木ノ葉警務部隊で幹部を務めている父も酷く最近は忙しそうだ。
兄達も次兄はアカデミーを卒業してそれほど経っていないにも関わらず多忙そうで、兄達の手がどうしても空かない時はオレがアカデミーを休んで妹の看病をする日も度々あった。
そんな中判明した妹の病。
しかし変わり続ける情勢の中、木ノ葉病院で優先されるのは現役の忍び達の治療だ。
忍びでもない、ましてアカデミーに入学すらしていない妹の治療は後回しにされた。
火遁を使わせれば、まだ碌にチャクラを練れない筈の幼さながら兄妹の誰よりも大きな豪火球を形成し、クナイを投げれば百発百中。体術も互角に張り合えるレベルまで当時達していたのは同じく天才と呼ばれたカカシくらいで、筆記もトップではないながらもそれなりに成績優秀、忍術も教えられた術を失敗した事は無い。
当時のオレはマダラの再来ではないかと、うちはの天才だと呼び声高かった。
あのままいけばオレは同じく天才と呼ばれていたカカシ同様、1年足らずでアカデミーを卒業していただろう。だがオレは自分の成績などよりずっと妹のほうが大事だった。
兄達は現役の忍びだ、そうそう任務を休むわけにはいかない。
クロキが元気だった時は、オレがアカデミーに行っている間妹の面倒を見てくれていた大伯母は、彼女自身も年で腰を痛めている。とてもじゃないが、病を患ったクロキの看病を頼める相手ではない。
だからオレは忍者アカデミーの早期卒業の話を流し、学校を半分以上欠席しながら自宅で妹の看病を繰り返した。
「よぉ、ゴガク、ほら今日の分だ」
「アスマ、いつも悪ィな」
アスマはオレがアカデミーを欠席した日は、決まってその日の授業のノートや課題を持ってオレの家を訪れた。そしてオレの妹の顔を見るなり、ニカリと笑いかけ、まるで日常の延長のように具合はどうだと軽い調子で話しかける。
同情は嫌いだ。憐れまれるなど惨めになるだけで、不愉快だ。
だから過剰に同情などせず当たり前のような態度で自然体で語りかけ、隣にただいてくれる……オレはアスマのそういう所に一番助けられていたのだろうとそう思う。
「アスマおにいちゃんだぁ」
「お……三日前よりは顔色がいいな」
そう言ってアスマは優しい手つきでクロキの頭を撫でる。
「えへへ~」
アスマに撫でられ、妹は嬉しそうだ。
それからジトリとアスマは半目でオレを睨むように見ると「お前昨日寝てないだろ」などと言い出す。
「無理してお前も倒れたらどうする。1時間くらいオレが変わってやるから今すぐ寝てこい」
「そういうわけにはいかねェだろ……クロキはオレの妹だぞ」
クロキの面倒を見るのはオレの役目だ、そう主張するとアスマは呆れたような口調で肩を竦める。
「お前の妹ならオレにとっても妹みたいなもんだしいいだろ。ちょっとは独り占めさせろ。クロキちゃんもアスマ兄ちゃんのこと好きだもんなー? な?」
「すきー」
そういってきゃらきゃらと今朝まで熱がひかなかった妹は笑う。
それがアスマ流の気遣いであることは知ってた。
「……すまん」
アスマは返事をしない。
そのまま手をヒラヒラと振ってさっさと寝ろと指示をする。
オレはアスマのそういう所に救われていた。
……大丈夫だ、大丈夫。オレも、クロキも一人じゃない。
「けほ……けほ……ひぐ、う、う」
「クロキ……クロキ、大丈夫だ。大丈夫、いつか良くなるからな」
夜中に突発的に咳き込んで、泣いて苦しむ妹をそんな風に抱いてあやして、うろ覚えの母が歌ってくれた子守歌を歌って何度夜を過ごした事だろうか。
「に、ぃちゃ……」
「ああ、兄ちゃんがついてる。ずっと一緒にいるよ」
そう……いつかきっとよくなる日が来る。
今は苦しいかも知れないけれど、それでもいつかは……クロキがよくなる日が来ると、そう信じたかったのは、希望的観測に過ぎなかったのか。
クロキが肺の病に冒されていると発覚してから1年と3ヶ月が過ぎた頃だった、容態が急変したのは。
「ごふ、かは、くふっ……ひ、ぃ」
「クロキ、クロキ!? しっかりしろ!」
