ネタの都合上、今回で漫画四巻は終了です。
「........え」
「あ、おはようたっくん」
「あっ、うん。おはよひーちゃん」
朝起きてリビングに降りたら、ひーちゃんが僕より先にリビングに降りていた。確かに僕より先にリビングに降りてきた事は珍しくないので驚く事では無かったのだが、僕が驚いてたのはひーちゃんの格好だった。
ひーちゃんが........、毎日いつものピンクジャージしか着なかったひーちゃんが......!
ブランド品に手を出した...!なのになんでジャージ!?
「ひ、ひーちゃん?その服いつ買ったの?」
「え?これ?これは前に通販で買ったやつだよ........、か、かっこいいかな?」
「う、うん!とっても似合ってるよ!」
「!そ、そっか........、へへっ......。ほ、本当ならたっくんのも買ってあげようと思ってたんだけど、ギターヒーローで貯めたお金無くなっちゃうから......。た、たっくんに似合う服見つけたんだけど........、これ!どうかな!?」
朝からテンションが高いひーちゃんを見るのはいつ振りだろう...。ひーちゃんはスマホで僕に似合うお洋服を見せると、それはひーちゃんと同様ブランド品だった。流石はブランド品だ...、僕からしたら高級感溢れるオーラが漂っていて、そして何より値段が高い...。
「こ、今度は私がたっくんにお礼する番だから........、ほ、欲しいものがあったら言ってね...?」
「ひーちゃん........、ありがとう!その時が来たらお願いね!」
しかもひーちゃんからそんは言葉まで飛んでくるとは思いもしなかった。今日は嬉しい事ばかりだ。
........でもね、ひーちゃん。まさかとは思うけど........。
今日その格好で行くの!?
〜下北沢駅・改札口〜
「あ、おはようひとりちゃ........、ひとりちゃん!?」
「あ、おはようございます!喜多さん!」
「達也くん!?一体何が起こってるの!?」
「あはは........、僕が一番知りたいというか何というか........」
家を出て下北沢駅へ出発した僕とひーちゃんは改札口で喜多さんと合流した時、喜多さんがひーちゃんの服装に驚きを隠しきれなかった。そりゃそうだよね........、ジャージだけならまだしも、サングラスやアクセサリーまで購入してたとは予想外だった。
........あれ?という事は今ひーちゃんは金欠状態?
「達也くん!!なんとかならなかったの!?」
「ぼ、僕だってなんとかしようとしたよ!でも既に手遅れだったんだ!出発する準備し始めた時にはひーちゃんはもう準備できてたし、僕が支度し終えたら腕を引っ張って駅に向かったんだから!」
「じゃあ仕方ないわね!今から着替えるなんて無理だからこのまま行くわよ!」
ドン引きしてた喜多さんも遂にヤケクソになってひーちゃんの腕を引っ張ってスターリーへ向かった。しかし、向かってる道中で色んな人からの視線が刺さり、僕と喜多さんは恥ずかしくなり、ひーちゃんはまるで有名人になったみたいに嬉しそうな顔をしていた。
そしてスターリーへ辿り着き、入り口の扉を開くと、
「あっおはようごさいます!!」
「うわっうるさっ!」
開口一番に今まで出さなかった大きな声で挨拶すると、近くにいた虹夏ちゃんは身体をビクッとさせて驚いてた。いきなり煉◯さんみたいな声だされたら驚くよね...。
「きょ、今日でバイト辞めます!お世話になりました!」
「「「なんでそうなるの!?」」」
急にひーちゃんがバイトを辞める宣言して現場は急展開する。いやひーちゃんバイト辞める気だったの!?
「な、なんて事言うのひーちゃん!?」
「ラ、ライブハウスを去るのは凄く悲しいですが、た、偶に遊びに来ます!」
すっごいニコニコして言ってるけど全く言葉の内容と噛み合ってないよ!?顔から本音がダダ漏れなんだけど!?
「........ねぇ、リョウちゃん。その新しいベースはどうしたの?」
「ローン組んだ」
リョウちゃんのギグバッグを三つも持っていたので僕が気になっていたので声をかける。たぶん中身はベースだと思うんだけど、まるでフルアーマー装備だ。ロボットだったらロマン溢れる筈なのにロマンも欠片もない。
「ロ、ローン組んだって........。大丈夫なの?」
「心配するな。レーベル入れるし、自分へのご褒美って事で。返済頑張れ!未来の自分!」
「お馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
それひーちゃんと同じだよ!絶対後悔するやつだよ!!もうどうしようもない二人に僕達三人は溜め息を吐く。
「........もう知らん、事務所行こ」
既に諦めた虹夏ちゃんがレーベルの事務所に電話して、全員揃ったから今から事務所に向かいますと簡潔に説明した。
「もしかしてヘリ?ハイヤーだったり!?」
「あ、お迎えのマネージャーさんは...?」
「あるかそんなもん!」
「ち、ちなみに場所って何処なの?」
「此処から徒歩3分」
目と鼻の先!?あまりにも近すぎる!!
