「それじゃあ、初ライブ大成功という訳で!かんぱ〜い!」
「「「「「かんぱ〜い!!」」」」」
僕が乾杯の音頭をすると、皆んな其々のグラスを持って交わした。初ライブが無事に終了して、僕達バンドメンバーと店長さんとPAさん、あと何故か付いてきたきくりさんと打ち上げする為、居酒屋に来ています!
「今日はよくがんばったな。私の奢りだから好きなだけ飲め」
「お姉ちゃんありがと〜!私達、お酒飲めないけど」
「ゴチになりま〜す先輩好き〜」
「お前は自腹だよくっつくな死ね!」
あはは!きくりさんは相変わらずだな〜!
「それよりもたっくん〜!最初のウォーミングアップカッコよかったよ〜!」
「ほんとだよ!またたっくんに助けられちゃったね、ありがとたっくん!」
「えへへ〜♪」
きくりさんと虹夏ちゃんに褒められると僕はつい、顔がニヤけてしまう。でもな〜、予定していたスケジュールを狂わせちゃったからちょっと悪い事したな〜...。
「ていうかこの人誰ですか?」
そう言って喜多さんがきくりさんを指す。そういえば喜多さんは知らなかったんだっけ?
「誰よりもベースを愛する天才ベーシストの廣井きくりで~す!ベースは昨日飲み屋に忘れました〜。ついでに何処の飲み屋かも分かんな〜い!」
一瞬で矛盾した!?
「あ、あのきくりさん。私はよくライブ行ってました...」
「え?ほんと?君見る目あるね〜」
リョウちゃんが四つん這いでスススっときくりさんの傍に近寄ってそう言うと、喜多さんとても驚いていた。ってかリョウちゃんきくりさんのライブ見た事があったんだね。
「観客に酒吹きかけたり、泥酔しながらのライブ最高でした。特に『ごめん歌詞とんだー。まーめもライブってそーゆうもんじゃん、怒んなようっせーな』のところが」
何処に最高の瞬間があるのさ!?明らかにやりたい放題やってるだけの酔っ払いベーシストだよね!?もしかしてリョウちゃんがこうなったのもある意味きくりさんが原因なの!?
「あと顔面踏んで貰ったのもよい思い出です。実力あるのに売れないのが残念、バカテクバンドなのに」
売れたらそれはそれで大問題だよ........。
「こんなん大衆にうけたら世の末だわ」
「私ってロックの事まだ全然理解してないみたい........」
「喜多さん、それはロックじゃなくて迷惑行為だよ」
「私もお酒飲みながら演奏すればリョウ先輩が振り向いてくれるかしら?」
「その前にお巡りさんが振り向いてくれると思うよ?」
未成年の飲酒はダメ!ゼッタイ!たっくんとのお約束です!
「まぁ続けてれば、どんどんファンは増えてくよ。次のライブもちゃんと頑張れよ」
「お姉ちゃん......」
店長さんが気を取り直すようにそう言うと、虹夏ちゃんが目を輝かせた。うんうん!これが美しきかな姉妹愛ってやつだね!僕もひーちゃんにそう言ってあげ........、ああああああ!?ひーちゃんが真っ白に燃え尽きてるぅ!?
「ちゃんとノルマ代は........」
「ひーちゃん!何かお料理頼もうよ!疲れてるのは分かるけど、ちゃんとご飯は食べないと!」
店長さんが虹夏ちゃんに何か言ってる途中で、僕は干からびたひーちゃんを見て、慌ててメニュー表を持って駆け寄った。ノルマ代がなんとかって言ってたけどなんの事だろうか?
「................たっくん...疲れたろ...。私も疲れたんだ、なんだかとても眠いんだ。たっくん........」
し、死なないでひーちゃん!それと僕はパトラッシュじゃないよ!
「ほ、ほら!皆んなも何か頼も!」
そう言って僕は皆んなにメニュー表を回すと、先に選んだのは喜多さんだった。よくよく考えてみると、僕とひーちゃんって居酒屋に初めて来たから何頼んだらいいのか分かんないや!まぁ好きな物頼めばいいよね!
「じゃあ私はアボカドのクリームチーズで!」
「喜多さんおしゃれ〜」
(喜多さんがまた意味不明なおしゃれなものを...)
