ふたご・ざ・ろっく!   作:餡 子太郎

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ハツライブ!!の巻(NEW)

 

昨晩から雨が降り続ける朝の5時、僕は毛布に包んで丸く蹲っていた。ピロンッ!と携帯の着信が何度か入るけど、僕は一度も確認していない。台風の影響もあるかもしれないけど、それ以前の問題........。

 

ゴゴゴゴゴゴゴ........

 

「ひぃ!?」

 

外で雷鳴が轟く。僕は震えて掴んでいた毛布に力を入れる。そう、何を隠そう僕は........。

 

雷が大っ嫌いなのである

 

 

 

 

 

「あ〜、私の友達も来れないみたいです...」

 

「そっか〜........」

 

ライブ当日、朝早くからスターリーに到着した私とたっくんは虹夏ちゃん達と合流して、チケットを買って貰った友達について話し合っていた。虹夏ちゃんと喜多さんの友達は全滅、リョウさんはチケット適当に売っ払ったから相手の連絡先が分からず、当然ライブに来てくれるかは不明...。私もお父さんとお母さんに渡したけど、台風の影響で移動が困難となり、見に来れなくなってしまった。ただ、唯一たっくんのクラスメイトの半分は『意地でも行くからなー!』とグループロインの連絡があったので、メンバー全滅という危機は回避出来た。

 

ただ................、一つ別の問題が発生していた。

 

「これで半分になっちゃいましたね...」

 

「こればっかりは仕方ないよ、たっくんのクラスの子達が来てくれても有難いからね」

 

「................」

 

「........たっくん、大丈夫?」

 

「................ごめん、ちょっと......」

 

昨夜から落ちた雷の影響により、たっくんはいつも以上に怯えていた。たっくんが昔から雷がダメなのだ、例えばテレビで流れた映像でも、動画の小さな雷鳴でも、こうして震えてしまう程の恐怖症だ。こうなってしまえば、いつもはお母さんが優しく抱きしめてくれて多少は震えも収まるが、今は肝心のお母さんは居ない。私も出来なくはないけど、お母さんと比べて立ち直れるスピードが遅過ぎる。

 

簡単に言ってしまえば、母性のある人じゃないとたっくんは直らない。

 

「大丈夫?顔色悪いけど」

 

「ご、ごめんなさい........」

 

「達也くんが後藤さんみたいになってる........」

 

あ、そうだ(唐突)たっくんがこうなると私みたいになるんだ。

 

「やっほ〜〜〜。ぼっちちゃん、たっくん来たよ〜〜〜」

 

「あ、お姉さん........」

 

するとはだけた姿でお姉さんが酒瓶を片手にスターリーに入って来た。酒臭...。

 

「え、ぼっちちゃんとたっくん目当てで来たの?」

 

「え、知り合いなんですか...?」

 

「大学の時の後輩」

 

「んねぇ~せんぱぁ~い今日のライブ打ち上げするんだよねぇ~? 居酒屋もう決めたの~? 私いい場所知ってますよ~」

 

「お前また一段と面倒くさい奴になったな......」

 

........お姉さんは平常運転だ。

 

「ん〜〜〜?どうしたのたっくん〜?元気ないじゃんか〜、もしかして私に会いたくて寂しかったのか〜〜〜?かぁーー!可愛い奴め〜〜!」

 

「あっ...、たっくんはその........。昨日の夜に落ちてきた雷に怖がってるだけです...」

 

「たっくん雷ダメなの?」

 

「す、すみません........。情けない話し、昔から雷だけはずっとダメでして........。いっ、一回だけでも雷の音聞くと........、怖くなっちゃって........」ウルウル

 

「」ヅッキューン ←店長さん

 

「」ヅッキューン ←お姉さん

 

「」ヅッキューン ←近くに居たPAさん

 

「」ヅッキューン ←偶々側に居た虹夏ちゃん

 

「」ヅッキューン ←偶々側に居たリョウさん

 

「」ヅッキューン ←偶々側に居た喜多さん

 

「」ヅッキューン ←口と鼻から血を流す私

 

 

あぁ^〜たっくんの泣き出しそうな顔が可愛くて堪らないんじゃあ〜!

 

........って今はそうじゃない!

 

「が、頑張って他の事考えようとしても........、頭の中が、雷の事でいっぱいになって......。雷が落ちてくる光景がフラッシュバックして........、うぅ........」ウルウル

 

「た、たっくん........。だ、大丈夫だから........」

 

「たっくん、こっちにおいで。頭撫でてあげる」

 

リョウさん!?ナニイッテルンディス!?