僕が内心驚いてると、ひーちゃんとリョウちゃんは首を傾げる。そりゃそうだよね!事務所がまさか3分で着くなんて思いもしないよね!
そして虹夏ちゃんを先頭に、僕達はレーベルの事務所へと向かっていく。でも3分で着く大きい建物なんてあったかな?それにレーベルの事もいまいちよく分からないし........、その辺が少し怖い...。
「あっ着いた!此処の2階だよ!」
「「えっ........」」
出発して徒歩3分、本当にビルらしき建物に到着した。レンガみたいなので作ったちょっと殺風景なビルだった。
ほ、本当に此処なの........?なんか思ってたのと違う........。
「そ、そんな馬鹿な...。こんなボロい訳ない...」
「現実を見ろ山田、お前が目にしてるのは紛れもない真実だ」
「認めない!認めないぞ私は!!これはきっと何かの間違い........」
「おや、皆さん。お待ちしておりました」
「........よく見たらレトロで趣のある建物だな」
リョウちゃんが建物に不満を言っているとビルの入り口から司馬さんが現れる。それに気がついたリョウちゃんは誤魔化すように訂正した。いくら何でも無理があるよ........。
「た、たっくん見て!ハムスターが居るよ!」
「きゃあああああああ!!それネズミよぉぉぉぉぉぉ!!」
「しかもドブネズミ!!」
ひーちゃんはひーちゃんで近くに居たネズミさんを拾って僕達に見せると喜多さんは悲鳴を上げて僕の背中に隠れてしまった。ばっちぃから離しなさい!それとネズミさんが可哀想でしょ!
「ネズミが好きなんですか?この近辺では出没しやすいので苦手意識が無くて何よりです」
「........ハハッ」
全て諦めたのか虹夏ちゃんから乾いた笑みが漏れてしまった。気を取り直して事務所の中へ入っていくと、むあっと熱気が全身に襲い掛かり、少し狭い空間だった。
「狭い所で申し訳ありません。クーラーの効きも悪くて」
「い、いえいえとんでもない!」
「そ、そうですよ!サッ、サウナも兼ねてるだなんて未来的でいいじゃないですか...、へぇー凄いなぁ...」
「た、確かに仕事中にもサウナキメたいですからね...」
「........凄いポジティブな方達なんですね」
「違うんです........、そうならざるを得ない事情がありまして........」
それから奥の応接室に通されて、僕達は司馬さんに椅子を勧められた。僕達は椅子に座ると、改めて司馬さんの自己紹介が始まる。
「改めまして、私ストレイビードでマネジメントしております。司馬都と申します。本日はご足労頂きありがとうございます」
「「「「「ど、どうも...」」」」」
司馬さんがお辞儀して挨拶すると、僕達も一斉に頭を下げる。するとガチャリと扉が開く音が聞こえると僕達は開かれた扉を向く。
「ど、どうも〜、お、お飲み物どうぞ...」
「ぽ、ぽいずんさん!?」
それは紛れもないぽいずん♡やみさんだった。え、なんでこんな所に?
「ど、どうしてぽいずんさんが此処に!?」
「実は丁度人手が足りなかったので、バイトとして働いて貰ってるんです」
「ライターだけで食べていくのは難しいのよ...、だから仕方なくよ」
あ、そうだったんだ。確かにライターだけじゃあ生活するのは難しいよね、色々と掛け持ちしないと苦労しそうだし...。
「........なんか最近落ち着いてますね」
「あ、あの時はライターで生き残る為にキャラ付け試行錯誤してたの!」
「?なんの話しですか?」
「こ、今回の件とは全く関係ないのでお気になさらず!」
ぽいずんさんの話題が始まろうとしてた所を虹夏ちゃんが慌てて終止符を打ち、司馬さんは一度咳払いをして本題に入る。
「では本題に入らせて貰いますが、レーベルと聞いてどんなイメージを持たれましたか?」
「えっと...。アルバム作って貰えたりとか、うちのお姉ちゃんも昔レーベルに誘われた事があるんですけど、そう言う事言われたって...」
「それでミニオンセラー飛ばしちゃったり!」
「あと別荘貸し切って曲作りとか」
「あっ毎月事務所か、お給料が出て働かなくていい...?」
「えっと........、所属してるバンドの知名度が更にアップ?」
それぞれのレーベルに対してのイメージを伝えると、司馬さんは『成る程』と言って一人で納得してしまった。
「皆さんのイメージは分かりました。しかし残念ながら今の音楽業界では余程の事ではないとデビュー時にその様なバックアップは出来ません。CD一枚出すのにハードルもかなり高いです」
「「「えっ?」」」
つ、つまり........、どう言う事........???