「ふふふ♪イソスタにあげちゃお!」
「それって何が楽しいの?」
そう言って喜多さんはスマホを取り出してイソスタにツイートすると、横から店長さんが質問してきた。やっぱり喜多さんって凄いな〜、どんどんイソスタとかあげていくもんね〜。僕もこれを機にイソスタ始めて、手料理をあげてみようかな...。
「あ、ひーちゃんは何頼むの?」
「え、あ、えっと........。た、たっくんはどうするの?」
僕がひーちゃんにメニュー表を差し出すと、ひーちゃんが僕が何頼むが聞いて来た。う〜ん........、どうしよっか。
「そうだね〜........。わかめと豆腐のサラダと、甘辛だれの手羽先でしょ?あと、ほうれん草ともやしの塩昆布ナムルかな?あ、えびシューマイある!それも頼んじゃおっと♪」
「「「「「................」」」」」
あれ?なんか皆んな僕の方を見てるけど、どうしたんだろ?
「たっくんって........、本当は女の子なんじゃないの?」
「へ?」
「だって皆んな女子が好きそうな料理ばっかりだったし........」
「あっはは〜!それはちょっと違いますよ〜!僕はだだ好きな物選んだだけですよ〜」
決して狙った訳じゃないんだからね!
「わ、私はマチュピチュ遺跡のミシシッピ川グランドキャニオンサンディエゴ盛り合わせで....」
そんなお料理ないよひーちゃん!?
それ世界遺産、川、地名だよ!よく覚えていたね!?
「私は酒盗」
「リョウちゃん、未成年の飲酒はめっ!だよ!」
それから皆んな料理を頼んでつまんだりお酒やらソフトドリンクやら追加しては飲んだりしながら、取り留めもない話が続く。女子高生四人と男子高校生一人、そして成人女性二人というまとまりのない七人ながらも結構話は弾んでる。けど、『あれ?男僕だけじゃん』って気が付いてからは、今更ちょっぴり肩身が狭く感じたり。でも楽しければいっか!
それからひーちゃんがいきなり『おぎゃああああああああああああやっぱりニートああああああああああああ』と突然、叫び始めたり、喜多さんが『きた〜!行くよ〜!ってあはは、あほか〜い!』と自分の名前にコンプレックスを抱いていてる事を暴露したりと、打ち上げは盛り上げってました。
「た、たっくん」
「あ、ひーちゃん!」
僕は一旦、お店の外に出て夜風に当たっていると、ひーちゃんがやって来た。ちょっとお店の中が蒸し蒸ししててちょっと暑かったんだよね。
「も、もう大丈夫?朝、雷で怯えてたけど........」
「うん!もう大丈夫だよ!今日はありがとね、ひーちゃん!」
僕は改めてひーちゃんにお礼を言う。もしひーちゃんに慰めて貰って無かったら、あのまま雷に怯えた状態でライブに挑む所だった。
「あれ?ぼっちちゃんとたっくんだ、どうしたの?」
「あっ、虹夏ちゃん........」
すると虹夏ちゃんがお店から出て来た。もしかしたら僕と同じ理由で夜風に当たりたかったのかな?
「もしかして虹夏ちゃんも涼みに?」
「うん、最近は涼しいですね〜。あと二週間で夏休みも終わりか〜」
「何も聞こえない何も知らない夏は終わらない私は学生なんかじゃない。木...、水...、惑星...、銀河...」
「ぼっちちゃん現実見て!」
「ひーちゃんしっかり!」
んも〜う!ひーちゃんったらそんなに学校が嫌なの〜?学校楽しい〜じゃん〜。
「...........あのさ、ぼっちちゃん、たっくん」
「........?はい?」
ちょっとだけ虹夏ちゃんの声のトーンが変わる。なんか真面目な話っぽいな。
「今日の演奏を見て思ったんだけど、ぼっちちゃんとたっくんが『ギターヒーロー』なんでしょ?」
............へ?