その日、家にいたのはオレとクロキの2人だけだった。
情勢は悪化の一途を辿るばかりで、兄達2人は任務に出かけており帰ってくるのはいつになるのか……少なくとも今日明日に帰ってくるわけじゃない事は分かっていた。
吐いた血で喉が詰まっているのか息も碌に出来ない妹の喉からは、コヒューコヒューとおかしな呼吸音が苦しそうに途切れ途切れに続く。体は小刻みに震えており、顔はまるで蝋人形のように青白い。
一体どうすればいいのか。
どれほど天才と呼ばれてようが、当時のオレは齢7つの砂利に過ぎなかった。
病院に、父さんは、頭がグルグルする中ただ、早くなんとかしないとと気持ちばかり急いて、妹をおんぶ紐で布団ごと巻き付け外に飛び出す。
そんな中、いつものようにアカデミーの課題等を抱えてやってきたアスマは事態を把握したのだろう、オレとクロキの常にない様子を理解するなり「オレがおじさんを呼んでくる! お前は早く病院に行け!」と脇目も振らず駆け出した。
アスマが父を呼んでくれるなら間違いはないだろう。
そう信じてオレは木ノ葉病院までの距離を出来るだけ揺らさないように、妹の体に負担がかからないように気をつけながら駆けた。
どうか神様……と、柄にも無く神頼みまでしたものだ。
だが結局神などいなかったのだろう。
木ノ葉病院に駆け込むも運悪く負傷者が多数運び込まれた直後だった。戦争を控え、国境線沿いで小競り合いが頻発していたのだ。
忍びでもない、アカデミーに入学すらしていない子供の優先順位など低いものだ。妹が今にも死にそうだと何度必死に訴えても、無駄にしかならなかった。
医者と父の到着を待つも、時間ばかりが過ぎていく。
腕の中でドンドン妹の息が弱っていく、体温が足りない。鼓動が弱い。また血を吐いた。
(……死ぬのか? クロキは……あの時の母さんのように)
思わず血が出るほどに自分の拳を握りしめる。ポタポタと血が垂れても気にもならない。妹の、クロキの苦しみに比べたら、オレの手の痛みなど痛みのうちにすら入らなかった。
(オレは無力だ)
母さんと約束したのに、オレが守るって。
どうしてオレにはこの小さな命を守る力がないんだ。
「ゴガク!」
そう自己嫌悪に陥ったオレの元に、アスマが父を連れて現われる。
「父さ、ん……クロキが、息をしてないんだ」
きっとオレもまた酷い顔色をしていた事だろう。
あまり表情を変えない人だったのに、父は眼を見開き驚き俺の腕から妹を受け取り、父からも医者になんとか頼み込み、診て貰えるように掛け合う。
だが……。
「もう亡くなっています」
無情にも妹の死が宣告される。
医者はもういいですか? と淡々と告げて次の患者の元へと向かう。
それだけだった。
妹はまだ4歳だったのに、昨日までオレに「クロキね、はるになったらみんなでおはなみしたいな。ゴガクおにいちゃんのすきなおいなりさん、クロキも作るの」ってそう話してたのに、こんなにあっけなく終わらないといけないのか、妹の人生は。
(母さん、オレは貴女との約束を守れなかった)
オレは妹を守れなかった、母の最期の願いだったのに。
オレにとっても大切で、愛しい妹だったのに。
目眩がするほどに感情がグルグルとまわって、酔いそうだった。
その日どうやって病院から家に帰ったのか、オレは覚えていない。
続く
今回の話の経緯↓(元スレよりコピペ)
二次元好きの匿名さん
そういやあゴガクは妹も二人いたわけだが年齢的に忍界大戦の時二人とも戦場に出されてたとは考えにくいし兄達はマダラの万華鏡開眼理由にしても妹たちの死因は別なんだろうか?
一人は病死とか
肺病っぽかったら病気になったイタチを放っておけない理由が更に増える気がするけど
苦しむ妹を救えなかった自分への失意や絶望から写輪眼開眼とかそういう感じだったりして
二次元好きの匿名さん
一人はイタチと同じ病気での病死で一人は死産だったとか?それで母親も最後の子供産んだ後体調を崩して死んでしまったなら辻褄があいませんか?