「ここ数年で音楽業界の仕組みも大きく変わりました。しかし今だからこそできる売り方もあります。まずはこちらの予算で数曲作って頂いて、それを弊社がサブスクや動画サイトで順次配信します。その売り上げや再生数が多ければ、今度はCDのミニアルバムを製作したいと考えています」
「つまり........、お試しで制作費を出してくれて、結果が良かったらミニアルバムも作ってくれるって事ですか?」
「まぁ要約するとそう言う事です。今回は専属実演家契約という形式になりますね」
「........大丈夫たっくん?ちゃんと着いて来れてる?」
「な、何とか........、かろうじて........」
心配して僕に声を掛けてくれた虹夏ちゃん。だ、大丈夫...、今は何とか着いてきてるよ........!
「あとプロモーションについてもお任せ頂ければと。ネット発の音楽ユニット『クリムトの夜』も弊社の所属なんですよ」
「クリムトの夜!?最近よく聴いてます!」
へぇ〜、よく分からないけどそのクリムトの夜って人は喜多さんが知ってる程の凄い人なんだね〜。
「ヤバイヤバイヤバイヤバイ........!私が思ってた未来予想図が全く違う........!急いで返品出来るか電話しないと........!」
「タッタグ...、タグさえ元通りに出来れば返品出来るはず...」
どうやらひーちゃんとリョウちゃんは自分のやってしまった事を後悔して購入した品を返品しようと精一杯の様子だった。ダメだこりゃ...、もう何も耳に入ってないよ........。
「それと曲の制作費が出る事以外は今までとの活動と特に変わりません」
「あ、結局お金は自分達で貯めないといけないんですね」
流石にお金に関して全面的にサポートしてくれる訳じゃないか.........、やっぱり道のりは長くて険しいね...。でも話しを聞く限り悪い話しではない、少し不安はあるけど僕達だけでやっていくには限界があるし、受けていいかもしれない.........。
「ところで後藤ひとりさんは、ギターヒーローという別名義で音楽活動されてるようですが」
「「!?」」
突然司馬さんがひーちゃんがギターヒーローで音楽活動してる事を指摘してきた。な、何故そんな事を!?
「ちょ、ちょっと待って下さい!な、何で知ってるんですか!?」
「いやこの前大声で皆さん喋ってらしたので、気になって調べてみたらこちらのアカウントが」
この前っていつ!?いつ何処で地雷を踏んでしまったんだ!?.........いや、そんな事はどうでもいい。ギターヒーローの名前が出てきたって事は、それを利用しようって事..........?
「登録者数もそこそこいますし、動画の再生数も100万回がちらほら........、凄いですね。宣伝に使わない手はないので使っても問題はないですか?」
「あっそっそれって公表しないとダメですか...?」
「そうですね........。こちらも慈善事業じゃないので使えるものは全て使っていきたいのですが」
「それはダメです!!」
「「「「「「!?」」」」」」
無意識に椅子から立ってギターヒーローを利用する事を否定した。それに驚いた皆んなは僕に視線を向けてくる。
確かにまだ結束バンドのだけじゃあ足りない部分もある...、プロの世界に足を踏み入れるならこういう売り出し方をされるのを受け入れるしかないかもしれない...。
でも、それだと意味がない!!
「僕達は五人揃って結束バンドです!仮にギターヒーローで宣伝しても逆効果です!まだひーちゃんとギターヒーローは同等の力を持ってる訳じゃないから信じてくれない可能性だってあります。それに、ギターヒーローに頼ってメジャーデビューなんて、なんか卑怯じゃないですか!」
「よく言った!それでこそギターヒーロー2号!」
「貴女はどっちの味方なんですか?」
「そりゃ未来ある若者の味方なんで〜」
「いつ辞めて貰ってもいいんですよ?」
「パワハラ!」
僕の言葉にぽいずんさんは賛同してくれた。ぽいずんさんが味方した...?