「えっ、うっ、あの、ちがぢが........」
「今更だけどギターも一緒だし、あのキレのあるストロークを聴いたら分かったよ」
わ、わぁ........。完全に言い逃れ出来ない........。
「えっと........、そうです........。私とたっくんがギターヒーローです........」
「その........、黙っててごめんなさい...。でもわざと隠してた訳じゃないんだ。最初はひーちゃんがギターヒーローとしてやってたんだけど、僕が途中で参加して、今のようになってるんだ」
「そ、それに........。今の私なんて全然ヒーローじゃないし...。この性格を直してから話したかったんです...。とっ、特に虹夏ちゃんには...」
そうだ、元々ギターヒーローはひーちゃんだけでやっていたんだ。それなのに僕が我儘言って仲間に入れて貰った訳だし、僕から『僕とひーちゃんはギターヒーローなんです!』なんて言える訳がない。それこそひーちゃんが酷く傷ついてしまう...。だからひーちゃんが自分から打ち明ける日まで僕はギターヒーローだという事を隠していたのだ。
「わ、私とたっくんだと知ってショックですか...?」
「そんなことないよ。寧ろぼっちちゃんとたっくんで良かったよ」
ひーちゃんは幻滅されたと思ってるような顔をしてるけど、虹夏ちゃんは虹夏ちゃんは明るい声音で切り出した。
「あたし、たっくんには言ってなかったけど、ぼっちちゃんには前に本当の夢があるって言ったと思うんだ」
「あっはい」
虹夏ちゃんの夢........?
「あたし、小さい頃に母を亡くして、父親はいつも家に居ないし、お姉ちゃんだけが家族だったんだ。お姉ちゃんがバンド始めてから、寂しがる私をライブハウスに連れてくれるようになったの。あの頃の私には、全部がキラキラして見えて、凄く幸せな空間だったんだ。そんなあたしを見てたから、お姉ちゃんはバンドを辞めてライブハウスを始めたんだ。スターリーはね、お姉ちゃんが私の為に作ってくれた場所なんだよ」
まぁ、お姉ちゃんはそんな事、絶対言わないけどね。と虹夏ちゃんが言うと、僕は思わず納得してしまう。店長さんって全然素直じゃないからね。
「だからあたしの本当の夢はね?お姉ちゃんの分まで人気のあるバンドになる事!そして、お姉ちゃんのライブハウスをもっと有名にする事!でもバンド始めてみたら、あたしの夢って無謀なんじゃないかって思う時もあって........。今日だって皆んな自信無くしちゃったし...」
それは........、仕方ない事だと思う。例えどんな有名なバンドでも批判の言葉の一つや二つは貰う事だってある。それはきっと、有名になる為には超えなくちゃいけない壁だと僕は思う。
「でもね、そんな状況を壊してくれたのはたっくんとぼっちちゃんなんだよね。特にたっくんは、本当にヒーローに見えたよ........。とてもカッコよかったよ」
虹夏ちゃんがそう言って笑顔を作ると、僕は少しだけドキッとした。カッコよかった...、か........。初めて言われたな........。
「勿論、ぼっちちゃんもね」
「虹夏ちゃん........」
「リョウは今度こそ、このバンドで自分達の音楽をやる事。喜多ちゃんは皆んなで何かをする事に憧れてる。皆んな大事な想いをバンドに託してるんだ」
皆んなの大丈夫な想いがバンドに託してる........。そう思うと僕の夢って何だろうか........。
「そう言えば、ぼっちちゃんとたっくんが今何の為にバンドしてるか、結局聞いてなかったよね」
「........わ、私は...。ギタリストとして、皆んなの大切な結束バンド、最高のバンドにする事です...」
「........僕は...。正直、考えてなかったんだ。ずっとひーちゃんのお手伝いが出来れば、それで良いかなって思ってたんだ。でも、今はっきりした事がある...」
結束バンドのメンバーの夢を叶える為にお手伝いするって
「それが僕の夢........、というより目標かな?あはは......、全然まとまってないや」
そう言って僕は頭を掻き始める。でも、例え目標だとしてと僕は達成したい。それは紛れもない事実だ。それが僕の為じゃなくても、ひーちゃんや虹夏ちゃん達の為になるのなら...。
「あ、それで全員で人気バンドになって...。うっ、売れて高校を中退したい...」
「ひーちゃん、そんな重いのはバンドに託しちゃダメだよ」
高校中退なんてしたら絶対苦労するよ!?せめて高校卒業はしないと!