 

「リョウ先輩!?」

 

「先輩?違う、今の私はお母さんだ」

 

「リョウが訳分からない事言い出した!?」

 

「こんなに怯えてる我が子を放っておく訳ない。ほらたっくん、こっちへおいで。一緒にベットに行こう」

 

ま、不味い........!たっくんのギャップに影響を受けている...!

 

「たっくん〜〜?お姉さんの所へ来たらふっかふかのお胸があるよ〜〜〜?」

 

「未成年を誘惑するな酒飲みがぁ!たっくん、こっちへ避難しろ!」

 

「お姉ちゃんも誘惑する気満々じゃん!!」

 

「........!成る程、怖がってるふりをして母性が刺激するようにすれば、私もリョウ先輩に甘えられる!感謝するわ達也くん!また一つ勉強になったわ!」

 

「感謝する所一つもない!ほらたっくんも泣き止む!そろそろライブだよ!」

 

そ、そう言いながら虹夏ちゃんも抱きついてる........。

 

「お前、何ちゃっかり抱きしめてるんだよ」

 

「え?........あっ!?いつの間に........」

 

「虹夏だって抱きつきたかったんじゃん、ずるい」

 

「ち、違っ........!」

 

「ほら達也くん!元気出して!」キターン

 

「ぅぅ........ぅぅぅ................」

 

あ、私の方にやって来た。

 

「なんで!?」ガーン

 

「今のたっくんには陽キャオーラは強過ぎたんでしょ、今凄い気が落ちてるし」

 

「私の事嫌いなの!?」

 

「ほ、ほらたっくん........。大丈夫だから、ね?」

 

「ひーちゃん........」

 

「........怖いのは分かるよ?でもたっくんだけが怖い訳じゃないんだよ?(雷とライブは違うけど......)たっくん一人でやる訳じゃないんだから、一緒にやろ...?」

 

「........うん」

 

そう言ってたっくんはポケットからハンカチを取り出して、涙を拭う。

 

「ごめんね........、みっともない所見せちゃって......」

 

「ううん、たっくんが男の子だからって泣いちゃいけないなんて事はないんだから」

 

(((ぼ、母っち!!)))

 

「おーい後藤ー!」

 

「後藤くん!来たわよ!」

 

すると入り口からたっくんのクラスメイトらしき集団がやって来た。ひーふーみー........、20!?20人は居るよ!?たっくんの影響力凄すぎでしょ!?

 

「み、皆んな...。来てくれたんだ........」

 

「言っただろ?意地でも来るってよ!それよりどうした?いつもと元気ないじゃんか」

 

「あ、あはは.....」

 

「ごめんね〜?実はたっくん雷が苦手で落ち込んでたのを皆んなで励ましてたんだ〜」

 

たっくんが説明しようとすると、虹夏ちゃんが間に入って代わりに説明する。流石虹夏ちゃん、私には出来ない事を平然とやってのける!其処に痺れる憧れるぅ!........本当は私が説明しなきゃいけないのに........。

 

「え!?後藤くん雷ダメだったの!?」

 

「すっげぇ意外........」

 

「ご、ごめんね........。折角来てくれたのに、落ち込んじゃって........」

 

「いや寧ろ惚れたわ」

 

................ゑ?今なんて?

 

「後藤くんって、勉強も運動も出来るし、家事全般出来るって言ってたけど、雷が苦手って可愛いわ!ギャップ萌えよ!」

 

「そうか........、俺達は勘違いしていたんだ...。いつもは頑張り屋さんで『誰もが嫁or婿にしたいランキングNo. 1』だったあの後藤には、雷という弱点があった........」

 

いつの間にそんなランキングしてたんだ...。それに雷が弱点ってポケモンじゃないんだから.......。もしたっくんがポケモンに例えるなら........何だろ?

 

「ま、まぁこいつ等の事は気にしなくて良いからな!そろそろ準備しなくても良いのか?」

 

「あ!そ、そうだね!ありがとう皆んな!」

 

そうたっくんのクラスの男の子に教えて貰って、私達はスタジオへ向かおうとすると、少し離れた場所で大学生くらいの女性客二人がスマホをいじりながらそんな会話をしているのが聞こえてきた。

 

「ねぇ、1番目の結束バンドって知ってる?」

 

「知らなーい。興味なーい」

 

「観とくのたるいね」

 

その言葉を聞いて、私達は固まった。

 

「................」

 

「あ、あの女........!後藤のギター聴いた事もない癖に...!」

 

「ちょ、や、やめなさいよ!行ったってしょうがないでしょ!」

 

「だ、だからってよ!」

 

そう言って、たっくんのクラスの男の子が大学生の女性客の元へ行こうとするが、クラスメイトの女子に止められた。

 

「........大丈夫だよ、ありがとう。僕達の為に怒ってくれて......、でもね?今日がデビューみたいなもんなんだから、他にお目当てのバンドがあるならそういう反応になっても仕方ない事なんだよ」

 

「で、でもよ後藤........」

 

「大丈夫........、実力で分からせるから

 

実力........?なんかたっくん雰囲気変ってない?