「..........確かにそうですね。ライブで安定した演奏ができないのでは、反感を買ってしまうかもですね」
「そうですよぉ〜、メリットも少ないし今はその時じゃないと思います」
「それに私が以前のライブで心惹かれたのは、後藤さんの演奏もそうですがバンド全体にです。個人を推す売り方は得策ではありませんね。何より貴女方がやりたくないならやるべきではないでしょ」
どうやら司馬さんも納得してくれた.........、って事でいいのかな?そしてぽいずんさんは親指を立てて『よくやった!いやほんとマジで!』と言いたそうな顔をしていた。
「........まぁイケメン彼氏だの学校一のモテ女だのこのいけ好かないキャラクターが大衆にウケるとは到底考えられないですしね」
「ぐふっ........」
「その点は触れないで下さい!」
司馬さんがひーちゃんの黒歴史を見つけて読み上げると、ひーちゃんは口と目と鼻から血を吹き出してしまった。お願いだからそっとしておいて!ひーちゃんだって反省してるから!
でも、司馬さんは僕達の意志を尊重してくれた........。それにぽいずんさんも居るからとても頼もしい。
「あの........、これからよろしくお願いします!あたし達精一杯やります!」
「!ありがとうございます!」
虹夏ちゃんも此処に所属する事を決めたのか、司馬さんに所属する事を報告すると、とても嬉しそうに返事をしてくれた。今日から此処の所属のバンドになるのか...。
「皆さん、これからよろしくお願いします。私もまだ入社して二年目の新米ですが、できる限りサポートします」
「「「.........入社二年目?」」」
なんか聞き捨てならない言葉か聞こえた........。うそでしょ........?とても堂々としてるのに入社して二年目の新人さん?
「こー見えてあたしの方が歳上なのよ、全然見えないでしょ」
う、嘘ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?
「まぁいざって時はあたしも居るし〜?業界長いしコネも結構あるし?」
「自力でやれますので必要ありません」
ぽいずんさんのウザ絡み?をばっさりと言って、一度咳払いして話しの続きをする司馬さん。
「話しを戻しますが、まず一曲目のリリース時期は年明けを予定してますが、詳しいスケジュールは追って連絡します。受験もあり大変だと思いますが、10代の感性を大事にして、経験を曲に詰め込んで下さい」
感性を大事にして経験を曲に詰め込む........。つまりこれから何かしら動きがないと曲は作れないって事か...。
「これぞ結束バンドのキラーチューンという様を期待してますね」
「「「「「はい!」」」」」
期待されてる以上、失敗は許さない。今回は以上です、と司馬さんが打ち合わせが終わりだと告げると僕達はそのまま外に出てスターリーへと戻っていく。そんな中、今日の打ち合わせの事を振り返っていた。
「楽しかったですね〜!これからのバンド活動やる気がでました!」
「よーし!いい曲作るぞー!」
虹夏ちゃんと喜多さんはすっかり気合いが入っていた。
「折角だし、一曲ぐらいぼっちが作曲する曲があってもいいんじゃない?」
「それいいかも!」
リョウちゃんの提案に皆んなが乗ってきた。虹夏ちゃんが『作詞別の人がやってみるのもいいかもね!』と新たな提案を出したり、喜多さんも挑戦してみたいと張り切っていた。
「なら結束バンド初の恋愛ソングなんてどうですか?絶対いい曲になりますよ!」
「そんな事したらぼっちちゃんが死ぬよ!?」
皆んな楽しそうにこの先の事を話し合ってる中、僕はふとある事を思い出した。
「あ、そうだひーちゃん」
「え、あっ何?」
「ひーちゃんの買ったブランド品、いつ買ったの?」
「あっ」
僕が忘れてた事、それはひーちゃんが勝手に購入したブランド品である。別に買うのはいいけど今月のお小遣いは渡しちゃったし、あれだけ高額のお買い物をしたとなると、ギターヒーローで貯めたひーちゃんの分のお金も少ない筈だ。
それ以前にお金は僕が管理してるから、ひーちゃんが勝手にお金を取るって事はあり得ない。
「ひーちゃん、お家に帰ったらしっかり教えて貰うからね♪」
「ひゃ、ひゃい........」
それからお家に帰ってひーちゃんは白状した。なんでも『レーベルに入ったらお金貰えるからバイトしなくてもいい』と思ってたらしく、調子に乗ってブランド品を買ったらしい。しかも僕が保管していたお金は偶然にもふーちゃんにバレてしまい、それをひーちゃんが知ってこっそりと抜き取ったみたいだ。
結局はひーちゃんの自業自得ということで、ひーちゃんには暫くお小遣いなしの処罰を下したら涙ながら絶叫してしまった。
チケットのノルマ代に自分のお小遣いも稼がなければいけなくなったのだが...、何故かリョウちゃんも泣きながらアルバイトのシフトを入れまくってた...。
原作ではこのあと皆んなで海に行く回ですが、それはR-18版で書くつもりなので飛ばします。なので次回からは五巻目に入ります。