遊戯王ARC-V A Transcender 作:ダイナソー剣崎
「雄山ツルギ、君に特別任務を与える」
目の前にいる男、プロフェッサー赤馬零王は俺に対してそう告げた。
あの日から数ヶ月の月日が経ち、いよいよ俺にもエクシーズ次元侵攻作戦参加が近くなってきた頃に、プロフェッサーから名指しで呼び出されたのだ。
あの日のことを今さら咎められるのかと思ったのだが杞憂に終わった。
「俺…私に特別任務…ですか?」
「そうだ。君にはエクシーズ次元とは別の次元への潜入任務に就いてもらう」
「別の次元…?」
「その次元を我々は『シンクロ次元』と呼称してる」
『シンクロ次元』…講義で何度か出てた名前だった。アカデミアの融合召喚、エクシーズ次元のエクシーズ召喚とは違うエクストラデッキを使う召喚法、シンクロ召喚と呼ばれる召喚法を主に使っている次元があるという。その次元への潜入任務ということは…
「と言いますと、シンクロ次元への侵攻も近いということでしょうか?」
「いや、まだそれは先の話だ。君にはそれとは別の任務で行ってもらう。これを見ろ」
そう言ってプロフェッサーはホログラム映像である少女の姿を映し出した。それはあの日アカデミアの教師から逃げていた少女、セレナであった。
「彼女の名はセレナ。君にはこの少女と同じ顔をした少女をシンクロ次元で探しだし、監視してほしい」
「同じ顔の少女を、ですか?それはどういう…?」
「君はそれ以上のことを知る必要はない。言えることは彼女は次元統一に必要な存在だからだ」
プロフェッサーが俺に告げた命令には、まるで意味がわからなかった。セレナと同じ顔をした少女を監視…?
それと次元統一と一体何の関係があるのだろうか?と問いたかったがそれ以上の追求をプロフェッサーは許さなかった。
そしてプロフェッサーの隣にいた実働部隊の隊長を勤めている男、バレットが口を開いた。
「デッキは現在お前が使用しているものを持っていくといい。作戦開始は本日1500時から開始となる。それまでに資料に目を通し研究党で配置につけ」
「それと、向こうでは融合召喚は極力行わないようにするんだ。騒ぎを起こしては面倒だからな。以上だ。それでは存分に励んでくれ」
デッキは今使っているのでいいのか。てっきり実戦部隊のを渡されるのかと思ったが自分のを使えるのなら安心だな。その後プロフェッサーとバレット隊長はそのまま別の部屋へといなくなっていった。
(まあ侵攻作戦参加よりはマシなのかわからんがやるしかないか)
憂鬱な気分の中、開始時間までに支度をせねばと寮の部屋へと向かうのだった。
※
作戦内容を伝えられた後、部屋に戻り、渡された資料に目を通していた。作戦開始時刻が近づいた頃、俺は目立たないような服装に着替え、必要最低限の荷物とデッキの入ったケースを手に、転送装置の設置されている研究党へと向かった。
中に入るとそこには大きなビーカーのような形をした転送装置がいくつも並んでいて、その前には研究員たちが端末を操作している姿が見える。すでにきていたバレット隊長がこちらに近づいてきて、円形の形をした赤い色のデュエルディスクを差し出してきた。普段使っている盾型のものとは異なっていて少し驚いたが資料にもあったものだとすぐに気づいた。
「これはシンクロ次元のものを模したデュエルディスクだ。機能に関してはこちらのものと同じだ」
「了解しました」
「では健闘を祈る」
俺はバレット隊長からデュエルディスクを受け取り、左腕に取り付ける。そして俺は転送装置の前に立つ。任務の対象でもあるセレナに似た少女とはどのような人物なのか、何故プロフェッサーはその少女にこだわるのか、思うことは沢山あるがとにかく目の前のことをやるしかないか。
『グゥゥゥゥ…!』
「ああ、行こう…!」
デッキケースの中にいる相棒の唸り声に答えながら、動き出す転送装置の光に包み込まれ、俺は次元を飛んだ。
※
ツルギが次元を移動した後、バレットはすぐにプロフェッサーのいる間へと向かった。プロフェッサーが玉座に座っているのを確認するとバレットは膝をついた。
「行ったか?」
「はい、滞りなく」
「…そうか」
バレットの言葉に赤馬零王は一息ついてから立ち上がり後ろにある装置に目を向けた。そこにはいくつもの小さな光が収束していくように筒の中に集まっている様子が見える。
「プロフェッサー、一つよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「何故あのような少年に重要な任務を任せたのでしょうか?あの少年はデニスほど優秀とは思えませんが…」
デニス…エクシーズ次元にいるセレナと同じ顔をした少女、黒咲瑠璃を確保するために侵攻作戦より先んじて送り込んだ工作員の名である。ツルギはデニスに比べればラーイエローでもあることからも彼と同じような作戦に徴用してよいものかバレットとしては些か疑問ではあった。
「戦績を調べたが、彼は融合召喚を今まで使っていない。にも関わらず戦績はそこそこ。他次元への潜入ならこちらの召喚法を使わん彼は適任だと思うのだが?」
「はぁ…?」
曖昧とも取れる赤馬零王の答えにバレットは戸惑いを隠せなかった。本当にそれだけなのか…?それだけであのような小僧に重要な任務を任せたのかと。しかしバレットはこれ以上の問いかけを躊躇ったのだった。
(あの時…初めてあの少年を見た時…彼からは4つの気配を感じた…まるであの悪魔の従えていたドラゴンのような…!)
バレットから見えない角度から赤馬零王は険しい表情で装置の光に目を向けていた。
次回辺りでデュエル導入&ヒロイン出ると思いますので暫しお待ちください