 

というか、怒ってない?

 

 

 

 

「はじめまして! 結束バンドです! 本日はお足元の悪い中お越しいただき、誠にありがとうございます〜!」

 

「あはは〜、喜多ちゃんロックバンドなのに礼儀正しすぎ〜」

 

「....................................」

 

虹夏ちゃんと喜多さんのMCが大失敗に終わり、沈黙の空気が漂う中、僕はさっきの女子大生の言葉を聞いて頭にきていた。

 

正直、ムカついた...。

 

バンドにとってアンチが発生するのは避けて通れない道、それは分かってはいた.....。でも、最初から興味がないからって直ぐに切り捨てるのは腹が立って仕方がない....!それに、さっきの言葉で虹夏ちゃんとリョウちゃんと喜多さんが浮かない顔をしてる........。ひーちゃんは........、下ばかりを見てすっかり縮こまっていた。このまま演奏したら...、絶対に失敗する。

 

ならどうするか........、決まってる........!

 

(この5人の中で一番沈んでいない...、僕がリードすればいい!)

 

今に見てろ........。絶対に、見返してやる........!

 

「じゃ、じゃあ早速一曲目に........」

 

その前に!!

 

「「「「!?」」」」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

喜多さんが一曲目に入ろうと宣言する前に、僕が大声を出してかき消した。

 

「........ちょっとだけ、ウォーミングアップします!」

 

そう言って僕は最高の笑みを作って、強くギターをかき鳴らし始めた........。

 

 

 

 

 

凄い........。今の心境がそれだった。

 

たっくんがウォーミングアップと言い出してからは、皆んな固まっていたのにも関わらず、まるで何事も無かったかのように、たっくんはソロギターを始めた。曲はたっくんが良く聴くゲームのBGM、あまりにも中毒性の高さからたっくんが毎日口ずさむ曲だった。本来ならその曲はギターだけじゃない楽器だってあるのに、たっくんはギター一つで全てを表現しているかのように見えた。お客さんもそうだけど、虹夏ちゃんやリョウさん、喜多さんだってたっくんのギターを弾いてる姿に呆然としていた。そして最後にジャーン!とギターを弾くと、荒い息で呼吸を整え、満面な笑顔で『ありがとうございました!気を取り直して、一曲目行きます!』と言って顔だけ他のメンバーの方へ一旦向ける。

 

........やらなくちゃ。

 

たっくんが繋いでくれたバンドライブを、やらなくちゃ!!

 

そして私は、たっくんに続くようにギターを掻き鳴らす...。

 

 

 

 

 

 

「はぁ...、はぁ........」

 

疲れた........。今の僕の現状がその一言だった。バンド内で不穏な空気が流れてる中、僕が先陣を切って勝手にやったソロギター。それから二曲続けてのオリジナル曲...。前にやった路上ライブに比べてとても疲労が蓄積してるのが分かる...。それと同時に........。

 

(よ、よかったあ〜〜〜........)

 

ライブが成功して安心している心があった。一時期は本当にどうなるのかと思ったけど、皆んなが立ち直ってくれて良かった........。

 

........あとで怒られないかな...。勝手な事やっちゃったけど...。

 

「後藤!お前最っ高だ!」

 

「お疲れ様、後藤くん!」

 

「すっごくカッコよかったわよ!」

 

「最初のギターの所めちゃくちゃ痺れたぜ!後で曲名教えてくれよ!」

 

等とクラスの皆んながやって来て、絶賛の声が上がる。よかった........、喜んで貰えて........。

 

「あ、ありがとう皆んな........」

 

「よぉーし!お前等!後藤の初ライブ成功を記念に胴上げするぞ!」

 

「えぇ!?」

 

ど、胴上げ!?ライブハウスの中で!?

 

「よっしゃ行くぞー!」

 

「まっ、待って皆んな!?怒られちゃうよ!」

 

「知るかってんだ!外に出されたら出されただ!そーれ!」

 

「「「わっしょい!わっしょい!!」」」

 

「や、やめてよぉ〜〜〜!!」

 

そのまま僕は言われるがままに胴上げされて、店長さんが来るのを待っていた。そして当然のように店長さんに怒られたクラスの皆んなは、三ヶ月程出入り禁止になってしまった。それでも僕に『頑張れよ後藤!』と言ってくれた事には、とても嬉しくて、これからも頑張ろうと思った。

 

 

つづく!!

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