「ま、たっくんはまだしも、ぼっちちゃんの演奏が動画の時みたいに毎回ライブで発揮出来たら良いんだけどね。精進してくれたまえ」
「あっ、頑張ります........」
そうだね!ひーちゃんはまだ人前で演奏するのを克服する事が第一の目標だね!
「でも私は確信したの!たっくんとぼっちちゃんが居たら、夢を叶えられるって!だから、これからと沢山見ててね!二人のロックを...」
ふたご・ざ・ろっくを!!
「................zzz」
私はたっくんと一緒に帰りの電車に揺られながら帰路に着いている。たっくんは疲れたのか私の肩で眠っている。朝から雷に怯えたり、ライブ本番で最初から全力でギター弾いたりと疲れが溜まっていたようだ。
今日もたっくんに助けられてしまった...。少しばかり自分の無力さを感じる...。
「たっくん、あのね........。私、今日のライブ、全然自信無かったんだ。でもね?私があそこまで頑張れたのは...、たっくんのお陰なんだよ?」
ライブが始める前に、お客さんにあんな事言われて、皆んな落ち込んでた時に、たっくんがいきなりソロギターやり始めたのは驚いたけど...。たっくんがこっち向いた時に笑ってる顔を見たら、なんだかすごく安心して...、そうしたら、身体中に力が湧いてくるような不思議な感覚になって...。私もやるぞ、って自信がついて........。たっくんが居てくれたから、ライブは成功したんだよ...。
虹夏ちゃんは私達の事を『本物のヒーローに見えた』って言ってくれたけど、私にとってのヒーローは........、たっくんなんだよ...?
今日だけじゃない。たっくんにはいつも私を助けてくれて、ずっと優しくしたり、時々怒ったりして...。ずっと私はたっくんに甘えて........。
虹夏ちゃんに連れられて、いきなりスターリーでライブした時も、喜多さんを結束バンドに勧誘した時も、初めて歌詞を書いた時に手伝ってくれた事も、オーディションの時も、路上ライブのと時も...。今日だって........、たっくんに助けられた...。
だから...。ずっと前から、ちゃんとお礼を言いたかった........。
「ありがとう、たっくん」
そう言って私の肩の上に眠るたっくんの頭をゆっくりと撫でると、えへへ、とニヤけるたっくんの顔を見て、私も釣られて微笑んでしまうのであった...。
〜おまけ(没ネタ)〜
「お~い、たっくぅん! 飲んでるかぁい!?」
「き、きくりさん........。飲み過ぎですよ!」
「まぁまぁ〜、そう言わずにぃ〜!ほ〜ら!カシスオレンジ(アルコール度数3%)でちゅよ〜」
「ま、待って下さ...むぐっ!?」
「なっ!?それあたしの酒!?」
「「「「え?」」」」
「................」
「........あ〜、たっくん?大丈夫?」
「........ふみゅ〜」←顔真っ赤
「たっ、たっくん........?」
「あ、あれぇ〜?虹夏ちゃあ〜ん?なんか大人っぽくなったねぇ〜」
「ま、待って達也くん!その人は伊知地先輩じゃなくて、店長さ...」
「虹夏ちゃあ〜ん♡」ダキッ
「」バタッ
「ああああああああ!?店長ぉ!?」←今回、最初で最後のPAさんのセリフ
「ふぇ?店長さんなの〜?まぁいっか〜♡店長さぁ〜ん♡」
「だ、誰かたっくんを引き離せ!マジで!大至急!!」
「ほ〜らたっくぅ〜ん!きくりお姉さんの所へおいで〜」
「お、お姉さん!?」
「自分から死にに行った!?」
「きくりちゃあ〜ん♡しゅき〜♡(クソエ○ボイス)」
「アッ(尊死)」バタッ
「お、お姉さんが死んだ!?」
「この人でなし!ってかリョウも手伝って!」
「いや、そのままでいいと思う。見ていて楽しいし」
「いや手伝えよ!」
その後、たっくんの暴走を止めたぼっちちゃん達は、二度とたっくんにお酒を飲ませないように、きくりに厳重注意した。
おまけに、たっくんもお酒を飲んでた時の記憶が全くなく、軽い二日酔いになってしまった。